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王宮動乱編
王宮異変 そして、あの店へ
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おそらくあいつは、国王になる決心がついた。
今までは代理だったから、俺んとこにお忍びで来るくらいの余裕はあったろうが、おそらく今後はそんなこともできまい。
袂を分かつっつーのとは違うが、俺に構ってる暇はなくなるだろうよ。
嫌味を言うつもりはないが、上流階級は俺達とは住む世界が違うんだ。
「シアンさんも仲間ですよね? 気にならないんですか? だって、あの大臣みたいな人、今後も現れないとも……」
「心配ねぇよ。あいつは自分で立ち上がるようになれたんだ。グライダーって知ってるか? 牽引車なしじゃ飛べない飛行機なんだが、牽引車の俺らはあいつが飛ぶ手伝いをするだけ。牽引車は空を飛べねぇんだ。グライダーが空を飛んだら、その姿を下から見上げるだけ。逆にあいつから、『無事に帰れただろうか?』って心配されねぇようにしねえとな」
「えっと……ぐらいだあ……って……何?」
そうか。
この世界に飛行機はなかったっけ。
グライダーを知らないのも当然か。
物の例えが悪かったな。
でも他に例えようがねぇなぁ。
「あー……あいつにゃ進むべき道があり、俺らの生活には関わることかもしれん。けど俺らの生活があいつがその道を進む手助けにはなりづらくなったってこと。あいつは俺らから卒業したってことだ」
「そんな……それって、シアンが言ってたことなの?」
「俺には特に何にも話してねぇよ? だが、察しろよ。一国の責を背負うんだぜ? 俺が首突っ込むことで、その重さが半分くらいまで減らせるってんなら、今まで通りでも構わねぇよ? だがあいつに関わることが俺らの仕事じゃねぇし、しなきゃならねぇことじゃねぇ。遠くから見守ってることの方が重要だってこともあるもんだ」
どうしても情に走りたがるんだろうな。
雰囲気が暗くなる。
いくら上に上がって外の光が下よりも届きやすいとは言え、まだ辺りは暗い地下五階。
地上からは、シアンがすっかり取り戻した覇気が感じ取れる。
かすかながら声も聞こえてくる。
大方シアンの演説でも聞いて、周りは静まり返って、ちょび髭はぐうの音も出ない、そんな状態だろう。
「ほらほら、みんな無事だったんだし、まだ塔のてっぺんの方は収まってないだろうがおそらくみんな無事だ。元気よくうちに帰ろうぜ。ヨウミが心配しながらお前らの帰り待ってんだからよ」
「う……うん……」
「……デモ、サミシイナ」
それでも、俺ですら途中からすっかりその存在すら忘れていたおにぎりと飲み物で腹を満たしたみんな。
一緒に地上に出る。
目に入った光景の一部には、後ろにはクリットとインカー並びに救出済みの親衛隊を控えさせて、肉声で演説かましてるシアンがいた。
そんな小さい体で、よくもまぁ王宮にまで届きそうな声が出るもんだ。
紅丸も殊勝ながら下船して、神妙な顔でシアンの話を聞いている。
しょーがねぇよ、ライム。
だがここは、シアンの新たな人生の門出を祝いながら去るのが筋ってもんだろうよ。
それに、もう俺達に出番はねぇ。
なんせ……。
いや、こりゃシアンの人徳だろうな。
あのちょび髭、どんな泣き顔見せてくれるんだろうなぁ。
見てみたい気はするが、俺達はもうここから退散だ。
なんせ、シアンが求める俺の役割は、あいつらがやってくれる。
あいつらも竜車使ってきたんだろうな。
ということは……そうか。
泉現象が起きて、船が落ちてきて、それから一人ずつ助けてここまで来るまでかなり時間かかったもんな。
それくらいの時間はあるか。
「さて、どうやって帰るかな。馬車や竜車じゃ無理だよな」
「オレガイルカラナ」
ンーゴの巨体は人が乗れるような車には収まり切れん。
連れ去られた時ゃ、随分でかい檻を用意してたみたいだったからな。
ってことは、端から連れ去ることにしてたってことだよな。
……権力者が、俺らを好き放題できると思うなや?
「ジャ、ツチノナカヲ、マッスグススンデカエロウカ。ミンナ、オレノナカニイレラレルシ」
「お、おぉ、その手があったか」
「じゃあ地下から上がってきた坂道から行けるんじゃない?」
「馬鹿天馬にしちゃ、いいこと思いついたな」
「どさくさに紛れてバカって言うなーっ」
「じゃ、急いで帰ろ?ヨウミ、心配してんでしょ? 油断してたあたし達も悪かったしなぁ」
「悪いのは、あの大臣とやらですよ、マッキー」
「ヨウミに連絡しとけよ? アラタ。あたし達、通話機取り上げられちゃったからさ」
「コーティ、つくづく上から目線だな。ま、結果報告はするつもりだったからな。……おぅ、ヨウミ? あぁ、心配ない。全員無事だ。あぁ、今から戻るから。まだゴタゴタしてるっぽいが、シアン達に任せて問題ない。あ? ゲンオウ達とか? シュルツにエージ達? あぁ、やっぱりそうだったか。そりゃ気を遣わせちまったな。もっとも世話になったのは俺じゃなくてシアンだろうから、礼もシアンに丸投げするか。じゃあまた後でな」
会わなかったのは一日だけだが、こいつらとの会話、何日もしてないような気がするな。
短期間でいろいろありすぎだわ。
とっとと帰ってゴロゴロしてぇよ。
今までは代理だったから、俺んとこにお忍びで来るくらいの余裕はあったろうが、おそらく今後はそんなこともできまい。
袂を分かつっつーのとは違うが、俺に構ってる暇はなくなるだろうよ。
嫌味を言うつもりはないが、上流階級は俺達とは住む世界が違うんだ。
「シアンさんも仲間ですよね? 気にならないんですか? だって、あの大臣みたいな人、今後も現れないとも……」
「心配ねぇよ。あいつは自分で立ち上がるようになれたんだ。グライダーって知ってるか? 牽引車なしじゃ飛べない飛行機なんだが、牽引車の俺らはあいつが飛ぶ手伝いをするだけ。牽引車は空を飛べねぇんだ。グライダーが空を飛んだら、その姿を下から見上げるだけ。逆にあいつから、『無事に帰れただろうか?』って心配されねぇようにしねえとな」
「えっと……ぐらいだあ……って……何?」
そうか。
この世界に飛行機はなかったっけ。
グライダーを知らないのも当然か。
物の例えが悪かったな。
でも他に例えようがねぇなぁ。
「あー……あいつにゃ進むべき道があり、俺らの生活には関わることかもしれん。けど俺らの生活があいつがその道を進む手助けにはなりづらくなったってこと。あいつは俺らから卒業したってことだ」
「そんな……それって、シアンが言ってたことなの?」
「俺には特に何にも話してねぇよ? だが、察しろよ。一国の責を背負うんだぜ? 俺が首突っ込むことで、その重さが半分くらいまで減らせるってんなら、今まで通りでも構わねぇよ? だがあいつに関わることが俺らの仕事じゃねぇし、しなきゃならねぇことじゃねぇ。遠くから見守ってることの方が重要だってこともあるもんだ」
どうしても情に走りたがるんだろうな。
雰囲気が暗くなる。
いくら上に上がって外の光が下よりも届きやすいとは言え、まだ辺りは暗い地下五階。
地上からは、シアンがすっかり取り戻した覇気が感じ取れる。
かすかながら声も聞こえてくる。
大方シアンの演説でも聞いて、周りは静まり返って、ちょび髭はぐうの音も出ない、そんな状態だろう。
「ほらほら、みんな無事だったんだし、まだ塔のてっぺんの方は収まってないだろうがおそらくみんな無事だ。元気よくうちに帰ろうぜ。ヨウミが心配しながらお前らの帰り待ってんだからよ」
「う……うん……」
「……デモ、サミシイナ」
それでも、俺ですら途中からすっかりその存在すら忘れていたおにぎりと飲み物で腹を満たしたみんな。
一緒に地上に出る。
目に入った光景の一部には、後ろにはクリットとインカー並びに救出済みの親衛隊を控えさせて、肉声で演説かましてるシアンがいた。
そんな小さい体で、よくもまぁ王宮にまで届きそうな声が出るもんだ。
紅丸も殊勝ながら下船して、神妙な顔でシアンの話を聞いている。
しょーがねぇよ、ライム。
だがここは、シアンの新たな人生の門出を祝いながら去るのが筋ってもんだろうよ。
それに、もう俺達に出番はねぇ。
なんせ……。
いや、こりゃシアンの人徳だろうな。
あのちょび髭、どんな泣き顔見せてくれるんだろうなぁ。
見てみたい気はするが、俺達はもうここから退散だ。
なんせ、シアンが求める俺の役割は、あいつらがやってくれる。
あいつらも竜車使ってきたんだろうな。
ということは……そうか。
泉現象が起きて、船が落ちてきて、それから一人ずつ助けてここまで来るまでかなり時間かかったもんな。
それくらいの時間はあるか。
「さて、どうやって帰るかな。馬車や竜車じゃ無理だよな」
「オレガイルカラナ」
ンーゴの巨体は人が乗れるような車には収まり切れん。
連れ去られた時ゃ、随分でかい檻を用意してたみたいだったからな。
ってことは、端から連れ去ることにしてたってことだよな。
……権力者が、俺らを好き放題できると思うなや?
「ジャ、ツチノナカヲ、マッスグススンデカエロウカ。ミンナ、オレノナカニイレラレルシ」
「お、おぉ、その手があったか」
「じゃあ地下から上がってきた坂道から行けるんじゃない?」
「馬鹿天馬にしちゃ、いいこと思いついたな」
「どさくさに紛れてバカって言うなーっ」
「じゃ、急いで帰ろ?ヨウミ、心配してんでしょ? 油断してたあたし達も悪かったしなぁ」
「悪いのは、あの大臣とやらですよ、マッキー」
「ヨウミに連絡しとけよ? アラタ。あたし達、通話機取り上げられちゃったからさ」
「コーティ、つくづく上から目線だな。ま、結果報告はするつもりだったからな。……おぅ、ヨウミ? あぁ、心配ない。全員無事だ。あぁ、今から戻るから。まだゴタゴタしてるっぽいが、シアン達に任せて問題ない。あ? ゲンオウ達とか? シュルツにエージ達? あぁ、やっぱりそうだったか。そりゃ気を遣わせちまったな。もっとも世話になったのは俺じゃなくてシアンだろうから、礼もシアンに丸投げするか。じゃあまた後でな」
会わなかったのは一日だけだが、こいつらとの会話、何日もしてないような気がするな。
短期間でいろいろありすぎだわ。
とっとと帰ってゴロゴロしてぇよ。
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