『500円で異世界転移！？～通販ワンクリックで最強槍を手に入れた俺、元ネタの推しキャラ戦法で魔物をぶっ倒す～』

第１村人接触未遂！！

村の気配、浮遊槍の警告
ズン、ズン、ズン……
異世界の草原を、俺は人里を目指して歩いていた。クロノスピアをしっかりと握りしめ、ナビ音声で示された方角へと進む。雷界感知術式・エウカのおかげで、俺の足取りは確信に満ちていた。
「マスター、目標地点まで、あと500メートルです」
照れ屋浮遊槍が、俺の横で小さく震えながら、人里までの距離を教えてくれる。
「ああ、ありがとうな。頼りになるぜ、お前ら」
「……あと450メートルよ。別に感謝されても、私たちの仕事なんだから」
ツンデレ浮遊槍が、不機嫌そうに距離を更新した。
「ずいぶん近いじゃないか。雷界感知術式、すげぇな」
俺は感心した。さっきまで見えなかった村が、確実な距離で示されている。
タッタッタッタ……
俺は自然と早足になった。ようやく、この異世界で、人間と接触できる。元の世界に戻る手がかりや、この世界の情報が得られるかもしれない。
「あと300メートルです……」
照れ屋浮遊槍の声が、少しだけ弾んでいるように聞こえた。
「あと200メートルよ。あんた、そんなに急いでどうするの？」
「決まってるだろ。早く人間に会って、この世界のことを聞きたいんだ」
俺は希望に満ちていた。ゲームやアニメでよくある、異世界での「第一村人」との出会いだ。温かく迎え入れられ、情報をもらい、冒険が始まる。俺の脳内には、そんなポジティブな展開が描かれていた。
その時、照れ屋浮遊槍が、急に震え始めた。
「あ、あの……マスター、待ってください」
「どうした？照れ屋」
「な、なんか、村の様子が……変、です」
照れ屋浮遊槍の言葉に、俺は立ち止まった。
「変？」
「ええ。雷界感知術式で感知した魔力反応が……なんか、ザラザラしてるんです。邪悪な、っていうか……」
ピピピピ……
浮遊槍の先端が、不安定な音を立て始めた。
「おい、どういうことだ？」
俺がツンデレ浮遊槍に尋ねると、彼女は眉間に皺を寄せたような、不機嫌な態度で言った。
「私が雷界で感知した情報によると、確かに人がいる。活気もあるように見えるわ……でも、なんか、雰囲気がね」
ツンデレ浮遊槍は、周囲を警戒するようにゆっくりと移動した。
「ねぇ、マスター。いいこと？この異世界で最初に出会う人間が、友好的とは限らないわよ？」
その言葉に、俺の背筋に冷たいものが走った。確かにそうだ。ゲームじゃない。ここは、現実の異世界だ。
「……警戒しろってことか？」
「そういうこと」
ツンデレ浮遊槍が、俺の目を見て頷いた。
その瞬間、二本の浮遊槍が、俺の目の前で**バッテン（❌）**を作った。
「マスター、回避すべきです！」
「あ、あの……近づかない方がいいです……！」
ツンデレと照れ屋が、同時に俺に警告を発した。
「回避……？」
俺は困惑した。ようやく見つけた人里なのに、なぜ回避する必要があるんだ。
バッテン！
浮遊槍たちが、再びバッテンを作り、俺に強い意志を示した。
「なんでだよ！せっかく見つけたんだぞ！？」
「だから！なんかイヤな予感がするのよ！雷界が、危険信号を発してるの！あんた、このまま進むと、ろくなことにならないわよ！」
ツンデレ浮遊槍が、俺の胸元に飛びつく勢いで訴えた。
「…………」
俺は黙り込んだ。クロノスピアの雷界感知術式が、そう警告しているのなら、安易に近づくのは危険かもしれない。
ザワ……ザワ……
風に乗って、村の方から微かな声が聞こえてくる。
俺は、浮遊槍たちの警告を無視し、草むらに身を隠しながら、村の様子を目視できる距離まで近づいた。
ガサッ……
俺は草むらから顔を出し、村を見据えた。
そこには、確かに村があった。
石造りの建物が立ち並び、活気があるように見える。
しかし、その活気は、俺が想像していた穏やかな農村のそれとは違っていた。
「おい！この奴隷はいくらだ！？」
「ヒャッハー！今日の稼ぎは最高だぜ！」
罵声と、下品な笑い声が飛び交っている。
村の中心には、大きな広場があり、そこに檻がいくつも設置されていた。檻の中には、ボロボロの服を着た人々が、恐怖に怯えながら蹲っていた。
そして、その檻の前には、いかにも粗暴そうな男たちが、大声を上げていた。
「……奴隷市場……？」
俺は呆然とした。
「ろくなやつらがいない……」
俺の脳裏に浮かんだのは、ラノベやゲームでよくある、ろくでもない悪役たちが集まる場所の光景だった。
ゴクリ……
俺は唾を飲み込んだ。
この村は、明らかに危険な場所だ。
「ねぇ、マスター。言ったでしょ？」
ツンデレ浮遊槍が、冷たい声で言った。
「……はい、ごめんなさい」
照れ屋浮遊槍は、小さな声で謝った。
俺は、二本の浮遊槍に感謝した。もし、俺が一人でこの村に突入していたら、どうなっていたか。
「……おい、ナビ。この村の魔力反応、どうなってるんだ？」
俺が尋ねると、ナビ音声が、淡々と報告した。
📢【索敵支援：村内の魔力反応、確認しました。人間の反応が大半ですが、一部に魔物と同等の強い反応を複数確認。】
「魔物と同等……」
この村には、魔物のように強力な力を持つ人間がいるということか。
「……最悪だ」
俺は、草むらに深く身を隠した。
ガサ……
「マスター、どうしますか？」
ツンデレ浮遊槍が、静かに尋ねた。
「このまま引き返しますか？」
照れ屋浮遊槍も、俺の顔を伺うように言った。
俺は、村を見つめた。確かに危険だ。だが、この村が唯一の人里だとしたら、ここから情報を得るしかない。
「……いや、引き返さない」
俺は小さく呟いた。
「この村の情報を、もう少し集める」
「マスター！？」
ツンデレ浮遊槍が、驚いたように声を上げた。
「危険すぎます！マスター、まだこの世界の戦闘に慣れていないのに……」
照れ屋浮遊槍が、震えながら俺を止めようとした。
「大丈夫だ。雷界感知術式がある」
俺は、雷界感知術式・エウカを思い出した。この能力を使えば、村の内部構造や、敵の配置、魔力量まで把握できるはずだ。
「俺は、あの『雷ガチャZ』で、SSR雷属性キャラを引くために、何百回もガチャを回したんだ。爆死して、異世界に飛んできた」
俺は、クロノスピアをしっかりと握りしめた。
「俺の目的は、この異世界で生き残ること、そして、元の世界に戻ることだ。そのためには、どんなに危険な場所でも、情報を集めなければならない」
俺は、静かに詠唱を始めた。
「――鳴り響け、空の記憶。我、雷と共に世界を視る者なり……」
バチ、バチ……
クロノスピアが、微かに光を帯び始めた。
「隠れし者よ、潜みし意思よ、万象を裂く電の眼（まなこ）に曝されよ……《雷界感知術式・エウカ》！」
シュウウウウウウウウウ！
再び雷界が展開され、俺の視界に村の内部構造が流れ込んできた。
ピピピピピ！
ナビ音声が、村の詳細な情報を俺に伝えてきた。
📢【雷界感知術式・EWCA、起動完了。村内の詳細情報を取得しました。】
俺は、雷界で視えた村の構造に、目を凝らした。