俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
102 / 196
王女シェイラ=ミラージュ

早速シェイラが実践に

しおりを挟む
 シェイラが部屋を出た後、部屋にまだいた俺にも部屋の外からどよめきの声が聞こえてきた。
 今まで来ていた煌びやかなドレスっぽい服装から、一転して俺とそんなに変わりのないジャージっぽい服に変わった。
 髪の毛も紐っぽいものでポニーテールっぽくしてた。
 驚く反応も当然予想できるよな。
 それだけ関心を持たれてたってことだ。
 その声の消え方がそれぞれ穏やかだ。
 シェイラが彼らに受け入れられているってことなんだろうが……。

 部屋を出ると、俺の予想は当たってた。
 シェイラは思いっきりふくれっ面になっている。
 しかも顔を赤くしている。

「一々引っかかんな。腹を立てる原因は、お前がまだ動いてないってとこにある。とっとと動け。指輪預けるから袋取ってこい。穴は分かるな?」

 自分にしかできないこと。
 誰にでもできることを自分がやること。
 それらが不特定多数の者達に喜ばれる結果に結び付けたがっている。
 シェイラが求める結果が生まれるまでの障害にイラつく気持ちも分かる。

 救世主だなんだって、さんざん言われてたからな。
 他人から勝手に決め付けられることの不快さなら十分体験済みだ。

 そして、俺も気をつけなきゃならんことでもある。
 こんな子供が平気な顔をして、一度に十キロの米袋を三つ持ち上げて運ぶ。
 子供という思い込みが、目を丸くして驚く心の作用の一つになる。
 シェイラには、それはできて当然のこと。
 ならば俺も、シェイラならできて当然と思ってやらんと、馬鹿にされているという誤解を与えてしまう。

「はい、袋六つでいいわよね?」
「あぁ。助かる」

 指輪を受け取って米を計量する作業に入る。

 肉体疲労もなく米袋を移動してもらえた。
 減るはずだった体力は、別の作業に使うことができる。
 これは間違いなく、俺にとっちゃ助かることで、シェイラへの印象ではない。

 それでも不満そうな顔をしている。
 全くもって俺より面倒くさい性格だ。
 ま、子供だからしょうがないか?

 で、ここでまた一つ実験をしてみる。
 シェイラが光を浴びせたのは米だけだったが、今回は握り飯に光を当ててみる。

「同じ力量でより多くの効果が出る方がいいだろ?」
「まぁ……そうね」

 握り飯作りの間、シェイラは俺のそばにただいるだけ。
 コルトにもやらせなかったことだ。
 いつまでも俺の手伝いをしてくれるわけじゃないことは分かるからな。
 米袋を運ぶのが難儀になったら、台車とかを持ち込めば解決する話。
 誰かに代役が利かない仕事手伝ってもらうことで、俺が楽になることがあったら、そいつがいなくなった後がつらく感じることになる。
 それだけは避けるべき。

 そして握り飯の時間がやってきた。

 パフォーマンスを見せるつもりはなかったが、同じ魔力量を込めるため、シェイラの動作は自ずとここにいる連中の目を惹くことになった。
 となれば、握り飯の効果は間違いなくその光が生み出したもの、と解釈される。

 握り飯を食べ終わった順に、冒険者達から感謝の言葉が投げかけられた。

「何か……面倒くさいっ」

 お前は俺か?

 何か食わせてやれば元気になってくれるだろう、ということで握り飯の配給を始めたらしい。
 俺はそれを引き継いだだけ。
 命を救ってやろう、助けてやろうというつもりはほとんどない。
 そんな大それたことなんかできゃしない人間だということを自覚してるから。

 それはシェイラも同じだろう。
 何か手伝えたら。何かの力になれたら。
 こいつが持ってる意識はそんなもんだろう。

 それが、涙を流さんばかりの感謝を示されたら、かえってこっちがひいてしまうというものだ。

 それにしても……。
 シェイラはいつまでここに居つくつもりなんだろうな。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...