267 / 493
店の日常編
仲間達の新たな活動 9
しおりを挟む
「なぁアラタ。集団戦の申し込みの事なんだけどよ」
「はいはい、申し込みね」
「いや、ちとこんな案があるんだが」
申し込みが殺到している中、皇太子の親衛隊隊長とやらの申し込みを受けた。
その次の申請者からの話だった。
「ややこしい話は止めてくれ」
「けど、このままじゃ一年間順番待ち、なんてことになりかねねぇだろ?」
確かに、数日間の予約のために何年も待たなきゃいけないってのは、こっちとしても心苦しい。
それに、申し込みに来た人達は今すぐにでも鍛えてもらいたいという一念で来るんだろうし。
「例えばな、誰かがフィールドだけで、魔物何体かと訓練したいとする」
「ああ」
「ダンジョンは空いてるわけだよ。普段の、アイテム探しの連中はいるとしてもな?」
「まぁそうだな」
「アラタんとこの魔物何体かは、フィールドで訓練に付き添ってるが、それ以外は手が空いてるわけだ」
「まぁそうだな」
こいつの言ってることは合ってる。
間違いはない。
「そこで、順番が次以降の冒険者達の中で、手が空いてる魔物達との訓練をダンジョンでやりたいって奴なら、前の申し込みの奴らと同時に訓練ができるんじゃねぇの? 場所も相手もかぶらねぇんだから」
「ふむ……」
テンちゃんとライムとモーナーが、フィールドでの訓練にお願いされたとする。
ダンジョンでクリマーとマッキーとコーティに、訓練をお願いしたい奴がいたとする。
どっちも同じ期間……例えば、どちらからも一日だけお願いされたとする。
これまで通りのスケジュールなら、この二組の次の申し込みはその日と次の日は予定が塞がり、予約は二日後になるわけだ。
だがこの提案に乗れば、二組の訓練はこの日に同時に行われるから、二日後になる予定が翌日に短縮される。
条件が揃えば、十日後まで予定が塞がってたのが五日後にまで短縮される。
その十日間、特訓する連中が全員半日で終わるとするなら、十日間待ちぼうけの申請者の順番待ちは三日間まで短縮される。
ダブルブッキングが怖いんだが……。
「ダブルブッキングなんか、別にいいんじゃね? 後者の申請者は前者の予定に合わせりゃ、効率は落ちるかもしれんが、長い順番待ちでくたびれるよりはましだと思うぜ?」
「い……いいのか?」
後ろの申請者達から同意の声が上がった。
馬車や竜車のダブルブッキングとはわけが違う。
相乗り自由な乗車券じゃねぇか。しかも、ある程度なら相乗り可能なら、確かに順番待ちが長くなる辛さよりはましだ、と。
「それに、アラタは受付のほかにおにぎり作りとかもあるだろ? みんな、あんたの仕事が大変になるってことくらいは分かるさ。それくらいのミス、笑って許せるレベルだぜ?」
「料金が倍になるようなミスよりは、確かにはるかにマシだよな」
……料金は申請者には三通り。
日程は、半日か一日かの二通り。
訓練の相手は何人か。
そして何日間続けるかで倍になっていく。
それだけじゃねぇか。
……大丈夫だと思うけど。
計算ミスがあったら、発見次第修正すればいい……よな?
※※※※※ ※※※※※
けど、七日後と言っちゃったこともあるし、おそらくそれに合わせて彼ら……彼女らも休暇の予定を立ててるだろう。
一日に複数の依頼を引き受けるのは、親衛隊の終了日の後からにしよう。
その親衛隊はというと、その初日。
「とりあえず、そっちからは誰か五人くらいお願いしようかしら。三対五の集団戦。半日それで様子見してそれで具合が良ければそのまま三日間続行。物足りなければさらに追加で」
そしてお昼休み。
「ごめんなさい、やっぱりそっち、三人で。三対三で、午後から三日間お願いするわ。……あんた達……いくら訓練でも、相手をなめてかかっちゃダメでしょっ」
流石リーダー。
息切れしまくりの二人と比べて、気落ちしているのみ。
かなりやられたらしい。
で、こっち側の五人のテンちゃん、マッキー、クリマー、サミー、モーナーは……。
「久々に楽しめたわねー」
「面白かったぞお」
「でも、午後から二人減らされるんですよね?」
「あたし、午後もやりたいなー」
「ミッ」
楽しい時間を過ごせた、といった感。
しかし、疲れを何とか癒して気持ちを新たにした午後の訓練も、同数対決も圧倒されたっぽい。
そして三日後。
「お疲れ様。初日の昼の変更の時に申し込み直した通り、こちらの人数三人が一日分。これを三日分なので延べ人数九人分をベテラン料金三万円をかけまして二十七万円に、二人が半日分の三万円で三十万円になります」
「えっと、それ、支払ったわよね?」
ルミーラとやらは、三日間部下の引率並びに付き添いっぽい立場だったようだ。
他の九人は、午前午後と二回に分けての三日間の六回分にローテーションを組ませてたようだった。
半日休みの制度にして、何とかやりくりしてたようだったが、その半日の訓練ですら一回ごとに全員へとへと。
俺からすれば、お疲れ様しか言葉が出てこない。
が、ほかに出てくるものもある。
「えー、それでですね。訓練の日程無事終了で、そのお祝いとして……お祝い金十万円贈呈です」
「え?」
「へ?」
「何それ?」
三人の目が点になってる。
まぁ無理もないか。
「はいはい、申し込みね」
「いや、ちとこんな案があるんだが」
申し込みが殺到している中、皇太子の親衛隊隊長とやらの申し込みを受けた。
その次の申請者からの話だった。
「ややこしい話は止めてくれ」
「けど、このままじゃ一年間順番待ち、なんてことになりかねねぇだろ?」
確かに、数日間の予約のために何年も待たなきゃいけないってのは、こっちとしても心苦しい。
それに、申し込みに来た人達は今すぐにでも鍛えてもらいたいという一念で来るんだろうし。
「例えばな、誰かがフィールドだけで、魔物何体かと訓練したいとする」
「ああ」
「ダンジョンは空いてるわけだよ。普段の、アイテム探しの連中はいるとしてもな?」
「まぁそうだな」
「アラタんとこの魔物何体かは、フィールドで訓練に付き添ってるが、それ以外は手が空いてるわけだ」
「まぁそうだな」
こいつの言ってることは合ってる。
間違いはない。
「そこで、順番が次以降の冒険者達の中で、手が空いてる魔物達との訓練をダンジョンでやりたいって奴なら、前の申し込みの奴らと同時に訓練ができるんじゃねぇの? 場所も相手もかぶらねぇんだから」
「ふむ……」
テンちゃんとライムとモーナーが、フィールドでの訓練にお願いされたとする。
ダンジョンでクリマーとマッキーとコーティに、訓練をお願いしたい奴がいたとする。
どっちも同じ期間……例えば、どちらからも一日だけお願いされたとする。
これまで通りのスケジュールなら、この二組の次の申し込みはその日と次の日は予定が塞がり、予約は二日後になるわけだ。
だがこの提案に乗れば、二組の訓練はこの日に同時に行われるから、二日後になる予定が翌日に短縮される。
条件が揃えば、十日後まで予定が塞がってたのが五日後にまで短縮される。
その十日間、特訓する連中が全員半日で終わるとするなら、十日間待ちぼうけの申請者の順番待ちは三日間まで短縮される。
ダブルブッキングが怖いんだが……。
「ダブルブッキングなんか、別にいいんじゃね? 後者の申請者は前者の予定に合わせりゃ、効率は落ちるかもしれんが、長い順番待ちでくたびれるよりはましだと思うぜ?」
「い……いいのか?」
後ろの申請者達から同意の声が上がった。
馬車や竜車のダブルブッキングとはわけが違う。
相乗り自由な乗車券じゃねぇか。しかも、ある程度なら相乗り可能なら、確かに順番待ちが長くなる辛さよりはましだ、と。
「それに、アラタは受付のほかにおにぎり作りとかもあるだろ? みんな、あんたの仕事が大変になるってことくらいは分かるさ。それくらいのミス、笑って許せるレベルだぜ?」
「料金が倍になるようなミスよりは、確かにはるかにマシだよな」
……料金は申請者には三通り。
日程は、半日か一日かの二通り。
訓練の相手は何人か。
そして何日間続けるかで倍になっていく。
それだけじゃねぇか。
……大丈夫だと思うけど。
計算ミスがあったら、発見次第修正すればいい……よな?
※※※※※ ※※※※※
けど、七日後と言っちゃったこともあるし、おそらくそれに合わせて彼ら……彼女らも休暇の予定を立ててるだろう。
一日に複数の依頼を引き受けるのは、親衛隊の終了日の後からにしよう。
その親衛隊はというと、その初日。
「とりあえず、そっちからは誰か五人くらいお願いしようかしら。三対五の集団戦。半日それで様子見してそれで具合が良ければそのまま三日間続行。物足りなければさらに追加で」
そしてお昼休み。
「ごめんなさい、やっぱりそっち、三人で。三対三で、午後から三日間お願いするわ。……あんた達……いくら訓練でも、相手をなめてかかっちゃダメでしょっ」
流石リーダー。
息切れしまくりの二人と比べて、気落ちしているのみ。
かなりやられたらしい。
で、こっち側の五人のテンちゃん、マッキー、クリマー、サミー、モーナーは……。
「久々に楽しめたわねー」
「面白かったぞお」
「でも、午後から二人減らされるんですよね?」
「あたし、午後もやりたいなー」
「ミッ」
楽しい時間を過ごせた、といった感。
しかし、疲れを何とか癒して気持ちを新たにした午後の訓練も、同数対決も圧倒されたっぽい。
そして三日後。
「お疲れ様。初日の昼の変更の時に申し込み直した通り、こちらの人数三人が一日分。これを三日分なので延べ人数九人分をベテラン料金三万円をかけまして二十七万円に、二人が半日分の三万円で三十万円になります」
「えっと、それ、支払ったわよね?」
ルミーラとやらは、三日間部下の引率並びに付き添いっぽい立場だったようだ。
他の九人は、午前午後と二回に分けての三日間の六回分にローテーションを組ませてたようだった。
半日休みの制度にして、何とかやりくりしてたようだったが、その半日の訓練ですら一回ごとに全員へとへと。
俺からすれば、お疲れ様しか言葉が出てこない。
が、ほかに出てくるものもある。
「えー、それでですね。訓練の日程無事終了で、そのお祝いとして……お祝い金十万円贈呈です」
「え?」
「へ?」
「何それ?」
三人の目が点になってる。
まぁ無理もないか。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる