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三波新、放浪編
リクエストに応えてみよう と思ったんですが その6
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「うおっ! 迫力あるなー」
ゲンオウが夢中になって、洞窟の中の天馬を見つめている。
それにしても……。
全身を覆うほどでかい翼には驚いた。
っていうか、怪我していた足で何度も足踏みをしている。
「……ここでの焚火も終わるかな?」
「え? アラタ、この子連れて行かないの?」
「何でだよ。恩着せがましくされるのは嫌だし、逆にするのも嫌だ。こいつの人生はこいつのもんでおれのもんじゃねぇし余計なもんを背負いたくもねぇ。助かる命が助かったのを見届けて、それで満足だしな」
目もくれなかった。煙もあったし暗い所に押しやったしな。こいつのことは見えなかっただろうな。
「でもさ、アラタ」
「何だよ、ヨウミ」
「もう少し暖まりたい」
「……まぁ、お前は雨の中、お使い頑張ったしな」
魔法使いが呆れた顔を向ける。
「天馬なんてこんなに近くで目にすることないんだよ? ましてや飛び立つとこなんて見たことないよ。珍しい体験してることに気が付かないかなー」
「俺なんか、噛み殺されるか蹴り殺されそうな体験までしてる。飛ぶとこなんてそれほどじゃないだろ」
ジンクス上ではなく、物理的に殺されるかもしれない体験だった。
これ以上どこに貴重な体験があるのか教えてもらいたい。
天馬は洞窟から出る。
雨はまだやまない。
翼も水分を含んでしまうだろうが、今度は後ろ足二本で立ち上がり、雄大に翼をはためかせる。
「ちょっ! 焚火消えちゃう!」
雨水に加えて翼から送られる風で見る見るうちに小さくなる。
「諦めろ」
「ひどっ!」
「おいおい。飛び立つ珍しい場面だぞ。見といて損はねぇぞ」
子供かよ、こいつは。
ゲンオウが目を輝かせながら、天馬の体が浮くのを見届けている。
そんなもん目撃したって腹の足しにならんだろうに。
「翼は二枚か」
鳥もそうだろうし、蝙蝠もそうだ。
大概二枚だろ。
「ってことは子供ね。大人になると、その下に小さい翼がつくもの」
「昆虫かよ!」
「何だよ、アラタ。知らなかったのか?」
知らねぇよ!
けど、子供ならなおさら……。
うん、ちょっとは気分がいい。
けど、仲間から嫌われてるのか。
逞しく生きろよ?
「じゃ、俺達も出発するか」
「お前らの休憩所じゃねぇのに、まるで自分の場所にいたみたいな言い方するな」
「細かいこと気にするな。足が短くなるぞ?」
「どんな言い習わしだ、それ」
がはは、と大声で笑いながら立ち上がる。
やれやれだ。
だがまぁ、俺達もここに縛られずに済む。
後片付けをきちんとして、俺達もここから去るか。
※
雨のお陰で消火作業は楽だった。
ここから立ち去ろうという段になって雨が上がる。
「あ、虹だ。あぁあ、テンちゃんが飛ぶタイミングがもっと遅かったら、虹を渡るテンちゃんが見れたかもしれなかったのになー」
随分都合のいい話だ。
そもそもあいつが魔獣に襲われてなきゃ、こんな目に遭わずに済んだって事忘れてないか?
で、なぜかライムが興奮してるようにびょんびょこ飛び跳ねている。
こいつはこいつで、おそらく虹に対抗意識を持っているのか。
よせよせ。
自然現象は偉大なのだ。
張りあったって、向こうは痛くも痒くも思わんぞ?
※
毎度思うんだが、雨上がりの晴れは……。
水蒸気を食らって、モワっとして歩くのは辛い。
気温はいい感じで気持ちいいんだがな。
更に気分が悪いことに……。
「会いたくない連中が移動してない。どういうことだ?」
「会いたくない連中? あ、旗手達のこと?」
「あぁ。……あの黒い小さい影……人だかりか?」
見通しのいい一本道。
というか、あの洞窟から一時間以上歩いている。
その間、道の枝分かれはなかった。
「引き返すのも無理な話ね。途中で町とか村とかもなかったし」
「ここで休憩ってのも……」
あいつらがこっちに向かってきたら避けようがない。
「そもそも何で人だかりがあるの?」
言われてみればそうだ。
気配からは……小競り合いのような気配はあるが、争いごと、喧嘩、そういった類じゃない。
すると……いや、困惑めいた感情が多いが……。
「困りごとが起きてる。そこからのトラブル。何だろうな」
「困りごと? 困ったことでしかも一本道……一本道?」
「ん? 何か分かったのか?」
「ずっと川沿いの道よね、この道路」
「あぁ。それが?」
ヨウミはその陰の方に指をさす。
「なら、橋があってもいいんじゃない? ほら、ススキの生え方がちょっと少なくなってるし。増水で橋が流されてもおかしくないよ? あそこから大分離れてたから、ここじゃあそこよりも激しく雨が降ってたのかも」
なるほど。
今俺達は川上の方に向かって歩いている。
増水してきたということは、そっちの方ですでに水流が激しくなってたはずだ。
「橋があったら渡る予定だった連中。あいつらも川の向こうに用事があったってことか」
「泉現象が起きてるのかもね」
「泉? あぁ、それで増水したのか」
「……魔物の泉現象の話なんだけど?」
何だよ、その軽蔑してるような目は。
……いや、今のはボケを狙ったわけじゃねぇぞ?
「あ、でもその旗手の人達、洞窟の前にいた時には見なかったよね」
「ん? あぁ、そうだな」
「ってことは、こっちの方に来るんじゃないの? 他に橋はないかって」
鉢合わせ決定。
逃げようもない。
橋の建設なんて、簡易な物だって一時間や二時間でできるもんじゃないだろ。
「あ」
「どうしたの?」
「こっちに向かってきた」
草むらの中に隠れる手もない。
荷車を放置。
正義感に満ちた連中なら、持ち主が現れるまで、誰に言われるまでもなく見張りとかをしてくれるだろう。
……面倒くせええぇぇぇ!
ゲンオウが夢中になって、洞窟の中の天馬を見つめている。
それにしても……。
全身を覆うほどでかい翼には驚いた。
っていうか、怪我していた足で何度も足踏みをしている。
「……ここでの焚火も終わるかな?」
「え? アラタ、この子連れて行かないの?」
「何でだよ。恩着せがましくされるのは嫌だし、逆にするのも嫌だ。こいつの人生はこいつのもんでおれのもんじゃねぇし余計なもんを背負いたくもねぇ。助かる命が助かったのを見届けて、それで満足だしな」
目もくれなかった。煙もあったし暗い所に押しやったしな。こいつのことは見えなかっただろうな。
「でもさ、アラタ」
「何だよ、ヨウミ」
「もう少し暖まりたい」
「……まぁ、お前は雨の中、お使い頑張ったしな」
魔法使いが呆れた顔を向ける。
「天馬なんてこんなに近くで目にすることないんだよ? ましてや飛び立つとこなんて見たことないよ。珍しい体験してることに気が付かないかなー」
「俺なんか、噛み殺されるか蹴り殺されそうな体験までしてる。飛ぶとこなんてそれほどじゃないだろ」
ジンクス上ではなく、物理的に殺されるかもしれない体験だった。
これ以上どこに貴重な体験があるのか教えてもらいたい。
天馬は洞窟から出る。
雨はまだやまない。
翼も水分を含んでしまうだろうが、今度は後ろ足二本で立ち上がり、雄大に翼をはためかせる。
「ちょっ! 焚火消えちゃう!」
雨水に加えて翼から送られる風で見る見るうちに小さくなる。
「諦めろ」
「ひどっ!」
「おいおい。飛び立つ珍しい場面だぞ。見といて損はねぇぞ」
子供かよ、こいつは。
ゲンオウが目を輝かせながら、天馬の体が浮くのを見届けている。
そんなもん目撃したって腹の足しにならんだろうに。
「翼は二枚か」
鳥もそうだろうし、蝙蝠もそうだ。
大概二枚だろ。
「ってことは子供ね。大人になると、その下に小さい翼がつくもの」
「昆虫かよ!」
「何だよ、アラタ。知らなかったのか?」
知らねぇよ!
けど、子供ならなおさら……。
うん、ちょっとは気分がいい。
けど、仲間から嫌われてるのか。
逞しく生きろよ?
「じゃ、俺達も出発するか」
「お前らの休憩所じゃねぇのに、まるで自分の場所にいたみたいな言い方するな」
「細かいこと気にするな。足が短くなるぞ?」
「どんな言い習わしだ、それ」
がはは、と大声で笑いながら立ち上がる。
やれやれだ。
だがまぁ、俺達もここに縛られずに済む。
後片付けをきちんとして、俺達もここから去るか。
※
雨のお陰で消火作業は楽だった。
ここから立ち去ろうという段になって雨が上がる。
「あ、虹だ。あぁあ、テンちゃんが飛ぶタイミングがもっと遅かったら、虹を渡るテンちゃんが見れたかもしれなかったのになー」
随分都合のいい話だ。
そもそもあいつが魔獣に襲われてなきゃ、こんな目に遭わずに済んだって事忘れてないか?
で、なぜかライムが興奮してるようにびょんびょこ飛び跳ねている。
こいつはこいつで、おそらく虹に対抗意識を持っているのか。
よせよせ。
自然現象は偉大なのだ。
張りあったって、向こうは痛くも痒くも思わんぞ?
※
毎度思うんだが、雨上がりの晴れは……。
水蒸気を食らって、モワっとして歩くのは辛い。
気温はいい感じで気持ちいいんだがな。
更に気分が悪いことに……。
「会いたくない連中が移動してない。どういうことだ?」
「会いたくない連中? あ、旗手達のこと?」
「あぁ。……あの黒い小さい影……人だかりか?」
見通しのいい一本道。
というか、あの洞窟から一時間以上歩いている。
その間、道の枝分かれはなかった。
「引き返すのも無理な話ね。途中で町とか村とかもなかったし」
「ここで休憩ってのも……」
あいつらがこっちに向かってきたら避けようがない。
「そもそも何で人だかりがあるの?」
言われてみればそうだ。
気配からは……小競り合いのような気配はあるが、争いごと、喧嘩、そういった類じゃない。
すると……いや、困惑めいた感情が多いが……。
「困りごとが起きてる。そこからのトラブル。何だろうな」
「困りごと? 困ったことでしかも一本道……一本道?」
「ん? 何か分かったのか?」
「ずっと川沿いの道よね、この道路」
「あぁ。それが?」
ヨウミはその陰の方に指をさす。
「なら、橋があってもいいんじゃない? ほら、ススキの生え方がちょっと少なくなってるし。増水で橋が流されてもおかしくないよ? あそこから大分離れてたから、ここじゃあそこよりも激しく雨が降ってたのかも」
なるほど。
今俺達は川上の方に向かって歩いている。
増水してきたということは、そっちの方ですでに水流が激しくなってたはずだ。
「橋があったら渡る予定だった連中。あいつらも川の向こうに用事があったってことか」
「泉現象が起きてるのかもね」
「泉? あぁ、それで増水したのか」
「……魔物の泉現象の話なんだけど?」
何だよ、その軽蔑してるような目は。
……いや、今のはボケを狙ったわけじゃねぇぞ?
「あ、でもその旗手の人達、洞窟の前にいた時には見なかったよね」
「ん? あぁ、そうだな」
「ってことは、こっちの方に来るんじゃないの? 他に橋はないかって」
鉢合わせ決定。
逃げようもない。
橋の建設なんて、簡易な物だって一時間や二時間でできるもんじゃないだろ。
「あ」
「どうしたの?」
「こっちに向かってきた」
草むらの中に隠れる手もない。
荷車を放置。
正義感に満ちた連中なら、持ち主が現れるまで、誰に言われるまでもなく見張りとかをしてくれるだろう。
……面倒くせええぇぇぇ!
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