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王宮動乱編
集団戦の人気がおにぎりを上回る その7
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米の収穫からのおにぎり作り。
陳列に販売。
それに加えて、集団戦の申し込み受け付けからの申請者の確認に、訓練終了後の手続き。
ときどきドーセンとこの米の選別。
誰が並ぶ列のどこにいる、だなんて気配の察知まで気が回るわけがない。
ただ、しばらくは集団戦の受け付けを休止することで、俺の負担はかなり楽になった。
もっとも訓練日は続いてるし、訓練が行われてるということは、開始前と終了後の手続きの仕事はあるわけで、そこんとこは今までと変わらない。
だが、一日の最後の訓練を終えた冒険者チームがその手続きをする頃には、おにぎりを買う客はもう来ない。
店の前には、仲間達とその冒険者達だけしかいない。
一日の仕事の終わり。
背伸びも気兼ねなくできる瞬間。
「……はい、ということで、お疲れ様でした。しばらく受付してないが、再開したらいつでも来てもいいからな」
「ゼェ……ゼェ……あり……がと……ざしたぁ……」
「ハァ、ハァ……あ、あい……れい……しま……す……」
ベテラン五人は祝い金を受け取った後、脱力するままに頭を下げてから立ち去っていった。
ベテランも新人と同じく、訓練が終わって手続きを済ませた後も息切れが止まらない。
つくづく加減が上手い奴らだよなぁ。
「さて、今日のお仕事もこれで終わりだね。ということで、晩ご飯ターイムっ。アラタぁ、注文するよー」
「ほんとお前らはいつも元気だよな。とりあえずお前は干し草だろ」
「干し草は好きだけど、それだけじゃ足りないんだってば。ほかにはぁ……」
「オニクタベタイナー。ショウガヤキッテイウンダッケ?」
ライムは随分舌が肥えた。
「あたしは、アラタのおにぎりだけでもいいんだけど」
「一応栄養面も考えようよ、コーティ。あたしは魚料理がいいな。ドーセンさんとこで何があったっけ?」
「ヨウミい、コーティのお母さんみたいだなあ。俺もお、肉料理がいいけどお、野菜も欲しいなあ。野菜炒めにい、アラタのおにぎりもお」
「あたしもモーナーと同じのにしようかな」
「量も同じでいいよねえ? マッキーい」
「そんなに食えるかっ!」
晩飯前から賑やかだ。
ま、そういうのも嫌いじゃないが……。
「ミッ、ミッ」
「サミーは相変わらずアラタさんのおにぎりだけ、ですか? ヨウミさんじゃないですけど、ほかにもいろいろ食べないと」
「とはいえ、ドーセンとこのメニュー、そこまでいろいろないんだよなぁ。俺は丼物で……って、客、かな?」
って……時間はもう営業時間が終わるってのに、こっちに向かって誰か来る。
「あ、シアンの分も注文取らないと」
「親衛隊の皆さんの分も、ですね」
「コンバンアタリ、キソウダヨネ」
間が長くても二日くらい。
あいつらが最近来たのは四日前。
ペースだけで言えば、そろそろ来てもおかしくはない。
こっちは突然来てもらっても構わんが、シアンは几帳面な性格なのか、毎回俺らに連絡を寄こす。
が、今日も来る予告はなかった。
それに気配が違う。
「ま、営業時間外だ。気にしなくてもいいだろ。あとはミアーノとンーゴの注文はっと……」
「あたし、一っ飛びで聞いてくる」
「聞いた注文、覚えられんのか?」
馬鹿天馬だしなぁ。
「むー。それくらいは分かるもんっ。大体あの二人も、注文だいたい決まってるしね」
「どいつもこいつも偏食だよなぁ」
「アラタもでしょ。野菜、肉、魚万遍なく摂れる、とか言いながらほとんど丼飯のメニューしか頼まないじゃない」
「うるせぇな。好きなもんは好きなんだよっ」
お前らは訓練の相手で体力も使ってんだろうが!
俺はそうでもねぇからな。
「あー、アラタ、とやらの店はここでいいのか?」
その気配の持ち主は他数人と一緒にやってきた。
その連中の気配も感じてはいたが、営業する気はないからどうでもいい。
にしてもいきなり呼び捨てか。
物言いも横柄で、何か気に入らん。
「あぁ。けど今日の営業は終わりだ。必要なもんがあるなら明日来てくれ」
「貴様! この方になんて口を!」
こいつが引き連れてきた連中の一人から、これまたいきなり怒鳴られた。
何なんだ?
「あー、よい。構わん。……魔物達との集団戦の訓練の申し込みに来ただけだ」
「そっちの受け付けもしばらく休止。受付を受領しても、半月以上は待たせてしまうんで」
「なぁに、順番を早めてもらえばこっちは構わん」
何を言ってるんだこいつは。
「あんたが何者か知らんが、訓練の申し込み、おにぎりの買い物に来たってんなら、まずこっちのルールに」
「口の利き方に気を付けろ! 貴様ごときが軽々しく」
「おい、お前達。少し待て。……このわしがこうしてこんな田舎にまでやって来て、直々に申し込みに来たのだ。受け付けるべきだろう?」
わし、か。
まぁ……初老というには若そうだが。
頭にはシルクハット。
細めの輪郭に細めの体格。
左右に伸びた口ひげは毛先まで丁寧にそろえてて、左右それぞれの方向に上向きに伸びている。
あごひげも、それなりにおしゃれっぽく整えられている。
服装も、冒険者の装備とは程遠い、どこぞの公式の場に相応しい背広の一種って感じがする。
集団戦の申し込みに来た者としては……そんな丁々発止にふさわしい風格ではなさそうなんだかな。
別の意味での修羅場に慣れてそうな……。
どのみち関わり合いになりたくない。
「魔物達が大勢いるってのは、ここじゃなくてもあるらしい。多くはないって話だが、都会にならいくつかそんな組織とかあるんじゃねぇの? あんたが気に食わなそうなこんな田舎に、わざわざ足を運ぶこともなかろうに」
「貴様いい加減に」
「はいはい、周りの方々も怒り心頭のようだが、まずそっちが先に名乗るべきなんじゃねぇの? 俺らのことは名乗らずとも分かってそうだしな」
「ふん。このわしを知らんとは。地域ばかりじゃなく性根まで田舎者か。わしは、日本大王国軍事統括大臣の、ミシャーレ・ノーマンだ」
……はい?
陳列に販売。
それに加えて、集団戦の申し込み受け付けからの申請者の確認に、訓練終了後の手続き。
ときどきドーセンとこの米の選別。
誰が並ぶ列のどこにいる、だなんて気配の察知まで気が回るわけがない。
ただ、しばらくは集団戦の受け付けを休止することで、俺の負担はかなり楽になった。
もっとも訓練日は続いてるし、訓練が行われてるということは、開始前と終了後の手続きの仕事はあるわけで、そこんとこは今までと変わらない。
だが、一日の最後の訓練を終えた冒険者チームがその手続きをする頃には、おにぎりを買う客はもう来ない。
店の前には、仲間達とその冒険者達だけしかいない。
一日の仕事の終わり。
背伸びも気兼ねなくできる瞬間。
「……はい、ということで、お疲れ様でした。しばらく受付してないが、再開したらいつでも来てもいいからな」
「ゼェ……ゼェ……あり……がと……ざしたぁ……」
「ハァ、ハァ……あ、あい……れい……しま……す……」
ベテラン五人は祝い金を受け取った後、脱力するままに頭を下げてから立ち去っていった。
ベテランも新人と同じく、訓練が終わって手続きを済ませた後も息切れが止まらない。
つくづく加減が上手い奴らだよなぁ。
「さて、今日のお仕事もこれで終わりだね。ということで、晩ご飯ターイムっ。アラタぁ、注文するよー」
「ほんとお前らはいつも元気だよな。とりあえずお前は干し草だろ」
「干し草は好きだけど、それだけじゃ足りないんだってば。ほかにはぁ……」
「オニクタベタイナー。ショウガヤキッテイウンダッケ?」
ライムは随分舌が肥えた。
「あたしは、アラタのおにぎりだけでもいいんだけど」
「一応栄養面も考えようよ、コーティ。あたしは魚料理がいいな。ドーセンさんとこで何があったっけ?」
「ヨウミい、コーティのお母さんみたいだなあ。俺もお、肉料理がいいけどお、野菜も欲しいなあ。野菜炒めにい、アラタのおにぎりもお」
「あたしもモーナーと同じのにしようかな」
「量も同じでいいよねえ? マッキーい」
「そんなに食えるかっ!」
晩飯前から賑やかだ。
ま、そういうのも嫌いじゃないが……。
「ミッ、ミッ」
「サミーは相変わらずアラタさんのおにぎりだけ、ですか? ヨウミさんじゃないですけど、ほかにもいろいろ食べないと」
「とはいえ、ドーセンとこのメニュー、そこまでいろいろないんだよなぁ。俺は丼物で……って、客、かな?」
って……時間はもう営業時間が終わるってのに、こっちに向かって誰か来る。
「あ、シアンの分も注文取らないと」
「親衛隊の皆さんの分も、ですね」
「コンバンアタリ、キソウダヨネ」
間が長くても二日くらい。
あいつらが最近来たのは四日前。
ペースだけで言えば、そろそろ来てもおかしくはない。
こっちは突然来てもらっても構わんが、シアンは几帳面な性格なのか、毎回俺らに連絡を寄こす。
が、今日も来る予告はなかった。
それに気配が違う。
「ま、営業時間外だ。気にしなくてもいいだろ。あとはミアーノとンーゴの注文はっと……」
「あたし、一っ飛びで聞いてくる」
「聞いた注文、覚えられんのか?」
馬鹿天馬だしなぁ。
「むー。それくらいは分かるもんっ。大体あの二人も、注文だいたい決まってるしね」
「どいつもこいつも偏食だよなぁ」
「アラタもでしょ。野菜、肉、魚万遍なく摂れる、とか言いながらほとんど丼飯のメニューしか頼まないじゃない」
「うるせぇな。好きなもんは好きなんだよっ」
お前らは訓練の相手で体力も使ってんだろうが!
俺はそうでもねぇからな。
「あー、アラタ、とやらの店はここでいいのか?」
その気配の持ち主は他数人と一緒にやってきた。
その連中の気配も感じてはいたが、営業する気はないからどうでもいい。
にしてもいきなり呼び捨てか。
物言いも横柄で、何か気に入らん。
「あぁ。けど今日の営業は終わりだ。必要なもんがあるなら明日来てくれ」
「貴様! この方になんて口を!」
こいつが引き連れてきた連中の一人から、これまたいきなり怒鳴られた。
何なんだ?
「あー、よい。構わん。……魔物達との集団戦の訓練の申し込みに来ただけだ」
「そっちの受け付けもしばらく休止。受付を受領しても、半月以上は待たせてしまうんで」
「なぁに、順番を早めてもらえばこっちは構わん」
何を言ってるんだこいつは。
「あんたが何者か知らんが、訓練の申し込み、おにぎりの買い物に来たってんなら、まずこっちのルールに」
「口の利き方に気を付けろ! 貴様ごときが軽々しく」
「おい、お前達。少し待て。……このわしがこうしてこんな田舎にまでやって来て、直々に申し込みに来たのだ。受け付けるべきだろう?」
わし、か。
まぁ……初老というには若そうだが。
頭にはシルクハット。
細めの輪郭に細めの体格。
左右に伸びた口ひげは毛先まで丁寧にそろえてて、左右それぞれの方向に上向きに伸びている。
あごひげも、それなりにおしゃれっぽく整えられている。
服装も、冒険者の装備とは程遠い、どこぞの公式の場に相応しい背広の一種って感じがする。
集団戦の申し込みに来た者としては……そんな丁々発止にふさわしい風格ではなさそうなんだかな。
別の意味での修羅場に慣れてそうな……。
どのみち関わり合いになりたくない。
「魔物達が大勢いるってのは、ここじゃなくてもあるらしい。多くはないって話だが、都会にならいくつかそんな組織とかあるんじゃねぇの? あんたが気に食わなそうなこんな田舎に、わざわざ足を運ぶこともなかろうに」
「貴様いい加減に」
「はいはい、周りの方々も怒り心頭のようだが、まずそっちが先に名乗るべきなんじゃねぇの? 俺らのことは名乗らずとも分かってそうだしな」
「ふん。このわしを知らんとは。地域ばかりじゃなく性根まで田舎者か。わしは、日本大王国軍事統括大臣の、ミシャーレ・ノーマンだ」
……はい?
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