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第6話誰かのため?戦う理由とは?
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『一夜限りの共闘と、戦う理由』
「トライ=フォルグ!! 大丈夫か!?」
俺は、ボロボロになったトライ=フォルグに駆け寄る。彼の鎧は、メイヴの氷の刃で深く傷つき、ところどころ血が滲んでいた。痛みに顔を歪ませながらも、彼は俺にニヤリと笑みを向けた。
「貴様を倒すのは、俺様だ! 故に、死ぬな!」
彼は、そう言って、再び気を失った。俺は、彼の言葉に、思わず笑みがこぼれた。こいつ、本当に……。俺は、彼の言葉に、不思議と心が救われたような気がした。
俺は、ボロボロになったトライ=フォルグを背負い、リィナと共に、地下礼拝堂を後にした。重たい彼の体を背負って、滑り台のような落下通路スロープを登っていく。リィナは、必死にスカートを抑えながら俺の後を追ってくる。
「……もう、二度とこんな場所、来たくないわ。」
彼女の言葉には、いつもの活気がなく、その声は、疲労と、そして恐怖に震えていた。俺は、何も言わずに、ただひたすら前へと進んだ。
📘リューディア港街:ギルド支部《蒼鋼の扉》
「【依頼名】
『月光下、地中より現れし魔術装甲兵器を封印せよ』
ランク:A
危険度:B
報酬:S(宝飾石+鍛冶屋紹介状)」
俺たちは、リューディア港街のギルド支部に戻り、依頼の完了報告を済ませた。メイヴによってオルド=ヴァイスは破壊されてしまったが、ギルドマスターは、その圧倒的な実力を前に、俺たちの功績を認めざるを得なかった。結果、報酬は満額。Sランクの宝飾石と、街一番の鍛冶屋の紹介状を、俺たちは手に入れた。
「……いやー、疲れた。まさか、あんなおっかねー女が出てくるとは思わなかったぜ。」
俺は、依頼報告を終え、ギルドの酒場で、トライ=フォルグを休ませながら、ガラン爺にそう愚痴をこぼした。
「そりゃあ、Aランク依頼だもんな。ただの魔物討伐とはわけが違うんだ。それによくやった。お前さんたちのおかげで、街は救われた。」
ガラン爺は、そう言って、俺の肩を軽く叩いた。彼の言葉は、俺の疲れた体に、温かく染み渡るようだった。
「今回の報酬は、俺とリィナ、そして、この馬鹿な黒騎士で、山分けだな。」
俺は、そう言って、トライ=フォルグの方を見る。彼は、まだ意識を失ったままだ。
📘蒼星亭(そうせいてい):宿屋の自室
宿に戻った俺は、ベッドにトライ=フォルグを寝かせ、リィナと共に、食堂へと向かう。
「……疲れた……魚介類も良いな。飯にするか……」
俺は、宿の食堂に入り、空いている席に座った。リィナは、俺の向かいに座る。いつもの彼女なら、もうとっくにメニューを見て、食べ物の演出評価を始めているはずだ。だが、今日の彼女は、黙ったままだ。
「……どうした、リィナ。腹減ってないのか?」
俺が尋ねると、彼女は、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、何かを恐れているかのように、揺れていた。
「……私には、わからない……」
彼女の声は、か細く、そして弱々しい。まるで、別人のようだった。
「……戦う理由も、誰かを守ることも、あのトライ=フォルグが居なかったら、終わってた……そして、心が壊れてた……」
彼女は、そう言って、俯いた。その小さな肩が、震えている。
「レクトは、なんで戦うの?」
リィナの言葉は、俺の胸に突き刺さった。俺は、彼女の言葉に、何も答えることができなかった。
「なんで?」
俺は、彼女の言葉を、心の中で反芻する。なぜ俺は、戦うのか。
「簡単だ。飯のため。そして、目の前の面倒を凪払うからさ。」
俺は、そう言って、ニヤリと笑った。それは、まるで、自分の心の奥底にある感情を、隠すかのように。
「……は?」
リィナは、呆然とした顔で、俺を見つめている。
「だってよ。飯食うためには金がいるだろ? 金を稼ぐには、依頼をこなす必要がある。依頼をこなすには、目の前の面倒な敵をぶっ倒す必要がある。だから俺は、戦うんだ。」
俺は、そう言って、彼女に、精一杯の笑顔を向けた。それは、嘘じゃない。これも、俺の戦う理由の一つだ。だが、それだけじゃない。
「それに、今回の依頼だって、結局は、面倒なことになっただろ? だったら、その面倒なことを、さっさと凪払う。それが、俺のやり方さ。」
俺は、そう言って、リィナの頭を軽く叩いた。彼女は、少しだけ驚いたような顔をしていたが、やがて、その表情は、少しだけ和らいだ。
「……バカみたい。」
彼女は、そう言って、小さく笑った。その笑顔は、まだ少し、震えている。
「はは、そうだよ。俺は、バカなんだ。だから、お前は、俺の隣で、ただ笑っていればいいんだよ。」
俺は、そう言って、彼女に、優しく微笑みかけた。俺たちの戦いは、まだ終わらない。だが、俺は、もう一人じゃない。俺の隣には、リィナがいる。そして、俺の後ろには、意識を失ったトライ=フォルグがいる。
この世界は、まだまだ、俺たちを退屈させそうにない。
📘『彼女が教えたのは“魔法”ではなく、“代償の美学”だった』
リューディア港街。午前5時。
まだ夜の帳が完全に降りていない、星の残る時間帯。漁師たちの威勢のいい声が遠くに聞こえてくる中、俺たちの宿、蒼星亭の一室で、リィナは静かに目を覚ました。
「ん……」
彼女は、寝返りを打ち、窓の外に広がる、朝焼けの空を見つめる。その瞳には、メイヴの言葉が、まるで呪いのように焼き付いていた。
「『魔術は綺麗でなければ意味がない』……」
そして、レクトの言葉も。
「『過去は過去だぜ?』」
相反する二つの言葉が、彼女の心の中で、激しくぶつかり合っていた。
📘過去回想:メイヴとリィナの魔術訓練編
「これが**“反射結界”**? 試験管のくせに、ずいぶん派手にやるじゃん」
15歳の頃、リィナは、ギルド傘下の魔術開発教育機関《アメジスト技研》第五演習棟で、メイヴの特別講義を受けていた。メイヴは、当時から既に**“異才枠”**として、特別講師のポジションに就いていた。
リィナが、メイヴの生み出した、試験管から放たれる派手な反射結界を見て、そう呟くと、メイヴは、いつもの冷たい微笑みを浮かべた。
「あたしはね、“綺麗な魔術”しか信じないの」
「効率無視のエフェクト過剰って言われてたよ?」
リィナは、少しだけ挑発するように言い返した。メイヴの魔術は、確かに美しかった。だが、その美しさは、あまりにも非効率で、実戦向きではないと、他の訓練生からは酷評されていた。
「美しさはね、**命の価値を映す鏡なのよ。**だからこそ──砕けると綺麗。」
メイヴの言葉に、リィナは、ゾクリと背筋が凍るような感覚を覚えた。
演習場にて、メイヴの投射した**“結界花弁型反射魔術”**が、他の訓練生の魔法を巻き込む。それは、まるで美しい花弁が舞い散るかのように、他の訓練生が放った魔術を反射し、あらぬ方向へと飛ばしていく。
リィナだけが、その方向性に違和感を覚えた。
「……先輩、誰かを守るためのシールドで“誰かを巻き込む”のは、おかしくない?」
「“誰か”じゃない。“結果”を守るのよ」
メイヴは、冷たい声でそう言い放った。
「リィナ、あなたも早くその目を変えなさい。じゃないと――“自分の魔術に殺される”わよ」
あの日のあたしは、あの人の言葉が**“正しい”と思っていた。美しく、完璧で、無駄な犠牲は“誤差”。それが、メイヴが教えた“代償の美学”**だった。
でも今ならわかる。
あれは正しさじゃなくて、**“合理という毒”**だった。
🎤シーン:夜の港
夜。港の石畳のベンチで、レクトとリィナは並んで座っていた。潮風が、二人の間を吹き抜けていく。
「あたし……前は、あの人に言われるがままだったの。
魔法は美しく、無駄な犠牲は“誤差”って……そう思い込んでた。
今さら、恥ずかしい話だけど――」
リィナは、ポツリポツリと、自分の過去を話し始めた。その声は、小さく、そして震えていた。
「……ふーん。
じゃあさ、俺からも一個、ありがたい言葉、贈っとくわ」
レクトは、彼女の言葉を、静かに聞いていた。そして、空を見上げて、涼しい顔で言い放った。
「“過去は過去だぜ?”――って、たぶん般若心経も言ってた」
リィナが、思わず顔を上げる。その瞳には、戸惑いの色が浮かんでいた。
「……は?」
レクトは、リィナの反応に、ニヤリと笑った。
「いやほら、**“色即是空、過去はたぶんネタ”**ってやつ」
「失敗もトラウマも全部、オチにすればギャグだ。演出過剰の俺らにぴったりだろ?」
「……バカじゃないの?」
リィナは、呆れと、そして少しの安心が混じった声で、そう呟いた。
「うん。でも、バカは前しか見ねぇのが仕事なんだよ。」
レクトは、そう言って、リィナに優しく微笑みかけた。
リィナが肩を震わせた。
笑いをこらえてたが、ついに吹き出す。
「……あーもう、アンタといると涙出るくらい笑えてムカつく……!でも、ちょっと救われたわ」
彼女の目には、涙が浮かんでいた。だが、それは、悲しみの涙ではない。安心と、そして、心の底から込み上げてくる笑いの涙だった。
「**“爆焔級の過去も、落ち着けばネタ枠”**ってな!」
レクトは、そう言って、彼女の頭を軽く叩いた。
✅おまけ:カズマ風の後日談ナレーション(心の声)
(まあ、気の利いたセリフとか、正直慣れてないんだけどさ。)
(でも、あいつがちょっとでも笑ってくれたなら――まあ、それでいい。
……って言ったらカッコつけすぎか?
よし、じゃあ**“般若心経は演出”**ってことでまとめとこ。)
「トライ=フォルグ!! 大丈夫か!?」
俺は、ボロボロになったトライ=フォルグに駆け寄る。彼の鎧は、メイヴの氷の刃で深く傷つき、ところどころ血が滲んでいた。痛みに顔を歪ませながらも、彼は俺にニヤリと笑みを向けた。
「貴様を倒すのは、俺様だ! 故に、死ぬな!」
彼は、そう言って、再び気を失った。俺は、彼の言葉に、思わず笑みがこぼれた。こいつ、本当に……。俺は、彼の言葉に、不思議と心が救われたような気がした。
俺は、ボロボロになったトライ=フォルグを背負い、リィナと共に、地下礼拝堂を後にした。重たい彼の体を背負って、滑り台のような落下通路スロープを登っていく。リィナは、必死にスカートを抑えながら俺の後を追ってくる。
「……もう、二度とこんな場所、来たくないわ。」
彼女の言葉には、いつもの活気がなく、その声は、疲労と、そして恐怖に震えていた。俺は、何も言わずに、ただひたすら前へと進んだ。
📘リューディア港街:ギルド支部《蒼鋼の扉》
「【依頼名】
『月光下、地中より現れし魔術装甲兵器を封印せよ』
ランク:A
危険度:B
報酬:S(宝飾石+鍛冶屋紹介状)」
俺たちは、リューディア港街のギルド支部に戻り、依頼の完了報告を済ませた。メイヴによってオルド=ヴァイスは破壊されてしまったが、ギルドマスターは、その圧倒的な実力を前に、俺たちの功績を認めざるを得なかった。結果、報酬は満額。Sランクの宝飾石と、街一番の鍛冶屋の紹介状を、俺たちは手に入れた。
「……いやー、疲れた。まさか、あんなおっかねー女が出てくるとは思わなかったぜ。」
俺は、依頼報告を終え、ギルドの酒場で、トライ=フォルグを休ませながら、ガラン爺にそう愚痴をこぼした。
「そりゃあ、Aランク依頼だもんな。ただの魔物討伐とはわけが違うんだ。それによくやった。お前さんたちのおかげで、街は救われた。」
ガラン爺は、そう言って、俺の肩を軽く叩いた。彼の言葉は、俺の疲れた体に、温かく染み渡るようだった。
「今回の報酬は、俺とリィナ、そして、この馬鹿な黒騎士で、山分けだな。」
俺は、そう言って、トライ=フォルグの方を見る。彼は、まだ意識を失ったままだ。
📘蒼星亭(そうせいてい):宿屋の自室
宿に戻った俺は、ベッドにトライ=フォルグを寝かせ、リィナと共に、食堂へと向かう。
「……疲れた……魚介類も良いな。飯にするか……」
俺は、宿の食堂に入り、空いている席に座った。リィナは、俺の向かいに座る。いつもの彼女なら、もうとっくにメニューを見て、食べ物の演出評価を始めているはずだ。だが、今日の彼女は、黙ったままだ。
「……どうした、リィナ。腹減ってないのか?」
俺が尋ねると、彼女は、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、何かを恐れているかのように、揺れていた。
「……私には、わからない……」
彼女の声は、か細く、そして弱々しい。まるで、別人のようだった。
「……戦う理由も、誰かを守ることも、あのトライ=フォルグが居なかったら、終わってた……そして、心が壊れてた……」
彼女は、そう言って、俯いた。その小さな肩が、震えている。
「レクトは、なんで戦うの?」
リィナの言葉は、俺の胸に突き刺さった。俺は、彼女の言葉に、何も答えることができなかった。
「なんで?」
俺は、彼女の言葉を、心の中で反芻する。なぜ俺は、戦うのか。
「簡単だ。飯のため。そして、目の前の面倒を凪払うからさ。」
俺は、そう言って、ニヤリと笑った。それは、まるで、自分の心の奥底にある感情を、隠すかのように。
「……は?」
リィナは、呆然とした顔で、俺を見つめている。
「だってよ。飯食うためには金がいるだろ? 金を稼ぐには、依頼をこなす必要がある。依頼をこなすには、目の前の面倒な敵をぶっ倒す必要がある。だから俺は、戦うんだ。」
俺は、そう言って、彼女に、精一杯の笑顔を向けた。それは、嘘じゃない。これも、俺の戦う理由の一つだ。だが、それだけじゃない。
「それに、今回の依頼だって、結局は、面倒なことになっただろ? だったら、その面倒なことを、さっさと凪払う。それが、俺のやり方さ。」
俺は、そう言って、リィナの頭を軽く叩いた。彼女は、少しだけ驚いたような顔をしていたが、やがて、その表情は、少しだけ和らいだ。
「……バカみたい。」
彼女は、そう言って、小さく笑った。その笑顔は、まだ少し、震えている。
「はは、そうだよ。俺は、バカなんだ。だから、お前は、俺の隣で、ただ笑っていればいいんだよ。」
俺は、そう言って、彼女に、優しく微笑みかけた。俺たちの戦いは、まだ終わらない。だが、俺は、もう一人じゃない。俺の隣には、リィナがいる。そして、俺の後ろには、意識を失ったトライ=フォルグがいる。
この世界は、まだまだ、俺たちを退屈させそうにない。
📘『彼女が教えたのは“魔法”ではなく、“代償の美学”だった』
リューディア港街。午前5時。
まだ夜の帳が完全に降りていない、星の残る時間帯。漁師たちの威勢のいい声が遠くに聞こえてくる中、俺たちの宿、蒼星亭の一室で、リィナは静かに目を覚ました。
「ん……」
彼女は、寝返りを打ち、窓の外に広がる、朝焼けの空を見つめる。その瞳には、メイヴの言葉が、まるで呪いのように焼き付いていた。
「『魔術は綺麗でなければ意味がない』……」
そして、レクトの言葉も。
「『過去は過去だぜ?』」
相反する二つの言葉が、彼女の心の中で、激しくぶつかり合っていた。
📘過去回想:メイヴとリィナの魔術訓練編
「これが**“反射結界”**? 試験管のくせに、ずいぶん派手にやるじゃん」
15歳の頃、リィナは、ギルド傘下の魔術開発教育機関《アメジスト技研》第五演習棟で、メイヴの特別講義を受けていた。メイヴは、当時から既に**“異才枠”**として、特別講師のポジションに就いていた。
リィナが、メイヴの生み出した、試験管から放たれる派手な反射結界を見て、そう呟くと、メイヴは、いつもの冷たい微笑みを浮かべた。
「あたしはね、“綺麗な魔術”しか信じないの」
「効率無視のエフェクト過剰って言われてたよ?」
リィナは、少しだけ挑発するように言い返した。メイヴの魔術は、確かに美しかった。だが、その美しさは、あまりにも非効率で、実戦向きではないと、他の訓練生からは酷評されていた。
「美しさはね、**命の価値を映す鏡なのよ。**だからこそ──砕けると綺麗。」
メイヴの言葉に、リィナは、ゾクリと背筋が凍るような感覚を覚えた。
演習場にて、メイヴの投射した**“結界花弁型反射魔術”**が、他の訓練生の魔法を巻き込む。それは、まるで美しい花弁が舞い散るかのように、他の訓練生が放った魔術を反射し、あらぬ方向へと飛ばしていく。
リィナだけが、その方向性に違和感を覚えた。
「……先輩、誰かを守るためのシールドで“誰かを巻き込む”のは、おかしくない?」
「“誰か”じゃない。“結果”を守るのよ」
メイヴは、冷たい声でそう言い放った。
「リィナ、あなたも早くその目を変えなさい。じゃないと――“自分の魔術に殺される”わよ」
あの日のあたしは、あの人の言葉が**“正しい”と思っていた。美しく、完璧で、無駄な犠牲は“誤差”。それが、メイヴが教えた“代償の美学”**だった。
でも今ならわかる。
あれは正しさじゃなくて、**“合理という毒”**だった。
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夜。港の石畳のベンチで、レクトとリィナは並んで座っていた。潮風が、二人の間を吹き抜けていく。
「あたし……前は、あの人に言われるがままだったの。
魔法は美しく、無駄な犠牲は“誤差”って……そう思い込んでた。
今さら、恥ずかしい話だけど――」
リィナは、ポツリポツリと、自分の過去を話し始めた。その声は、小さく、そして震えていた。
「……ふーん。
じゃあさ、俺からも一個、ありがたい言葉、贈っとくわ」
レクトは、彼女の言葉を、静かに聞いていた。そして、空を見上げて、涼しい顔で言い放った。
「“過去は過去だぜ?”――って、たぶん般若心経も言ってた」
リィナが、思わず顔を上げる。その瞳には、戸惑いの色が浮かんでいた。
「……は?」
レクトは、リィナの反応に、ニヤリと笑った。
「いやほら、**“色即是空、過去はたぶんネタ”**ってやつ」
「失敗もトラウマも全部、オチにすればギャグだ。演出過剰の俺らにぴったりだろ?」
「……バカじゃないの?」
リィナは、呆れと、そして少しの安心が混じった声で、そう呟いた。
「うん。でも、バカは前しか見ねぇのが仕事なんだよ。」
レクトは、そう言って、リィナに優しく微笑みかけた。
リィナが肩を震わせた。
笑いをこらえてたが、ついに吹き出す。
「……あーもう、アンタといると涙出るくらい笑えてムカつく……!でも、ちょっと救われたわ」
彼女の目には、涙が浮かんでいた。だが、それは、悲しみの涙ではない。安心と、そして、心の底から込み上げてくる笑いの涙だった。
「**“爆焔級の過去も、落ち着けばネタ枠”**ってな!」
レクトは、そう言って、彼女の頭を軽く叩いた。
✅おまけ:カズマ風の後日談ナレーション(心の声)
(まあ、気の利いたセリフとか、正直慣れてないんだけどさ。)
(でも、あいつがちょっとでも笑ってくれたなら――まあ、それでいい。
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