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三波新、放浪編
こだわりがない毎日のその先は、この世界に腰を据えられる場所
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「ねぇ、アラタ」
「ん?」
「ここの村長さんとかに挨拶しなきゃまずくない?」
まったく考えてなかった。
というか、村というより……村の一部の集落って感じがするんだが。
そうだ。
村と呼ぶには何かが変だと思ったら、それもあったんだな。
「そんなの、いらねえと思うよお。平気だよお」
四人の冒険者とともに洞窟の家を完成させたモーナーが助言をしてくれたんだが。
いや、ともに、じゃない。
リーダーシップをとり、普通の人間ならば一週間くらいかかりそうな力仕事の九割以上を日中にすべてこなしてた。
体に見合った通りのタフネスさだ。
ただ岩壁を掘っていくだけじゃない。
増えていく瓦礫を細かく砕いたり、統一した大きさや形に整えていくつも作りだしたり、力仕事ばかりじゃなく小手先の作業もなかなかの精密ぶりだ。
しかもほとんど休憩も取らずに作業を終えた後も平然としている。
一方の四人は疲労困憊。
同年代の一般人よりも能力は高そうだが、子供と言えば子供だから仕方がないのか。
それよりもだ。
いくらしがらみは好きじゃないと言っても、最低限隣近所への挨拶くらいは必要だと思うのだが……。
近所っつーか、一番近い民家まで……歩いて十分はかかるよな。
「気にすんなぁ。ドーセン以外俺を構ってくれる奴あいねえもん」
「ドーセン?」
「宿屋の親父だあ」
名前聞いてなかったな。
そんな名前だったのか。
っていうか、構ってくれる奴が他にいないって……。
「お前も友達とか家族から追い出されたクチか?」
なんかこう、俺の周りにはそんな奴らが集まってくるな。
類は友を呼ぶでもないんだろうが。
「んー……よくわかんねえ」
分かんねえのかよ!
「でも俺、ここに来る冒険者達の相手するだけでも楽しいしなあ」
「はぁ……はぁ……。モーナーさん、とっても頼りになるんですよ」
「はぁ……、はぁ……、す、素早さはないんですけどね。でも、ここに出てくる魔物は、ほんと、敵にしないっていうか」
「魔物が落とすアイテムまで壊しちゃうくらいの力なんですけどね……ゼェ……ゼェ……」
「二日……くらい、前から……はぁ……はぁ……、私達だけ、でしたけど、結構……来るんですよね、私達と、同じ、くらいの……はぁ……はぁ……」
お前らはいい加減息整えろよ。
「ところでアラタ。店の名前はどうするんだ?」
「店?」
まぁ、まぁ店だな、うん。
つっても名前までは考えてなかったな。
「必要か?」
「人間の店については分からん。エルフの社会では名前はあったぞ? 大体店の主の名前をつけるがな」
面倒くせえなあ。
ヨウミからも言われたことがあったが、店の名前なぁ。
ミナミの店、アラタの店ってのはなんか照れくさい。
そもそも一攫千金を狙ってるわけじゃない。
老後の蓄えまでできりゃ問題ない程度。
予約の電話受けて取り寄せておく、なんていう在り方の店を目指すわけでもない。
そもそも冒険者達の体力回復をしてもらう程度の店だぞ?
そもそもそれ、店と呼んでいいものだろうか。
「ドーセンみたいに、いろんな料理出すのかあ?」
「無理だから。食堂やレストランやるつもりないから」
「ならおにぎりの店でいいんじゃねえかあ?」
「それ、いいですね」
「さんせーっ」
「俺もいいと思います!」
「頼りがいありそうです!」
いや、それは言い過ぎだろ。
でも他に候補を考えること自体面倒だし……。
「それにすっか」
「アラタらしいねぇ。じゃあ、おにぎりの店の始まりでーすっ」
ヨウミがすぐに賛同したのは、きっと俺がまたごねて、無駄な議論の時間を使うから、とか思ってるに違いない。
「わーい!」
「これからもお願いしますねっ!」
「更に安心が増えるねっ」
「楽しみです」
「がんばるぞお」
おい。
最後。
モーナー。
何で、何を頑張るというんだお前は。
「んー? 金取ると言っても、弱い冒険者を助けるためなんだろお? 俺も手伝うぞお」
子供のお使いじゃねぇんだ。
一応仕事だぞ?
「気持ちは有り難いけどよ、俺の仕事の何かを手伝ったら、それなりに報酬出さなきゃなんねぇだろうが。そこまで余裕ねぇぞ? ヨウミには一応出してる。マッキーはおにぎりで十分って言われた。だからなんとか成り立ってるが、お前が」
「俺も俺で、冒険者の手伝いってことで料金もらってるから平気だぞお。それに給料とかいらねえよお?」
「そー言うわけにいくかよ。だって」
「だってアラタ、良い奴だもんなあ」
……それ、お前に昨日の夜も言われたな。
何だよ、その良い奴ってのは。
どんな基準だよ。
「良い奴にはなあ、俺ができることなら、何でもやれるんだぞお。だから洞穴も掘れたんだぞお」
その件については、俺からも言いたいことがある。
あまりにも居心地がいいわ。
空気がよどまないような工夫もしてるみたいだしな。
空気穴まで掘って、外に通してるだろ。
頼んでもいないのにこんなに気を遣ってもらって、逆に申し訳ないぞ?な
相場は分からんが、俺の世界じゃ二十万くらい出しても構わないくらいのいい仕事ぶりだ。
「アラタぁ、おめぇ、鼻くそほじったことあるかあ?」
いきなり何言ってんだこいつ!
「お、お前なぁ……」
「この洞窟掘るのなんて、俺にとっちゃそんくらいなもんだあ」
随分時間がかかる鼻くそほじりだがな。
労力はほとんどかからないってことは理解できる例えだが。
「だからあ、これくらいお安い御用だあ。けど、誰にでもこんなことはしねえよお?」
そりゃ、それなりに時間はかかるからな。
でもそりゃどういうことだ?
簡単にできる事なら……。
いや、やってもらった者がモーナーをどう思うかってことが問題になるな。
俺の為に働いてくれるのは当然のことだ、と思うなら、それこそあいつらと同類じゃねえか。
「良い奴だからなあ、アラタは」
……その……聞いててあやふやな基準が納得できないんだが……。
まぁ……本人がそこまでいいって言うんなら……いいか?
「ん?」
「ここの村長さんとかに挨拶しなきゃまずくない?」
まったく考えてなかった。
というか、村というより……村の一部の集落って感じがするんだが。
そうだ。
村と呼ぶには何かが変だと思ったら、それもあったんだな。
「そんなの、いらねえと思うよお。平気だよお」
四人の冒険者とともに洞窟の家を完成させたモーナーが助言をしてくれたんだが。
いや、ともに、じゃない。
リーダーシップをとり、普通の人間ならば一週間くらいかかりそうな力仕事の九割以上を日中にすべてこなしてた。
体に見合った通りのタフネスさだ。
ただ岩壁を掘っていくだけじゃない。
増えていく瓦礫を細かく砕いたり、統一した大きさや形に整えていくつも作りだしたり、力仕事ばかりじゃなく小手先の作業もなかなかの精密ぶりだ。
しかもほとんど休憩も取らずに作業を終えた後も平然としている。
一方の四人は疲労困憊。
同年代の一般人よりも能力は高そうだが、子供と言えば子供だから仕方がないのか。
それよりもだ。
いくらしがらみは好きじゃないと言っても、最低限隣近所への挨拶くらいは必要だと思うのだが……。
近所っつーか、一番近い民家まで……歩いて十分はかかるよな。
「気にすんなぁ。ドーセン以外俺を構ってくれる奴あいねえもん」
「ドーセン?」
「宿屋の親父だあ」
名前聞いてなかったな。
そんな名前だったのか。
っていうか、構ってくれる奴が他にいないって……。
「お前も友達とか家族から追い出されたクチか?」
なんかこう、俺の周りにはそんな奴らが集まってくるな。
類は友を呼ぶでもないんだろうが。
「んー……よくわかんねえ」
分かんねえのかよ!
「でも俺、ここに来る冒険者達の相手するだけでも楽しいしなあ」
「はぁ……はぁ……。モーナーさん、とっても頼りになるんですよ」
「はぁ……、はぁ……、す、素早さはないんですけどね。でも、ここに出てくる魔物は、ほんと、敵にしないっていうか」
「魔物が落とすアイテムまで壊しちゃうくらいの力なんですけどね……ゼェ……ゼェ……」
「二日……くらい、前から……はぁ……はぁ……、私達だけ、でしたけど、結構……来るんですよね、私達と、同じ、くらいの……はぁ……はぁ……」
お前らはいい加減息整えろよ。
「ところでアラタ。店の名前はどうするんだ?」
「店?」
まぁ、まぁ店だな、うん。
つっても名前までは考えてなかったな。
「必要か?」
「人間の店については分からん。エルフの社会では名前はあったぞ? 大体店の主の名前をつけるがな」
面倒くせえなあ。
ヨウミからも言われたことがあったが、店の名前なぁ。
ミナミの店、アラタの店ってのはなんか照れくさい。
そもそも一攫千金を狙ってるわけじゃない。
老後の蓄えまでできりゃ問題ない程度。
予約の電話受けて取り寄せておく、なんていう在り方の店を目指すわけでもない。
そもそも冒険者達の体力回復をしてもらう程度の店だぞ?
そもそもそれ、店と呼んでいいものだろうか。
「ドーセンみたいに、いろんな料理出すのかあ?」
「無理だから。食堂やレストランやるつもりないから」
「ならおにぎりの店でいいんじゃねえかあ?」
「それ、いいですね」
「さんせーっ」
「俺もいいと思います!」
「頼りがいありそうです!」
いや、それは言い過ぎだろ。
でも他に候補を考えること自体面倒だし……。
「それにすっか」
「アラタらしいねぇ。じゃあ、おにぎりの店の始まりでーすっ」
ヨウミがすぐに賛同したのは、きっと俺がまたごねて、無駄な議論の時間を使うから、とか思ってるに違いない。
「わーい!」
「これからもお願いしますねっ!」
「更に安心が増えるねっ」
「楽しみです」
「がんばるぞお」
おい。
最後。
モーナー。
何で、何を頑張るというんだお前は。
「んー? 金取ると言っても、弱い冒険者を助けるためなんだろお? 俺も手伝うぞお」
子供のお使いじゃねぇんだ。
一応仕事だぞ?
「気持ちは有り難いけどよ、俺の仕事の何かを手伝ったら、それなりに報酬出さなきゃなんねぇだろうが。そこまで余裕ねぇぞ? ヨウミには一応出してる。マッキーはおにぎりで十分って言われた。だからなんとか成り立ってるが、お前が」
「俺も俺で、冒険者の手伝いってことで料金もらってるから平気だぞお。それに給料とかいらねえよお?」
「そー言うわけにいくかよ。だって」
「だってアラタ、良い奴だもんなあ」
……それ、お前に昨日の夜も言われたな。
何だよ、その良い奴ってのは。
どんな基準だよ。
「良い奴にはなあ、俺ができることなら、何でもやれるんだぞお。だから洞穴も掘れたんだぞお」
その件については、俺からも言いたいことがある。
あまりにも居心地がいいわ。
空気がよどまないような工夫もしてるみたいだしな。
空気穴まで掘って、外に通してるだろ。
頼んでもいないのにこんなに気を遣ってもらって、逆に申し訳ないぞ?な
相場は分からんが、俺の世界じゃ二十万くらい出しても構わないくらいのいい仕事ぶりだ。
「アラタぁ、おめぇ、鼻くそほじったことあるかあ?」
いきなり何言ってんだこいつ!
「お、お前なぁ……」
「この洞窟掘るのなんて、俺にとっちゃそんくらいなもんだあ」
随分時間がかかる鼻くそほじりだがな。
労力はほとんどかからないってことは理解できる例えだが。
「だからあ、これくらいお安い御用だあ。けど、誰にでもこんなことはしねえよお?」
そりゃ、それなりに時間はかかるからな。
でもそりゃどういうことだ?
簡単にできる事なら……。
いや、やってもらった者がモーナーをどう思うかってことが問題になるな。
俺の為に働いてくれるのは当然のことだ、と思うなら、それこそあいつらと同類じゃねえか。
「良い奴だからなあ、アラタは」
……その……聞いててあやふやな基準が納得できないんだが……。
まぁ……本人がそこまでいいって言うんなら……いいか?
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