248 / 493
店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その11
しおりを挟む
雑っぽいおにぎりの店を横切り、崖沿いに進んだ先の角。
曲がって進むにつれ、奇妙な匂いが次第に強くなる。
俺の力にも身体にも影響はなし。
同行してる冒険者らの話によれば、害はないがハーブ系の植物からの匂いなんだと。
が、強すぎるあまり、ここで待機することにした奴が出た。
俺らからは、コーティが脱落。
残ったのはンーゴとライムと俺。
冒険者達は六人脱落で九人がさらに奥に進む。
「にしても、ところどころ草が掘り起こされてるな」
「ホリオコサレル、ッテイウヨリ、ハモノデタタキツケタ?」
まぁ、そうとも言うな。
「獣とか魔物との戦闘の跡じゃない。何だろうな」
しかもその地面が荒らされた跡は最近のもの、ってのは俺にでも分かる。
進めば進むほど、荒れた個所が増え、その箇所ごとの範囲も広くなっていく。
「ひょっとして、はぐれ魔物の仕業?!」
冒険者の一人が、とんでもないことに気付いたとばかりに声がでかくなった。
「いや、戦闘の跡じゃねぇってそちらさんが言ってただろうが。それにどう見ても、刀剣みたいな薄い刃物で切りつけた感じの跡だ。魔物とかが暴れたんなら爪とか牙でするだろ。こんな薄い形状って……ねぇよな?」
「それも……そうね」
「進んでいけば分かる。ところでアラタ。魔物の気配は?」
「あるにはある。三キロ……四キロ以上先だと思う」
「思う……って……。それより近かったらどうするの」
「近く見積もって三キロ。その相手が危険な存在なら、警戒して読み取るのが当たり前だろ?」
そっちは戦闘っつー抵抗手段があるんだ。
けどこっちにゃ逃げる一手しかねぇんだよ。
相手に追いつかれたら一巻の終わり。
だから警戒度マックスで辺りを感知しなきゃなんねぇっての。
つっても、そんな知恵は俺にしか使えねぇから、こいつらには分かんねえか。
けど、ゆっくり進んでいく間に……。
「……これだ、ハーブ系の植物。けど……地面が荒らされてるのが気になってたが、獣道を広げるように荒してるな」
その道はハーブ群を貫通しているっぽい。
が、奥に進めば進むほど、その荒れようは目立たなくなってる。
ということは。
「こっち側、村にいる人が荒らした、と言えるな」
「けどアラタ。村人がこんなとこまで来るもんかね?」
考えるまでもない。
俺の店を真似ようとするなら、その付近に冒険者が活動できる場所を作る必要があるってこったろ?
だったら店の人間がやらかしたことだろ。
まぁ荒しても、それはいいだの悪いだのの判定するところじゃあないな。
誰かの土地ならば別だろうが。
だがしかし。
「魔物の気配が察知できたということは……この荒れようと関係があるんじゃねぇか?」
「まさか……いや、アラタの言う通りかもしれん。俺達の何人かと、コーティさんがこの香りに耐えられなかった。魔物を遠ざける力があるのかもしれない」
となると、この区域を荒らしたということは……。
村はこのハーブ群にも守られてたってことか。
その守り手に損害を与えたということは、村は魔物に襲われやすくなったとも言える。
不味いんじゃね?
はぐれドラゴンを倒せたとしても、さらに奥に住み着いている魔物だってこっちに来やすくなるはずだ。
ということは。
「村人達が、このハーブによって魔物から守られていることを知っていたら……」
「村長とかに報せる必要はあるな。とりあえず、もう少し進んでみようか」
まだ俺達はハーブ群の中にいる。
そんな環境ならなおさら討伐の舞台は、このハーブ群を越えた先の、できれば広い場所に定めたい。
※※※※※ ※※※※※
「ハーブ群を越えたわけだが」
冒険者の一人がそんなことを言う。
確かに、生えている草の種類が変わったな。
それにしても、動くモノに比べて植物の気配って、分かりづらかったんだな。
ススキモドキ、しかも米しか注目してなかったもんなぁ。
「おい、アラタ。どうなんだ?」
「あ、すまん」
能力のことに意識が向いてた。
えーと、だ。
「多分三体の中で一番でかい奴の、頭から尻尾までの長さがンーゴの体長を越えてるかもしれん。奥に広い場所があるとは思えんが、ここよりも広い場所があれば理想的だな」
「ソウイエバ、ハーブノトコロ、ヒロバッテカンジダッタネ」
言われてみればそうだった。
樹木はなかったな。
けど、そこを戦場にするわけにはいかねぇだろ。
魔物が忌避するハーブなら、荒れた部分を修復して、さらに群生させる必要があるんじゃねぇか?
「チチュウヲカキマゼテ、ヒロバヲツクッテモイイガ?」
あぁ、ンーゴはそういうこともできるんだよな。
ミアーノと一緒なら、なお効率がいいかもしれんが……。
「はぐれ魔物のテリトリーなら問題なんじゃないか? ドラゴンの集団だったらかなり危険な地域に変わるだろうが」
「はぐれた魔物がその辺りを荒らすことも考えたら、必要最低限の広場作りもやむなし、だと思う」
「ハーブ群のお陰で村に近寄れない、とのことだが、念のため、さらに奥に入ってみてから決めてもいいんじゃないか? でも……広場を作るって……どういうこと? 樹木を押し倒すの?」
さぁ……ねぇ……。
仲間だからって、こいつらの事なんでも知ってるわけじゃねぇんだよな。
曲がって進むにつれ、奇妙な匂いが次第に強くなる。
俺の力にも身体にも影響はなし。
同行してる冒険者らの話によれば、害はないがハーブ系の植物からの匂いなんだと。
が、強すぎるあまり、ここで待機することにした奴が出た。
俺らからは、コーティが脱落。
残ったのはンーゴとライムと俺。
冒険者達は六人脱落で九人がさらに奥に進む。
「にしても、ところどころ草が掘り起こされてるな」
「ホリオコサレル、ッテイウヨリ、ハモノデタタキツケタ?」
まぁ、そうとも言うな。
「獣とか魔物との戦闘の跡じゃない。何だろうな」
しかもその地面が荒らされた跡は最近のもの、ってのは俺にでも分かる。
進めば進むほど、荒れた個所が増え、その箇所ごとの範囲も広くなっていく。
「ひょっとして、はぐれ魔物の仕業?!」
冒険者の一人が、とんでもないことに気付いたとばかりに声がでかくなった。
「いや、戦闘の跡じゃねぇってそちらさんが言ってただろうが。それにどう見ても、刀剣みたいな薄い刃物で切りつけた感じの跡だ。魔物とかが暴れたんなら爪とか牙でするだろ。こんな薄い形状って……ねぇよな?」
「それも……そうね」
「進んでいけば分かる。ところでアラタ。魔物の気配は?」
「あるにはある。三キロ……四キロ以上先だと思う」
「思う……って……。それより近かったらどうするの」
「近く見積もって三キロ。その相手が危険な存在なら、警戒して読み取るのが当たり前だろ?」
そっちは戦闘っつー抵抗手段があるんだ。
けどこっちにゃ逃げる一手しかねぇんだよ。
相手に追いつかれたら一巻の終わり。
だから警戒度マックスで辺りを感知しなきゃなんねぇっての。
つっても、そんな知恵は俺にしか使えねぇから、こいつらには分かんねえか。
けど、ゆっくり進んでいく間に……。
「……これだ、ハーブ系の植物。けど……地面が荒らされてるのが気になってたが、獣道を広げるように荒してるな」
その道はハーブ群を貫通しているっぽい。
が、奥に進めば進むほど、その荒れようは目立たなくなってる。
ということは。
「こっち側、村にいる人が荒らした、と言えるな」
「けどアラタ。村人がこんなとこまで来るもんかね?」
考えるまでもない。
俺の店を真似ようとするなら、その付近に冒険者が活動できる場所を作る必要があるってこったろ?
だったら店の人間がやらかしたことだろ。
まぁ荒しても、それはいいだの悪いだのの判定するところじゃあないな。
誰かの土地ならば別だろうが。
だがしかし。
「魔物の気配が察知できたということは……この荒れようと関係があるんじゃねぇか?」
「まさか……いや、アラタの言う通りかもしれん。俺達の何人かと、コーティさんがこの香りに耐えられなかった。魔物を遠ざける力があるのかもしれない」
となると、この区域を荒らしたということは……。
村はこのハーブ群にも守られてたってことか。
その守り手に損害を与えたということは、村は魔物に襲われやすくなったとも言える。
不味いんじゃね?
はぐれドラゴンを倒せたとしても、さらに奥に住み着いている魔物だってこっちに来やすくなるはずだ。
ということは。
「村人達が、このハーブによって魔物から守られていることを知っていたら……」
「村長とかに報せる必要はあるな。とりあえず、もう少し進んでみようか」
まだ俺達はハーブ群の中にいる。
そんな環境ならなおさら討伐の舞台は、このハーブ群を越えた先の、できれば広い場所に定めたい。
※※※※※ ※※※※※
「ハーブ群を越えたわけだが」
冒険者の一人がそんなことを言う。
確かに、生えている草の種類が変わったな。
それにしても、動くモノに比べて植物の気配って、分かりづらかったんだな。
ススキモドキ、しかも米しか注目してなかったもんなぁ。
「おい、アラタ。どうなんだ?」
「あ、すまん」
能力のことに意識が向いてた。
えーと、だ。
「多分三体の中で一番でかい奴の、頭から尻尾までの長さがンーゴの体長を越えてるかもしれん。奥に広い場所があるとは思えんが、ここよりも広い場所があれば理想的だな」
「ソウイエバ、ハーブノトコロ、ヒロバッテカンジダッタネ」
言われてみればそうだった。
樹木はなかったな。
けど、そこを戦場にするわけにはいかねぇだろ。
魔物が忌避するハーブなら、荒れた部分を修復して、さらに群生させる必要があるんじゃねぇか?
「チチュウヲカキマゼテ、ヒロバヲツクッテモイイガ?」
あぁ、ンーゴはそういうこともできるんだよな。
ミアーノと一緒なら、なお効率がいいかもしれんが……。
「はぐれ魔物のテリトリーなら問題なんじゃないか? ドラゴンの集団だったらかなり危険な地域に変わるだろうが」
「はぐれた魔物がその辺りを荒らすことも考えたら、必要最低限の広場作りもやむなし、だと思う」
「ハーブ群のお陰で村に近寄れない、とのことだが、念のため、さらに奥に入ってみてから決めてもいいんじゃないか? でも……広場を作るって……どういうこと? 樹木を押し倒すの?」
さぁ……ねぇ……。
仲間だからって、こいつらの事なんでも知ってるわけじゃねぇんだよな。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる