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紅丸編
飛び交う噂 その4
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何かを指摘されたりすると、こっちは全く意識してなかったことだったのに急に意識するようになる、ということはよくあるようだ。
そんなのはまったく気にしない。つもりだった。
俺が注目されてるわけじゃないから気が楽と言えば楽だ。
該当者はまったく気にしてなかったのが意外だった。
だが、確かに注目はこれまでにないほど浴びてるような気がする。
まぁ……珍しい種族ってこともあるが……。
聞き耳を立てる趣味はない。
だが耳に入ってくる会話もある。
つか、人の耳に入るようなでかい声で、聞いてて恥ずかしい会話すんじゃねぇよ!
「マッキーさんって言うの? ちょッと憧れちゃうなー」
「色黒だけど綺麗な肌してそう。彼氏とかいるのかな」
「店のマスターなんじゃない?」
「ヨウミさんって人とくっついてんじゃないの?」
「クリマーさんも、意外とルックスいいよな」
初級の男どもが何のお喋りしてんだよ。
綺麗なら見惚れてしまう本能までは否定せんよ。
けどその前に、やらなきゃならんこともあるだろうが!
などと考えながらおにぎりを握る。
案の定女達の声でツッコみが聞こえてくる。
「バカな事話してんじゃないわよ!」
「回復用のおにぎり、買えたの?」
「ここで持ち物の確認怠って、ダンジョンの中で取り返しがつかないミスしでかしたら、その綺麗な人の姿、二度と見られないよ!」
ごもっとも。
「バカなこと言ってないで、全員持ち物を確認するっ」
あの四人も、他人への指導が的確になってる。
頼もしいんじゃないの?
あの二人もこの四人を見て、親心みたいなのを持ち始めてんじゃないだろうかねぇ。
※※※※※ ※※※※※
なんか日に日に、ダンジョンにやってくる冒険者達が増えてきた。
フィールドに行く冒険者達はいない。
ここまでくると、もう何を目的としてるかが分かるな。
ダンジョン内に転がってるアイテムの鉱物とかだろ。
中にはレアな物もあるらしいから、一攫千金を狙う冒険者達も現れ始めたってとこだ。
あのダンジョンは、別に初級者向けって決められてるわけじゃない。
ただな。
魔物退治だのアイテム拾得だの、それは別に構いやしないんだよ。
それが目的で来てるんならな。
だがなぁ……。
「く、クリマーさん、握手してくださいっ」
「マッキーさん、僕らのこと、覚えてますか?」
「ヨウミさん、お元気そうで何よりです」
「天馬、かわいーっ。テンちゃんって言うの? よろしくねっ」
「ライムー。ライム可愛いよー」
とうとうヨウミに会いに来る奴まで現れた。
さらに。
「何か、ファンクラブみたいなの、できたっぽいよ?」
「ありがた迷惑って言うか……何というか……」
「度が過ぎると流石に仕事に影響があると思うんですが……」
ダンジョンから生きて戻ってくるための、こじつけめいた理由の一つとするなら悪くはないだろうが……。
始末に負えないのが、そういう者を作ったらしい者や加入してるらしい者達全員が、初級じゃない冒険者達……らしいってことだ。
さらに、ガラが悪い奴らも来るようになった。
昔の記憶が呼び起こされる。
だがここでは、あの時のように気を遣わなければならない相手はいない。
「ねぇねぇお姉ちゃん、マッキーちゃんって言うの? ちょっと付き合わない? つってもこんな田舎じゃ遊べるところないし、近くのおっきい街に行かない? 仕事? そこにいる男に任せりゃいいじゃんん」
「ヨウミちゃんって言うんだ。美味しいお酒飲みにいかない? 少しくらい遊んでも怒られたりしないでしょ? こんな田舎での仕事だって、大した儲けじゃないだろうし。俺なら楽な生活させられるよ?」
遊び人っぽい奴もいるんだなぁ。
身に着けている物は冒険者とそんなに変わりないんだが、傷一つない装備品で身を包んでいる。
命が危ない場所に踏み込んだ経歴が全くなさそう。
どんなに軽っぽい言葉を使っても、言葉の端々に、何というか……重みを感じさせる奴っているもんでな。
ゲンオウ、メーナムだってそうだし、あの四人も話す言葉から初々しさはすっかり消えてる。
それに比べてヨウミ達に言い寄るこの男たちの、なんと軽々しいことか。
「仕事の邪魔です」
「客でないならお帰り下さい」
毅然として断る彼女達の後姿、見てて凛々しいもんだ。
あ、そんな風に言われたい趣味はない。
つか、今はその男どもにムカつきっぱなしだ。
もっとも私情に駆られての怒りだから、それを行動に出すとまた文句が出そうな気がする。
「えい」
「おわっ! 目が……なんだこれっ!」
「何しやがんだ、このオヤジ!」
オヤジって言われる年かなぁ。
ちょっと心外だな。
「すまんすまん。騒音が気に障ったんでそっち見た拍子に、食用油飛ばしちまった。悪気はないんだ気にすんな」
「て、テメェ……」
「おっと、なぜか俺の片手に、火がついたマッチ棒があるぞ? 俺には全くその気はないが、火を油に近づけると油も燃えるんだよなー」
「おい! オヤジっ! テメェ!」
「見たところ冒険者っぽいよね。回復とか治癒の魔法で治るんだよね?」
「もちろん! お兄さんたち、目にダメージが加わるまであたし達とお喋りしましょっか」
「どこかお茶飲めるところ一緒に探してあげるね。楽しみだねー」
「ヒ……」
「ヒイイィィィ!」
痛いのを我慢して目を開けりゃ、俺にやり返すこともできるだろうになぁ。
しかもとどめを刺したのはヨウミにマッキーときたもんだ。
「あ、逃げちゃいましたね」
まぁ口説こうとした相手からそんなこと言われたら、そりゃ逃げるか。
まともな反応じゃなかったからな。
「何かありました?」
「フタリトモ、ダイジョウブ?」
「あ、うん、平気」
「心配してくれてありがとね、クリマー、ライム」
「実は私も……」
「テンチャンニモ、ヨッテクルヒト、イタヨ。ライムにも」
……物好きもここまでくるともうな……。
変な奴がこんな風に来るようになったが、冒険者としての成長に真面目に取り組む奴の方が圧倒的に多い。
だが、俺の知らない所で、何やら盛り上がってるんだよな。
呆れてもう何も言えん。
そんなのはまったく気にしない。つもりだった。
俺が注目されてるわけじゃないから気が楽と言えば楽だ。
該当者はまったく気にしてなかったのが意外だった。
だが、確かに注目はこれまでにないほど浴びてるような気がする。
まぁ……珍しい種族ってこともあるが……。
聞き耳を立てる趣味はない。
だが耳に入ってくる会話もある。
つか、人の耳に入るようなでかい声で、聞いてて恥ずかしい会話すんじゃねぇよ!
「マッキーさんって言うの? ちょッと憧れちゃうなー」
「色黒だけど綺麗な肌してそう。彼氏とかいるのかな」
「店のマスターなんじゃない?」
「ヨウミさんって人とくっついてんじゃないの?」
「クリマーさんも、意外とルックスいいよな」
初級の男どもが何のお喋りしてんだよ。
綺麗なら見惚れてしまう本能までは否定せんよ。
けどその前に、やらなきゃならんこともあるだろうが!
などと考えながらおにぎりを握る。
案の定女達の声でツッコみが聞こえてくる。
「バカな事話してんじゃないわよ!」
「回復用のおにぎり、買えたの?」
「ここで持ち物の確認怠って、ダンジョンの中で取り返しがつかないミスしでかしたら、その綺麗な人の姿、二度と見られないよ!」
ごもっとも。
「バカなこと言ってないで、全員持ち物を確認するっ」
あの四人も、他人への指導が的確になってる。
頼もしいんじゃないの?
あの二人もこの四人を見て、親心みたいなのを持ち始めてんじゃないだろうかねぇ。
※※※※※ ※※※※※
なんか日に日に、ダンジョンにやってくる冒険者達が増えてきた。
フィールドに行く冒険者達はいない。
ここまでくると、もう何を目的としてるかが分かるな。
ダンジョン内に転がってるアイテムの鉱物とかだろ。
中にはレアな物もあるらしいから、一攫千金を狙う冒険者達も現れ始めたってとこだ。
あのダンジョンは、別に初級者向けって決められてるわけじゃない。
ただな。
魔物退治だのアイテム拾得だの、それは別に構いやしないんだよ。
それが目的で来てるんならな。
だがなぁ……。
「く、クリマーさん、握手してくださいっ」
「マッキーさん、僕らのこと、覚えてますか?」
「ヨウミさん、お元気そうで何よりです」
「天馬、かわいーっ。テンちゃんって言うの? よろしくねっ」
「ライムー。ライム可愛いよー」
とうとうヨウミに会いに来る奴まで現れた。
さらに。
「何か、ファンクラブみたいなの、できたっぽいよ?」
「ありがた迷惑って言うか……何というか……」
「度が過ぎると流石に仕事に影響があると思うんですが……」
ダンジョンから生きて戻ってくるための、こじつけめいた理由の一つとするなら悪くはないだろうが……。
始末に負えないのが、そういう者を作ったらしい者や加入してるらしい者達全員が、初級じゃない冒険者達……らしいってことだ。
さらに、ガラが悪い奴らも来るようになった。
昔の記憶が呼び起こされる。
だがここでは、あの時のように気を遣わなければならない相手はいない。
「ねぇねぇお姉ちゃん、マッキーちゃんって言うの? ちょっと付き合わない? つってもこんな田舎じゃ遊べるところないし、近くのおっきい街に行かない? 仕事? そこにいる男に任せりゃいいじゃんん」
「ヨウミちゃんって言うんだ。美味しいお酒飲みにいかない? 少しくらい遊んでも怒られたりしないでしょ? こんな田舎での仕事だって、大した儲けじゃないだろうし。俺なら楽な生活させられるよ?」
遊び人っぽい奴もいるんだなぁ。
身に着けている物は冒険者とそんなに変わりないんだが、傷一つない装備品で身を包んでいる。
命が危ない場所に踏み込んだ経歴が全くなさそう。
どんなに軽っぽい言葉を使っても、言葉の端々に、何というか……重みを感じさせる奴っているもんでな。
ゲンオウ、メーナムだってそうだし、あの四人も話す言葉から初々しさはすっかり消えてる。
それに比べてヨウミ達に言い寄るこの男たちの、なんと軽々しいことか。
「仕事の邪魔です」
「客でないならお帰り下さい」
毅然として断る彼女達の後姿、見てて凛々しいもんだ。
あ、そんな風に言われたい趣味はない。
つか、今はその男どもにムカつきっぱなしだ。
もっとも私情に駆られての怒りだから、それを行動に出すとまた文句が出そうな気がする。
「えい」
「おわっ! 目が……なんだこれっ!」
「何しやがんだ、このオヤジ!」
オヤジって言われる年かなぁ。
ちょっと心外だな。
「すまんすまん。騒音が気に障ったんでそっち見た拍子に、食用油飛ばしちまった。悪気はないんだ気にすんな」
「て、テメェ……」
「おっと、なぜか俺の片手に、火がついたマッチ棒があるぞ? 俺には全くその気はないが、火を油に近づけると油も燃えるんだよなー」
「おい! オヤジっ! テメェ!」
「見たところ冒険者っぽいよね。回復とか治癒の魔法で治るんだよね?」
「もちろん! お兄さんたち、目にダメージが加わるまであたし達とお喋りしましょっか」
「どこかお茶飲めるところ一緒に探してあげるね。楽しみだねー」
「ヒ……」
「ヒイイィィィ!」
痛いのを我慢して目を開けりゃ、俺にやり返すこともできるだろうになぁ。
しかもとどめを刺したのはヨウミにマッキーときたもんだ。
「あ、逃げちゃいましたね」
まぁ口説こうとした相手からそんなこと言われたら、そりゃ逃げるか。
まともな反応じゃなかったからな。
「何かありました?」
「フタリトモ、ダイジョウブ?」
「あ、うん、平気」
「心配してくれてありがとね、クリマー、ライム」
「実は私も……」
「テンチャンニモ、ヨッテクルヒト、イタヨ。ライムにも」
……物好きもここまでくるともうな……。
変な奴がこんな風に来るようになったが、冒険者としての成長に真面目に取り組む奴の方が圧倒的に多い。
だが、俺の知らない所で、何やら盛り上がってるんだよな。
呆れてもう何も言えん。
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○○○
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