俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

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シルフ族の療法司ショーア

ショーアも神に昇格しました

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「それって……鉄製か?」
「なんかいろんな材料で作られてるんじゃない?」
「ゴム……っぽいのもあるな」
「ゴム? 何だそりゃ?」

 電撃騒動の後片付けをしてる間に、異世界人共が興味津々で炊飯器だった物を見る。
 ここでは娯楽も何もない。
 ただ体を休めるだけ。
 しかもここにいる連中は、全員同じ世界からやってきたわけじゃない。
 というか、ここに来る前にいた世界で神経衰弱したら、約四十人中せいぜい二組くらいしかペアができないんじゃないだろうか?

 ということは、だ。
 盛り上がる話題と言えば、ここでの出来事くらいだ。
 そこでいきなりの爆発音と煙が出現した。
 こいつらが集まってくるのは、まぁ仕方のないことだよな。
 まさか新聞見せるわけにもいかないし。

 で、事の顛末を説明したわけだ。
 盛り上がるのは、まぁ道理だよな。
 それで、異世界人同士の交流も始まるわけだ。

「掃除の邪魔だー。駄弁るのはここじゃなくてもいいだろうがっ」

 それもそうか、と冒険者達はあちこちに散らばる。

 掃除を終えてから新しい炊飯器を買ってくるまでの間、当然俺はプレハブには不在だったわけだが、ショーアは質問攻めにあったらしい。

 見た目の麗しさから、見てるだけでも癒される姿。
 ショーアがこの部屋に来てから、来る者去る者みんな、そんな評価をしていたらしい。
 ところがこの件でかなり評価が変わったようだった。

 見ているだけで癒し系。
 炊飯器には、否、死刑。

 誰が上手い事を言えと。

「握り飯だけに?」

 冒険者の中には、漫才師とかコメディアン向きの奴もいるっぽいな。
 下らねぇ冗談に付き合ってる暇はねぇんだよ。

 ちょっとだけ悔しいのは否定しないがな。

「破壊王ショーアさん」

 なんだその似合わない渾名は。

「コ、コウジさん……止めてもらえないでしょうか、それ……」
「人の口に戸は立てられないって言うしなぁ」
「そ……そんなぁ……」

 ま、ここでの仕事で汚名返上するしかないよな。

 ※※※※※ ※※※※※

 あちこちの異世界で、ここでの噂が流れるケースは、やはりここであがる話題が第一条件になる。
 俺は嫌なんだが、救世主呼ばわりされるようになったことがその一つだな。

 握り飯を食って体力回復した。
 そして窮地を脱出した。
 そんな体験をした冒険者が多かったってことなんだろう。
 ここから立ち去る者達のその後の消息は、何度もここに来ることがない限り俺はそれを知ることができない。
 が、その噂を流した連中は間違いなくそんな彼らだろう。
 彼らの消息は、その噂が存在することで推して知るべし、だ。

 ただ、その噂がこっちに来る頃には、握り飯よりも中の具だったり量についてだったりして、その話題が移ってたりする。
 つまり、忘れた頃にその話題が外から噂になって帰ってくる、といった感じだ。
 コルトのキュウセイシュも然り、シェイラの女神も然り。

 そしてシェイラの術の効果発生からあいつがいなくなるまでの間は短めだったこともあって、その女神と呼ばれる相手がシェイラじゃなくてショーアと誤解された。
 いずれ、ここで話題が上がり、熱を帯びた事柄だ。

 で、だ。
 ここに避難してくる者達の顔には、今までは安堵の表情がやや見えた。
 ところがここ数日、何か怯えるような顔を俺とショーアに向けられることが多くなった。

 だからと言ってこっちは別に何の差別もしてないし、やることも変わらない。
 ショーアの作る握り飯は、俺が作る物とはやはり何かが違うんだろうな。
 効果はあいつの作った方がやや劣っているみたいだ。
 それでも体力回復の効果には何の問題もない。

「破壊神?」

 恐々と俺に声をかけた、ここに初めて来た冒険者の言葉をオウム返しに口にした。

 救世主。時々大げさになって神なんて呼ばれたこともあった。魔王なんて呼ばれたこともあったよな。
 で新しい渾名が……破壊神?

「俺が、か?」
「い、いえ……。救世主と破壊神が共存する部屋がある、と」

 それって……ショーアのことだよな。
 確かこいつ、自分の世界では聖女って呼ばれてたよな?
 仕事は療法師とか言ってた。

 その欠片すら見えねぇ渾名がついちゃったよ、こいつ。
 しかも神に昇格しちゃってるしっ!

「わ、笑わないでくださいっ」

 いいじゃねぇか。
 家中の電気系統オシャカになったかもしれないことを考えれば、笑ってごまかせるトラブルだったってこった。
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