勇者を否定されて追放されたため使いどころを失った、勇者の証しの無駄遣い

網野ホウ

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紅丸編

トラブル連打 その11

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 森林の中を進み、魔物が出現すると思われる場所に着いた。
 当然、ヨウミ達の姿は見えない。
 あいつらからも、おそらく俺達の姿は見えない。

「ここら辺が出現の中心地。だからその中心から外れた場所に陣取ってだな」
「ところでよぉ、さっきから泉だの現象だの言ってるけどよぉ、どんな魔物がそっから出てくるってんだ?」
「知らねぇ」
「は? 何?」
「知らねぇっつってんだよ」
「知らねぇのに何とかしようっつってんのか?! 馬鹿かお前!」

 妖精から馬鹿って言われた。
 そんな人間、俺ぐらいだろ。
 ネタにはなるな。

「ミンナ、クロ。ドラゴンモイル。ピクシーモイル。スライムモイル。デモ、ミンナ、マックロ。ダカラ、イズミノマモノカドウカハ、スグワカル」
「だそうだ」
「だそうだ、じゃねぇだろ! お前はっ!」

 俺に「お前と呼ぶな」っつっといて、こいつは俺のことをお前呼ばわりかよ。
 でも泉現象から出てくる魔物の話は初めて聞いた気がする。

「ま、見分けがつくならなおやりやすい。こっちにはそいつらに効く有効手段は限られてる。もっとも旗手の連中が来るまで生き延びるのが俺らの勝利条件ってとこだな」
「そいつらはいつ来るんだ?」
「知るか。あいつらに聞け」
「アテになんねぇな! この人間はよ!」

 一々突っかかるな。

「お前の、その魔力とやらも一応あてにしてるんだぜ? その効果が倍増とかするなら様つけにして呼んでもいいけどな、コーティ様」
「なっ……、ふ、フンっ。その程度でこっちがサービスするなんて、安っぽく見てんじゃねぇぞ」

 様づけにするだけでこの懐きよう。
 口調も態度もあまり変わらねぇけど、その感情は明らかにとげとげしさが消えてる。
 ちょろい奴だったのか。
 まぁいい。

「手順はこうだ。暴風の魔球、全部で二個だがそれをまず使う。出現ポイントを囲うように二層に。外側と内側、時計回りと反時計回りにしてな。外側は内側に引き込むように、内側は外側に追い出すように」
「カゼデヒキチギラレソウ」
「それも狙いだ。ただ、それを結界にして、魔物を内側に引きとどめるのを優先するって感じだ。一般人に被害を出したくない」
「そこまで気を遣うのか? 面倒くせぇ奴だな」

 お前に言われたくねぇよ。
 でも、一回様をつけるだけで随分大人しくなってんな。

「で、ライムはいつものように俺の体を包んで防御に専念。コーティ様は、開戦ダッシュはロケットスタートで。魔球並みの魔力を魔物の連中にぶちかましてくれ」
「ください」
「ん?」
「様をつけてんだぜ? 丁寧な話し方をするのが普通だろうが! 下僕!」

 調子こき始めやがりましたよ、こいつ!
 ま、これで期待通りの働きができなかったら……。

「……ください。タイミングは、魔物が三体くらい出てきたところで。なるべく打ち漏らさないように」
「……してください、は?」

 うぜぇ!
 ったくなんなんだこいつはっ!

「……してください。ただしそれができないなら、様も丁寧語もなし。いくら結界があると言っても、そこから出てきた連中無傷じゃないっつってもあいつらの手に余るかもしれねぇし。なるべく結界の中に止めること。何度も念押ししてもまだ物足りねぇぐれぇだ」

 全部で何体くらい出てくるか分からん。
 数多くの冒険者でも相当時間がかかった。
 今回はその協力はないものと見なす。

「ただし、火と電撃は禁止。火は、延焼で民家に燃えうつるかもしれないし、電撃は漏電があるかもしれないし。水系もまずいか?」
「面倒だな。火、電撃、水は禁止、か。だがどんな属性の魔法で攻撃すればいいか、迷うことはあんまりなさそうだから却っていいかもな」
「頼りにしてますから。お願いしますよ?」
「ふん、任せろ」

 一応ヨウミに連絡しておくか。

「……ヨウミか? あぁ。結界は暴風の魔球で作る。あぁ。分かってる。ミアーノとンーゴの機動力にも左右されることもあるから二人にも念押ししててくれ。じゃあ、始めるぞ」
 さて……時間も頃合いだ。
 おぞましい気配がもう目の前に迫っている。

「ライム、コーティ様、頼むぜ? ……暴風の魔球にも、頼りにしてるぜ? まずは……一手目だ!」

 開幕の始まりは、俺達の先手からだ!
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