『転移先は公爵家の寝室でしたが、地味執事なので静かに守護します

トンカツうどん

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第3話公爵家実務試験

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鉄壁の試験、そして実戦
中庭。
アルベルト・ヴァンガードは静かに杖を地面へ突いた。
「模擬戦だ、少年」
「は?」
「貴様の価値を測る。武器使用は可。殺意は禁止」
淡々。感情ゼロ。
俺はトンファーを構える。
「いきなりかよ……」
「実戦は常に突然だ」
次の瞬間、空気が変わった。
アルベルトの義肢が低く唸る。
杖の先端の魔法結晶が青白く発光。
踏み込みが速い。
俺は反射的に後退。《適応生存術》が自動で最適距離を算出する。
横薙ぎの一撃。
受け流す――重い。
「……ッ!」
衝撃が腕を痺れさせる。
「判断は悪くない」
無機質な声。
次は縦。
俺は石像の陰へ回り込み、視界を切る。
呼吸制御。気配遮断。
アルベルトの目が細まる。
「隠密特化型か」
俺は背後を取る。
だが――
金属音。
義肢が背面防御を展開。
反撃の衝撃波が地面を砕いた。
「うわっ!?」
俺は転がり、距離を取る。
「攻撃力は不足。だが生存率は高い」
アルベルトは動きを止めた。
「合格だ」
「は?」
「殺す気で来れば三十秒だった。だが貴様は“生き残る”動きを選んだ。悪くない」
その瞬間――
屋敷外壁で爆音。
結界が揺れる。
アルベルトの瞳が冷える。
「……刺客だ」
模擬戦は終了。即実戦。
黒装束の影が三人、庭へ侵入してくる。
「少年、左を取れ。私は中央を制圧する」
命令口調。だが信頼が混じっている。
俺は影へ滑り込む。
足払い、肘打ち、急所打ち。
《適応生存術》が最短無力化ルートを提示。
一人沈む。
中央では、アルベルトのアーマーが展開。
魔法装甲が形成され、杖が槍へ変形。
一閃。
刺客の刃を弾き、義肢で拘束。
容赦ない。
数分で決着。
静寂。
アルベルトが俺を見る。
「……使える」
それは、彼なりの最大評価だった。
数日後。
エリクスの私室。
「リリィの送迎をお願いしたいの」
公爵夫人は静かに言う。
「学問所までの馬車護衛。アルベルトと共に」
俺は眉をひそめる。
「俺でいいのか?」
「あなたは結界内で動ける。隠密適性もある。
……そして、リリィが望んでいるわ」
リリィが笑顔で駆け寄る。
「おにいちゃん、いっしょ!」
アルベルトが頷く。
「許可は下りた。裁量は私とエリクス様が負う」
つまり責任は大人持ち。
「ただし」
アルベルトの声が低くなる。
「失敗は許さん。馬車襲撃の可能性は高い」
俺はトンファーを腰に固定する。
「分かってる。守るだけだろ」
「違う」
アルベルトは即座に否定した。
「守るのではない。“奪わせない”のだ」
その言葉に、少しだけ胸が熱くなる。
馬車が動き出す。
鉄壁の執事と、地味チートの転移少年。
公爵家の未来を乗せて――
護衛任務、開始。
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