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番外編 こんな魔物の集団戦 いかがです?
そう。商売は、客への誠意が大切なのです。それは集団戦の特訓でも同じなのです
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楽しい晩ご飯の時間がやってきた。
互いに会話が弾んで、みんなが満腹になってごちそうさまでしたの挨拶を済ませて、しばらくのんびりの時間。
食った後横になると牛になる、なんて言われはするが、妖精が、巨人が、天馬が、スライムが、エルフが、ドッペルゲンガーが、獣人が、龍が、巨大な虫が牛になるはずもなく。
そんな時間に、これまでのクレームのことについて聞いてみた。
「……ってなことを言われてな。特訓中のお前らの態度とかは、俺からはどうこう言うつもりはねぇよ? 特訓を終えた冒険者達は、みんな疲れた顔はしてるけど、大怪我とかはないんだから」
怪我させて本職に障りが出たら、それこそ本末転倒。
疲れた顔をしている、ということは、特訓を受けた結果なんだろう。
特訓を受けて、疲労以外の被害なく帰ってきたということは、程度に不満はあるかもしれんが、特訓での目的は達成してることには違いない。
目的が達成してるなら、文句を言われる筋合いはないはずだしな。
「手加減されたって話は聞いた。が、お前らからだって、相手の力量を見計らってそれに合わせて特訓の相手してるって話は聞いた。まぁそれは当然だろ。手加減は必要だろうし。いずれ、俺はその様子を見てないから、はぁ、はぁ、としか返すしかなかったんだけどな」
和やかな雰囲気がガラッと変わったのは分かった。
楽し気に互いに会話してたみんなが、俺を見て、俺の話を聞いて、みんな黙りこくったから。
「力を込めるより緩める方が、相手の身の安全を図れるでしょ?」
ご説ごもっとも。
「あたしの弓が手で払える? 当たり前じゃない。そうさせようとしてたんだから。本気出したら躱すことも逃げることもできないし」
「泥合戦? 上手い事言うやんか。なぁンーゴ」
「オレラダッテ、ツチノカタマリナゲトバシタラ、アイテ、ドウナルカワカラナイゾ?」
「あたしの羽根の風で飛ばされるってんなら、飛ばされないように工夫しなきゃダメじゃない」
「そもそもお、そうなった時点でえ、本番なら死んでんだぞお?」
俺もそうは思ってた。
けど俺は、あくまで素人的立場だ。
いくら防具をつけてようがな。
戦闘のノウハウなんか、知ってるわけがない。
そんな俺が門外の訓練への文句に、言い返すような出しゃばった真似はできない。
言い返すとするなら、せめてこいつらの意見を聞いてそれを取りまとめてから、だよな。
「で、何よ? そんな文句を言う人達って、誰からも言われてたの? それとも文句を言う人達って決まってるの?」
同じ冒険者が何度も集団戦の特訓を受けられるほど、申し込み人数が少ないわけじゃない。
むしろ、何度も受けられる方が難しい。
「一回の特訓で何度も文句を言う奴の方が多いな。もっともありもしないことを言ってくる奴らはいなかったが」
要するに、口から出まかせ、あることないこと文句を言う、そんな奴らはいなかったってことだ。
「つまり、あたし達の手加減が、向こうにしてみりゃ手を抜いてる、って言いたいのかな?」
「へえ……。つまり、そういう奴らには本気出していいわけだ」
「それもお、面白そうだなあ」
みんな、口だけ笑い始めた。
目が全然笑ってないのが怖い。
「でも、中には分相応に、自分達に合わせてくださいって人もいるんですよね?」
「そりゃもちろん。そういう奴らにも手加減なしでやったらみんな泣くから、手加減してほしい奴らには今まで通りしっかり手加減してやれよ? 特に新人グループとかな」
「ワカッテルヨ。オレタチハ、ソコマデムセッソウジャナイ」
そう言えば、特に新人チームはそうなんだが、特訓が終わって受付に戻ってきてすぐに出てくる言葉は
「ありがとうございました」
「お世話になりました」
だな。
もちろんベテラン連中からも、そんな言葉は真っ先に出るか二番目に出るか。
いずれ、謝意の言葉は必ず出る。
だが、あの連中は礼どころか、真っ先に文句を言ってきた。
ありがたいと思えなかった特訓内容、とも言える。
おそらく連中はみんなのことを、手抜きとか馬鹿にしてるとか、そんな風に思ってるんだろう。
つまり、馬鹿にしなきゃいい。
手抜きと思われなければいい。
となればこいつらは、そう思われないような対応をしてもらえればいいだけのこと。
こっちだって、客に対して誠実さを以て対応してる。
だから未だにおにぎりが人気なのだ。
幸いみんなもその気になってるし、その思いを素直に表に出してもらって、誠意を以て対応してもらおう。
即ち、彼らの言う通り、真剣に、手を抜かず、全力でお相手する、ということだ。
それに、俺だって言いたい事はある。
それだけ文句が出るのなら、二度と利用しなければいい。
なのにこっちに近寄ってくるってことは、手を抜いたことに対して対価を払え、みたいなことを言いたいのではなかろうか?
そんな連中が次に特訓の日を迎えた時には、充実した時間を過ごしてもらおうか。
多分みんな、俺と同じ心境だ。
その日が来るのが、実に楽しみで仕方がない。
互いに会話が弾んで、みんなが満腹になってごちそうさまでしたの挨拶を済ませて、しばらくのんびりの時間。
食った後横になると牛になる、なんて言われはするが、妖精が、巨人が、天馬が、スライムが、エルフが、ドッペルゲンガーが、獣人が、龍が、巨大な虫が牛になるはずもなく。
そんな時間に、これまでのクレームのことについて聞いてみた。
「……ってなことを言われてな。特訓中のお前らの態度とかは、俺からはどうこう言うつもりはねぇよ? 特訓を終えた冒険者達は、みんな疲れた顔はしてるけど、大怪我とかはないんだから」
怪我させて本職に障りが出たら、それこそ本末転倒。
疲れた顔をしている、ということは、特訓を受けた結果なんだろう。
特訓を受けて、疲労以外の被害なく帰ってきたということは、程度に不満はあるかもしれんが、特訓での目的は達成してることには違いない。
目的が達成してるなら、文句を言われる筋合いはないはずだしな。
「手加減されたって話は聞いた。が、お前らからだって、相手の力量を見計らってそれに合わせて特訓の相手してるって話は聞いた。まぁそれは当然だろ。手加減は必要だろうし。いずれ、俺はその様子を見てないから、はぁ、はぁ、としか返すしかなかったんだけどな」
和やかな雰囲気がガラッと変わったのは分かった。
楽し気に互いに会話してたみんなが、俺を見て、俺の話を聞いて、みんな黙りこくったから。
「力を込めるより緩める方が、相手の身の安全を図れるでしょ?」
ご説ごもっとも。
「あたしの弓が手で払える? 当たり前じゃない。そうさせようとしてたんだから。本気出したら躱すことも逃げることもできないし」
「泥合戦? 上手い事言うやんか。なぁンーゴ」
「オレラダッテ、ツチノカタマリナゲトバシタラ、アイテ、ドウナルカワカラナイゾ?」
「あたしの羽根の風で飛ばされるってんなら、飛ばされないように工夫しなきゃダメじゃない」
「そもそもお、そうなった時点でえ、本番なら死んでんだぞお?」
俺もそうは思ってた。
けど俺は、あくまで素人的立場だ。
いくら防具をつけてようがな。
戦闘のノウハウなんか、知ってるわけがない。
そんな俺が門外の訓練への文句に、言い返すような出しゃばった真似はできない。
言い返すとするなら、せめてこいつらの意見を聞いてそれを取りまとめてから、だよな。
「で、何よ? そんな文句を言う人達って、誰からも言われてたの? それとも文句を言う人達って決まってるの?」
同じ冒険者が何度も集団戦の特訓を受けられるほど、申し込み人数が少ないわけじゃない。
むしろ、何度も受けられる方が難しい。
「一回の特訓で何度も文句を言う奴の方が多いな。もっともありもしないことを言ってくる奴らはいなかったが」
要するに、口から出まかせ、あることないこと文句を言う、そんな奴らはいなかったってことだ。
「つまり、あたし達の手加減が、向こうにしてみりゃ手を抜いてる、って言いたいのかな?」
「へえ……。つまり、そういう奴らには本気出していいわけだ」
「それもお、面白そうだなあ」
みんな、口だけ笑い始めた。
目が全然笑ってないのが怖い。
「でも、中には分相応に、自分達に合わせてくださいって人もいるんですよね?」
「そりゃもちろん。そういう奴らにも手加減なしでやったらみんな泣くから、手加減してほしい奴らには今まで通りしっかり手加減してやれよ? 特に新人グループとかな」
「ワカッテルヨ。オレタチハ、ソコマデムセッソウジャナイ」
そう言えば、特に新人チームはそうなんだが、特訓が終わって受付に戻ってきてすぐに出てくる言葉は
「ありがとうございました」
「お世話になりました」
だな。
もちろんベテラン連中からも、そんな言葉は真っ先に出るか二番目に出るか。
いずれ、謝意の言葉は必ず出る。
だが、あの連中は礼どころか、真っ先に文句を言ってきた。
ありがたいと思えなかった特訓内容、とも言える。
おそらく連中はみんなのことを、手抜きとか馬鹿にしてるとか、そんな風に思ってるんだろう。
つまり、馬鹿にしなきゃいい。
手抜きと思われなければいい。
となればこいつらは、そう思われないような対応をしてもらえればいいだけのこと。
こっちだって、客に対して誠実さを以て対応してる。
だから未だにおにぎりが人気なのだ。
幸いみんなもその気になってるし、その思いを素直に表に出してもらって、誠意を以て対応してもらおう。
即ち、彼らの言う通り、真剣に、手を抜かず、全力でお相手する、ということだ。
それに、俺だって言いたい事はある。
それだけ文句が出るのなら、二度と利用しなければいい。
なのにこっちに近寄ってくるってことは、手を抜いたことに対して対価を払え、みたいなことを言いたいのではなかろうか?
そんな連中が次に特訓の日を迎えた時には、充実した時間を過ごしてもらおうか。
多分みんな、俺と同じ心境だ。
その日が来るのが、実に楽しみで仕方がない。
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