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米からの騒動編
仕事なら、米の選別以外はしたくねぇんだが その4
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小川のほとりに生えていたススキモドキが、意外と広い範囲で刈り取られていた件。
それによって誰かが傷ついただの死んだだの、そんな物騒な事件はない。
だから、そういう意味での犯罪じゃないから、犯人を捕まえるってつもりはない。
もっとも犯人呼ばわりしていいものだろうか、ってのもある。
厳密にいえば、俺も不法居住の犯罪者とも言えなくもないからなぁ。
それはともかく。
ひょっとしたら、俺が今までそいつの活動に気付かなかった、という可能性はある。気配を察知できる俺にとっちゃ、それはほんのわずかなもんだがな。
それと、互いに作業の邪魔になって、不愉快な思いを持つのも持たれるのもご免だ。
となると、俺ができることと言えば……。
「かなり早いが、米の採集に行くから全員ついて来ーい」
時間差で偵察しながらの仕事。これくらいだ。
そして昨日見つけたあの現場には百パーセント来ない。
だから米探しの場所もあそこ以外の川の辺にしてみる。
山側から村道に向かって流れていく川は、そのルートで一か所だけ隣の村の方面に向かって曲がるところがある。
刈ったススキモドキは、おそらく川の流れを利用して運んだんじゃねぇかなぁ。
イカダのような物か舟かは分からんが、いずれあの様子じゃ少人数だ。大量の何かを運ぶってぇと、そんな物か台車がないと無理だろ。
問題は、川上か川下か。
ま、近づいたら気配で分かる。
「今日は別のところに行くんですね?」
「きのうきたところだよね?」
川を伝ってみるか……と考えるまでもない。
川上の方だ。
けどこの気配……女性、それに子供か?
二人しか感じ取れん。
……でもこの様子じゃ、山菜採りをする人って感じだな。
商売目当てって感じじゃないな。
ま、対面してみりゃ分かるか。
※※※※※ ※※※※※
俺の気配は百パーセント的中で、推理は大体当たってた。
二人の関係は母子。
でっかい葉っぱをいくつも重ね合わせて作った舟に、刈り取った大量のススキモドキを乗せて、隣村に向かって運ぶ。
隣村との大体中間の辺りで二人きりで野宿をしていて、そこで飢えをしのいでたんだと。
ただ予想外だったのは、多分飢えのせいで、相当痩せている。
二人っきりってのは幸いだった。
大家族で飢えているんなら、とっとと見捨てていた。
当たり前だ。
施設から手伝いの連中に昼飯食わせて、その上に飢えている大家族の面倒なんて見てられるかっ。
ということで、とりあえず店に連れて来た。
二人きりってんなら、ほっとけねぇしな。
とりあえず目の前の飢えをしのいでやりゃあ、生活力も少しは上がるだろうよ。
でも、手伝いらが作ったおにぎりだけを食って、涙ながらにおいしいを連発してる。
どんだけ苦しい生活してんだよ。
も少し知恵使って生活しろよ。
ともあれ、仕事を済ませた後で、店の外、ベンチの所に連れてった。
昨日と同じように人だかりがあったが、どうせこいつら、店じゃなくイール狙いだろ。
蹴り飛ばしたって構わねぇや、そんな奴ら。
とにかくこの母子を座らせて……。
「ご厚意……有り難うございます……。私はリースナーと言います。この子はフォー……」
おにぎりを二個ずつくれてやった。
昼飯にはまだ早ぇが、腹減ってそうだったしな。
息子の方は、黙々とおにぎりにかぶりついている。
母親は……四十代とも五十代とも……子供は十に届いてねぇんじゃねぇか?
いずれ、みすぼらしい恰好で、手伝いに来ている連中よりも間違いなくランクは下って生活ぶりが目に見える。
「この店の評判は聞いております。ひょっとして、私達にも店を開けるんじゃないかと……」
やっぱりこの手の思考かよ。
とっとと飯食わせた後どこかに放り投げてぇもんだ。
まとわりつかれたら仕事になんねぇしよ。
「えっと、リースナーさん。この店が続けられるのは、このアラタのおかげなんです。この人と同じことをしても、お店は続けられませんよ。えっと……旦那さんは何してるんです? 奥さんと息子さんほったらかしに」
「亡くなりました。冒険者だったんですけど……」
うわあ……。
ヨウミぃ……。
気まずくなるようなこと言うなよ……。
「夫を失った後、私もあの人と同じようなことをして生活をしておりました。と言っても魔物退治なんかできませんから、珍しい石とか山菜探しとか……」
「そ、そうでしたか……」
「珍しい物を見つけて、ある程度まとまったお金を手にすることができました。それを元手に……」
「仕事を始めたんですね?」
「いえ……手軽な仕事をして成功した方の情報を得るために……情報誌などを」
あー……冒険者とかに絡んだ情報誌か。
「そしたら……おにぎりだけでお店を続けてる方がいて、その方とこないだの中継の……」
シアンの戴冠式の中継か。
結びつけたか。
「でも……まとまったお金を手にしたんでしょう? もう元手がないんですか?」
「……五万円くらいでした」
……五万円も、人によっちゃ大金だよな。
でも拾ったものが五万円かぁ……。
まぁ大金な方かな?
「もっとたくさん拾えてたらよかったのに……」
「事情を知らねぇお手伝いさんが、余計な口挟むんじゃねぇ」
仲間からの口出しならともかく、私設から手伝いに来た連中が野次馬根性で口出していい話じゃねぇだろうが。
立場を考えりゃ、どっちもどっちだろうしよ。
施設の世話になってるかなってないかの違いしかねぇじゃねぇか。
「二つ三つ、拾ったんです。周りの石とはちょっと違う物でしたから高値で売れるかも、と。……鑑定してもらいましたが……ガンジュウの糞ということで」
糞?
ウンコ?
ウンコネタか?
まさかのウンコネタかよ!
いや、待て。
その前に。
「ガンジュウって何だ?」
「あ、アラタは知らないか。仲間達はみんな珍しい種族だけど、ガンジュウってのも珍しい種族なのよ。例えばモーナーいるでしょ?」
巨人族と人間のハーフっつってたよな?
「あとサミーもかな? でもそういう種族だからちょっと違うか。あ、モーナーの方が、この場合はちょっと違うかな」
「どういうことだ?」
「何かの種族と別の種族が合わさった種族がいるのは分かるよね? モーナーの場合は純粋にハーフ。ハーフの種族の魔物とか人じゃないのよね。けどサミーは、魚と竜の合わさった種族の一人ってこと。つまりモーナーと違って、同種……同胞はたくさんいるのよ」
あぁ、何となく分かる。
「ガンジュウは、岩と魔獣の合わさった種族」
「岩ぁ?! 岩と魔獣が結婚すんのか?!」
「それは分かんないけど、岩獣種って魔物もいるのよ。やっぱり珍しいんだけど、その糞は貴重なのよね」
ウンコネタから逃れられんのかい!
匂いとか菌とかやべぇだろ。
それによって誰かが傷ついただの死んだだの、そんな物騒な事件はない。
だから、そういう意味での犯罪じゃないから、犯人を捕まえるってつもりはない。
もっとも犯人呼ばわりしていいものだろうか、ってのもある。
厳密にいえば、俺も不法居住の犯罪者とも言えなくもないからなぁ。
それはともかく。
ひょっとしたら、俺が今までそいつの活動に気付かなかった、という可能性はある。気配を察知できる俺にとっちゃ、それはほんのわずかなもんだがな。
それと、互いに作業の邪魔になって、不愉快な思いを持つのも持たれるのもご免だ。
となると、俺ができることと言えば……。
「かなり早いが、米の採集に行くから全員ついて来ーい」
時間差で偵察しながらの仕事。これくらいだ。
そして昨日見つけたあの現場には百パーセント来ない。
だから米探しの場所もあそこ以外の川の辺にしてみる。
山側から村道に向かって流れていく川は、そのルートで一か所だけ隣の村の方面に向かって曲がるところがある。
刈ったススキモドキは、おそらく川の流れを利用して運んだんじゃねぇかなぁ。
イカダのような物か舟かは分からんが、いずれあの様子じゃ少人数だ。大量の何かを運ぶってぇと、そんな物か台車がないと無理だろ。
問題は、川上か川下か。
ま、近づいたら気配で分かる。
「今日は別のところに行くんですね?」
「きのうきたところだよね?」
川を伝ってみるか……と考えるまでもない。
川上の方だ。
けどこの気配……女性、それに子供か?
二人しか感じ取れん。
……でもこの様子じゃ、山菜採りをする人って感じだな。
商売目当てって感じじゃないな。
ま、対面してみりゃ分かるか。
※※※※※ ※※※※※
俺の気配は百パーセント的中で、推理は大体当たってた。
二人の関係は母子。
でっかい葉っぱをいくつも重ね合わせて作った舟に、刈り取った大量のススキモドキを乗せて、隣村に向かって運ぶ。
隣村との大体中間の辺りで二人きりで野宿をしていて、そこで飢えをしのいでたんだと。
ただ予想外だったのは、多分飢えのせいで、相当痩せている。
二人っきりってのは幸いだった。
大家族で飢えているんなら、とっとと見捨てていた。
当たり前だ。
施設から手伝いの連中に昼飯食わせて、その上に飢えている大家族の面倒なんて見てられるかっ。
ということで、とりあえず店に連れて来た。
二人きりってんなら、ほっとけねぇしな。
とりあえず目の前の飢えをしのいでやりゃあ、生活力も少しは上がるだろうよ。
でも、手伝いらが作ったおにぎりだけを食って、涙ながらにおいしいを連発してる。
どんだけ苦しい生活してんだよ。
も少し知恵使って生活しろよ。
ともあれ、仕事を済ませた後で、店の外、ベンチの所に連れてった。
昨日と同じように人だかりがあったが、どうせこいつら、店じゃなくイール狙いだろ。
蹴り飛ばしたって構わねぇや、そんな奴ら。
とにかくこの母子を座らせて……。
「ご厚意……有り難うございます……。私はリースナーと言います。この子はフォー……」
おにぎりを二個ずつくれてやった。
昼飯にはまだ早ぇが、腹減ってそうだったしな。
息子の方は、黙々とおにぎりにかぶりついている。
母親は……四十代とも五十代とも……子供は十に届いてねぇんじゃねぇか?
いずれ、みすぼらしい恰好で、手伝いに来ている連中よりも間違いなくランクは下って生活ぶりが目に見える。
「この店の評判は聞いております。ひょっとして、私達にも店を開けるんじゃないかと……」
やっぱりこの手の思考かよ。
とっとと飯食わせた後どこかに放り投げてぇもんだ。
まとわりつかれたら仕事になんねぇしよ。
「えっと、リースナーさん。この店が続けられるのは、このアラタのおかげなんです。この人と同じことをしても、お店は続けられませんよ。えっと……旦那さんは何してるんです? 奥さんと息子さんほったらかしに」
「亡くなりました。冒険者だったんですけど……」
うわあ……。
ヨウミぃ……。
気まずくなるようなこと言うなよ……。
「夫を失った後、私もあの人と同じようなことをして生活をしておりました。と言っても魔物退治なんかできませんから、珍しい石とか山菜探しとか……」
「そ、そうでしたか……」
「珍しい物を見つけて、ある程度まとまったお金を手にすることができました。それを元手に……」
「仕事を始めたんですね?」
「いえ……手軽な仕事をして成功した方の情報を得るために……情報誌などを」
あー……冒険者とかに絡んだ情報誌か。
「そしたら……おにぎりだけでお店を続けてる方がいて、その方とこないだの中継の……」
シアンの戴冠式の中継か。
結びつけたか。
「でも……まとまったお金を手にしたんでしょう? もう元手がないんですか?」
「……五万円くらいでした」
……五万円も、人によっちゃ大金だよな。
でも拾ったものが五万円かぁ……。
まぁ大金な方かな?
「もっとたくさん拾えてたらよかったのに……」
「事情を知らねぇお手伝いさんが、余計な口挟むんじゃねぇ」
仲間からの口出しならともかく、私設から手伝いに来た連中が野次馬根性で口出していい話じゃねぇだろうが。
立場を考えりゃ、どっちもどっちだろうしよ。
施設の世話になってるかなってないかの違いしかねぇじゃねぇか。
「二つ三つ、拾ったんです。周りの石とはちょっと違う物でしたから高値で売れるかも、と。……鑑定してもらいましたが……ガンジュウの糞ということで」
糞?
ウンコ?
ウンコネタか?
まさかのウンコネタかよ!
いや、待て。
その前に。
「ガンジュウって何だ?」
「あ、アラタは知らないか。仲間達はみんな珍しい種族だけど、ガンジュウってのも珍しい種族なのよ。例えばモーナーいるでしょ?」
巨人族と人間のハーフっつってたよな?
「あとサミーもかな? でもそういう種族だからちょっと違うか。あ、モーナーの方が、この場合はちょっと違うかな」
「どういうことだ?」
「何かの種族と別の種族が合わさった種族がいるのは分かるよね? モーナーの場合は純粋にハーフ。ハーフの種族の魔物とか人じゃないのよね。けどサミーは、魚と竜の合わさった種族の一人ってこと。つまりモーナーと違って、同種……同胞はたくさんいるのよ」
あぁ、何となく分かる。
「ガンジュウは、岩と魔獣の合わさった種族」
「岩ぁ?! 岩と魔獣が結婚すんのか?!」
「それは分かんないけど、岩獣種って魔物もいるのよ。やっぱり珍しいんだけど、その糞は貴重なのよね」
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