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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない その19
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「でもあの股間蹴りのおかげだよな」
「あぁ。あれがなきゃ、あんなこと喋りゃしなかったろうしな」
何のことだよ。
勿体ぶった会話してんじゃねぇよ。
「アラタ、お前、どっかの雑誌のインタビュー受けたんだって?」
「あ、あぁ。店の何かで……初級冒険者のための何とか、とか何とか……でだったな」
「その記事を読んで、おにぎりだけ売っててそれだけで名を上げられるなら、俺達だってできるよなぁ、ってことで始めたらしい」
……呆れて物が言えない。
おにぎりの店を始めたのは、おにぎりしか作れなかったからだ。
そして、普通ではないおにぎりを作ることができたから。
それは旗手として召喚されたからこそできたことであって、ただこの世界に迷い込んだだけだったらこんな風に売れてはいなかった。
「あいつらのおにぎりが売れない理由は、アラタの店があるからだって結論を出したらしい」
「この村で店を開きゃ売れる、と思い込んでたっぽいな」
何と言うか……。
何も言えん……。
思い立って実行するその行動力は評価に値するが……。
あいつらは、あまりに周りを振り回し過ぎた。
「アラタんとこに行って店を畳めと迫った後も、売り上げはほとんど上がらず。そりゃそうだよな。三倍くらいの値段だし」
「アラタの店で、おにぎりをただで配ってたってこと知らなかったらしい。アラタに、商売を辞めろって言ってきたらしいな」
「あぁ。だから商売『は』辞めたんだ。で、在庫をみな配ってから畳む予定だった」
報告に来た冒険者達はみな噴き出した。
何かおかしいところあったか?
「タダで配りゃ、誰だってそっちに行くよなぁ。アラタの店が畳んだら、こっちの売り上げが上がるって、その前にアラタにそんなことされりゃ、売れる可能性すらゼロにならぁな」
あぁ、そういうことか。
つっても、俺はそっちの店は無関心……つか、そういうことをしてるって話も聞いてなかったからな。
同じような店が一つできたって噂話を聞いたくらいで。
「ハーブ群荒らされたって話してたよな、アラタ。あれもあいつらの仕業らしい」
「奴らが? なんで?」
「アラタの店で、フィールドとダンジョン管理してるって噂が流れててな。ならこっちの店でもそんな場所を作ろうって話になったらしい」
「香りが強いからな、あのハーブ群は。だからそこを荒らして、少しでも奥に入りやすくしたがったんだとさ」
結果、はぐれた野良ドラゴンの気配が強まった。
その気配を、今まではハーブ群が押しとどめ、その香りの強さからドラゴンを遠ざけてたんだな。
そのハーブ群を荒らしたことで、ドラゴン達があのハーブ群生地に近づきやすくなったってわけだ。
「あ、あと、いろんな人に頼んでアラタの店でおにぎりを買ってきてもらってストックして、それを販売してたってのも白状してたな」
ふん。
だからそれは分かってたんだよ。
俺が作ったおにぎりを販売してるってのはな。
それを、バレることはないと思って嘘ついてたんだろ。あんな嘘をまともに相手にするだけ時間の無駄だ。馬鹿馬鹿しい。
「あ、あと、今後アラタの店に余計なちょっかい出すようなら、俺達が黙っちゃいねぇぞって念押ししといた」
「あぁ、それも言っとかなきゃな。あいつらは、アラタがつくるおにぎりのような効果を持つモノを作れない。そんなやつらが、俺達の助けになるアラタの店に脅しをかけるようなマネはしないようにってな」
……それって……。
「念押し?」
「ん? あぁ、もちろん」
「さっきまでのアラタみたいな真似するわきゃねぇじゃねぇか」
……気配から感情を把握できて、そこから嘘かホントかを判断できるってこと、知らねぇか?
そしてこいつらの言うことは……。
「うん、脅しっぽい感じになったな、うん。丸わかりだ」
「……ソンナコトナイゾ?」
「……えー?」
何だその棒読みっぽい言い方は。
まぁいいけどさ。
「ま、続けるも畳むもアラタ次第だな。もちろん続けてもらいたいけどよ」
「可愛い後輩どもの面倒を見てくれるとこって、ほんと少ないんだよな。だからあの記事が出た時ゃあいつらも大喜びだったがよ」
まぁいくらかは新人冒険者の来客数は増えた感じはしたが、記事を読んできたっつー奴がほとんどいなかったからなぁ。
ま、俺らの生活費も稼がにゃならんから、そう言うことなら続けることにするか。
っつーと、こいつらに恩を着せるような言い方になっちまうな。
「……自給自足の生活も大変そうだし、今までの生活には慣れてたから、続行するとするか。……お?」
店の方からコーティがやってきた。
ハーブ系の強すぎる香りが苦手だったから、こいつは待機組になったのか。
「アラタ。ヨウミから連絡が来たんだけど? あんた何も言わずに飛び出してきたんだって?」
あ。
そう言えばそうだった。
だってしょうがねぇだろ。
「マッキーから俺に、あんな言い方で連絡が来たんだ。急いで駆けつけるのが普通だろうよ」
……なんだよ、そのため息は。
「……あんたがあたし達の事好きすぎるのは知ってたけどさ。連絡の取り合いはしっかりしなさいよ。誰かから連絡受けるとすぐに動いて、誰かに連絡し忘れること多いじゃない、あんた」
むぐっ。
って、なんだよ、好きすぎるって!
「ヨ、ヨウミには連絡しとく。ってお前、その言い方」
「聞いててこっちまで赤面しそうになる本音を、堂々と怒鳴って主張するってのはどうかと思うのよね」
うがあああ。
「そう言ってやるなよ、コーティちゃん」
「俺らは、コーティちゃんがうらやましいなぁ」
「う……ムキーっ!」
何だよ、その反応。
「愛されてるわね、コーティちゃん達」
コーティ、一気に完全に赤面。
こいつも……ある意味打たれ弱い性格なのな……。
「あぁ。あれがなきゃ、あんなこと喋りゃしなかったろうしな」
何のことだよ。
勿体ぶった会話してんじゃねぇよ。
「アラタ、お前、どっかの雑誌のインタビュー受けたんだって?」
「あ、あぁ。店の何かで……初級冒険者のための何とか、とか何とか……でだったな」
「その記事を読んで、おにぎりだけ売っててそれだけで名を上げられるなら、俺達だってできるよなぁ、ってことで始めたらしい」
……呆れて物が言えない。
おにぎりの店を始めたのは、おにぎりしか作れなかったからだ。
そして、普通ではないおにぎりを作ることができたから。
それは旗手として召喚されたからこそできたことであって、ただこの世界に迷い込んだだけだったらこんな風に売れてはいなかった。
「あいつらのおにぎりが売れない理由は、アラタの店があるからだって結論を出したらしい」
「この村で店を開きゃ売れる、と思い込んでたっぽいな」
何と言うか……。
何も言えん……。
思い立って実行するその行動力は評価に値するが……。
あいつらは、あまりに周りを振り回し過ぎた。
「アラタんとこに行って店を畳めと迫った後も、売り上げはほとんど上がらず。そりゃそうだよな。三倍くらいの値段だし」
「アラタの店で、おにぎりをただで配ってたってこと知らなかったらしい。アラタに、商売を辞めろって言ってきたらしいな」
「あぁ。だから商売『は』辞めたんだ。で、在庫をみな配ってから畳む予定だった」
報告に来た冒険者達はみな噴き出した。
何かおかしいところあったか?
「タダで配りゃ、誰だってそっちに行くよなぁ。アラタの店が畳んだら、こっちの売り上げが上がるって、その前にアラタにそんなことされりゃ、売れる可能性すらゼロにならぁな」
あぁ、そういうことか。
つっても、俺はそっちの店は無関心……つか、そういうことをしてるって話も聞いてなかったからな。
同じような店が一つできたって噂話を聞いたくらいで。
「ハーブ群荒らされたって話してたよな、アラタ。あれもあいつらの仕業らしい」
「奴らが? なんで?」
「アラタの店で、フィールドとダンジョン管理してるって噂が流れててな。ならこっちの店でもそんな場所を作ろうって話になったらしい」
「香りが強いからな、あのハーブ群は。だからそこを荒らして、少しでも奥に入りやすくしたがったんだとさ」
結果、はぐれた野良ドラゴンの気配が強まった。
その気配を、今まではハーブ群が押しとどめ、その香りの強さからドラゴンを遠ざけてたんだな。
そのハーブ群を荒らしたことで、ドラゴン達があのハーブ群生地に近づきやすくなったってわけだ。
「あ、あと、いろんな人に頼んでアラタの店でおにぎりを買ってきてもらってストックして、それを販売してたってのも白状してたな」
ふん。
だからそれは分かってたんだよ。
俺が作ったおにぎりを販売してるってのはな。
それを、バレることはないと思って嘘ついてたんだろ。あんな嘘をまともに相手にするだけ時間の無駄だ。馬鹿馬鹿しい。
「あ、あと、今後アラタの店に余計なちょっかい出すようなら、俺達が黙っちゃいねぇぞって念押ししといた」
「あぁ、それも言っとかなきゃな。あいつらは、アラタがつくるおにぎりのような効果を持つモノを作れない。そんなやつらが、俺達の助けになるアラタの店に脅しをかけるようなマネはしないようにってな」
……それって……。
「念押し?」
「ん? あぁ、もちろん」
「さっきまでのアラタみたいな真似するわきゃねぇじゃねぇか」
……気配から感情を把握できて、そこから嘘かホントかを判断できるってこと、知らねぇか?
そしてこいつらの言うことは……。
「うん、脅しっぽい感じになったな、うん。丸わかりだ」
「……ソンナコトナイゾ?」
「……えー?」
何だその棒読みっぽい言い方は。
まぁいいけどさ。
「ま、続けるも畳むもアラタ次第だな。もちろん続けてもらいたいけどよ」
「可愛い後輩どもの面倒を見てくれるとこって、ほんと少ないんだよな。だからあの記事が出た時ゃあいつらも大喜びだったがよ」
まぁいくらかは新人冒険者の来客数は増えた感じはしたが、記事を読んできたっつー奴がほとんどいなかったからなぁ。
ま、俺らの生活費も稼がにゃならんから、そう言うことなら続けることにするか。
っつーと、こいつらに恩を着せるような言い方になっちまうな。
「……自給自足の生活も大変そうだし、今までの生活には慣れてたから、続行するとするか。……お?」
店の方からコーティがやってきた。
ハーブ系の強すぎる香りが苦手だったから、こいつは待機組になったのか。
「アラタ。ヨウミから連絡が来たんだけど? あんた何も言わずに飛び出してきたんだって?」
あ。
そう言えばそうだった。
だってしょうがねぇだろ。
「マッキーから俺に、あんな言い方で連絡が来たんだ。急いで駆けつけるのが普通だろうよ」
……なんだよ、そのため息は。
「……あんたがあたし達の事好きすぎるのは知ってたけどさ。連絡の取り合いはしっかりしなさいよ。誰かから連絡受けるとすぐに動いて、誰かに連絡し忘れること多いじゃない、あんた」
むぐっ。
って、なんだよ、好きすぎるって!
「ヨ、ヨウミには連絡しとく。ってお前、その言い方」
「聞いててこっちまで赤面しそうになる本音を、堂々と怒鳴って主張するってのはどうかと思うのよね」
うがあああ。
「そう言ってやるなよ、コーティちゃん」
「俺らは、コーティちゃんがうらやましいなぁ」
「う……ムキーっ!」
何だよ、その反応。
「愛されてるわね、コーティちゃん達」
コーティ、一気に完全に赤面。
こいつも……ある意味打たれ弱い性格なのな……。
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