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店の日常編
その人への思い込みを俺に押し付けるな その2
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朝一番から四組連続で冒険者が顔見知り、ってこたぁなかった。
が、驚きは止まらなかった。
「はい、次の客、ご注文はー?」
「あ、はい。えっと、あ、塩でいいです。あとお茶も」
「塩?」
ゲンオウとメーナムを見送りながら口から出た言葉はほぼ機械的なもんだ。
だから客の方を見ずに言うことが多い。
営業時間が始まってすぐは、明太子、筋子なんかの人気が高い具のおにぎりがすぐに売り切れになる。
なのに、売れ残る……っていうか、大量に作っている塩おにぎりを欲しがる客は珍しい。
「塩おにぎり……?」
顔を向けると、そこにいたのは女性三人組。
三人とも冒険者らしい防具を身に付けてはいるんだが、傷一つない、そして血曇りや泥土が全くついてない白銀の鎧に目を奪われちまった。
「あはっ。私の体に興味あるんですかぁ?」
「え?」
何言ってんだ?
ただ鎧を見てただけだろうが。
「……あー……とりあえず、塩おにぎり、でいいんだな?」
反応が予想外の客には、注文聞いて品出して会計済ませて追っ払うのみ。
なんだが……。
思いがけないと思うほどの端正な顔立ちの女性。
しかも、今の言葉は皮肉でも何でもなく、思ったまま口に出た言葉であることに間違いがない、と言わんばかりの笑顔。
他の二人もそんな感じだ。
だが明らかに違和感がある。
「えぇ。ですが、私達本当は、アラタさんにお会いしたかったんです」
「はい?」
声がひっくり返っちまった。
「『ザ・コレクター』とか『ダンジョンウォーカー』とかにここのこと載ってまして」
「是非ともお会いしたいと思ってたんですよー」
「思った通り、素敵な方ですね。ね、マーナ、リィン?」
えーと。
なんだそりゃ。
「アラタ。どっちも冒険者情報誌の雑誌名よ。ほかにもいろいろあるみたいなんだけど」
ヨウミはよく知ってるな。
俺、そんなの見たこともねぇぞ?
つか、初耳だし。
「……俺らの事、載ってるって?」
「えぇ。読者のコーナーに」
その女性客三人に聞いてみた。
まぁ読者の投稿コーナーなら、どんな雑誌にもあるんだろうが……。
けど、取材とか受けたことねぇんだが。
いや、それよりも今はそれどころじゃねぇ!
「とりあえず、順番待ちもいるからよ。とっとと会計してくんねぇか?」
「会計してくださるのはそちらではないかと……」
それもそうだ。
そっちは代金出す方だもんな。
「アラタさん、テンパってるの初めて見たような気が……」
クリマーも冷やかし止めてくれ。
※※※※※ ※※※※※
この女性冒険者三人組の会計も済ませて、その後に並ぶ列の客の相手をする。
名前は知らないが、何度も顔を見た客もかなりいる。
適当に会話をしながらすべての客を捌き終わった。
「ふぅ……。さて、米集めの仕事かな」
「あの、少しお話、いいですか?」
……あの三人組だ。
ベンチに座ってずっと待ってたっぽい。
好き好きだから気にしねぇけど、何なんだ?
「あの、改めまして。私、フォーム=インナームと言います」
「マーナ=フリーラスです」
「リィナ=セサールです」
「……それはご丁寧に。ミナミアラタです。で?」
そいえば、同じ日本でありながら、俺のいた方はほとんど黒髪に黒系統の黒目。
だがこっちの日本は、髪の毛目の色肌の色、みなまちまちって感じだ。
もちろん黒髪に黒目はいるけれど。
あぁ、スキンヘッドもいるな。
一人目は金髪。
二人目は銀髪。
三人目は漆黒。
装備の鎧が同じ白銀なだけに、その違いは目立つな。
それに、違和感の正体が分かった。
肌にも傷跡がどこにもない。
冒険者の真似事をしてるだけなのかもしれん。
高貴な御何とか、みたいな感じか。
まぁ誰がどんな格好しても、こっちは何の文句もないけどさ。
「で、何のご用で? 商売だけが仕事じゃないもんで、できれば手短に」
雑談をするほどの仲良しどころか、初対面だ。
行商時代なら旅の恥は掻き捨てっぽくぶっきらぼうな言葉を遠慮なくぶっ放してたが、今はそうはいかねぇよなぁ。
「あ、あの、アラタさんのファンクラブの会員になりまして」
はい?
「随分なモノ好きもいたものねぇ」
声色で誰の言葉かすぐ分かったが、こんなことを言う奴はコーティくらいだ。
毒舌は止めたと思ったんだが。
「アラタのファンの人が来たのって、初めてなんじゃない? しかも一度に三人もっ。おめでとーっ」
おめでたいのは、その事でおめでとうって言えるマッキーの頭くらいだろうよ。
バイトのテンちゃんとダンジョン掘削の仕事のモーナー以外のみんなから何だかんだと騒がれたが……。
こいつら、ホント何を浮かれてるんだか。
「はいはい。で、あんた達は……俺に会って何をしたいんだ? 昼の注文までは米研ぎしなきゃならんし、昼休みが終わりゃ午後の仕事もあるし」
「あ、はい。ゆっくりお話してみたいなって」
お話……。
して、何の意味があるのか?
「共通の話題がないと、話してもすぐ話題がなくなるだけよ? まぁ何度も店に足を運んで、お仕事も続けていけば、店の常連になれて話も盛り上がるんじゃないかな?」
確かにヨウミの言う通り、ゲンオウやシュルツをはじめとする名前を知った常連たちは、そんな感じで距離感が縮まった気がする。
ま、どんな立場の相手にせよ、初対面の相手といきなり話が盛り上がるってのは、相当事前調査とかしてたりするからだろ?
それに、違和感がすべて解消されたわけじゃないしな。
確かに見た目麗しい三人だが、親しくなりたい気持ちは全くないのはそこんとこが問題だ。
が、驚きは止まらなかった。
「はい、次の客、ご注文はー?」
「あ、はい。えっと、あ、塩でいいです。あとお茶も」
「塩?」
ゲンオウとメーナムを見送りながら口から出た言葉はほぼ機械的なもんだ。
だから客の方を見ずに言うことが多い。
営業時間が始まってすぐは、明太子、筋子なんかの人気が高い具のおにぎりがすぐに売り切れになる。
なのに、売れ残る……っていうか、大量に作っている塩おにぎりを欲しがる客は珍しい。
「塩おにぎり……?」
顔を向けると、そこにいたのは女性三人組。
三人とも冒険者らしい防具を身に付けてはいるんだが、傷一つない、そして血曇りや泥土が全くついてない白銀の鎧に目を奪われちまった。
「あはっ。私の体に興味あるんですかぁ?」
「え?」
何言ってんだ?
ただ鎧を見てただけだろうが。
「……あー……とりあえず、塩おにぎり、でいいんだな?」
反応が予想外の客には、注文聞いて品出して会計済ませて追っ払うのみ。
なんだが……。
思いがけないと思うほどの端正な顔立ちの女性。
しかも、今の言葉は皮肉でも何でもなく、思ったまま口に出た言葉であることに間違いがない、と言わんばかりの笑顔。
他の二人もそんな感じだ。
だが明らかに違和感がある。
「えぇ。ですが、私達本当は、アラタさんにお会いしたかったんです」
「はい?」
声がひっくり返っちまった。
「『ザ・コレクター』とか『ダンジョンウォーカー』とかにここのこと載ってまして」
「是非ともお会いしたいと思ってたんですよー」
「思った通り、素敵な方ですね。ね、マーナ、リィン?」
えーと。
なんだそりゃ。
「アラタ。どっちも冒険者情報誌の雑誌名よ。ほかにもいろいろあるみたいなんだけど」
ヨウミはよく知ってるな。
俺、そんなの見たこともねぇぞ?
つか、初耳だし。
「……俺らの事、載ってるって?」
「えぇ。読者のコーナーに」
その女性客三人に聞いてみた。
まぁ読者の投稿コーナーなら、どんな雑誌にもあるんだろうが……。
けど、取材とか受けたことねぇんだが。
いや、それよりも今はそれどころじゃねぇ!
「とりあえず、順番待ちもいるからよ。とっとと会計してくんねぇか?」
「会計してくださるのはそちらではないかと……」
それもそうだ。
そっちは代金出す方だもんな。
「アラタさん、テンパってるの初めて見たような気が……」
クリマーも冷やかし止めてくれ。
※※※※※ ※※※※※
この女性冒険者三人組の会計も済ませて、その後に並ぶ列の客の相手をする。
名前は知らないが、何度も顔を見た客もかなりいる。
適当に会話をしながらすべての客を捌き終わった。
「ふぅ……。さて、米集めの仕事かな」
「あの、少しお話、いいですか?」
……あの三人組だ。
ベンチに座ってずっと待ってたっぽい。
好き好きだから気にしねぇけど、何なんだ?
「あの、改めまして。私、フォーム=インナームと言います」
「マーナ=フリーラスです」
「リィナ=セサールです」
「……それはご丁寧に。ミナミアラタです。で?」
そいえば、同じ日本でありながら、俺のいた方はほとんど黒髪に黒系統の黒目。
だがこっちの日本は、髪の毛目の色肌の色、みなまちまちって感じだ。
もちろん黒髪に黒目はいるけれど。
あぁ、スキンヘッドもいるな。
一人目は金髪。
二人目は銀髪。
三人目は漆黒。
装備の鎧が同じ白銀なだけに、その違いは目立つな。
それに、違和感の正体が分かった。
肌にも傷跡がどこにもない。
冒険者の真似事をしてるだけなのかもしれん。
高貴な御何とか、みたいな感じか。
まぁ誰がどんな格好しても、こっちは何の文句もないけどさ。
「で、何のご用で? 商売だけが仕事じゃないもんで、できれば手短に」
雑談をするほどの仲良しどころか、初対面だ。
行商時代なら旅の恥は掻き捨てっぽくぶっきらぼうな言葉を遠慮なくぶっ放してたが、今はそうはいかねぇよなぁ。
「あ、あの、アラタさんのファンクラブの会員になりまして」
はい?
「随分なモノ好きもいたものねぇ」
声色で誰の言葉かすぐ分かったが、こんなことを言う奴はコーティくらいだ。
毒舌は止めたと思ったんだが。
「アラタのファンの人が来たのって、初めてなんじゃない? しかも一度に三人もっ。おめでとーっ」
おめでたいのは、その事でおめでとうって言えるマッキーの頭くらいだろうよ。
バイトのテンちゃんとダンジョン掘削の仕事のモーナー以外のみんなから何だかんだと騒がれたが……。
こいつら、ホント何を浮かれてるんだか。
「はいはい。で、あんた達は……俺に会って何をしたいんだ? 昼の注文までは米研ぎしなきゃならんし、昼休みが終わりゃ午後の仕事もあるし」
「あ、はい。ゆっくりお話してみたいなって」
お話……。
して、何の意味があるのか?
「共通の話題がないと、話してもすぐ話題がなくなるだけよ? まぁ何度も店に足を運んで、お仕事も続けていけば、店の常連になれて話も盛り上がるんじゃないかな?」
確かにヨウミの言う通り、ゲンオウやシュルツをはじめとする名前を知った常連たちは、そんな感じで距離感が縮まった気がする。
ま、どんな立場の相手にせよ、初対面の相手といきなり話が盛り上がるってのは、相当事前調査とかしてたりするからだろ?
それに、違和感がすべて解消されたわけじゃないしな。
確かに見た目麗しい三人だが、親しくなりたい気持ちは全くないのはそこんとこが問題だ。
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