4 / 9
雷属性と推しを語るライト
しおりを挟む
俺の推し、最強につき
ズカッ、ズカッ……
雷界感知術式・エウカで見つけた人里を目指し、俺、風切ライトは草原を歩き続けていた。足元には、異世界の草が心地よい音を立てている。
俺の周りを、二本の浮遊槍が静かに漂っていた。
「なあ、お前ら。俺は今日まで、ほとんどゲームしかしてこなかったんだ」
俺がそう切り出すと、ツンデレ浮遊槍が、呆れたように言った。
「ゲーム?現実逃避して爆死してたってこと?」
「うるせえ。まあ、そういう側面も否定はしないけどな」
俺は苦笑いしながら、浮遊槍たちに語り始めた。
「俺がやってたゲームは、『雷神ガチャリバースZ』っていうんだ。通称、『雷ガチャZ』」
俺は少し胸を張った。
「これはな、雷属性キャラが最強とされる異世界ファンタジーRPGなんだ。プレイヤーは雷神の力を借りて魔物と戦い、世界に秩序を取り戻す……まあ、ありがちな設定なんだけどな」
照れ屋浮遊槍が、不安そうに尋ねた。
「あの……そのゲームは、楽しいんですか?」
「楽しい、楽しいよ!システムはターン制で、キャラクターのスキルや属性相性を戦略的に利用するんだ。特に、雷属性の攻撃は、敵に麻痺や感電みたいな強力なデバフを与えることができる。このゲームじゃ、雷属性こそが正義なんだよ」
俺は熱弁した。クロノスピアが雷属性なのも、雷ガチャZの影響だと思うと、運命的なものを感じる。
「でも、このゲーム最大の特徴は、その驚異的なガチャ排出率にある」
俺がそう言うと、ツンデレ浮遊槍が鼻で笑った。
「どうせ、マスターが爆死したって、文句を言いたいだけでしょ?」
「その通りだ!」
俺は声を大にして言った。
「最高レアリティであるSSR雷属性キャラクターの排出率は、なんと0.001%!ゼロ・コンマ・ゼロ・ゼロ・イチ・パーセントだぞ!?出るかバカ!」
ドガッ!
俺は思わず、地面を蹴りつけた。
「俺はリリース初日から、50連、いや、今日までに累計で数百連は回したはずだ。それでも、SSR雷属性キャラは一体も出やしねぇ!まさに爆死地獄!」
「……それは、ひどいですね」
照れ屋浮遊槍が、同情するように言った。
「だろ?でもな、その分、雷属性のSSRキャラは圧倒的な戦闘力を誇るんだ。入手できれば、ゲームの難易度が大幅に下がる。だから、みんな血眼になってガチャを回すんだ」
俺は、頭の中で『雷ガチャZ』の画面を思い浮かべた。
「そして、その中でも、俺が最も推しているキャラクターがいる。それが……**『雷穿(らいせん)のゼオ=バルザード』**だ」
ゼオの名前を口にした瞬間、俺の胸は熱くなった。
「ゼオはな、SSRの雷属性槍兵なんだ。清廉潔白で、誰からも好かれる好青年。その性格は実直で、仲間を思いやる気持ちが強い。戦闘では常に先陣を切って戦う、頼れるリーダーなんだ」
「ふーん。ただのイケメンってこと?」
ツンデレ浮遊槍が、興味なさそうに言った。
「違う!ただのイケメンじゃない!俺はゼオの生き様が好きなんだ!」
俺は熱くなった。
「ゼオは槍兵だから、高い機動力と攻撃力を持つ。敵単体への連続攻撃を得意とするんだ」
ヒュン!ヒュン!
俺はクロノスピアを手に取り、素振りをしてみせた。
「雷属性による強力な突進攻撃や、自身に雷のバフを付与して攻撃速度を上昇させるスキルを習得する。マジでカッケェんだよ!」
俺がゼオの魅力を語ると、ツンデレ浮遊槍が、少しだけ興味を持ったようだ。
「へぇ……マスターは、そんなにそのゼオってキャラが好きなの?」
「ああ。彼のキャラクターシナリオでは、どんな困難にも立ち向かう強い意志と、仲間への献身的な姿勢が描かれている。ゼオがいるだけで、俺は頑張れるんだ」
俺はスマホを取り出し、ゼオの画像を見せようとした。しかし、圏外のスマホは、画像を表示してくれない。
「くそっ、画像が見せられねえ!とにかく、めちゃくちゃ格好いいんだ!」
俺は悔しそうに言った。
「そのゼオが、俺が**『雷ガチャZ』**で最も入手を熱望しているキャラクターなんだよ。なのに、0.001%の壁が厚すぎて、未だに手に入らない……」
俺は、異世界に転移する直前の、50連爆死の記憶を思い出した。
「それで、この『雷導槍・クロノスピア』だよ」
俺は手に持った槍を見つめた。
「こいつは、雷属性の槍。ゼオと同じ、槍兵の武器だ」
俺は確信に近い感情を抱いた。
「もしかしたら、このクロノスピアと、ゼオには何か深い因縁があるのかもしれない。あるいは、このクロノスピアが、俺をゼオのいる世界に導いてくれたのかもしれない」
俺の言葉を聞き、浮遊槍たちは静かになった。
「……マスター。あなたが、そのゼオというキャラクターを、心から慕っていることはわかりました」
照れ屋浮遊槍が、小さな声で言った。
「そうよ。私たちも、そのゼオって奴に負けないくらい、マスターをサポートするわよ」
ツンデレ浮遊槍が、少しだけ頬を染めながら、俺に言った。
「……おう、頼むぜ、相棒」
俺はクロノスピアを握りしめ、前を向いた。
ザッ、ザッ……
草原を歩く足取りが、少し軽くなったような気がした。
ゼオのような槍兵になれるかはわからない。だが、この異世界で、俺は雷の力を使って、生きていくしかない。
そして、いつか、このクロノスピアの力で、ゼオに会えるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、俺は人里へと歩き続けた。
ズカッ、ズカッ……
雷界感知術式・エウカで見つけた人里を目指し、俺、風切ライトは草原を歩き続けていた。足元には、異世界の草が心地よい音を立てている。
俺の周りを、二本の浮遊槍が静かに漂っていた。
「なあ、お前ら。俺は今日まで、ほとんどゲームしかしてこなかったんだ」
俺がそう切り出すと、ツンデレ浮遊槍が、呆れたように言った。
「ゲーム?現実逃避して爆死してたってこと?」
「うるせえ。まあ、そういう側面も否定はしないけどな」
俺は苦笑いしながら、浮遊槍たちに語り始めた。
「俺がやってたゲームは、『雷神ガチャリバースZ』っていうんだ。通称、『雷ガチャZ』」
俺は少し胸を張った。
「これはな、雷属性キャラが最強とされる異世界ファンタジーRPGなんだ。プレイヤーは雷神の力を借りて魔物と戦い、世界に秩序を取り戻す……まあ、ありがちな設定なんだけどな」
照れ屋浮遊槍が、不安そうに尋ねた。
「あの……そのゲームは、楽しいんですか?」
「楽しい、楽しいよ!システムはターン制で、キャラクターのスキルや属性相性を戦略的に利用するんだ。特に、雷属性の攻撃は、敵に麻痺や感電みたいな強力なデバフを与えることができる。このゲームじゃ、雷属性こそが正義なんだよ」
俺は熱弁した。クロノスピアが雷属性なのも、雷ガチャZの影響だと思うと、運命的なものを感じる。
「でも、このゲーム最大の特徴は、その驚異的なガチャ排出率にある」
俺がそう言うと、ツンデレ浮遊槍が鼻で笑った。
「どうせ、マスターが爆死したって、文句を言いたいだけでしょ?」
「その通りだ!」
俺は声を大にして言った。
「最高レアリティであるSSR雷属性キャラクターの排出率は、なんと0.001%!ゼロ・コンマ・ゼロ・ゼロ・イチ・パーセントだぞ!?出るかバカ!」
ドガッ!
俺は思わず、地面を蹴りつけた。
「俺はリリース初日から、50連、いや、今日までに累計で数百連は回したはずだ。それでも、SSR雷属性キャラは一体も出やしねぇ!まさに爆死地獄!」
「……それは、ひどいですね」
照れ屋浮遊槍が、同情するように言った。
「だろ?でもな、その分、雷属性のSSRキャラは圧倒的な戦闘力を誇るんだ。入手できれば、ゲームの難易度が大幅に下がる。だから、みんな血眼になってガチャを回すんだ」
俺は、頭の中で『雷ガチャZ』の画面を思い浮かべた。
「そして、その中でも、俺が最も推しているキャラクターがいる。それが……**『雷穿(らいせん)のゼオ=バルザード』**だ」
ゼオの名前を口にした瞬間、俺の胸は熱くなった。
「ゼオはな、SSRの雷属性槍兵なんだ。清廉潔白で、誰からも好かれる好青年。その性格は実直で、仲間を思いやる気持ちが強い。戦闘では常に先陣を切って戦う、頼れるリーダーなんだ」
「ふーん。ただのイケメンってこと?」
ツンデレ浮遊槍が、興味なさそうに言った。
「違う!ただのイケメンじゃない!俺はゼオの生き様が好きなんだ!」
俺は熱くなった。
「ゼオは槍兵だから、高い機動力と攻撃力を持つ。敵単体への連続攻撃を得意とするんだ」
ヒュン!ヒュン!
俺はクロノスピアを手に取り、素振りをしてみせた。
「雷属性による強力な突進攻撃や、自身に雷のバフを付与して攻撃速度を上昇させるスキルを習得する。マジでカッケェんだよ!」
俺がゼオの魅力を語ると、ツンデレ浮遊槍が、少しだけ興味を持ったようだ。
「へぇ……マスターは、そんなにそのゼオってキャラが好きなの?」
「ああ。彼のキャラクターシナリオでは、どんな困難にも立ち向かう強い意志と、仲間への献身的な姿勢が描かれている。ゼオがいるだけで、俺は頑張れるんだ」
俺はスマホを取り出し、ゼオの画像を見せようとした。しかし、圏外のスマホは、画像を表示してくれない。
「くそっ、画像が見せられねえ!とにかく、めちゃくちゃ格好いいんだ!」
俺は悔しそうに言った。
「そのゼオが、俺が**『雷ガチャZ』**で最も入手を熱望しているキャラクターなんだよ。なのに、0.001%の壁が厚すぎて、未だに手に入らない……」
俺は、異世界に転移する直前の、50連爆死の記憶を思い出した。
「それで、この『雷導槍・クロノスピア』だよ」
俺は手に持った槍を見つめた。
「こいつは、雷属性の槍。ゼオと同じ、槍兵の武器だ」
俺は確信に近い感情を抱いた。
「もしかしたら、このクロノスピアと、ゼオには何か深い因縁があるのかもしれない。あるいは、このクロノスピアが、俺をゼオのいる世界に導いてくれたのかもしれない」
俺の言葉を聞き、浮遊槍たちは静かになった。
「……マスター。あなたが、そのゼオというキャラクターを、心から慕っていることはわかりました」
照れ屋浮遊槍が、小さな声で言った。
「そうよ。私たちも、そのゼオって奴に負けないくらい、マスターをサポートするわよ」
ツンデレ浮遊槍が、少しだけ頬を染めながら、俺に言った。
「……おう、頼むぜ、相棒」
俺はクロノスピアを握りしめ、前を向いた。
ザッ、ザッ……
草原を歩く足取りが、少し軽くなったような気がした。
ゼオのような槍兵になれるかはわからない。だが、この異世界で、俺は雷の力を使って、生きていくしかない。
そして、いつか、このクロノスピアの力で、ゼオに会えるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に、俺は人里へと歩き続けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!
黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。
「あれ?なんか身体が軽いな」
その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。
これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる