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王宮動乱編
王宮異変 後日談 そしてまたいつもの毎日が
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戴冠式の途中で退席した。見世物とか何とかいろいろあったっぽいが、おそらく俺は目的を果たした。
いや、果たしてもらった、のか。
「み、皆さま! え、えぇと……式の後、晩さん会がございまして、皆さま方も入場できる会場で……」
「おりゃあ、あんまし興味ねぇなぁ」
「オレモ」
「のんびりしたいよね」
「オウチノホウガ、ユックリデキル」
「ふん、アラタのおにぎりの方がかなりマシだと思うわ。味については、そっちの方がはるかに上でしょうけど」
「わ、私はともかく、弟は、ここまでの人混みはまだ苦手のままですし……」
みんなも帰りたがってるな。
堅っ苦しいのは苦手ってのは同じらしい。
「久々に羽根伸ばして、お酒飲みたかったかなー」
忘れてた。
ヨウミはお酒、好きだったんだっけ。
自制は利くみたいだが。
けど今回は多分。
「ただ酒狙いか」
「分かる?」
「飲める分だけもらって帰ろうか」
「できるの?!」
「言ってみただけだ。流石に無理に決まってんだろ。俺らしかリクエスト出してなけりゃ分からんが」
案内の兵が苦笑い。
まぁそれしか反応のしようがないか。
王直々の招待状をもらった客相手に、変にツッコミしようものなら首が飛ぶ。
なんて考えてんだろうな。
そんなグダグダな会話をしているうちに、場内の緊張感が緩やかになった。
休憩時間になったみてぇだな。
そしてこっちに向けて、強烈な親近感を発してる奴が近づいてきた。
言わずと知れた、あいつだ。
「やあ、アラタ。やっぱりもう帰るのか? みんなと一緒に夕食でも、と思ったんだがね」
「みんな、の定義が不明だな」
近づいてきたシアンの周りには、きらびやかな衣装を着けた連中がうじゃうじゃ。
上流階級と呼ばれる方々なんだろうな。
俺らにゃ無縁だ。
「確か、ミナミ・アラタとおっしゃいましたかな? 初めまして。私は」
うるせぇ。
取り巻きの一人から声をかけられたが、ここで知り合いが増えて何になる。
俺からこいつらに向かって、接点を増やそうとかする気は全くねぇよ。
そっちから来るのは構わねぇけど、そんな上流階級がおにぎりを買い求めるだけのために、この国の端っこまでやってくる気もねぇだろうしよ。
王から名指しで、しかも仲間になるなどと言われた人物と仲良くして損はない、とか考えてんじゃねぇの?
あーやだやだ。
人脈欲とでも言うのかね、そんなしがらみで身動きが取れなくなるなんざ、ほんと願い下げだっての!
「あぁ、もう帰る。シアン、お前の配慮には感謝しとく。お前のおかげでこいつらは、命の危機に注意しながら生活する必要はなくなりそうだ」
取り巻き達が慌てふためいてる。
もちろんその態度も表情も表に出してないが、その感情は俺だけには丸わかりだ。
大方俺を取り込むことで王とより近しい立場になりたいんだろうよ。
「そうか。ところで一つ願いがあるんだが」
「願い?」
「あぁ、大したことじゃない。式典に来てくれた者達全員に、城門の出口で贈り物を配っている。ただ、みんなには一人一人に向けて、ある物を用意している。だがそれは贈り物じゃない。うーん……ここでは、受け取ってもらいたい物、としか言いようがないな」
その口ぶりからしても、ホント大したもんではないらしい。
あ、シアンにとっては、だな。
「あーはいはい。どうでもいいもんならもらっとくわ。けど高すぎる物なら拒否する。そこに付け込まれたら困るからな」
「高いと言えば高いかもしれん。そうでもないと言えばそうでも……あ、アラタとヨウミには用意してない。他のみんなに用意してる物なんだ」
なんだそりゃ?
ま、中身を確認してからでいいか。
「あー、アラタ殿。帰りの足は私が用意しますぞ。少々お待ちを」
「いやいや、ワシが」
「皆様方の手を煩わせるわけにはいきません。その役目は私が」
いや……こいつら、シアンのことも心にあるが……。
そうか。
みんな、レアな種族だから、その繋がりを狙ってレアアイテム狙ってやがるのか。
多分シアンに釘を刺されたから、みんなじゃなくて同種の関係から辿るつもりだな?
欲深さが醜い上にうざってー。
とっとと退散だ。
……なんかシアンがニヤニヤ笑ってる。
こいつらの勧誘をどう断るか楽しみにしてるって顔してやがる。
趣味悪ぃやつだな。
「城門の外ってば、あのでっけぇ穴があるとこだよな? ならちょうどいいや。みんなでンーゴの中に入って最短距離で帰れるわ」
取り巻き達がざわつく。
恐れおののくのも無理はない。
どでかいワームの中に入るって聞いたら、そりゃ食われるだの飲み込まれるだの、そんな連想しか頭の中から出てこないだろうからな。
※※※※※ ※※※※※
で、村に戻ってきて次の日になったわけだが、余計な奴らの追跡がなかった。
どこに住んでいる、みたいなことは、シアンは喋ってなかったからな。
それにしても、ンーゴの中に入って行くところを初めて見た連中の顔の面白いことったらなかったな。
これで平穏な毎日を送れるってもんだ。
もっとも現象は相変わらず起きるだろうから、心底のんびりって訳にはいかんだろうが……。
うん。
のんびりさせてもらえなかった。
「アラターっ! 中継見てたぞー!」
「新しい王のナレーション、よかったぞー!
「みんなの入場場面も……ちょっと泣けたよぉ」
「何だよお前ら、会場に行かなかったのか?」
「お前、式典に行ってきたのかよ!」
「羨ましすぎるッッッ!」
「私も行ってきた。抽選で招待状当たっちゃったから」
「嘘だろおおぉぉ! 俺、十通くらい申し込み出したのに全部外れた……」
「たったの十で当たるかよ、お前……」
「私、申し込んだの一回だけだけど?」
「何だよそのヒットマンぶりはぁ!」
「そりゃ私、射手だもん」
「マジでアーチャーかよっ!」
またいつもの騒がしい日々が……なんですぐにやってくるんだ。
ホントにのんびりさせてくれ!
いや、果たしてもらった、のか。
「み、皆さま! え、えぇと……式の後、晩さん会がございまして、皆さま方も入場できる会場で……」
「おりゃあ、あんまし興味ねぇなぁ」
「オレモ」
「のんびりしたいよね」
「オウチノホウガ、ユックリデキル」
「ふん、アラタのおにぎりの方がかなりマシだと思うわ。味については、そっちの方がはるかに上でしょうけど」
「わ、私はともかく、弟は、ここまでの人混みはまだ苦手のままですし……」
みんなも帰りたがってるな。
堅っ苦しいのは苦手ってのは同じらしい。
「久々に羽根伸ばして、お酒飲みたかったかなー」
忘れてた。
ヨウミはお酒、好きだったんだっけ。
自制は利くみたいだが。
けど今回は多分。
「ただ酒狙いか」
「分かる?」
「飲める分だけもらって帰ろうか」
「できるの?!」
「言ってみただけだ。流石に無理に決まってんだろ。俺らしかリクエスト出してなけりゃ分からんが」
案内の兵が苦笑い。
まぁそれしか反応のしようがないか。
王直々の招待状をもらった客相手に、変にツッコミしようものなら首が飛ぶ。
なんて考えてんだろうな。
そんなグダグダな会話をしているうちに、場内の緊張感が緩やかになった。
休憩時間になったみてぇだな。
そしてこっちに向けて、強烈な親近感を発してる奴が近づいてきた。
言わずと知れた、あいつだ。
「やあ、アラタ。やっぱりもう帰るのか? みんなと一緒に夕食でも、と思ったんだがね」
「みんな、の定義が不明だな」
近づいてきたシアンの周りには、きらびやかな衣装を着けた連中がうじゃうじゃ。
上流階級と呼ばれる方々なんだろうな。
俺らにゃ無縁だ。
「確か、ミナミ・アラタとおっしゃいましたかな? 初めまして。私は」
うるせぇ。
取り巻きの一人から声をかけられたが、ここで知り合いが増えて何になる。
俺からこいつらに向かって、接点を増やそうとかする気は全くねぇよ。
そっちから来るのは構わねぇけど、そんな上流階級がおにぎりを買い求めるだけのために、この国の端っこまでやってくる気もねぇだろうしよ。
王から名指しで、しかも仲間になるなどと言われた人物と仲良くして損はない、とか考えてんじゃねぇの?
あーやだやだ。
人脈欲とでも言うのかね、そんなしがらみで身動きが取れなくなるなんざ、ほんと願い下げだっての!
「あぁ、もう帰る。シアン、お前の配慮には感謝しとく。お前のおかげでこいつらは、命の危機に注意しながら生活する必要はなくなりそうだ」
取り巻き達が慌てふためいてる。
もちろんその態度も表情も表に出してないが、その感情は俺だけには丸わかりだ。
大方俺を取り込むことで王とより近しい立場になりたいんだろうよ。
「そうか。ところで一つ願いがあるんだが」
「願い?」
「あぁ、大したことじゃない。式典に来てくれた者達全員に、城門の出口で贈り物を配っている。ただ、みんなには一人一人に向けて、ある物を用意している。だがそれは贈り物じゃない。うーん……ここでは、受け取ってもらいたい物、としか言いようがないな」
その口ぶりからしても、ホント大したもんではないらしい。
あ、シアンにとっては、だな。
「あーはいはい。どうでもいいもんならもらっとくわ。けど高すぎる物なら拒否する。そこに付け込まれたら困るからな」
「高いと言えば高いかもしれん。そうでもないと言えばそうでも……あ、アラタとヨウミには用意してない。他のみんなに用意してる物なんだ」
なんだそりゃ?
ま、中身を確認してからでいいか。
「あー、アラタ殿。帰りの足は私が用意しますぞ。少々お待ちを」
「いやいや、ワシが」
「皆様方の手を煩わせるわけにはいきません。その役目は私が」
いや……こいつら、シアンのことも心にあるが……。
そうか。
みんな、レアな種族だから、その繋がりを狙ってレアアイテム狙ってやがるのか。
多分シアンに釘を刺されたから、みんなじゃなくて同種の関係から辿るつもりだな?
欲深さが醜い上にうざってー。
とっとと退散だ。
……なんかシアンがニヤニヤ笑ってる。
こいつらの勧誘をどう断るか楽しみにしてるって顔してやがる。
趣味悪ぃやつだな。
「城門の外ってば、あのでっけぇ穴があるとこだよな? ならちょうどいいや。みんなでンーゴの中に入って最短距離で帰れるわ」
取り巻き達がざわつく。
恐れおののくのも無理はない。
どでかいワームの中に入るって聞いたら、そりゃ食われるだの飲み込まれるだの、そんな連想しか頭の中から出てこないだろうからな。
※※※※※ ※※※※※
で、村に戻ってきて次の日になったわけだが、余計な奴らの追跡がなかった。
どこに住んでいる、みたいなことは、シアンは喋ってなかったからな。
それにしても、ンーゴの中に入って行くところを初めて見た連中の顔の面白いことったらなかったな。
これで平穏な毎日を送れるってもんだ。
もっとも現象は相変わらず起きるだろうから、心底のんびりって訳にはいかんだろうが……。
うん。
のんびりさせてもらえなかった。
「アラターっ! 中継見てたぞー!」
「新しい王のナレーション、よかったぞー!
「みんなの入場場面も……ちょっと泣けたよぉ」
「何だよお前ら、会場に行かなかったのか?」
「お前、式典に行ってきたのかよ!」
「羨ましすぎるッッッ!」
「私も行ってきた。抽選で招待状当たっちゃったから」
「嘘だろおおぉぉ! 俺、十通くらい申し込み出したのに全部外れた……」
「たったの十で当たるかよ、お前……」
「私、申し込んだの一回だけだけど?」
「何だよそのヒットマンぶりはぁ!」
「そりゃ私、射手だもん」
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ホントにのんびりさせてくれ!
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