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プロローグ拝啓皆様へ地獄の特訓中
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地獄で修行で何が悪い?
地獄、煉獄谷の奥。
そこは、天を焦がす炎の壁と、地鳴りを響かせる赤黒い滝が支配する場所。その名も――《業火の滝》。
普通の滝登りとは訳が違う。流れてくるのは、清らかな水ではなく、ぐつぐつと煮えたぎるマグマだ。熱風が肌を焼く。鼻腔を焦げ臭さが突き刺す。一歩踏み出すたびに、足元の岩がジュウジュウと音を立てる。
「うおおらぁっ……! 熱っつ! 足ツルツルすんだよこれッ!」
裸足に近い鬼足で、必死に岩を踏みしめる少年がいた。焔丸――地獄の最底辺に位置する、まだ半人前の修鬼だ。滝登りなんて冗談じゃない。足の裏からは焦げ付くような痛みがじわじわと這い上がってくる。足元はマグマの蒸気で滑りやすく、いつ滑落してもおかしくない。
「焔丸、手ぇ抜いてんじゃないよ!」
上から声が飛んだ。涼しい顔で焔丸を見下ろすのは、長身スレンダーな女鬼、馬頭(メズ)。漆黒の長槍を肩にかけ、まるで日向ぼっこでもしているかのように優雅に立っている。その眼差しは、鋭い中にもわずかな愉悦を秘めている。
「足の動きが鈍いぞ、バカ弟子!」
横で腕を組むのは、筋肉の塊のような女鬼、牛頭(ゴズ)。巨大な戦斧を岩に突き立て、ニヤニヤと焔丸の奮闘を見守っている。その笑みは、獲物を前にした肉食獣のようだ。
「これ……普通、弟子にやらせる修行じゃねえだろ……ッ!」
焔丸が叫ぶたびに、上から二人の声が重なる。
「普通じゃないから地獄なんだろうが」
「そうそう、甘ったれは現世にゃ戻せないよ」
地獄の先輩鬼である二人は、焔丸の苦悶を面白がっているようだった。煮えたぎるマグマが顔をかすめ、焔丸は思わず身をひねる。その瞬間、足元の岩がギシギシと音を立てて崩れ落ちた。
「――うわッ!」
マグマのしぶきが跳ね、焔丸は反射的に腰の**鬼装ギア《紅蓮羅刹》**を起動させた。赤い火花が散り、腕輪から地獄の鎧が展開する。灼熱すら弾く黒鉄の篭手が腕を覆い、マグマの熱から身を守る。
「……チッ、結局使っちまった」
焔丸は悔しげに舌打ちした。これは緊急時以外は使うな、と口を酸っぱくして言われている修行なのだ。
「おやおや、修鬼のくせにギア頼みかい?」
「ほらほら、鎧着たなら倍速で登れや!」
二人の煽りに、焔丸はカッと頭に血が上る。角がピクリと立ち、その瞳に怒りの炎が灯った。
「うるせえ……見とけよ、姉ちゃんども――」
地を蹴り、マグマを蹴散らして一気に滝を駆け上がる。その動きは、先ほどとは比べ物にならないほど速く、力強い。背後で牛頭が豪快に笑い、馬頭の口元もわずかにほころんだ。
これは、地獄で最底辺の修鬼が、後に“地獄の赤槍”と呼ばれるヒーローになるまでの物語。そして今は――ただのバカな溶岩滝登りの最中である。
地獄ワルガキ、溶岩を登る
ゴオオオオ――と、溶岩の音が響く中、背後から地面を揺らすような足音が近づく。その一歩一歩が、大地を揺らし、熱風を巻き起こす。
「……おや? 足音が……重てぇな」
牛頭がちらりと視線を向けた瞬間、熱気の向こうから巨影が現れた。それは、地獄の業火をそのまま纏ったような、巨大な鬼の姿だった。炎のゆらぎの中を、紅蓮の鎧を纏った巨鬼がゆっくりと歩み寄る。その背には、燃え盛る炎を閉じ込めたかのような赤槍《獄炎破》。眼光は溶岩よりも鋭く、その声は重く、大地そのものが語りかけるように響いた。
「――馬頭、牛頭。程々にな。鍛えることと、叩き潰すことは、同義ではないのだからな」
その言葉に、馬頭は思わず背筋を伸ばした。「ぐ、紅蓮覇鬼様……!」牛頭も「お、おう……」と気まずそうに斧をどけた。彼らの尊敬と畏怖の念が、その一言からひしひしと伝わってくる。
紅蓮はゆっくりと滝を見上げ、焔丸の姿を認める。その口元にわずかな笑みを浮かべ、まるで哲学者のような抑揚で言葉を紡いだ。
「……若き鬼よ。地獄の炎は、肉体を焼くために在るのではない。汝の心を、鋼と化すためにこそ在るのだ」
その深遠な言葉に、焔丸は思わず声が裏返った。「……は、はいッ!」
紅蓮は赤槍を肩に担ぎ、背を向ける。「続けたまえ。だが、登り切った時に――貴様が何を得たか、必ず我に示すのだ」その背中は、炎を裂くように遠ざかっていった。馬頭と牛頭が視線を交わし、ニヤリと笑う。
「ほら焔丸、あのお方に認められるチャンスだぜ」
「途中で落ちたら……地獄飯三日分コースだな」
二人の煽りに、焔丸の心に新たな炎が灯った。「……絶対登ってやるッ!」焔丸はギアを再び輝かせ、溶岩を蹴った。彼の決意は、地獄の業火をも凌駕するほどの熱を帯びていた。この溶岩の滝を登り切った時、彼は何を得るのか。そして、その答えを紅蓮覇鬼に示すことができるのか。彼の物語は、今、まさに始まったばかりだ。
一騎討ちと言う模擬戦
グオオオオオ!と、咆哮のような轟音を立てて煮えたぎる溶岩の滝。その熱風が吹き荒れる中、焔丸は最後の岩段に手をかけた。足元は溶岩の蒸気で滑りやすく、全身は汗と熱でびしょ濡れだ。すでに限界をとうに超えている。
「ふ、ふんぬうう……!」
渾身の力を振り絞り、最後の一段をよじ登る。その先には――灼熱の大地と、赤く染まる地獄の空が広がっていた。そして、その中央に、圧倒的な威圧感を放つ影が立っていた。紅蓮覇鬼だ。
彼は腕を組み、滝から吹き上がる熱風を全身で受け止めながら、静かに焔丸を待っていた。背後の景色と相まって、まるで地獄そのものが具現化したかのようだ。
「……来たか、焔丸」
低く響く声に、焔丸は反射的に背筋を伸ばす。しかし、体は鉛のように重く、今にも崩れ落ちそうだ。
「き、来ましたけど……ハァ、ハァ……これで終わりでいいっすよね?」
疲労困憊の体で、思わずそう尋ねてしまう。だが、紅蓮の返答は非情なものだった。
「否。ここからが本番だ」
彼はゆっくりと、背負っていた赤槍《獄炎破》を構えた。その切っ先が、夕焼けに染まる空を裂く。
「――汝の鍛錬は、“登り切ること”で終わるのではない。“立ち上がり、戦い抜くこと”で完成するのだ」
その言葉は、まるで鋼鉄の重りを心臓に打ち込まれたかのように、焔丸にずっしりと響いた。
「……マジかよ……」
心底疲れた声が、焔丸の口から漏れる。滝の下から、馬頭と牛頭の声が届いた。
「サボんなー! 寝込みたいならまず倒せ!」
「今日も三時間コースだよ、がんばれ!」
その声に、焔丸は苦笑いを浮かべる。この地獄の先輩鬼どもは、本当に容赦がない。だが、その言葉が逆に、彼の心に火をつけた。
グゥゥゥン、と紅蓮覇鬼の体が熱を帯びる。地を踏みしめ、炎を纏った槍を突き出した。
「参れ、焔丸! 全霊で来い!」
その言葉を合図に、焔丸は再び腰の**鬼装ギア《紅蓮羅刹》**を起動させた。赤い火花が弾け、全身が灼熱の鎧に包まれる。
「うおおおおおっ!」
全身の疲労を無視し、焔丸は紅蓮覇鬼に向かって突進する。槍と拳がぶつかるたび、キィィィン!と甲高い金属音が鳴り響き、周囲の溶岩が爆ぜてマグマの飛沫が舞い上がる。熱風が吹き荒れ、二人の戦いの舞台をさらに苛烈なものに変えていく。
紅蓮の槍は、まるで意志を持っているかのように焔丸の急所を狙う。しかし、その動きは決して殺意に満ちたものではない。すべての攻撃が、焔丸の防御を試すための、あるいは攻撃の糸口を探るためのものだった。
「ッ……速ぇ……!」
焔丸は、紅蓮の槍を辛うじてかわしながら、反撃の機会を伺う。しかし、紅蓮の動きはあまりにも滑らかで、隙がない。まるで、溶岩の流れそのものが彼の動きを支配しているかのようだ。
「甘い!」
紅蓮の一閃が、焔丸の鎧をかすめる。バチィッ!と火花が散り、熱が全身を駆け巡る。
「くそっ!」
焔丸は体勢を立て直し、再び突進する。だが、紅蓮はそれを予測していたかのように、槍の柄で焔丸の腹部を強打した。ゴフッ!と息が詰まる。
「……ッ、まだまだぁ!」
何度も、何度も、倒れては立ち上がり、紅蓮に挑み続ける。そのたびに、紅蓮は容赦なく、そして的確に、焔丸の弱点を突いてくる。槍の一撃一撃が、彼の戦い方を、そして心を、少しずつ変えていく。
数時間後――
ドサッ、と音がして、焔丸は地面に倒れ込んだ。全身から湯気を上げ、ピクリとも動かない。
「……終わった……死ぬ……」
かろうじて、その言葉だけを口にするのが精一杯だった。滝の下から、牛頭の笑い声が聞こえる。
「寝たきり三時間コース、今日も達成だな」
「明日も同じメニューだ」
馬頭の淡々とした声が、さらに焔丸の心を打ちのめす。
遠ざかる意識の中で、焔丸はかすかに、紅蓮覇鬼の低く響く声を聞いた。
「よく耐えた。だが……明日はもう一段、高みに登れ」
馬頭の淡々とした声が、霞む意識の中に響く。その声は、今日の地獄が明日も続くことを告げる、冷たい宣告のようだった。全身から湯気を立て、泥のように地面に沈み込んだ焔丸は、もはや反論する力もなかった。ただ、遠ざかる意識の中で、かすかに、紅蓮覇鬼の低く響く声を聞いた。
「よく耐えた。だが……明日はもう一段、高みに登れ」
その言葉は、彼をさらに追い詰める鬼の言葉でありながら、なぜか、遠い未来への招待状にも聞こえた。地獄の底から、もう一段、もう一段と、高みを目指せと。
目が覚めると、あたりはすでに薄明かりに包まれていた。全身の筋肉が悲鳴を上げ、動かすことすら億劫だ。だが、体は本能的に、次の地獄を求めていた。
「チッ……」
舌打ちと共に、重い体を起こす。隣では、牛頭がすでに巨大な戦斧を担ぎ、不敵な笑みを浮かべている。その視線の先には、漆黒の長槍を肩にかけた馬頭が、優雅に立っていた。
「さあ、バカ弟子。朝から溶岩風呂だ」
「朝風呂にしては熱すぎるっつーの……」
焔丸はぼやきながらも、再び煉獄谷へと向かう。昨日と同じ、いや、昨日よりもさらに苛烈な一日が始まろうとしていた。
その日も、溶岩の滝登り、紅蓮覇鬼との模擬戦を繰り返した。滝の熱風は、もはや心地よい温風にさえ感じられるようになった。紅蓮の槍の一撃一撃は、もはや恐怖ではなく、己の限界を試すための試練となった。
「もっとだ! その程度で限界と嘯くか!」
紅蓮の咆哮が、煉獄谷に響く。焔丸は、全身の骨が軋むほどの衝撃を受けながらも、再び立ち上がった。彼の瞳に宿る炎は、昨日よりも、さらに強く燃え盛っていた。
そして、一週間が過ぎた。
「おい、焔丸」
牛頭に声をかけられ、焔丸は、いつものようにボロボロの体で振り返った。
「なんだよ、もう一回やるのかよ……」
「いや、今日はお前が登る滝はあっちだ」
牛頭が指差した先には、これまで登っていた業火の滝の、さらに奥に位置する、巨大な滝があった。それは、これまでよりもはるかに高く、そして、流れている溶岩の色も、一段と赤黒く、禍々しい輝きを放っていた。
「あれは……」
「《煉獄の紅玉》だ。業火の滝の千倍は熱い。お前の今の力じゃ、一歩踏み出しただけで溶けるだろうな」
馬頭が淡々と告げる。
「じゃあ、なんで俺に……」
「安心しな。お前の今のメニューは、あっちじゃねえ」
牛頭はニヤリと笑うと、背負っていた巨大な戦斧を、焔丸の目の前に突き立てた。
「今日からお前は、この戦斧を背負って登れ」
「は?」
焔丸は、間抜けな声を出した。その戦斧は、牛頭の身長よりも大きく、ずっしりとした重みが、見るだけでも伝わってくる。
「ふざけんな! ただでさえキツいのに、こんなもん背負って登れるわけねえだろ!」
「やかましい! 紅蓮覇鬼様のご命令だ。それに、お前はもう、業火の滝じゃ成長しねえ」
馬頭の言葉に、焔丸は言葉を失う。確かに、最近は滝登りにも慣れ、紅蓮覇鬼との模擬戦でも、以前よりは粘れるようになっていた。しかし、だからといって、こんな無茶な修行をさせられるとは……。
「い、嫌だ……! 絶対無理だ!」
「無理じゃねえ。できるまでやるんだよ、ボケ弟子が!」
牛頭は、焔丸の頭を力いっぱい叩いた。
「いってぇ……!」
「いいから、とっとと背負いやがれ! 遅れたら、地獄飯抜きだぞ!」
焔丸は、文句を言いながらも、牛頭の戦斧を背負った。その重みに、体がぐらりと傾く。
「う、うわっ……重っ……!」
「いいか、焔丸」
馬頭が、いつになく真剣な表情で告げた。
「戦斧を背負うのは、単に負荷をかけるためだけじゃない。お前は、これまでの修行で、体の使い方を覚えてきた。だが、まだ、自分の力に酔っている。その傲慢さを叩き潰すためだ」
「傲慢……?」
「ああ。お前は、地獄の最底辺から抜け出せない。なぜだかわかるか?」
馬頭の問いに、焔丸は答えられない。
「それは、お前が、まだ自分の力を信じきれていないからだ。そして、他人の力を、借りようとばかりしているからだ」
その言葉は、焔丸の胸に深く突き刺さった。鬼装ギア《紅蓮羅刹》に頼りきっている自分の姿が、脳裏に浮かぶ。
「この戦斧は、お前がこれまで背負ってきた、すべての弱さだ。それを背負い、登り切った時、お前は、本当の意味で強くなる」
その言葉を最後に、馬頭と牛頭は、いつものように滝の下から焔丸を見守り始めた。
「さあ、いけ! お前の地獄は、まだ始まったばかりだ!」
牛頭の激励が、焔丸の背中を押す。
「くそっ……! やってやる……!」
焔丸は、重い戦斧を背負いながら、再び業火の滝へと挑んでいく。その一歩は、これまでよりもはるかに重く、苦しいものだった。しかし、彼の瞳には、これまでにない、強い光が宿っていた。
地獄の赤い太陽が地平に沈み、闇の帳が一瞬だけ訪れる。しかし、それはただ次の一日の幕開けを告げる合図でもあった。業火の滝での激闘と、牛頭の戦斧を背負っての滝登り。満身創痍で倒れ込んだ焔丸が意識を失ったのは午後のことだった。
次に目が覚めたのは、地獄時間で午前4時――人間界も同じ時刻に動いている。ぼんやりとした視界の中で、焔丸は自分が畳の上で大の字になっていることに気づいた。そして、目の前には、腕を組んだ二つの影。
「……んがぁ……」
疲れ果てた体を無理やり動かそうとすると、全身の筋肉が軋む。その様子を、腕を組んだ馬頭と牛頭がじっと見下ろしていた。先ほどまで修行場で教官だった二人は、今は学校教師モードと看守役を兼ねているようだ。
「ほら、起きな」
馬頭が低い声で促す。その声には、一切の情け容赦がない。
「今日は座学一限目だ。遅れたら減点だぞ」
「減点って……まだ体が鉛みたいなんすけど……」
焔丸が呻くと、牛頭が豪快に笑い、包みを投げてきた。
「だから飯だ! 回復の素だ!」
ドン!と音を立てて胸元にぶつかった包みを開けると、湯気を上げる握り飯が二つ、そしておかずが入った小箱が入っていた。中身は――漆黒の海苔で包まれた鬼辛味噌のおにぎりと、見た目は普通だが微妙に青白く光る地獄魚の焼き物。
「……これ、現世の食いもんじゃねぇよな?」
焔丸が眉をひそめる。その独特な匂いは、現世の食べ物とは明らかに違う。
「現世仕様に近づけてある。味は保証する」
馬頭が淡々と答える。焔丸は半信半疑で一口かじった。
「…………うめぇけど……舌が痺れる……!」
一口食べただけで、舌の奥からビリビリと痺れるような感覚が広がる。しかし、その痺れの中に、深い旨味が隠されていた。
「地獄仕様だ。筋肉の回復が早まる」
牛頭がニヤリと笑う。焔丸は、痺れる舌をなんとか動かしながら、無心で食べ進めた。その間にも、体の中に力が満ちていくのを感じる。鉛のように重かった体が、少しずつ軽くなっていく。
食べ終わる頃には、不思議と体の重さが消え始めていた。午前7時までには完全回復――それが、彼らの計算通りだった。
「さぁ、さっさと行け。今日の放課後は……」
馬頭の目が細くなる。その言葉に、焔丸の背筋がピンと伸びた。
「外道討伐演習だ。準備しておけ」
外道討伐――地獄と現世の狭間に蠢く、人の世に災いをなす悪しき魂を討伐する、地獄の鬼たちの重要な任務だ。それは、修鬼として、そして将来ヒーローになるためにも、避けては通れない道だった。
焔丸はため息をつき、腰の鬼装ギアの腕輪を軽く叩く。
「はいはい……地獄でも学校でも休ませてくれねぇな」
口ではそう言いつつも、口の端にはかすかな笑みが浮かんでいた。地獄と現世、両方をまたぐ鬼の一日は、まだ始まったばかりだ。そして、彼は今日も、新たな地獄に立ち向かう。
地獄、煉獄谷の奥。
そこは、天を焦がす炎の壁と、地鳴りを響かせる赤黒い滝が支配する場所。その名も――《業火の滝》。
普通の滝登りとは訳が違う。流れてくるのは、清らかな水ではなく、ぐつぐつと煮えたぎるマグマだ。熱風が肌を焼く。鼻腔を焦げ臭さが突き刺す。一歩踏み出すたびに、足元の岩がジュウジュウと音を立てる。
「うおおらぁっ……! 熱っつ! 足ツルツルすんだよこれッ!」
裸足に近い鬼足で、必死に岩を踏みしめる少年がいた。焔丸――地獄の最底辺に位置する、まだ半人前の修鬼だ。滝登りなんて冗談じゃない。足の裏からは焦げ付くような痛みがじわじわと這い上がってくる。足元はマグマの蒸気で滑りやすく、いつ滑落してもおかしくない。
「焔丸、手ぇ抜いてんじゃないよ!」
上から声が飛んだ。涼しい顔で焔丸を見下ろすのは、長身スレンダーな女鬼、馬頭(メズ)。漆黒の長槍を肩にかけ、まるで日向ぼっこでもしているかのように優雅に立っている。その眼差しは、鋭い中にもわずかな愉悦を秘めている。
「足の動きが鈍いぞ、バカ弟子!」
横で腕を組むのは、筋肉の塊のような女鬼、牛頭(ゴズ)。巨大な戦斧を岩に突き立て、ニヤニヤと焔丸の奮闘を見守っている。その笑みは、獲物を前にした肉食獣のようだ。
「これ……普通、弟子にやらせる修行じゃねえだろ……ッ!」
焔丸が叫ぶたびに、上から二人の声が重なる。
「普通じゃないから地獄なんだろうが」
「そうそう、甘ったれは現世にゃ戻せないよ」
地獄の先輩鬼である二人は、焔丸の苦悶を面白がっているようだった。煮えたぎるマグマが顔をかすめ、焔丸は思わず身をひねる。その瞬間、足元の岩がギシギシと音を立てて崩れ落ちた。
「――うわッ!」
マグマのしぶきが跳ね、焔丸は反射的に腰の**鬼装ギア《紅蓮羅刹》**を起動させた。赤い火花が散り、腕輪から地獄の鎧が展開する。灼熱すら弾く黒鉄の篭手が腕を覆い、マグマの熱から身を守る。
「……チッ、結局使っちまった」
焔丸は悔しげに舌打ちした。これは緊急時以外は使うな、と口を酸っぱくして言われている修行なのだ。
「おやおや、修鬼のくせにギア頼みかい?」
「ほらほら、鎧着たなら倍速で登れや!」
二人の煽りに、焔丸はカッと頭に血が上る。角がピクリと立ち、その瞳に怒りの炎が灯った。
「うるせえ……見とけよ、姉ちゃんども――」
地を蹴り、マグマを蹴散らして一気に滝を駆け上がる。その動きは、先ほどとは比べ物にならないほど速く、力強い。背後で牛頭が豪快に笑い、馬頭の口元もわずかにほころんだ。
これは、地獄で最底辺の修鬼が、後に“地獄の赤槍”と呼ばれるヒーローになるまでの物語。そして今は――ただのバカな溶岩滝登りの最中である。
地獄ワルガキ、溶岩を登る
ゴオオオオ――と、溶岩の音が響く中、背後から地面を揺らすような足音が近づく。その一歩一歩が、大地を揺らし、熱風を巻き起こす。
「……おや? 足音が……重てぇな」
牛頭がちらりと視線を向けた瞬間、熱気の向こうから巨影が現れた。それは、地獄の業火をそのまま纏ったような、巨大な鬼の姿だった。炎のゆらぎの中を、紅蓮の鎧を纏った巨鬼がゆっくりと歩み寄る。その背には、燃え盛る炎を閉じ込めたかのような赤槍《獄炎破》。眼光は溶岩よりも鋭く、その声は重く、大地そのものが語りかけるように響いた。
「――馬頭、牛頭。程々にな。鍛えることと、叩き潰すことは、同義ではないのだからな」
その言葉に、馬頭は思わず背筋を伸ばした。「ぐ、紅蓮覇鬼様……!」牛頭も「お、おう……」と気まずそうに斧をどけた。彼らの尊敬と畏怖の念が、その一言からひしひしと伝わってくる。
紅蓮はゆっくりと滝を見上げ、焔丸の姿を認める。その口元にわずかな笑みを浮かべ、まるで哲学者のような抑揚で言葉を紡いだ。
「……若き鬼よ。地獄の炎は、肉体を焼くために在るのではない。汝の心を、鋼と化すためにこそ在るのだ」
その深遠な言葉に、焔丸は思わず声が裏返った。「……は、はいッ!」
紅蓮は赤槍を肩に担ぎ、背を向ける。「続けたまえ。だが、登り切った時に――貴様が何を得たか、必ず我に示すのだ」その背中は、炎を裂くように遠ざかっていった。馬頭と牛頭が視線を交わし、ニヤリと笑う。
「ほら焔丸、あのお方に認められるチャンスだぜ」
「途中で落ちたら……地獄飯三日分コースだな」
二人の煽りに、焔丸の心に新たな炎が灯った。「……絶対登ってやるッ!」焔丸はギアを再び輝かせ、溶岩を蹴った。彼の決意は、地獄の業火をも凌駕するほどの熱を帯びていた。この溶岩の滝を登り切った時、彼は何を得るのか。そして、その答えを紅蓮覇鬼に示すことができるのか。彼の物語は、今、まさに始まったばかりだ。
一騎討ちと言う模擬戦
グオオオオオ!と、咆哮のような轟音を立てて煮えたぎる溶岩の滝。その熱風が吹き荒れる中、焔丸は最後の岩段に手をかけた。足元は溶岩の蒸気で滑りやすく、全身は汗と熱でびしょ濡れだ。すでに限界をとうに超えている。
「ふ、ふんぬうう……!」
渾身の力を振り絞り、最後の一段をよじ登る。その先には――灼熱の大地と、赤く染まる地獄の空が広がっていた。そして、その中央に、圧倒的な威圧感を放つ影が立っていた。紅蓮覇鬼だ。
彼は腕を組み、滝から吹き上がる熱風を全身で受け止めながら、静かに焔丸を待っていた。背後の景色と相まって、まるで地獄そのものが具現化したかのようだ。
「……来たか、焔丸」
低く響く声に、焔丸は反射的に背筋を伸ばす。しかし、体は鉛のように重く、今にも崩れ落ちそうだ。
「き、来ましたけど……ハァ、ハァ……これで終わりでいいっすよね?」
疲労困憊の体で、思わずそう尋ねてしまう。だが、紅蓮の返答は非情なものだった。
「否。ここからが本番だ」
彼はゆっくりと、背負っていた赤槍《獄炎破》を構えた。その切っ先が、夕焼けに染まる空を裂く。
「――汝の鍛錬は、“登り切ること”で終わるのではない。“立ち上がり、戦い抜くこと”で完成するのだ」
その言葉は、まるで鋼鉄の重りを心臓に打ち込まれたかのように、焔丸にずっしりと響いた。
「……マジかよ……」
心底疲れた声が、焔丸の口から漏れる。滝の下から、馬頭と牛頭の声が届いた。
「サボんなー! 寝込みたいならまず倒せ!」
「今日も三時間コースだよ、がんばれ!」
その声に、焔丸は苦笑いを浮かべる。この地獄の先輩鬼どもは、本当に容赦がない。だが、その言葉が逆に、彼の心に火をつけた。
グゥゥゥン、と紅蓮覇鬼の体が熱を帯びる。地を踏みしめ、炎を纏った槍を突き出した。
「参れ、焔丸! 全霊で来い!」
その言葉を合図に、焔丸は再び腰の**鬼装ギア《紅蓮羅刹》**を起動させた。赤い火花が弾け、全身が灼熱の鎧に包まれる。
「うおおおおおっ!」
全身の疲労を無視し、焔丸は紅蓮覇鬼に向かって突進する。槍と拳がぶつかるたび、キィィィン!と甲高い金属音が鳴り響き、周囲の溶岩が爆ぜてマグマの飛沫が舞い上がる。熱風が吹き荒れ、二人の戦いの舞台をさらに苛烈なものに変えていく。
紅蓮の槍は、まるで意志を持っているかのように焔丸の急所を狙う。しかし、その動きは決して殺意に満ちたものではない。すべての攻撃が、焔丸の防御を試すための、あるいは攻撃の糸口を探るためのものだった。
「ッ……速ぇ……!」
焔丸は、紅蓮の槍を辛うじてかわしながら、反撃の機会を伺う。しかし、紅蓮の動きはあまりにも滑らかで、隙がない。まるで、溶岩の流れそのものが彼の動きを支配しているかのようだ。
「甘い!」
紅蓮の一閃が、焔丸の鎧をかすめる。バチィッ!と火花が散り、熱が全身を駆け巡る。
「くそっ!」
焔丸は体勢を立て直し、再び突進する。だが、紅蓮はそれを予測していたかのように、槍の柄で焔丸の腹部を強打した。ゴフッ!と息が詰まる。
「……ッ、まだまだぁ!」
何度も、何度も、倒れては立ち上がり、紅蓮に挑み続ける。そのたびに、紅蓮は容赦なく、そして的確に、焔丸の弱点を突いてくる。槍の一撃一撃が、彼の戦い方を、そして心を、少しずつ変えていく。
数時間後――
ドサッ、と音がして、焔丸は地面に倒れ込んだ。全身から湯気を上げ、ピクリとも動かない。
「……終わった……死ぬ……」
かろうじて、その言葉だけを口にするのが精一杯だった。滝の下から、牛頭の笑い声が聞こえる。
「寝たきり三時間コース、今日も達成だな」
「明日も同じメニューだ」
馬頭の淡々とした声が、さらに焔丸の心を打ちのめす。
遠ざかる意識の中で、焔丸はかすかに、紅蓮覇鬼の低く響く声を聞いた。
「よく耐えた。だが……明日はもう一段、高みに登れ」
馬頭の淡々とした声が、霞む意識の中に響く。その声は、今日の地獄が明日も続くことを告げる、冷たい宣告のようだった。全身から湯気を立て、泥のように地面に沈み込んだ焔丸は、もはや反論する力もなかった。ただ、遠ざかる意識の中で、かすかに、紅蓮覇鬼の低く響く声を聞いた。
「よく耐えた。だが……明日はもう一段、高みに登れ」
その言葉は、彼をさらに追い詰める鬼の言葉でありながら、なぜか、遠い未来への招待状にも聞こえた。地獄の底から、もう一段、もう一段と、高みを目指せと。
目が覚めると、あたりはすでに薄明かりに包まれていた。全身の筋肉が悲鳴を上げ、動かすことすら億劫だ。だが、体は本能的に、次の地獄を求めていた。
「チッ……」
舌打ちと共に、重い体を起こす。隣では、牛頭がすでに巨大な戦斧を担ぎ、不敵な笑みを浮かべている。その視線の先には、漆黒の長槍を肩にかけた馬頭が、優雅に立っていた。
「さあ、バカ弟子。朝から溶岩風呂だ」
「朝風呂にしては熱すぎるっつーの……」
焔丸はぼやきながらも、再び煉獄谷へと向かう。昨日と同じ、いや、昨日よりもさらに苛烈な一日が始まろうとしていた。
その日も、溶岩の滝登り、紅蓮覇鬼との模擬戦を繰り返した。滝の熱風は、もはや心地よい温風にさえ感じられるようになった。紅蓮の槍の一撃一撃は、もはや恐怖ではなく、己の限界を試すための試練となった。
「もっとだ! その程度で限界と嘯くか!」
紅蓮の咆哮が、煉獄谷に響く。焔丸は、全身の骨が軋むほどの衝撃を受けながらも、再び立ち上がった。彼の瞳に宿る炎は、昨日よりも、さらに強く燃え盛っていた。
そして、一週間が過ぎた。
「おい、焔丸」
牛頭に声をかけられ、焔丸は、いつものようにボロボロの体で振り返った。
「なんだよ、もう一回やるのかよ……」
「いや、今日はお前が登る滝はあっちだ」
牛頭が指差した先には、これまで登っていた業火の滝の、さらに奥に位置する、巨大な滝があった。それは、これまでよりもはるかに高く、そして、流れている溶岩の色も、一段と赤黒く、禍々しい輝きを放っていた。
「あれは……」
「《煉獄の紅玉》だ。業火の滝の千倍は熱い。お前の今の力じゃ、一歩踏み出しただけで溶けるだろうな」
馬頭が淡々と告げる。
「じゃあ、なんで俺に……」
「安心しな。お前の今のメニューは、あっちじゃねえ」
牛頭はニヤリと笑うと、背負っていた巨大な戦斧を、焔丸の目の前に突き立てた。
「今日からお前は、この戦斧を背負って登れ」
「は?」
焔丸は、間抜けな声を出した。その戦斧は、牛頭の身長よりも大きく、ずっしりとした重みが、見るだけでも伝わってくる。
「ふざけんな! ただでさえキツいのに、こんなもん背負って登れるわけねえだろ!」
「やかましい! 紅蓮覇鬼様のご命令だ。それに、お前はもう、業火の滝じゃ成長しねえ」
馬頭の言葉に、焔丸は言葉を失う。確かに、最近は滝登りにも慣れ、紅蓮覇鬼との模擬戦でも、以前よりは粘れるようになっていた。しかし、だからといって、こんな無茶な修行をさせられるとは……。
「い、嫌だ……! 絶対無理だ!」
「無理じゃねえ。できるまでやるんだよ、ボケ弟子が!」
牛頭は、焔丸の頭を力いっぱい叩いた。
「いってぇ……!」
「いいから、とっとと背負いやがれ! 遅れたら、地獄飯抜きだぞ!」
焔丸は、文句を言いながらも、牛頭の戦斧を背負った。その重みに、体がぐらりと傾く。
「う、うわっ……重っ……!」
「いいか、焔丸」
馬頭が、いつになく真剣な表情で告げた。
「戦斧を背負うのは、単に負荷をかけるためだけじゃない。お前は、これまでの修行で、体の使い方を覚えてきた。だが、まだ、自分の力に酔っている。その傲慢さを叩き潰すためだ」
「傲慢……?」
「ああ。お前は、地獄の最底辺から抜け出せない。なぜだかわかるか?」
馬頭の問いに、焔丸は答えられない。
「それは、お前が、まだ自分の力を信じきれていないからだ。そして、他人の力を、借りようとばかりしているからだ」
その言葉は、焔丸の胸に深く突き刺さった。鬼装ギア《紅蓮羅刹》に頼りきっている自分の姿が、脳裏に浮かぶ。
「この戦斧は、お前がこれまで背負ってきた、すべての弱さだ。それを背負い、登り切った時、お前は、本当の意味で強くなる」
その言葉を最後に、馬頭と牛頭は、いつものように滝の下から焔丸を見守り始めた。
「さあ、いけ! お前の地獄は、まだ始まったばかりだ!」
牛頭の激励が、焔丸の背中を押す。
「くそっ……! やってやる……!」
焔丸は、重い戦斧を背負いながら、再び業火の滝へと挑んでいく。その一歩は、これまでよりもはるかに重く、苦しいものだった。しかし、彼の瞳には、これまでにない、強い光が宿っていた。
地獄の赤い太陽が地平に沈み、闇の帳が一瞬だけ訪れる。しかし、それはただ次の一日の幕開けを告げる合図でもあった。業火の滝での激闘と、牛頭の戦斧を背負っての滝登り。満身創痍で倒れ込んだ焔丸が意識を失ったのは午後のことだった。
次に目が覚めたのは、地獄時間で午前4時――人間界も同じ時刻に動いている。ぼんやりとした視界の中で、焔丸は自分が畳の上で大の字になっていることに気づいた。そして、目の前には、腕を組んだ二つの影。
「……んがぁ……」
疲れ果てた体を無理やり動かそうとすると、全身の筋肉が軋む。その様子を、腕を組んだ馬頭と牛頭がじっと見下ろしていた。先ほどまで修行場で教官だった二人は、今は学校教師モードと看守役を兼ねているようだ。
「ほら、起きな」
馬頭が低い声で促す。その声には、一切の情け容赦がない。
「今日は座学一限目だ。遅れたら減点だぞ」
「減点って……まだ体が鉛みたいなんすけど……」
焔丸が呻くと、牛頭が豪快に笑い、包みを投げてきた。
「だから飯だ! 回復の素だ!」
ドン!と音を立てて胸元にぶつかった包みを開けると、湯気を上げる握り飯が二つ、そしておかずが入った小箱が入っていた。中身は――漆黒の海苔で包まれた鬼辛味噌のおにぎりと、見た目は普通だが微妙に青白く光る地獄魚の焼き物。
「……これ、現世の食いもんじゃねぇよな?」
焔丸が眉をひそめる。その独特な匂いは、現世の食べ物とは明らかに違う。
「現世仕様に近づけてある。味は保証する」
馬頭が淡々と答える。焔丸は半信半疑で一口かじった。
「…………うめぇけど……舌が痺れる……!」
一口食べただけで、舌の奥からビリビリと痺れるような感覚が広がる。しかし、その痺れの中に、深い旨味が隠されていた。
「地獄仕様だ。筋肉の回復が早まる」
牛頭がニヤリと笑う。焔丸は、痺れる舌をなんとか動かしながら、無心で食べ進めた。その間にも、体の中に力が満ちていくのを感じる。鉛のように重かった体が、少しずつ軽くなっていく。
食べ終わる頃には、不思議と体の重さが消え始めていた。午前7時までには完全回復――それが、彼らの計算通りだった。
「さぁ、さっさと行け。今日の放課後は……」
馬頭の目が細くなる。その言葉に、焔丸の背筋がピンと伸びた。
「外道討伐演習だ。準備しておけ」
外道討伐――地獄と現世の狭間に蠢く、人の世に災いをなす悪しき魂を討伐する、地獄の鬼たちの重要な任務だ。それは、修鬼として、そして将来ヒーローになるためにも、避けては通れない道だった。
焔丸はため息をつき、腰の鬼装ギアの腕輪を軽く叩く。
「はいはい……地獄でも学校でも休ませてくれねぇな」
口ではそう言いつつも、口の端にはかすかな笑みが浮かんでいた。地獄と現世、両方をまたぐ鬼の一日は、まだ始まったばかりだ。そして、彼は今日も、新たな地獄に立ち向かう。
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