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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その12
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魔物だって、偵察しに来た俺達の気配を感じ取ってるかもしれん。
そういうことを考えれば、これ以上奥に踏み込むのは危険。
そっちからこっちに来れるということは、こっちからもそっちに行くことができる。
そんな判断ができる知恵を持ってたらなおさらだし。
まぁこうして現地を見れたのは、俺も荷を下ろして楽になったって感じがする。
討伐対象や、それらとの具体的な距離感が掴めたことがでかい。
それに、はぐれた魔物がこっちに来れない理由も知ることができた。
理由が分かれば対策も立てられる。
あとは魔物討伐の舞台作りだが、これは専門家に任せるしかない。
状況を知らずに理想論だけ振り回しても、実践で役立つ指示を出せるかどうかも分からんし、逆に迷惑になりかねん。
「ふむ。あとは俺達が戦いやすいような地形づくりをンーゴ達と相談すればいいわけだな?」
「つくづく頼りになる仲間を得たわよね、私達」
「じゃあ、まずは引き返して、得た情報を全員で共有することにするか」
同意。
早いうちに戻らんと、ンーゴを見た村人が騒ぎ出すかもしれん。
村人の一部は俺たちの仲間全員と対面したが、その時の情報が村中に行き渡ってるとは思えんしな。
だが、やや遅かったようだ。
「待機組が誰かとご対面してるみてぇだな」
「え?」
「じゃあ……ンーゴ……どうする?」
「……イッテミナイト、ワカランナ」
まぁそりゃそうなんだが、その姿を見られたら……お終いって訳じゃないが……。
その村人達がいなくなるまでここで駄弁っててもしょうがねぇしな。
ハーブ群に戻り、待機組がいる場所に近づいていくにつれ、村人の気配も強くなっていく。
「……会ったことがある連中だな。五人くらいいるな」
「へぇ? 誰?」
「いや、そこまでは……」
「テコトハ、ナマエモシラナイアイテダネ?」
そういうことだ。
ま、とっとと退散するに限る。
もっとも体長五十メートルはあるンーゴはどんなに足が速かったとしても、目立つ特徴だし、一瞬だけだとしても目撃した者は絶対に忘れられないだろうな。
だが、そうは問屋が卸してくれかなった。
ハーブ群を抜けたその先で、待機組が村人っぽい連中と何やら言い争っている。
「おい、何……あ……」
その連中は、やはり見覚えはあった。
「あ、アラタぁっ。この人達何とかしてよお」
真っ先に、文字通り飛んできたのはコーティだった。
その連中はコーティの飛んでった先の俺を見て……。
「あ、テメェ! 何しに来やがった!」
「まさか俺達の店にちょっかい出しに来やがったかオイ!」
「ま、俺達も優しいからな。うちの商品、三倍の値段で買い占めてくれるんなら許してやる」
おにぎりの店を畳めと迫った連中だった。
まさか、とは思ったが。
こりゃまた面倒な相手に絡まれたもんだ。
「待て待て。俺達はお前達にちょっかいを出しに来たのではない。この先に魔物がいて」
「テメェには用はねぇんだよ! この男が黒幕だろ? いいからすっこんでろよ!」
「大体テメェは関係ねぇだろうが! 首突っ込んでくんな!」
冒険者相手に胸をごつくならず者達。
恐れを知らないとはこのことか。
「アラタ、この人達のこと知ってるの? あたし達を見つけてから、ずっとおにぎりを買えってうるさくて」
「テメェも余計な事くっちゃべってんじゃねぇよ! 俺らは男女平等主義なんだよっ! 妙な事口走ってっと、見てられねぇツラになるまでぶん殴るぞ!」
「仲間を連れてお礼参りか? 仲間がいなきゃ何も……お……?」
日が昇り始めたその光が突然消えて、そのならず者達は影に覆われた。
「アラタァ、コイツ、ナニモノダ?」
普段は地面を這って移動するンーゴが、地面に対して垂直になった。
鎌首をもたげるような恰好。もちろんその先はならず者達だ。
「な……なんだこいつっ!」
「に……逃げろおぉぉ!」
「ひぃぃぃ!」
逃げた先は、おそらく彼らが経営している店の中。
こいつらを追いつめたら、逃げ場所ねぇだろうにな。
けど今はそんなことに構ってられねぇ。
「全員、全速力で逃げるか」
冒険者達のリーダーの提案にンーゴが反応した。
「ンジャミンナ、オレノハラノナカニハイレ」
「え? 腹の中?」
「……まさか……食べるの?」
すっかり忘れてた。
腹にはある程度の大きさまでなら収納できる空間があるんだっけな。
「直接腹ん中に入るんだよ。わりと居心地いいんだな」
「え?」
「アラタ、ちょっと何言ってるか分かんないんだけど」
言葉通り受け取ってもらって構わないんだがなぁ。
※※※※※ ※※※※※
「何と言うか……生暖かかったというか」
「ぬめぬめがちょっと……」
「こんな大勢の人数が体内に入れるとは……」
何とか無事に帰りついた。
が、ンーゴの体内の環境は、冒険者には不評のようで。
全員が遅れることなく集団で移動するには、便利ではあるはずなんだがなぁ。
「それは確かに驚きだけど、ほかに報告することあるんじゃないの?」
「あ、そうだった」
魔物が村の中に入って来れない理由。
俺の店を畳むように迫った連中は、もう一つの店の経営者達だったこと。
おそらく自分の店をここよりもたくさん儲けを出すつもりだったんだろう。
そして俺の店の品物を転売していること。
俺からの報告はそれくらい。
「あとはそっちで作戦会議なりなんなりしてくれ。みんな、こいつらから要請があったのは知ってるよな? こいつらの作戦に協力してやってくれ」
仲間達も魔物討伐計画に参加。
となりゃ、作戦会議に混ざってもらわにゃ困る。
テンちゃんもしばらくはバイト休みだな。
サミーの剃髪剃毛の仕事もな。
そういうことを考えれば、これ以上奥に踏み込むのは危険。
そっちからこっちに来れるということは、こっちからもそっちに行くことができる。
そんな判断ができる知恵を持ってたらなおさらだし。
まぁこうして現地を見れたのは、俺も荷を下ろして楽になったって感じがする。
討伐対象や、それらとの具体的な距離感が掴めたことがでかい。
それに、はぐれた魔物がこっちに来れない理由も知ることができた。
理由が分かれば対策も立てられる。
あとは魔物討伐の舞台作りだが、これは専門家に任せるしかない。
状況を知らずに理想論だけ振り回しても、実践で役立つ指示を出せるかどうかも分からんし、逆に迷惑になりかねん。
「ふむ。あとは俺達が戦いやすいような地形づくりをンーゴ達と相談すればいいわけだな?」
「つくづく頼りになる仲間を得たわよね、私達」
「じゃあ、まずは引き返して、得た情報を全員で共有することにするか」
同意。
早いうちに戻らんと、ンーゴを見た村人が騒ぎ出すかもしれん。
村人の一部は俺たちの仲間全員と対面したが、その時の情報が村中に行き渡ってるとは思えんしな。
だが、やや遅かったようだ。
「待機組が誰かとご対面してるみてぇだな」
「え?」
「じゃあ……ンーゴ……どうする?」
「……イッテミナイト、ワカランナ」
まぁそりゃそうなんだが、その姿を見られたら……お終いって訳じゃないが……。
その村人達がいなくなるまでここで駄弁っててもしょうがねぇしな。
ハーブ群に戻り、待機組がいる場所に近づいていくにつれ、村人の気配も強くなっていく。
「……会ったことがある連中だな。五人くらいいるな」
「へぇ? 誰?」
「いや、そこまでは……」
「テコトハ、ナマエモシラナイアイテダネ?」
そういうことだ。
ま、とっとと退散するに限る。
もっとも体長五十メートルはあるンーゴはどんなに足が速かったとしても、目立つ特徴だし、一瞬だけだとしても目撃した者は絶対に忘れられないだろうな。
だが、そうは問屋が卸してくれかなった。
ハーブ群を抜けたその先で、待機組が村人っぽい連中と何やら言い争っている。
「おい、何……あ……」
その連中は、やはり見覚えはあった。
「あ、アラタぁっ。この人達何とかしてよお」
真っ先に、文字通り飛んできたのはコーティだった。
その連中はコーティの飛んでった先の俺を見て……。
「あ、テメェ! 何しに来やがった!」
「まさか俺達の店にちょっかい出しに来やがったかオイ!」
「ま、俺達も優しいからな。うちの商品、三倍の値段で買い占めてくれるんなら許してやる」
おにぎりの店を畳めと迫った連中だった。
まさか、とは思ったが。
こりゃまた面倒な相手に絡まれたもんだ。
「待て待て。俺達はお前達にちょっかいを出しに来たのではない。この先に魔物がいて」
「テメェには用はねぇんだよ! この男が黒幕だろ? いいからすっこんでろよ!」
「大体テメェは関係ねぇだろうが! 首突っ込んでくんな!」
冒険者相手に胸をごつくならず者達。
恐れを知らないとはこのことか。
「アラタ、この人達のこと知ってるの? あたし達を見つけてから、ずっとおにぎりを買えってうるさくて」
「テメェも余計な事くっちゃべってんじゃねぇよ! 俺らは男女平等主義なんだよっ! 妙な事口走ってっと、見てられねぇツラになるまでぶん殴るぞ!」
「仲間を連れてお礼参りか? 仲間がいなきゃ何も……お……?」
日が昇り始めたその光が突然消えて、そのならず者達は影に覆われた。
「アラタァ、コイツ、ナニモノダ?」
普段は地面を這って移動するンーゴが、地面に対して垂直になった。
鎌首をもたげるような恰好。もちろんその先はならず者達だ。
「な……なんだこいつっ!」
「に……逃げろおぉぉ!」
「ひぃぃぃ!」
逃げた先は、おそらく彼らが経営している店の中。
こいつらを追いつめたら、逃げ場所ねぇだろうにな。
けど今はそんなことに構ってられねぇ。
「全員、全速力で逃げるか」
冒険者達のリーダーの提案にンーゴが反応した。
「ンジャミンナ、オレノハラノナカニハイレ」
「え? 腹の中?」
「……まさか……食べるの?」
すっかり忘れてた。
腹にはある程度の大きさまでなら収納できる空間があるんだっけな。
「直接腹ん中に入るんだよ。わりと居心地いいんだな」
「え?」
「アラタ、ちょっと何言ってるか分かんないんだけど」
言葉通り受け取ってもらって構わないんだがなぁ。
※※※※※ ※※※※※
「何と言うか……生暖かかったというか」
「ぬめぬめがちょっと……」
「こんな大勢の人数が体内に入れるとは……」
何とか無事に帰りついた。
が、ンーゴの体内の環境は、冒険者には不評のようで。
全員が遅れることなく集団で移動するには、便利ではあるはずなんだがなぁ。
「それは確かに驚きだけど、ほかに報告することあるんじゃないの?」
「あ、そうだった」
魔物が村の中に入って来れない理由。
俺の店を畳むように迫った連中は、もう一つの店の経営者達だったこと。
おそらく自分の店をここよりもたくさん儲けを出すつもりだったんだろう。
そして俺の店の品物を転売していること。
俺からの報告はそれくらい。
「あとはそっちで作戦会議なりなんなりしてくれ。みんな、こいつらから要請があったのは知ってるよな? こいつらの作戦に協力してやってくれ」
仲間達も魔物討伐計画に参加。
となりゃ、作戦会議に混ざってもらわにゃ困る。
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