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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その10
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崖に洞穴を掘って作った俺達のおにぎりの店。その崖沿いに、村の奥の方面に進む。
しばらく進むとモーナーが掘り続けた地下ダンジョンへの入り口が二か所ある。
それを通り過ぎて二キロほど進む。
結構歩くんだな。
気配を感じたその距離は、実際に歩いてみないと実感が湧かないもんだ。
そして、やがて辿り着いた。
討伐予定の現場……の前に。
「ここが、もう一軒のおにぎりの店か」
「……俺らの真似をした感じの店だな」
だが洞穴の掘削した跡は、何というか、雑。
掘ってそのまま瓦礫を運び出しただけ。
床も凸凹なのには恐れ入った。
俺らの洞窟は、天井をややドーム型にしてその表面はなめらかにしている。
個室の空間は直方体だが、その表面は店のエリアと同じ。
モーナーとライムの芸術的職人芸だ。
「何か……物置みたいな感じだな」
「店の状態は……確かにアラタの店と同じようにショーケースがあって、中におにぎりはあるけど……」
「一個三百円? たっか!」
ショーケースの中には、確かにおにぎりは並んでいる。
冷蔵の機能があるようだが……。
「ドウシタノ? アラタ」
「ん? あぁ、うん……」
「何かあったの? 隠し事は禁止のはずよね」
コーティからの指摘が痛い。
閉店騒ぎで得た教訓の一つ。
そう言われれば、俺はもう何も抵抗できん。
「……多分、ショーケースの中のおにぎり、俺が作った奴だ」
「へ?」
「ウソダロ?」
ショーケースのガラス越しに米から感じ取れる気配は、間違いようがない。
仮に違ったとしても、ということもあり得ない。
米粒すべてが一定以上力が込められている。
普通の人が作るおにぎりなら、その気配を持つ力はまちまちのはずだ。
これだけ綺麗に、力が均等な米粒が揃うことはまずあり得ない。
何者かが冒険者達を雇って俺の店で買わせてた。
それを売り物にしてる。
それ以外に考えられん。
「……とりあえずこの件は後回しだ。その崖の角を曲がって直進。とっとと様子を見て引き返そうや。ンーゴの姿を見られてもまずいしな」
「お、お前がそれ以上に現場の偵察の方が大事ってんなら……俺らはそれでもいいけどよ」
「……アラタ。ドラゴンの件が終わったら、あなたが気になるなら私達も協力するから、遠慮なく言ってね?」
この件は後回しだ。
大体報酬を決めてからでないと、引き受け手がいねぇだろ。
討伐の件は、目標物が報酬にもなってるからみんなが得をして誰も困ることはねぇからすんなり話が決まったんだもんな。
「先急ごうぜ。って……何だ? この匂い……」
「……ちょっとあたし、耐えられない」
コーティが根を上げるようなことを言うのは初めてだ。
店を横切ってさらに進む。
間もなく角が現れて、そこを曲がった途端に漂う香り。
「確かに、ちょっと強い匂いよね」
「……ハーブ系だな。確かにこれは……」
「ソンナニヒロクハナイガ、オレモチョットツライ。ソコヲトオリスギタラ、タブンモンダイナイガ」
ンーゴ、雌なのに一人称はオレなのか。
まあ……いいけどさ。
「ライムハ……ヘイキカナ」
「ンーゴとコーティは辛く思うほど強い香り。けど、まだハーブが生えてるとこじゃない。アラタ、はぐれた魔物の所在は」
「もっと、相当先にある。多分この匂いの向こう側よりもさらにもっと先だ。けどそのハーブ? 匂いが強くて、その気配がどこまで続くのかは……」
「アラタはこの匂い、平気か?」
体に異常はない。
「俺は平気だ。そっちには異常を感じる者はいるか?」
「異常じゃないけど……。向こうにいるのはドラゴンでしょ? そいつから気配を消して移動するには、かなり気になる匂いよね」
「俺もこの香りは……薄けりゃ問題ないけどさ」
「俺もだ」
現場接近のリタイア宣言にも近い言葉。
耐えられねぇ奴には進めねぇってことか。
現場突入組のための人選が必要になるとは思わなかった。
「アラタ、討伐の現場になりそうな場所は……」
「当然、その先だ」
当然、その場所に行ってみる必要はある。
行けそうにない奴はここで留守番って訳だ。
「……私、ここで待ってていい?」
「ジュエルは無理か。他に行けそうにない奴は?」
この冒険者集団のリーダーらしき者が尋ねて、合わせて六人ほどが挙手。
こっちはコーティがリタイア。
「ンーゴ、お前は行けるのか?」
「ガマンスリャイケル。ムリソウナラ、チカニモグル」
対策はあるのか。
てことは、俺とライムとンーゴが進行する、と。
「こっちは九人。そっちは三人。……三人って単位でいいのか?」
「あぁ。種族で単位を変えるのぁ面倒だからな。コーティ、お前、待ってるか? それとも帰るか?」
「何かがあったら大変だから、あたしは待ってる。あんた達は?」
「私達も当然待ちます」
この辺りの地面は、ところどころ荒れているがススキモドキと幾多の種類の草でいっぱいだ。
だが、その香りを放つハーブ系の植物はここにはないらしい。
とりあえず、そのハーブ系のエリアを超えるまでは、安全に歩を進められる。
しばらく進むとモーナーが掘り続けた地下ダンジョンへの入り口が二か所ある。
それを通り過ぎて二キロほど進む。
結構歩くんだな。
気配を感じたその距離は、実際に歩いてみないと実感が湧かないもんだ。
そして、やがて辿り着いた。
討伐予定の現場……の前に。
「ここが、もう一軒のおにぎりの店か」
「……俺らの真似をした感じの店だな」
だが洞穴の掘削した跡は、何というか、雑。
掘ってそのまま瓦礫を運び出しただけ。
床も凸凹なのには恐れ入った。
俺らの洞窟は、天井をややドーム型にしてその表面はなめらかにしている。
個室の空間は直方体だが、その表面は店のエリアと同じ。
モーナーとライムの芸術的職人芸だ。
「何か……物置みたいな感じだな」
「店の状態は……確かにアラタの店と同じようにショーケースがあって、中におにぎりはあるけど……」
「一個三百円? たっか!」
ショーケースの中には、確かにおにぎりは並んでいる。
冷蔵の機能があるようだが……。
「ドウシタノ? アラタ」
「ん? あぁ、うん……」
「何かあったの? 隠し事は禁止のはずよね」
コーティからの指摘が痛い。
閉店騒ぎで得た教訓の一つ。
そう言われれば、俺はもう何も抵抗できん。
「……多分、ショーケースの中のおにぎり、俺が作った奴だ」
「へ?」
「ウソダロ?」
ショーケースのガラス越しに米から感じ取れる気配は、間違いようがない。
仮に違ったとしても、ということもあり得ない。
米粒すべてが一定以上力が込められている。
普通の人が作るおにぎりなら、その気配を持つ力はまちまちのはずだ。
これだけ綺麗に、力が均等な米粒が揃うことはまずあり得ない。
何者かが冒険者達を雇って俺の店で買わせてた。
それを売り物にしてる。
それ以外に考えられん。
「……とりあえずこの件は後回しだ。その崖の角を曲がって直進。とっとと様子を見て引き返そうや。ンーゴの姿を見られてもまずいしな」
「お、お前がそれ以上に現場の偵察の方が大事ってんなら……俺らはそれでもいいけどよ」
「……アラタ。ドラゴンの件が終わったら、あなたが気になるなら私達も協力するから、遠慮なく言ってね?」
この件は後回しだ。
大体報酬を決めてからでないと、引き受け手がいねぇだろ。
討伐の件は、目標物が報酬にもなってるからみんなが得をして誰も困ることはねぇからすんなり話が決まったんだもんな。
「先急ごうぜ。って……何だ? この匂い……」
「……ちょっとあたし、耐えられない」
コーティが根を上げるようなことを言うのは初めてだ。
店を横切ってさらに進む。
間もなく角が現れて、そこを曲がった途端に漂う香り。
「確かに、ちょっと強い匂いよね」
「……ハーブ系だな。確かにこれは……」
「ソンナニヒロクハナイガ、オレモチョットツライ。ソコヲトオリスギタラ、タブンモンダイナイガ」
ンーゴ、雌なのに一人称はオレなのか。
まあ……いいけどさ。
「ライムハ……ヘイキカナ」
「ンーゴとコーティは辛く思うほど強い香り。けど、まだハーブが生えてるとこじゃない。アラタ、はぐれた魔物の所在は」
「もっと、相当先にある。多分この匂いの向こう側よりもさらにもっと先だ。けどそのハーブ? 匂いが強くて、その気配がどこまで続くのかは……」
「アラタはこの匂い、平気か?」
体に異常はない。
「俺は平気だ。そっちには異常を感じる者はいるか?」
「異常じゃないけど……。向こうにいるのはドラゴンでしょ? そいつから気配を消して移動するには、かなり気になる匂いよね」
「俺もこの香りは……薄けりゃ問題ないけどさ」
「俺もだ」
現場接近のリタイア宣言にも近い言葉。
耐えられねぇ奴には進めねぇってことか。
現場突入組のための人選が必要になるとは思わなかった。
「アラタ、討伐の現場になりそうな場所は……」
「当然、その先だ」
当然、その場所に行ってみる必要はある。
行けそうにない奴はここで留守番って訳だ。
「……私、ここで待ってていい?」
「ジュエルは無理か。他に行けそうにない奴は?」
この冒険者集団のリーダーらしき者が尋ねて、合わせて六人ほどが挙手。
こっちはコーティがリタイア。
「ンーゴ、お前は行けるのか?」
「ガマンスリャイケル。ムリソウナラ、チカニモグル」
対策はあるのか。
てことは、俺とライムとンーゴが進行する、と。
「こっちは九人。そっちは三人。……三人って単位でいいのか?」
「あぁ。種族で単位を変えるのぁ面倒だからな。コーティ、お前、待ってるか? それとも帰るか?」
「何かがあったら大変だから、あたしは待ってる。あんた達は?」
「私達も当然待ちます」
この辺りの地面は、ところどころ荒れているがススキモドキと幾多の種類の草でいっぱいだ。
だが、その香りを放つハーブ系の植物はここにはないらしい。
とりあえず、そのハーブ系のエリアを超えるまでは、安全に歩を進められる。
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