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紅丸編
トラブル連打 後日談その1
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夜の睡眠以外で、時間の流れが飛んでる体験をすると、今がいつか、ここはどこか、自分は何をしていたかすら分からなくなる時がある。
俺の今の状況がまさにそれ。
荒された森林の中にうつ伏せでいたはずだ。
体中が痛いわ苦しいわ、でな。
気が付いたら洞窟の中。
居住空間の体を成してるそこは、うん、覚えてる。
おにぎりの店の俺の部屋。
そして俺の布団の中だ。
それは理解した。
だがなぜここにいるのか。
「アラタ、気が付いたか」
しかも、見慣れた者も中にはいる、大勢の冒険者達から見つめられている。
しかも、全員気分を悪くしたような表情だ。
おまけに、誰も心配そうな顔をしていない。
苦虫を潰してるような顔をしている奴もいれば
怒りを我慢してるような顔の奴もいる。
「あー……、あぁ。えーと……俺の部屋、だよな」
「そうだ」
「何でこんなに人が集まってんだ? つか、誰が中に入れたんだ?」
「お前なぁっ……!」
※※※※※ ※※※※※
えらい目に遭った。
体感時間で一時間くらい、説教めいたものを延々と聞かされた。
何で俺達を頼らないんだ、とか、お前がいなくなったらさみしい、とか。
そんなに大事なら、もう少し優しく看病してくれてもいいじゃねぇか!
体中が痛いから、耳をふさぐこともできない。
寝たふりもできない。
ある意味、泉現象を目の前にした時よりもピンチだった。
敵意のない敵が、一番厄介だ。
肝に銘じよう。
けど、俺の受難はそれで終わらなかった。
あいつらから解放された今、今度はコーティ以外の全員から睨まれている。
コーティはニヤニヤしてる。
何考えてやがる。
おまけにミアーノ、ンーゴまで部屋に押しかけてる。
もっともンーゴは部屋の外から首を突っ込んでるだけだが。
「えぇと、お腹が減ったかなー……と」
「うん。用意したげるよ? その前にね……」
「今の人達からいろいろ言われたでしょうけどね……」
まったく味方がいない、四面楚歌の絶望感を初めて味わってる。
社会人の頃だって、まだ会ったことがない社員がやって来て、押し付けられた仕事の手伝いをしてくれるんじゃないか、なんていう妄想を思い描いていたことが何度もあった。
妄想だって味方になるんだよ。
けど、そんな妄想すらまったく浮かんでこないこの現状。
お前らは元気そうだから万々歳じゃねぇかよっ!
何で俺だけこんな目にっ!
「我が身を犠牲にして仲間を助ける、ってのは美談かもしれないけどね……」
「そう思ってくれるのは、結果が分かる人達だけなんだよ?!」
「マシテヤ、アラタハニンゲン。ヒヨワ」
「私達のことは大事だってのは分かりますけど、私達もアラタさんのこと、大事に思ってるんですよ?! 分かってます?!」
「……だって、他に考えられなかったもん……」
「カワイイイイカタデ、ゴマカサナイデ」
「このちっこい妖精から頼まれなきゃ、どんな事態か分かんなかったぜぇ? アラタのあんちゃんよぉ」
「あ、おいっ! それ、絶対言うなっつってたろうが!」
ツンデレかよ。面倒くせぇな。
もう用事は果たしたんだぜ?
出てっていいよ、こいつは。
「アラタあ、自分の事言われてるのに、聞いてくれないよなあ?」
「ん?」
「みぃんな怒ってるからあ、おっかないのは分かるけどお、でもお、アラタがいなくなったらあ、悲しいしい、考えるだけでもお、怖いんだぞお。アラタにはあ、分からないかもしれないけどお」
俺には悲しいも怖いも分からないだぁ?
人を何だと思ってんだよ。
俺にだってそんな思いはしたことはある。
だからこそ、あの村の人達にだって同じ思いはしてほしくなかったから、今回みたいな計画、というか作戦というか……を思いついて実行したんだし、誰にだってあんな思いはしてほしくは……。
あ……。
……で、でもよ、こいつらは俺とか人間とかと違って……。
「……お前ら、さ。俺がいなくても生きていける、いろんな力があるじゃねぇか。テンちゃんは力もあるし空も飛べる。ライムは変身だの擬態だの。マッキーは森の中ならどこでもホームグラウンドだろ? モーナー、お前は」
「それえ、間違ってないけどお、生きていくのに必要なのはあ、それだけじゃないんだぞお?」
「あ?」
「俺はあ、アラタと一緒になるまではあ、肩身狭かったんだあ。でもお、一緒になってからはあ、毎日楽しいよお?」
「……そうね……。退屈しないってのもあるけど……まともに生活できるようにはなったかな。夜は、他の魔物から襲われる心配をながら警戒する時間。日中は、空くお腹を満たすための時間。ゆっくり休める時間はなかったな」
「私も何かしらに怯えながら、それでも弟がいたから、弟には頼られる存在じゃなきゃって、ずっと気を張ってました。笑っていられる時間はまったくありませんでした」
「タシカニ、メシガタリナイッテコトハ、ナクナッタ」
「だよなあ。アラタのあんちゃんにいなくなられちゃ、ちょいとつらくなるかなぁ。ま、サミーの面倒見るのも面白れぇし、ひ弱な冒険者どもが伸びる様子を見るのも面白れぇ。けんど、俺達とそんな奴らとの顔つなぎできるやつぁ、ほとんどいねぇよ。俺らが自分でやろうとしたってできねぇわな。なんせ大概まず逃げる。そうでねぇ奴は俺らを仕留めようとする。そのどっちかだかんなぁ」
「……アラタにしかできないこと、いっぱいでもないけどあるよ? しかも結構重要だし。それにその能力なんて、きっかけの一つだよ? 旗手の誰かさんみたいに図に乗ってるわけでもないし、鼻にかけてるわけでもないし、その能力で調子に乗ったことはないし、むしろ隠してるじゃない。差別もしないし……。アラタはみんなの事とか自分のことをどう思ってるか知らないけど、あたし達にとっては大切な一人なんだからね? なのに自分のことを自分で大切にしないんだもん。あたし達、どうしていいか分かんないわよ……。……どしたの? どこか痛むの?」
……少し黙りやがれっ!
お前らに見せられる顔、してねぇんだよ!
「やれやれ。この人間の女の言うことがホントならさぁ……。お前、ひねくれ者なのにお人好しってことなんじゃねぇの? あたしのこと犯罪者かもしれないとか疑ってはいたけどさぁ……そんなんで大丈夫かよ。身ぐるみはがされてべそかいて、こいつらに慰められる毎日しか想像できねぇぞ?」
「グスッ……。や、やかましいっ!」
このチビはぁ!
空気読めよ!
「まったくだ。分け隔てなく平等に接する態度は実に好ましいが、頼りなさそうなところが時々目に付く。だから気をかけずにはいられない、というものだよ? アラタ」
「お前は帰れっ。あいつらの指揮とんなきゃなんねぇんだろうがっ!」
何で馬鹿王子まで来てるんだ!
「邪険にしないの。あの後いろいろとお話し聞かせてくれたんだから。感謝の言葉一つくらいあってもいいでしょ?」
「スンッ……。……あの後? あの後……って」
「アラタさん、あれからまた三日ほど寝込んでたんですよ? 当然お店もお休み。私達も最初は誤魔化してたんだけど、誤魔化しきれずに……」
「ボウケンシャタチミンナ、アラタノオミマイニ、キテクレタ」
……何と言うか……。
いろんな意味で、言葉が出ない。
「ま、無茶する必要がない立場になれた、と思うんだね、アラタ。聞きたくないと思ってるだろうが、みんなに話をしたことを君にも聞いてもらおうか」
……説教だけはご免だけどな。
つか、……もう、いろいろとお腹いっぱいだよ……。
俺の今の状況がまさにそれ。
荒された森林の中にうつ伏せでいたはずだ。
体中が痛いわ苦しいわ、でな。
気が付いたら洞窟の中。
居住空間の体を成してるそこは、うん、覚えてる。
おにぎりの店の俺の部屋。
そして俺の布団の中だ。
それは理解した。
だがなぜここにいるのか。
「アラタ、気が付いたか」
しかも、見慣れた者も中にはいる、大勢の冒険者達から見つめられている。
しかも、全員気分を悪くしたような表情だ。
おまけに、誰も心配そうな顔をしていない。
苦虫を潰してるような顔をしている奴もいれば
怒りを我慢してるような顔の奴もいる。
「あー……、あぁ。えーと……俺の部屋、だよな」
「そうだ」
「何でこんなに人が集まってんだ? つか、誰が中に入れたんだ?」
「お前なぁっ……!」
※※※※※ ※※※※※
えらい目に遭った。
体感時間で一時間くらい、説教めいたものを延々と聞かされた。
何で俺達を頼らないんだ、とか、お前がいなくなったらさみしい、とか。
そんなに大事なら、もう少し優しく看病してくれてもいいじゃねぇか!
体中が痛いから、耳をふさぐこともできない。
寝たふりもできない。
ある意味、泉現象を目の前にした時よりもピンチだった。
敵意のない敵が、一番厄介だ。
肝に銘じよう。
けど、俺の受難はそれで終わらなかった。
あいつらから解放された今、今度はコーティ以外の全員から睨まれている。
コーティはニヤニヤしてる。
何考えてやがる。
おまけにミアーノ、ンーゴまで部屋に押しかけてる。
もっともンーゴは部屋の外から首を突っ込んでるだけだが。
「えぇと、お腹が減ったかなー……と」
「うん。用意したげるよ? その前にね……」
「今の人達からいろいろ言われたでしょうけどね……」
まったく味方がいない、四面楚歌の絶望感を初めて味わってる。
社会人の頃だって、まだ会ったことがない社員がやって来て、押し付けられた仕事の手伝いをしてくれるんじゃないか、なんていう妄想を思い描いていたことが何度もあった。
妄想だって味方になるんだよ。
けど、そんな妄想すらまったく浮かんでこないこの現状。
お前らは元気そうだから万々歳じゃねぇかよっ!
何で俺だけこんな目にっ!
「我が身を犠牲にして仲間を助ける、ってのは美談かもしれないけどね……」
「そう思ってくれるのは、結果が分かる人達だけなんだよ?!」
「マシテヤ、アラタハニンゲン。ヒヨワ」
「私達のことは大事だってのは分かりますけど、私達もアラタさんのこと、大事に思ってるんですよ?! 分かってます?!」
「……だって、他に考えられなかったもん……」
「カワイイイイカタデ、ゴマカサナイデ」
「このちっこい妖精から頼まれなきゃ、どんな事態か分かんなかったぜぇ? アラタのあんちゃんよぉ」
「あ、おいっ! それ、絶対言うなっつってたろうが!」
ツンデレかよ。面倒くせぇな。
もう用事は果たしたんだぜ?
出てっていいよ、こいつは。
「アラタあ、自分の事言われてるのに、聞いてくれないよなあ?」
「ん?」
「みぃんな怒ってるからあ、おっかないのは分かるけどお、でもお、アラタがいなくなったらあ、悲しいしい、考えるだけでもお、怖いんだぞお。アラタにはあ、分からないかもしれないけどお」
俺には悲しいも怖いも分からないだぁ?
人を何だと思ってんだよ。
俺にだってそんな思いはしたことはある。
だからこそ、あの村の人達にだって同じ思いはしてほしくなかったから、今回みたいな計画、というか作戦というか……を思いついて実行したんだし、誰にだってあんな思いはしてほしくは……。
あ……。
……で、でもよ、こいつらは俺とか人間とかと違って……。
「……お前ら、さ。俺がいなくても生きていける、いろんな力があるじゃねぇか。テンちゃんは力もあるし空も飛べる。ライムは変身だの擬態だの。マッキーは森の中ならどこでもホームグラウンドだろ? モーナー、お前は」
「それえ、間違ってないけどお、生きていくのに必要なのはあ、それだけじゃないんだぞお?」
「あ?」
「俺はあ、アラタと一緒になるまではあ、肩身狭かったんだあ。でもお、一緒になってからはあ、毎日楽しいよお?」
「……そうね……。退屈しないってのもあるけど……まともに生活できるようにはなったかな。夜は、他の魔物から襲われる心配をながら警戒する時間。日中は、空くお腹を満たすための時間。ゆっくり休める時間はなかったな」
「私も何かしらに怯えながら、それでも弟がいたから、弟には頼られる存在じゃなきゃって、ずっと気を張ってました。笑っていられる時間はまったくありませんでした」
「タシカニ、メシガタリナイッテコトハ、ナクナッタ」
「だよなあ。アラタのあんちゃんにいなくなられちゃ、ちょいとつらくなるかなぁ。ま、サミーの面倒見るのも面白れぇし、ひ弱な冒険者どもが伸びる様子を見るのも面白れぇ。けんど、俺達とそんな奴らとの顔つなぎできるやつぁ、ほとんどいねぇよ。俺らが自分でやろうとしたってできねぇわな。なんせ大概まず逃げる。そうでねぇ奴は俺らを仕留めようとする。そのどっちかだかんなぁ」
「……アラタにしかできないこと、いっぱいでもないけどあるよ? しかも結構重要だし。それにその能力なんて、きっかけの一つだよ? 旗手の誰かさんみたいに図に乗ってるわけでもないし、鼻にかけてるわけでもないし、その能力で調子に乗ったことはないし、むしろ隠してるじゃない。差別もしないし……。アラタはみんなの事とか自分のことをどう思ってるか知らないけど、あたし達にとっては大切な一人なんだからね? なのに自分のことを自分で大切にしないんだもん。あたし達、どうしていいか分かんないわよ……。……どしたの? どこか痛むの?」
……少し黙りやがれっ!
お前らに見せられる顔、してねぇんだよ!
「やれやれ。この人間の女の言うことがホントならさぁ……。お前、ひねくれ者なのにお人好しってことなんじゃねぇの? あたしのこと犯罪者かもしれないとか疑ってはいたけどさぁ……そんなんで大丈夫かよ。身ぐるみはがされてべそかいて、こいつらに慰められる毎日しか想像できねぇぞ?」
「グスッ……。や、やかましいっ!」
このチビはぁ!
空気読めよ!
「まったくだ。分け隔てなく平等に接する態度は実に好ましいが、頼りなさそうなところが時々目に付く。だから気をかけずにはいられない、というものだよ? アラタ」
「お前は帰れっ。あいつらの指揮とんなきゃなんねぇんだろうがっ!」
何で馬鹿王子まで来てるんだ!
「邪険にしないの。あの後いろいろとお話し聞かせてくれたんだから。感謝の言葉一つくらいあってもいいでしょ?」
「スンッ……。……あの後? あの後……って」
「アラタさん、あれからまた三日ほど寝込んでたんですよ? 当然お店もお休み。私達も最初は誤魔化してたんだけど、誤魔化しきれずに……」
「ボウケンシャタチミンナ、アラタノオミマイニ、キテクレタ」
……何と言うか……。
いろんな意味で、言葉が出ない。
「ま、無茶する必要がない立場になれた、と思うんだね、アラタ。聞きたくないと思ってるだろうが、みんなに話をしたことを君にも聞いてもらおうか」
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○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
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この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
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