303 / 493
王宮動乱編
アラタの、新たな事業? その6
しおりを挟む
泉や雪崩の現象から現れた魔物によって、家族を失った子供達がこの世界には数えきれないほどいるんだそうだ。
現象とは無関係の魔物との戦闘で命を落とした冒険者達もいる。
そのことで家庭の収入が途絶え困窮する遺族もいる。
仕事がないわけじゃない。
仕事との縁がないだけ、なんだそうだ。
「お試し期間は一か月にしよう。もちろん特定の人達に一か月間つきっきりで仕事させるも、他の誰かとの縁で他の仕事に転職させるも、それはアラタに任せるよ」
シアンからはそんなことを言われた。
けどな、どんな連中が手伝いに来るのか分からないってのも不安だ。
だからある程度の仕事の内容をシアンに伝えておいた。
おにぎりの店では、洗米、米運び、おにぎり作り、包みや水筒作り、金の勘定といった仕事を手伝ってもらいたい。
集団戦では、予定表作りと予定を埋めること。
温泉では、入浴客の人数の把握。
単純な作業もあるが、年端のいかない子供にも、生活するための知恵を、仕事を通しての一般常識と共に身に付けてほしい、ということで。
「じゃあヨウミ、お前は集団戦の受け付けの係の方頼むわ。こっちのメンバー選びと場所選び、相手の要望を聞きながらってことだから、そっちはその説明だけで手一杯だろ」
「うん。でもアラタは大丈夫? 温泉の受け付けとおにぎりの方の説明するんでしょ?」
「温泉の方は金銭は全く関わらねぇから大丈夫だろ。それに大人中心に教えときゃ、俺は店につきっきりでも問題ねぇだろ」
「何か不安だけど……頑張ろうね」
あ、何か久しぶりに温かい言葉を聞いた気がする。
いっつも、いろいろといじられてばかりだったからなぁ。
※※※※※ ※※※※※
就職口を探す幅を広げるための支援事業、ってことだよな。
シアンの親衛隊三人ほどに連れられてきた参加者。
参加したのかさせられたのかは分からんが、誰も彼も表情が沈んでる。
気の毒に思うが、それぞれが抱えてる個人的事情なんて知ったこっちゃない。
大人……おそらく二十代の男女二人。そして子供らは……十人くらいと思うが、数える気はしない。
自己紹介も、俺とヨウミだけで終わらせた。
そっち側の自己紹介なんか、されたって覚えてらんねぇし給与渡すこともねぇし、縁が見つかったら転職いつでもオッケーなんだし。
でもそっち側はこっちの名前覚えてもらわねぇと、何の質問もできねぇだろうからな。
温泉には大人の男と子供四人。
集団戦受付には大人の女と子供三人。
残りの子供らが店の手伝い。
「ということで、温泉の番台……受け付けは、脱衣所で混雑起こさないように、同時に利用する人数に上限を決めて受付すること。浴場は相当広いから混雑はないと思うがな。それとタオル持参してない人は立ち入り禁止。この人に貸した、この人に貸してない、っつー差別が生まれちまったらもう手に負えねぇトラブルになるから」
「はい、分かりました」
表情が暗いから、無気力な奴だと思ってたらそうでもなかった。
全員、その表情は変わらんが、何かの作業にはやる気を示してる。
大人に説明するのは気が楽だ。
理解してもらえやすいからな。
「……でも、利用客は冒険者達なんですよね? 無法者とかが来たらどうしましょう?」
「仕掛けがあるんだよ。この仕掛けを動かすと……壁が倒れる」
「は? 壁が倒れる? 何か意味があるんですか?」
「壁が倒れりゃ天井も崩れる。温泉はそのままだけど、壁や天井が崩れりゃこのフィールドの端にある、洗い場がある溜池にしかならない。そんな所に素っ裸でいたら、変な目で見られるだろ?」
「他のお客さんもその被害に遭いますよ? 大丈夫なんですか?」
「こっちの言うことを聞かない客は、他の客から袋叩きの刑に遭う。仕掛けを動かすときには場内にいる客に注意を呼び掛けりゃそれでいいさ。そのあとで俺の方に逃げ込め。あとは何とかしてやるよ。注意書きも貼ってあるし、そこまで強引に入りたがる奴ぁいねぇだろ」
その仕掛けは、脱衣場を建ててくれた冒険者達の配慮だった。
俺がするにせよ手伝いがするにせよ、非力な奴が担当するだろうから、そんな奴でも仕切れるようにってことでな。
ま、何かあったらガキらを連れてすぐにこっちに逃げ込むように言っといたし、問題ねぇだろ。
仕事の内容も単純なのしかねぇしな。
それに比べて店の方は……。
※※※※※ ※※※※※
「……まずみんなに米洗いしてもらうか。そのあとで米運び。バケツリレーでやりゃ、いくらか負担は軽くなるだろ」
店手伝いは子供ばかり。
大人なら、気持ちを切り替えて仕事にとりくむこともできるが、子供はそうはいかないらしいな。
まぁ……誰かに甘えたい年頃なのに、その相手がいないってんじゃなぁ。
けど、この事業に参加したってことは、それなりに覚悟はできてる……とは思うんだが。
無理やり参加させられたケースかもしれん。
が、その事情だって俺の知ったこっちゃねぇ。
が、その前に。
……俺の米の選別と収集作業が先だった。
現象とは無関係の魔物との戦闘で命を落とした冒険者達もいる。
そのことで家庭の収入が途絶え困窮する遺族もいる。
仕事がないわけじゃない。
仕事との縁がないだけ、なんだそうだ。
「お試し期間は一か月にしよう。もちろん特定の人達に一か月間つきっきりで仕事させるも、他の誰かとの縁で他の仕事に転職させるも、それはアラタに任せるよ」
シアンからはそんなことを言われた。
けどな、どんな連中が手伝いに来るのか分からないってのも不安だ。
だからある程度の仕事の内容をシアンに伝えておいた。
おにぎりの店では、洗米、米運び、おにぎり作り、包みや水筒作り、金の勘定といった仕事を手伝ってもらいたい。
集団戦では、予定表作りと予定を埋めること。
温泉では、入浴客の人数の把握。
単純な作業もあるが、年端のいかない子供にも、生活するための知恵を、仕事を通しての一般常識と共に身に付けてほしい、ということで。
「じゃあヨウミ、お前は集団戦の受け付けの係の方頼むわ。こっちのメンバー選びと場所選び、相手の要望を聞きながらってことだから、そっちはその説明だけで手一杯だろ」
「うん。でもアラタは大丈夫? 温泉の受け付けとおにぎりの方の説明するんでしょ?」
「温泉の方は金銭は全く関わらねぇから大丈夫だろ。それに大人中心に教えときゃ、俺は店につきっきりでも問題ねぇだろ」
「何か不安だけど……頑張ろうね」
あ、何か久しぶりに温かい言葉を聞いた気がする。
いっつも、いろいろといじられてばかりだったからなぁ。
※※※※※ ※※※※※
就職口を探す幅を広げるための支援事業、ってことだよな。
シアンの親衛隊三人ほどに連れられてきた参加者。
参加したのかさせられたのかは分からんが、誰も彼も表情が沈んでる。
気の毒に思うが、それぞれが抱えてる個人的事情なんて知ったこっちゃない。
大人……おそらく二十代の男女二人。そして子供らは……十人くらいと思うが、数える気はしない。
自己紹介も、俺とヨウミだけで終わらせた。
そっち側の自己紹介なんか、されたって覚えてらんねぇし給与渡すこともねぇし、縁が見つかったら転職いつでもオッケーなんだし。
でもそっち側はこっちの名前覚えてもらわねぇと、何の質問もできねぇだろうからな。
温泉には大人の男と子供四人。
集団戦受付には大人の女と子供三人。
残りの子供らが店の手伝い。
「ということで、温泉の番台……受け付けは、脱衣所で混雑起こさないように、同時に利用する人数に上限を決めて受付すること。浴場は相当広いから混雑はないと思うがな。それとタオル持参してない人は立ち入り禁止。この人に貸した、この人に貸してない、っつー差別が生まれちまったらもう手に負えねぇトラブルになるから」
「はい、分かりました」
表情が暗いから、無気力な奴だと思ってたらそうでもなかった。
全員、その表情は変わらんが、何かの作業にはやる気を示してる。
大人に説明するのは気が楽だ。
理解してもらえやすいからな。
「……でも、利用客は冒険者達なんですよね? 無法者とかが来たらどうしましょう?」
「仕掛けがあるんだよ。この仕掛けを動かすと……壁が倒れる」
「は? 壁が倒れる? 何か意味があるんですか?」
「壁が倒れりゃ天井も崩れる。温泉はそのままだけど、壁や天井が崩れりゃこのフィールドの端にある、洗い場がある溜池にしかならない。そんな所に素っ裸でいたら、変な目で見られるだろ?」
「他のお客さんもその被害に遭いますよ? 大丈夫なんですか?」
「こっちの言うことを聞かない客は、他の客から袋叩きの刑に遭う。仕掛けを動かすときには場内にいる客に注意を呼び掛けりゃそれでいいさ。そのあとで俺の方に逃げ込め。あとは何とかしてやるよ。注意書きも貼ってあるし、そこまで強引に入りたがる奴ぁいねぇだろ」
その仕掛けは、脱衣場を建ててくれた冒険者達の配慮だった。
俺がするにせよ手伝いがするにせよ、非力な奴が担当するだろうから、そんな奴でも仕切れるようにってことでな。
ま、何かあったらガキらを連れてすぐにこっちに逃げ込むように言っといたし、問題ねぇだろ。
仕事の内容も単純なのしかねぇしな。
それに比べて店の方は……。
※※※※※ ※※※※※
「……まずみんなに米洗いしてもらうか。そのあとで米運び。バケツリレーでやりゃ、いくらか負担は軽くなるだろ」
店手伝いは子供ばかり。
大人なら、気持ちを切り替えて仕事にとりくむこともできるが、子供はそうはいかないらしいな。
まぁ……誰かに甘えたい年頃なのに、その相手がいないってんじゃなぁ。
けど、この事業に参加したってことは、それなりに覚悟はできてる……とは思うんだが。
無理やり参加させられたケースかもしれん。
が、その事情だって俺の知ったこっちゃねぇ。
が、その前に。
……俺の米の選別と収集作業が先だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる