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シアンの婚約者編
婚約者の候補って その3
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フレイミーは食事をしながら、仲間達と会話で盛り上がっていて、なかなか楽しそうだ。
ちなみにシアンの親衛隊達は、シアンの後ろで車座になって飯を食っている。
シアンはというと……。
「突然、すまなかったな」
粗方食事を済ませたようで、こっそりとフレイミーの傍から抜け出して、ヨウミと反対側の俺の隣に座った。
シアンがいなくなったのに気づかないくらい、フレイミーは仲間達と話をはずませている。
「飯代を自分で払ってくれりゃ、ご覧の通り場所には困ることないし、特に迷惑とも思っちゃいねぇよ」
「そう言ってくれると、こっちも気が楽になる。有り難う」
初対面で馴れ馴れしいのは腹が立つ。
が、距離感が縮まった相手から畏まられるのも、あまりいい気分はしない。
こっちまで堅苦しい態度を取らなきゃならんような気がしてな。
「ところで、花嫁候補って言うならまだ分かるんだが、婚約相手の候補ってどういうことよ?」
「うん、あたしもそれ、聞きたかった」
「あぁ、それについては詳しく説明しなきゃならないと思っていた」
何か事情があるようだ。
「我が王家はこの国において、覇権争いで勝ち残った一族、という話は……」
「あぁ。何度か聞いたような気がする」
日本大王国。
そう名乗る前には、実力者同士の争いがあったとか。
政権争いみたいなイメージを持ってるが、実際はどうなのかは分からない。
が、血で血を洗う争いがずっと展開されていたんだろう。
「我が一族も覇権争いに加わった一つ。だが、支えてくれた者達もいた。そのおかげで、こんなにも長きにわたる争いの中で勝ち抜き、生き残り、そしてこの国を統べることができた。その支援者達を厚遇し、貴族という地位にいる、というわけだ」
「確か、フレイミーを紹介する時、十二貴族、とか言ってたわよね」
「あぁ。その十二の貴族のそれぞれの始祖が彼ら、ということだ」
王家ともども、そんな長い歴史を持つ十二の一族、ってことか。
「財に富む者、多くの人材を有する者、広い土地を納める者、能力に長けた者と、様々な面で優れた者達に支えられ、こうして国民達の生活を守っている、というわけだな」
「で……花嫁候補ってんなら何となく分かるんだが、婚約者候補ってどういうことよ?」
「花嫁候補って言うと、どうしてもこう……悪い印象しか浮かばんのでな。何人も花嫁候補がいる、なんて聞いたら、女たらしのように聞こえないか?」
まぁ……うん。
否定はしない。
「花嫁から婚約者に言葉を変えただけではあるが、花嫁候補って言うとどうしてもな……。花婿候補、というのも同様だが、異性を目の前にずらっと並べて、その中で一番いいのを選ぶ、というのは……何となく傲慢な感じがするんだよ」
カタログで一覧を見て、一番良さそうなのを選ぶ感じか?
たしかに、生涯の伴侶を選ぶのって、そういうのとは違うだろうし、そんな相手を物扱いみたいにしてるような気がしないでもない。
ふむ。
「花嫁候補から外された者の立場も考えるとな。婚約者なら、花嫁の立場よりは、と思ったりするのだが……どうだろう?」
「どうだろう? ……ってお前なぁ……」
俺に意見を求めるな。
「まぁ、シアンの主義主張はおいといとさ、フレイミーさんはその筆頭って訳?」
「ん? あぁ。まぁそんなところでな。で、私の普段の付き合いのある者達とも良き友としての縁を築いてもらいたい、とな」
「俺より仲間達の方がいい関係持ちそうな気がしないでもないんだがな」
まぁ俺はそれでもいいけどさ。
「……アラタを蔑ろにしてるような気がしないでもないんだけど……あたしにはそれがちょっとなぁ……」
ヨウミが不満そうに頬を膨らませた。
変なプライド持つと、何でもないことでも恥をかかせられた、なんて事態も起きることもあるんだがな。
「いいんじゃねぇの? 仮にこのまま順調に進んで結婚したとしても、彼女と俺に特別な関係になるなんてことは有り得ねぇしな。ならこんな疎遠な関係だって、何の文句もねぇよ」
「でも……なんか、みんなと仲良すぎない?」
「交友関係が広がるのは悪くはないことだと思う。つくづくここに来てよかったと思うよ。本当に感謝する、アラタ」
感極まったのか、俺の肩をポンと叩く。
意外と力あるんだな。
けど俺はそれが、あんまり気に食わない。
「おい、余計な事すんなよ。体の調子が崩れそうな気がして嫌なんだよ」
「あ、済まない。うれしくてつい」
人から触られるとき、予想外の強さで体に干渉されるのは好きじゃない。
何か、必要以上の耐久力を無理やりあげなきゃならんような気がしてな。
ただ触る程度なら気にしなくはないが……。
「ま、気を付けてくれりゃこっちだって気には士ねぇよ」
「う、うむ。気を付けよう」
仲間らはフレイムと楽しく会話している。
が、おしゃべりばかりしてるわけではなくて、食事しながらだから料理の皿も空が大分増えてきた。
中央のおにぎりも食べ始めてる奴もいる。
だが、なんか……フレイムの様子が……。
「ねぇ、アラタ」
「ん?」
「彼女、時々アラタの方、睨んでるわよね。気付いてた?」
ヨウミに言われるまでもない。
俺がシアンに、不快な感情を見せた後から、そんな気配がビンビンに感じ取れてる。
……そりゃ一国の王、国内の最高権力者にそんな嫌な顔を向けたら、その支持者は俺にはいい顔はしないだろう。
……と、この時はそう思ってた。
それだったら、口先だけでも「ごめんなさい」の一言を言えばそれで済む問題だったんだが……。
まさか、雪のほかに荒らしまで持ち込まれるとは、この時には夢にも思わなかった。
ちなみにシアンの親衛隊達は、シアンの後ろで車座になって飯を食っている。
シアンはというと……。
「突然、すまなかったな」
粗方食事を済ませたようで、こっそりとフレイミーの傍から抜け出して、ヨウミと反対側の俺の隣に座った。
シアンがいなくなったのに気づかないくらい、フレイミーは仲間達と話をはずませている。
「飯代を自分で払ってくれりゃ、ご覧の通り場所には困ることないし、特に迷惑とも思っちゃいねぇよ」
「そう言ってくれると、こっちも気が楽になる。有り難う」
初対面で馴れ馴れしいのは腹が立つ。
が、距離感が縮まった相手から畏まられるのも、あまりいい気分はしない。
こっちまで堅苦しい態度を取らなきゃならんような気がしてな。
「ところで、花嫁候補って言うならまだ分かるんだが、婚約相手の候補ってどういうことよ?」
「うん、あたしもそれ、聞きたかった」
「あぁ、それについては詳しく説明しなきゃならないと思っていた」
何か事情があるようだ。
「我が王家はこの国において、覇権争いで勝ち残った一族、という話は……」
「あぁ。何度か聞いたような気がする」
日本大王国。
そう名乗る前には、実力者同士の争いがあったとか。
政権争いみたいなイメージを持ってるが、実際はどうなのかは分からない。
が、血で血を洗う争いがずっと展開されていたんだろう。
「我が一族も覇権争いに加わった一つ。だが、支えてくれた者達もいた。そのおかげで、こんなにも長きにわたる争いの中で勝ち抜き、生き残り、そしてこの国を統べることができた。その支援者達を厚遇し、貴族という地位にいる、というわけだ」
「確か、フレイミーを紹介する時、十二貴族、とか言ってたわよね」
「あぁ。その十二の貴族のそれぞれの始祖が彼ら、ということだ」
王家ともども、そんな長い歴史を持つ十二の一族、ってことか。
「財に富む者、多くの人材を有する者、広い土地を納める者、能力に長けた者と、様々な面で優れた者達に支えられ、こうして国民達の生活を守っている、というわけだな」
「で……花嫁候補ってんなら何となく分かるんだが、婚約者候補ってどういうことよ?」
「花嫁候補って言うと、どうしてもこう……悪い印象しか浮かばんのでな。何人も花嫁候補がいる、なんて聞いたら、女たらしのように聞こえないか?」
まぁ……うん。
否定はしない。
「花嫁から婚約者に言葉を変えただけではあるが、花嫁候補って言うとどうしてもな……。花婿候補、というのも同様だが、異性を目の前にずらっと並べて、その中で一番いいのを選ぶ、というのは……何となく傲慢な感じがするんだよ」
カタログで一覧を見て、一番良さそうなのを選ぶ感じか?
たしかに、生涯の伴侶を選ぶのって、そういうのとは違うだろうし、そんな相手を物扱いみたいにしてるような気がしないでもない。
ふむ。
「花嫁候補から外された者の立場も考えるとな。婚約者なら、花嫁の立場よりは、と思ったりするのだが……どうだろう?」
「どうだろう? ……ってお前なぁ……」
俺に意見を求めるな。
「まぁ、シアンの主義主張はおいといとさ、フレイミーさんはその筆頭って訳?」
「ん? あぁ。まぁそんなところでな。で、私の普段の付き合いのある者達とも良き友としての縁を築いてもらいたい、とな」
「俺より仲間達の方がいい関係持ちそうな気がしないでもないんだがな」
まぁ俺はそれでもいいけどさ。
「……アラタを蔑ろにしてるような気がしないでもないんだけど……あたしにはそれがちょっとなぁ……」
ヨウミが不満そうに頬を膨らませた。
変なプライド持つと、何でもないことでも恥をかかせられた、なんて事態も起きることもあるんだがな。
「いいんじゃねぇの? 仮にこのまま順調に進んで結婚したとしても、彼女と俺に特別な関係になるなんてことは有り得ねぇしな。ならこんな疎遠な関係だって、何の文句もねぇよ」
「でも……なんか、みんなと仲良すぎない?」
「交友関係が広がるのは悪くはないことだと思う。つくづくここに来てよかったと思うよ。本当に感謝する、アラタ」
感極まったのか、俺の肩をポンと叩く。
意外と力あるんだな。
けど俺はそれが、あんまり気に食わない。
「おい、余計な事すんなよ。体の調子が崩れそうな気がして嫌なんだよ」
「あ、済まない。うれしくてつい」
人から触られるとき、予想外の強さで体に干渉されるのは好きじゃない。
何か、必要以上の耐久力を無理やりあげなきゃならんような気がしてな。
ただ触る程度なら気にしなくはないが……。
「ま、気を付けてくれりゃこっちだって気には士ねぇよ」
「う、うむ。気を付けよう」
仲間らはフレイムと楽しく会話している。
が、おしゃべりばかりしてるわけではなくて、食事しながらだから料理の皿も空が大分増えてきた。
中央のおにぎりも食べ始めてる奴もいる。
だが、なんか……フレイムの様子が……。
「ねぇ、アラタ」
「ん?」
「彼女、時々アラタの方、睨んでるわよね。気付いてた?」
ヨウミに言われるまでもない。
俺がシアンに、不快な感情を見せた後から、そんな気配がビンビンに感じ取れてる。
……そりゃ一国の王、国内の最高権力者にそんな嫌な顔を向けたら、その支持者は俺にはいい顔はしないだろう。
……と、この時はそう思ってた。
それだったら、口先だけでも「ごめんなさい」の一言を言えばそれで済む問題だったんだが……。
まさか、雪のほかに荒らしまで持ち込まれるとは、この時には夢にも思わなかった。
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