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番外編 こんな魔物の集団戦 いかがです?
丸い卵も切りようで四角 物も言いようで角が立つ
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最近、魔物達からの評判が落ちてきた。
厳密にいうと、集団戦の評判だ。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とはよく言ったもんで、集団戦での魔物連中の態度に批判がでていたが、魔物連中達にその矛先が向けられた。
「なぁ、アラタ! ……ゼェ、ゼェ……。 あいつら、ゼェ、ゼェ、何とかしてくれよ!」
「あいつら? 何とか?」
それは、集団戦が終わった冒険者の一人の発言から始まった。
「集団戦の特訓のことなんだよ!」
ちょっと待ってくれ。
集団戦ではああしろこうしろ、だなんて指示を出したりできるわけがない。
というより、その現場に顔を出す、なんて怖いもの知らずの真似はとてもできない。
そもそも俺とヨウミは、集団戦では受付係。
誰がどのチームを相手にする、なんてプランは、今ではもうあいつらの自主性に任せている。
当たり前だろう?
でなきゃ、俺が休まる時間が減っちまう。
余計な仕事させてんじゃねぇ!
……なんて俺の心中も知らぬまま、そいつは更に捲し立てた。
「あいつら、俺らに合わせて力加減してるってんだけどよ」
そりゃそうだろう。
申し込む連中の力量だって、皆一律なわけがない。
弱い連中は、それこそそのベンチの前で、ダンジョン潜入の仲間探ししてる奴らと変わりなかったりするしな。
そんな連中に、熟練の冒険者チームと同じ姿勢で取り組めるわけがなかろうが。
「聞いてくれよ、アラタ」
そんな文句を言う冒険者の仲間も参戦してきた。
俺に文句言われたって、それをあいつらにどう伝えろと?
本人達に言えって話だ。
だがそれでも構わず、そいつらは話を続ける。
「手加減してくれるのはいいんだ。けど、あまりにアレはねえんじゃねえか?」
アレとか言うな。
思わせ振りな話し方って、話す方の自己満足なんだよな。
聞かされた方は、大概心当たりがないもんだ。
「例えばモーナー」
モーナー?
クリマーと並んで、うちらで一番真面目なやつだぞ?
それが、真っ先に態度が悪いと出てくる?
「あいつ、リーチが長さにまかせて、接近戦になると、俺らの顔や頭を鷲掴みにして、腕を思いっきり伸ばしてよお」
ふむ。
二メートルはゆうに越える体格で、手足の長さもバランスがとれてる。
そんな奴にそんな風にされたら……。
まあ文字通り、手も足も出ないよな。
で?
「そんなことされたら特訓にもなりゃしねえだろ。そう思わねえか?」
そう言われてもな。
現場見てねぇから何とも言えねえや。
「俺は冒険者じゃなくて、ただのおにぎり屋だからな」
「ただの、じゃねぇだろ、リーダー」
突っ込みどころはそこじゃねぇだろ。
「コーティやミアーノは、普段からあんな感じだし、まあいいとして」
いいのか……。
「ライムがよ」
あいつだって、実はあんまり真面目とは言えないんだよな。
「こっちは真剣に武器を振り回してるってのに、バカにするように周りにまとわりついてよお」
間合い測ってるのかもしれんだろうが。
「それに、テンちゃんも!」
まあ、あいつはなぁ……。
それでも、真面目になるときもあるが?
「近寄ろうとすると、羽ばたいて突風を起こして、俺らをすっ飛ばすんだよ!」
えー……と……。
「しかもみんな、へらへら笑いながら俺らの相手してるんだぜ?」
「あ、顔がねぇ奴らは、笑ってるかどうかは分かんねぇけどな?」
そりゃそうだ。
けど……なぁ。
「あの、それって、集団戦の特訓のことだよな?」
「あぁ、もちろん。つか、それ以外の話なんかしてねぇだろ」
それもそうだ。
……そうか?
「なぁ、アラタ。こっちは近い日に予定を入れてもらえない特訓の予約を入れるんだぜ? 長く待って、ようやくその特訓の日を迎えたってのに、相手がそんな不真面目な態度って問題だと思わねぇか?」
だから、俺は現場を見てねぇから何とも判断のしようがねぇっての!
※※※※※ ※※※※※
その翌日。
午前の集団戦の訓練が終わる。
「なぁ、アラタ……。あいつら、何とかならねぇ?」
「何とかって何だよ」
「俺ら、ミアーノとクリマーとサミーが相手だったんだけどよ」
どうやら二日連続でクレーム対応しなきゃならないらしい。
失敗したな。
クレーマーの対応専用のバイト、雇おうかな……。
このままじゃ、俺の昼寝の時間がどんどん削られる。
寝てる合間に起きてるような、のんびりとした生活サイクルになっても、今までのことを考えればバチは当たらないはずだ。
悪いことをしてないのにバチが当たるなんて理不尽この上ない。
そんな奴は、太鼓だけで十分だ。
「こっちは魔法とか刃物とかで攻撃するってのによ」
まぁ、戦闘の訓練だろうからそれは正しい行為だろうよ。
「ミアーノの奴、泥合戦に持ち込みやがって」
「泥合戦?」
あんまり聞かないな。
泥仕合とかなら聞いたことあるが。
「泥を投げ飛ばすんだよ!」
「鼻とか耳に入るわ……口にも入るわでよぉ!」
文字通り、泥を投げてたのか。
まぁ……ミアーノの十八番だよな。
「クリマーも、仲間に化けたりよぉ」
化けるっていうか……変化というか、変形というか。
まぁあいつの特徴の一つだから、文句を言われる筋合いはないと思うが……。
あれ?
あいつの特徴って、それだけのような気がする。
まぁいいけど。
「サミーもよぉ」
あいつは人の言葉を理解するが、会話はできねぇぞ?
意思伝達は、仕草や動作が頼りなんだから。
「あいつ……あんな地味な色してるだろ?」
まぁ岩とか土とか、物陰に潜んだら陰に馴染むような色合いだもんな。
地味な色と言えば……まぁそれは正確な表現だ。
「かくれんぼさせられてる感じでよぉ」
「遊ばれてるっつーか……」
何と言いますかねぇ……。
魔物の集団相手に武器や魔法をかますこと自体、普通ならいきなり本番でないとできないことだよな。
訓練の場が与えられてるってのは、すごく貴重な体験だと思うんだが、なのにそれに文句を言うってのは……。
つーより、直接本人に言えよ……。
※※※※※ ※※※※※
なぜがさらにその翌日も、その次の日も、あいつらへの文句を次々と聞かされた。
文句を言われ始めた一日目、二日目は、あいつらにはそんな報告はしなかった。
その場限り、一回きりの文句だと思ったからな。
けどあいつらみんなが文句を言われてる。
しかも連日。
聞き流してりゃいいや、とも思ったんだが、文句ばかり猪われりゃこっちの身が持たない。
という事で報告することにした。
厳密にいうと、集団戦の評判だ。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とはよく言ったもんで、集団戦での魔物連中の態度に批判がでていたが、魔物連中達にその矛先が向けられた。
「なぁ、アラタ! ……ゼェ、ゼェ……。 あいつら、ゼェ、ゼェ、何とかしてくれよ!」
「あいつら? 何とか?」
それは、集団戦が終わった冒険者の一人の発言から始まった。
「集団戦の特訓のことなんだよ!」
ちょっと待ってくれ。
集団戦ではああしろこうしろ、だなんて指示を出したりできるわけがない。
というより、その現場に顔を出す、なんて怖いもの知らずの真似はとてもできない。
そもそも俺とヨウミは、集団戦では受付係。
誰がどのチームを相手にする、なんてプランは、今ではもうあいつらの自主性に任せている。
当たり前だろう?
でなきゃ、俺が休まる時間が減っちまう。
余計な仕事させてんじゃねぇ!
……なんて俺の心中も知らぬまま、そいつは更に捲し立てた。
「あいつら、俺らに合わせて力加減してるってんだけどよ」
そりゃそうだろう。
申し込む連中の力量だって、皆一律なわけがない。
弱い連中は、それこそそのベンチの前で、ダンジョン潜入の仲間探ししてる奴らと変わりなかったりするしな。
そんな連中に、熟練の冒険者チームと同じ姿勢で取り組めるわけがなかろうが。
「聞いてくれよ、アラタ」
そんな文句を言う冒険者の仲間も参戦してきた。
俺に文句言われたって、それをあいつらにどう伝えろと?
本人達に言えって話だ。
だがそれでも構わず、そいつらは話を続ける。
「手加減してくれるのはいいんだ。けど、あまりにアレはねえんじゃねえか?」
アレとか言うな。
思わせ振りな話し方って、話す方の自己満足なんだよな。
聞かされた方は、大概心当たりがないもんだ。
「例えばモーナー」
モーナー?
クリマーと並んで、うちらで一番真面目なやつだぞ?
それが、真っ先に態度が悪いと出てくる?
「あいつ、リーチが長さにまかせて、接近戦になると、俺らの顔や頭を鷲掴みにして、腕を思いっきり伸ばしてよお」
ふむ。
二メートルはゆうに越える体格で、手足の長さもバランスがとれてる。
そんな奴にそんな風にされたら……。
まあ文字通り、手も足も出ないよな。
で?
「そんなことされたら特訓にもなりゃしねえだろ。そう思わねえか?」
そう言われてもな。
現場見てねぇから何とも言えねえや。
「俺は冒険者じゃなくて、ただのおにぎり屋だからな」
「ただの、じゃねぇだろ、リーダー」
突っ込みどころはそこじゃねぇだろ。
「コーティやミアーノは、普段からあんな感じだし、まあいいとして」
いいのか……。
「ライムがよ」
あいつだって、実はあんまり真面目とは言えないんだよな。
「こっちは真剣に武器を振り回してるってのに、バカにするように周りにまとわりついてよお」
間合い測ってるのかもしれんだろうが。
「それに、テンちゃんも!」
まあ、あいつはなぁ……。
それでも、真面目になるときもあるが?
「近寄ろうとすると、羽ばたいて突風を起こして、俺らをすっ飛ばすんだよ!」
えー……と……。
「しかもみんな、へらへら笑いながら俺らの相手してるんだぜ?」
「あ、顔がねぇ奴らは、笑ってるかどうかは分かんねぇけどな?」
そりゃそうだ。
けど……なぁ。
「あの、それって、集団戦の特訓のことだよな?」
「あぁ、もちろん。つか、それ以外の話なんかしてねぇだろ」
それもそうだ。
……そうか?
「なぁ、アラタ。こっちは近い日に予定を入れてもらえない特訓の予約を入れるんだぜ? 長く待って、ようやくその特訓の日を迎えたってのに、相手がそんな不真面目な態度って問題だと思わねぇか?」
だから、俺は現場を見てねぇから何とも判断のしようがねぇっての!
※※※※※ ※※※※※
その翌日。
午前の集団戦の訓練が終わる。
「なぁ、アラタ……。あいつら、何とかならねぇ?」
「何とかって何だよ」
「俺ら、ミアーノとクリマーとサミーが相手だったんだけどよ」
どうやら二日連続でクレーム対応しなきゃならないらしい。
失敗したな。
クレーマーの対応専用のバイト、雇おうかな……。
このままじゃ、俺の昼寝の時間がどんどん削られる。
寝てる合間に起きてるような、のんびりとした生活サイクルになっても、今までのことを考えればバチは当たらないはずだ。
悪いことをしてないのにバチが当たるなんて理不尽この上ない。
そんな奴は、太鼓だけで十分だ。
「こっちは魔法とか刃物とかで攻撃するってのによ」
まぁ、戦闘の訓練だろうからそれは正しい行為だろうよ。
「ミアーノの奴、泥合戦に持ち込みやがって」
「泥合戦?」
あんまり聞かないな。
泥仕合とかなら聞いたことあるが。
「泥を投げ飛ばすんだよ!」
「鼻とか耳に入るわ……口にも入るわでよぉ!」
文字通り、泥を投げてたのか。
まぁ……ミアーノの十八番だよな。
「クリマーも、仲間に化けたりよぉ」
化けるっていうか……変化というか、変形というか。
まぁあいつの特徴の一つだから、文句を言われる筋合いはないと思うが……。
あれ?
あいつの特徴って、それだけのような気がする。
まぁいいけど。
「サミーもよぉ」
あいつは人の言葉を理解するが、会話はできねぇぞ?
意思伝達は、仕草や動作が頼りなんだから。
「あいつ……あんな地味な色してるだろ?」
まぁ岩とか土とか、物陰に潜んだら陰に馴染むような色合いだもんな。
地味な色と言えば……まぁそれは正確な表現だ。
「かくれんぼさせられてる感じでよぉ」
「遊ばれてるっつーか……」
何と言いますかねぇ……。
魔物の集団相手に武器や魔法をかますこと自体、普通ならいきなり本番でないとできないことだよな。
訓練の場が与えられてるってのは、すごく貴重な体験だと思うんだが、なのにそれに文句を言うってのは……。
つーより、直接本人に言えよ……。
※※※※※ ※※※※※
なぜがさらにその翌日も、その次の日も、あいつらへの文句を次々と聞かされた。
文句を言われ始めた一日目、二日目は、あいつらにはそんな報告はしなかった。
その場限り、一回きりの文句だと思ったからな。
けどあいつらみんなが文句を言われてる。
しかも連日。
聞き流してりゃいいや、とも思ったんだが、文句ばかり猪われりゃこっちの身が持たない。
という事で報告することにした。
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○○○
旧版を基に再編集しています。
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この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
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