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王女シェイラ=ミラージュ
シェイラの傾聴:イゾウとの思い出話
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「最初にこの部屋に来た時は、イゾウを神様か何かと思ってた。今思うと、お母様も子供だったって思うけどね」
お母様と私とでは、ここに来たきっかけが違う。
だから、そう言いながら笑う意味が分からない。
「コウジも見て分かるけど、魔法とか使えないし魔力もないでしょ?」
「そりゃ……もちろん」
「イゾウもそうだった。この世界の者達にとっては未知なるものなんでしょうね。それでもそんなことを恐れず、ここに来る人達みんなにおにぎりとかを作ってくれてた」
世代交代してもそれを続けてるってのは、伝統みたいに聞こえなくはないんだけど……。
あれ?
でもお母様のその時は、今の私よりも子供の頃だったのよね?
「でも、ひょっとしたらお母様も、何か危ない目に遭ったりしたんじゃないの?」
「一回攫われそうになったわね。そいつらは私が何者か、分かってたと思う」
私より危険な目に遭ってたんじゃない!
終わってしまったことなんだろうけど、よくもまあそんな顔して懐かしがっていられるものだ。
我が母親ながら……豪胆よね……。
「そしたらそいつらと私の間にイゾウが割って入って来たの。まだ鮮明に覚えてる。……魔力がないのはみんな知ってた。それどころか、体力だって、私よりもなかったのよ? それでも……あの勇ましさには見惚れてしまった……」
「……ひょっとしてお母様……」
ここに何度も来た理由って……。
「まぁ、憧れてってこともあったわね。子供だったしね」
お母様って、そんな子供のころから行動力あったのね……。
でも今よりも部屋に訪れる者達の人数が少ないのに、そんなことを考える人がいるなんてある意味物騒と言えば物騒よね。
「使われなくなった、内部構造が複雑な建物や、掘削して深くなっていった洞穴、元々そんな場所があったけど、人目に触れるようになった場所とか、そんなのが増えたからじゃないかしらね」
そうですね。
場所の絶対数が少なければ、ここに来る人の数も少ないのは当たり前ですね。
「力がない者が力のある者に立ちはだかる勇敢さ。……無謀とか考えなしってこともあるけど、それでもイゾウの行動はうれしかった。けど、ただ弱い者の味方をしたからというだけじゃないの」
自分のことを守ってくれると、そりゃうれしいだろうし有りがたいと思うだろうけど……。
あれ?
コウジに何かしてもらったっけかな……。
うどんは作ってもらったけど……。
……私もイゾウさんに会ってみたかったなー……。
「みんな苦しい思いをしながら、ようやくたどり着いた場所だから、みんなが安心できる場所にしなきゃいけない。なのに誰かを泣かせるようなことをするとは何事だ! ってね」
その時のお母様もその中に入るんだろうけど、お母様を特別扱いしてたわけじゃなさそうね。
「この時はそのままその言葉を聞いてただけなんだけど、何度かイゾウとお話ししているうちに、普通の人だってことが分かってね」
コウジも普通の人っぽいけど……。
比べる対象がコウジだけってのも、私もそれなりに経験は乏しいわよね。
コウジに、箱入りお嬢って連発されるのも仕方がないかな。
「普通の人が、いろんな人達のことを考えてそんなことを言えると思う? 周りの人達がどんなに力を持とうとも、これだけは絶対に譲らないっていう強さを感じたのよね」
……と言われても……。
王宮、宮殿の関係以外の人と接する機会はあまりなかったから、よく分かんないな……。
「そのうち自分の立場というものを知るようになって、弁えるようになって、ここに来ることができなくなった」
「今の私と同じ、王女ってことよね?」
「そう、そして女王。いつもイゾウのことは心の片隅にあった。いえ、イゾウの強さ、よね。でもそのうち、いろんな人からあの部屋の噂が耳に入るようになったの」
この部屋と繋がる場所が増えてきたんだ。
廃墟になった建物とかに魔物が棲みついたり、未知のダンジョンが発見されて……。
だから噂がたくさん出てきたのね。
……私はあまり聞いたことなかったけどね。
「そしたら、救世主と呼ばれるようになって、兵達に調査するように命じたんだけど……」
あー……。
その話は聞いてた。
魔王がどうのって。
コウジのことだったんだろうけど……。
「イゾウがそうまで呼ばれるようになったんだって思って、うれしかった。けどそう呼ばれてたのはイゾウじゃなくてその曾孫だったのね」
またいつか会えるつもりでいたんだ。
でも、もう会えなくなったってことよね……。
「……イゾウとコウジは違う。この部屋への思い入れも違うだろうし、志の高い低いの差もあると思う。けれど、ここでの争いごとは好まないという思いは同じ。まぁこの世界で起きる不都合だけを心配してるみたいだけどね、コウジは」
よくご存じで。
自分の都合しか考えてないんじゃないの? コウジは。
「……でも、あなたがここで生活する前までいた、コルトっていう少女のために部屋や生活空間を作ってあげた。弱い者への労わりの気持ちが見え隠れしてるのがね。イゾウが彼の中にいるって感じがする」
「私が今使ってる部屋のことね。トイレもお風呂も狭くて窮屈。あと食事も貧相」
「ふふ。あの頃に比べたら十分恵まれてるわよ。……それでね、シェイラ」
私を見るお母様の目に真剣な光が強まってきた。
お母様と私とでは、ここに来たきっかけが違う。
だから、そう言いながら笑う意味が分からない。
「コウジも見て分かるけど、魔法とか使えないし魔力もないでしょ?」
「そりゃ……もちろん」
「イゾウもそうだった。この世界の者達にとっては未知なるものなんでしょうね。それでもそんなことを恐れず、ここに来る人達みんなにおにぎりとかを作ってくれてた」
世代交代してもそれを続けてるってのは、伝統みたいに聞こえなくはないんだけど……。
あれ?
でもお母様のその時は、今の私よりも子供の頃だったのよね?
「でも、ひょっとしたらお母様も、何か危ない目に遭ったりしたんじゃないの?」
「一回攫われそうになったわね。そいつらは私が何者か、分かってたと思う」
私より危険な目に遭ってたんじゃない!
終わってしまったことなんだろうけど、よくもまあそんな顔して懐かしがっていられるものだ。
我が母親ながら……豪胆よね……。
「そしたらそいつらと私の間にイゾウが割って入って来たの。まだ鮮明に覚えてる。……魔力がないのはみんな知ってた。それどころか、体力だって、私よりもなかったのよ? それでも……あの勇ましさには見惚れてしまった……」
「……ひょっとしてお母様……」
ここに何度も来た理由って……。
「まぁ、憧れてってこともあったわね。子供だったしね」
お母様って、そんな子供のころから行動力あったのね……。
でも今よりも部屋に訪れる者達の人数が少ないのに、そんなことを考える人がいるなんてある意味物騒と言えば物騒よね。
「使われなくなった、内部構造が複雑な建物や、掘削して深くなっていった洞穴、元々そんな場所があったけど、人目に触れるようになった場所とか、そんなのが増えたからじゃないかしらね」
そうですね。
場所の絶対数が少なければ、ここに来る人の数も少ないのは当たり前ですね。
「力がない者が力のある者に立ちはだかる勇敢さ。……無謀とか考えなしってこともあるけど、それでもイゾウの行動はうれしかった。けど、ただ弱い者の味方をしたからというだけじゃないの」
自分のことを守ってくれると、そりゃうれしいだろうし有りがたいと思うだろうけど……。
あれ?
コウジに何かしてもらったっけかな……。
うどんは作ってもらったけど……。
……私もイゾウさんに会ってみたかったなー……。
「みんな苦しい思いをしながら、ようやくたどり着いた場所だから、みんなが安心できる場所にしなきゃいけない。なのに誰かを泣かせるようなことをするとは何事だ! ってね」
その時のお母様もその中に入るんだろうけど、お母様を特別扱いしてたわけじゃなさそうね。
「この時はそのままその言葉を聞いてただけなんだけど、何度かイゾウとお話ししているうちに、普通の人だってことが分かってね」
コウジも普通の人っぽいけど……。
比べる対象がコウジだけってのも、私もそれなりに経験は乏しいわよね。
コウジに、箱入りお嬢って連発されるのも仕方がないかな。
「普通の人が、いろんな人達のことを考えてそんなことを言えると思う? 周りの人達がどんなに力を持とうとも、これだけは絶対に譲らないっていう強さを感じたのよね」
……と言われても……。
王宮、宮殿の関係以外の人と接する機会はあまりなかったから、よく分かんないな……。
「そのうち自分の立場というものを知るようになって、弁えるようになって、ここに来ることができなくなった」
「今の私と同じ、王女ってことよね?」
「そう、そして女王。いつもイゾウのことは心の片隅にあった。いえ、イゾウの強さ、よね。でもそのうち、いろんな人からあの部屋の噂が耳に入るようになったの」
この部屋と繋がる場所が増えてきたんだ。
廃墟になった建物とかに魔物が棲みついたり、未知のダンジョンが発見されて……。
だから噂がたくさん出てきたのね。
……私はあまり聞いたことなかったけどね。
「そしたら、救世主と呼ばれるようになって、兵達に調査するように命じたんだけど……」
あー……。
その話は聞いてた。
魔王がどうのって。
コウジのことだったんだろうけど……。
「イゾウがそうまで呼ばれるようになったんだって思って、うれしかった。けどそう呼ばれてたのはイゾウじゃなくてその曾孫だったのね」
またいつか会えるつもりでいたんだ。
でも、もう会えなくなったってことよね……。
「……イゾウとコウジは違う。この部屋への思い入れも違うだろうし、志の高い低いの差もあると思う。けれど、ここでの争いごとは好まないという思いは同じ。まぁこの世界で起きる不都合だけを心配してるみたいだけどね、コウジは」
よくご存じで。
自分の都合しか考えてないんじゃないの? コウジは。
「……でも、あなたがここで生活する前までいた、コルトっていう少女のために部屋や生活空間を作ってあげた。弱い者への労わりの気持ちが見え隠れしてるのがね。イゾウが彼の中にいるって感じがする」
「私が今使ってる部屋のことね。トイレもお風呂も狭くて窮屈。あと食事も貧相」
「ふふ。あの頃に比べたら十分恵まれてるわよ。……それでね、シェイラ」
私を見るお母様の目に真剣な光が強まってきた。
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