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本音と建て前
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「ほれ、そろそろ修行始めるぞ」
ワインの残りを煽ったコウは軽い足取りでドーン邸の訓練所へ向かった。
「良いか、魔術はイメージが大切じゃ。坊主、いや、リュウタロウじゃったかの?リュウタロウの世界で硬かった物や弾く物を思い浮かべるといい。その方がイメージしやすいじゃろ」
コウの言葉に田代は防弾ガラスやダイヤモンドを思い浮かべる。ダイヤモンドより硬い物があることは知っているが、見たことが無いのでイメージしやすい方を選んだ。
「お主の『盾』をそれに置き換えるイメージをするんじゃ。焦らんでええ。ゆっくり具体的にの」
田代は車の防弾ガラスや警察が使用しているポリカーボネートを思い浮かべる。政治家である父の車には防弾ガラスが装備されており、想像しやすかった。
が、アッサリとコウに壊された。
「リュウタロウ、そうあからさまに落ち込むでない。修行は始まったばかりじゃぞ」
「すみません師匠。次の結界、確認宜しくお願いします!」
リュウタロウは魔力が尽き掛けてるまで結界を展開し、倒れればコウが神力を注ぎ込み、又結界を展開すると言うスパルタ修行を毎日続けることになった。
20日目が過ぎる頃になると、田代の魔力は以前の二倍程増えた。
結界も防弾ガラスの上にダイヤモンドを重ねる様にイメージすると、コウの指先一つで壊れていた結界がヒビが入る程度になった。
「流石は勇者じゃの。ここまで早く成長するとは、ワシびっくりじゃわい」
「まだです!ヒビが入らなくなるまでお願いします!」
「うむ、良い心構えじゃ」
コウが片手を田代の結界に翳しながら、少しずつ与える神力を強めていく。
その神力に田代は徐々に押されて行き、結界もピシリと嫌な音を立てる。
これ以上硬いものなんて……田代は踏ん張りながら、コウが初めに言っていた弾く物と言う言葉を思い出す。
弾く物、咄嗟に思い浮かべたのは弾力を持ったゴムの存在だった。
それを重ねるイメージをした時、コウの神力は完全に弾かれた。
「ぬ?なんじゃ今のは?」
「うっ……」
剛と柔を合わせるのは中々に魔力が必要だった。
成功したものの、田代は軽い目眩を起こしその場に座り込んだ。
「急激に魔力を消費した様じゃの」
コウは田代に癒しの神力を放つ。
「して、今のはどうやったんじゃ?」
回復した田代に鋭い視線を向けてコウが質問すると、ゆっくり説明をしだした。
「なるほど。ゴムとはそんな性質を持った素材なのじゃな」
「はい。色んな形に加工出来るんですが、それが分厚いとかなりの強度になるんです」
田代は地面に絵を書いて、先ずは輪ゴムを説明する。
一つ一つは力を加えれば直ぐに切れてしまうものの、それをウリカ(この世界の西瓜に良く似た果物)重ねて纏わせればウリカは弾けて壊れてしまうこと。
薄い紙の様に加工すれば柔らかくグニャリと簡単に折り曲げたりも出来るが、それが分厚ければ弾力性を持ちながらも強度も出ることを説明する。
兎に角色んな形に加工出来るゴムだが、元々はゴムの木と呼ばれている植物の樹液から取れた物だと。
自分が居た時代では合成ゴムの存在もあったが、そこまで話す必要はないと思い、それは端折って説明された。
「なるほど。剛と柔、面白い。じゃが維持出来なけれ使えまい。魔力制御をしつつ練習じゃな」
「はい!」
それから一週間もすると、田代は魔力制御をしつつ、新たな結界を洗練していった。
コウもこれなら持続力も問題無く、上級精霊の攻撃も弾くだろうと太鼓判を押した。
「一ヶ月、良く頑張った」
「師匠、ありがとうございます」
「ほほ、まぁ、又何かあったら連絡しておいで。誓約は交わせんが、弟子を助けるのも師匠の仕事じゃて」
田代は何度も頭を下げお礼を言うと皇都に向かって飛び去った。
「死ぬことは無いじゃろうが、怪我はして欲しくないの……」
コウはボソリと呟くと酒場へと足を向けた。
「リョータローが納得出来るものになったのだな」
いつの間にか呼ばれて、現在執務室には如月、坂下、陣野も来た。
侍女が入れた紅茶とホロりと溶けるクッキーを頂きながら、田代達はアンドリュースと向かい合う。
そんな中、アンドリュースはちょっと複雑そうな表情をする。
「陛下?」
「いや、リョータローの努力の成果が出て、余は自分のことの様に嬉しい。しかしこうとも思うのだ。本当にそなた達を戦争に駆り出して良いものかどうかと」
「陛下!」
田代達は思いがけないアンドリュースの言葉に戸惑った。
自分達はその為に召喚され、納得して帝国に助力する覚悟はとっくに持っている。それが否定された様に感じた。
「勘違いして欲しくないのだが、そなた達の実力は我が騎士団を上回っているのは良く分かっているのだ。ただ、そなた達の世界のことを聞いて、余は心配なのだ。武器も所持せず平和な生活を送って来たのであろう?戦争に出ると言うことは相手の命を奪うことがあると言うことと、それ以上に自分も殺されるかもしれないと言うことだ」
アンドリュースの言葉に田代達はビクリとするが、如月と坂下は、それも分かった上で手伝いたいとハッキリ伝えた。
如月と坂下は騎士団と共にこの1年、訓練を続けていた。
時には訓練に熱が入り過ぎて怪我人が出たりもし、その都度二人は「スポーツとは違う
」ことを肌で感じていたのだ。
「俺は騎士団の皆とずっと一緒訓練してきました。彼等の中には俺とあまり変わらない歳の奴も居るし、殆どの騎士は本当に普通の人と変わらない。そりゃ騎士である誇りは持ってるけど、話したり飯を一緒に食ったり、笑いあったり……俺、自分が手伝うことでアイツらの死が回避される確率が上がるならやりたいです!」
「私も同じです!私は元の世界で剣を振ってきたけど飾り立てられた人形と同じでした。でもここでは私を本当の意味で認めてくれる仲間が居るんです。同じ様に剣を極めたいと思っている同志も!私は誰一人死なせたくありません!だから私を連れて行って下さい!」
如月と坂下の訴えに田代も続く。
「僕は翔や立花みたいにずっと騎士団と訓練した訳ではないけれど、訓練に参加した時に騎士達の真剣な思いも知りました。僕も彼等を傷付けさせたくはありません。もしかしたら王国側の戦士を殺してしまったり、死体を見て吐くかもしれない。でも後悔したくないんです。陛下のお役に立ちたいんです!」
アンドリュースは三人の言葉をじっくりと聞いていた。
「ジンノ殿、貴女のスキルだと後方支援になりますが、それでも危険で無いとは言えません。貴女がこの一年、各地を回って歌や踊りで帝国の民を元気付けてくれただけでも陛下を始め我々は感謝しているのですよ?無理に戦争に出なくても良いのですよ?」
タナトスの言葉に陣野はニッコリ微笑んだ。
「でもカルーは行くのでしょう?少なくともカルーはそのつもりです。同胞を救い出して帝国に住まわせたいと夢を語るのも聞いてますし、出るなと言われても彼は行くでしょう。私は田代くん達皆を歌で応援したいし、カルーも絶対死なせたくありません。だから私もとっくに覚悟を決めているのです」
「それにコウ師匠にはお墨付きを貰いました!」
田代達の決意は揺るがなかった。
「恩に着る」
アンドリュースが柔らかい笑みを浮かべたので、田代達は自分達の思いが通じたと感じホッとする。
「そう言えばジポンの職人から連絡があったのですが、コジルの改良と『ショーユ』が何とかなりそうだとのことですよ」
「え!?本当ですか!?」
「何でも職人達が天啓を受けたとかで。仕込みが終わっても出来上がるのは最短でも半年だそうですが…」
「天啓となると新たな神のお告げと言うことではないだろうか?リュータロー達の願いを聞き届けて下さったのであろうな」
如月達は腕を上げたりガッツポーズをして、アレが食べたい、コレが食べたいと話し合っているが、田代だけは女神に抱きつかれている男神が脳内に浮かんできて顔を赤らめた。
田代達が執務室を後にすると、タナトスがアンドリュースをジッと見つめ
「予想通りでしたね」
と口から漏らした。
「アヤメだけは予想外であったな。カルーは良い仕事をしている様だ」
「あの意気込みなら前線に行っても大丈夫でしょう。ただ精神は病むかもしれませんが」
「カケルとリッカには良い相手は出来ていないのか?」
「キサラギ殿は今のところ部屋付きの侍女と仲が良いみたいですが、恋愛感情があるかどうかは分かりません。サカシタ殿は仲の良い男同士を見ている方が幸せそうだと報告を受けています」
「カケルの部屋付きの侍女はマロリー伯爵家の令嬢であったか?」
新たに紅茶を入れた侍女にアンドリュースが聞くと、侍女は肯定する。
「ミリアム嬢です。まだ婚約者は居なかったと思います。彼女とは学生時代から付き合いがありますが、元気で明るい方が好ましいと以前は申しておりました。変わってなければ良いのですが」
その情報に、タナトスは勇者如月との仲を取り持つ様にと指示すると、侍女は「御意」と礼を取り部屋の隅に戻った。
「サカシタ殿はちょっと難しそうですが、ジンノ殿はカルーが居りますし、タシロ殿は殿下に心酔しておりますから裏切ったり敵前逃亡はしないでしょう」
「まぁ、そうなる様に先程話をしたのだがな……。タナトス、余は卑怯者であろうか?王国を攻めるのは姉上の無念を晴らすだけではないことを彼等には伝えておらん」
影からの報告で、国境からそう遠くない王国領に金山と、魔道具にも武器にも使われるミスリル鉱山があることが報告されている。
帝国程の大所帯になると自国以外の資源が必要になるのだ。
「騙してる様で気が引けますか?」
「いや、即位した時から余は国の為を一番に考えている。勇者達をこの帝国に腰を落ち着かせることは必須要件だ。それに勇者達は神に護られているのかもしれんぞ」
「先程の天啓ですか?まぁ、そうかもしれませんね。それより陛下、そろそろお茶の時間は終わりですよ。まだ署名を頂きたい書類があるんですから」
アンドリュースは不承不承に机と向かい合った。
ワインの残りを煽ったコウは軽い足取りでドーン邸の訓練所へ向かった。
「良いか、魔術はイメージが大切じゃ。坊主、いや、リュウタロウじゃったかの?リュウタロウの世界で硬かった物や弾く物を思い浮かべるといい。その方がイメージしやすいじゃろ」
コウの言葉に田代は防弾ガラスやダイヤモンドを思い浮かべる。ダイヤモンドより硬い物があることは知っているが、見たことが無いのでイメージしやすい方を選んだ。
「お主の『盾』をそれに置き換えるイメージをするんじゃ。焦らんでええ。ゆっくり具体的にの」
田代は車の防弾ガラスや警察が使用しているポリカーボネートを思い浮かべる。政治家である父の車には防弾ガラスが装備されており、想像しやすかった。
が、アッサリとコウに壊された。
「リュウタロウ、そうあからさまに落ち込むでない。修行は始まったばかりじゃぞ」
「すみません師匠。次の結界、確認宜しくお願いします!」
リュウタロウは魔力が尽き掛けてるまで結界を展開し、倒れればコウが神力を注ぎ込み、又結界を展開すると言うスパルタ修行を毎日続けることになった。
20日目が過ぎる頃になると、田代の魔力は以前の二倍程増えた。
結界も防弾ガラスの上にダイヤモンドを重ねる様にイメージすると、コウの指先一つで壊れていた結界がヒビが入る程度になった。
「流石は勇者じゃの。ここまで早く成長するとは、ワシびっくりじゃわい」
「まだです!ヒビが入らなくなるまでお願いします!」
「うむ、良い心構えじゃ」
コウが片手を田代の結界に翳しながら、少しずつ与える神力を強めていく。
その神力に田代は徐々に押されて行き、結界もピシリと嫌な音を立てる。
これ以上硬いものなんて……田代は踏ん張りながら、コウが初めに言っていた弾く物と言う言葉を思い出す。
弾く物、咄嗟に思い浮かべたのは弾力を持ったゴムの存在だった。
それを重ねるイメージをした時、コウの神力は完全に弾かれた。
「ぬ?なんじゃ今のは?」
「うっ……」
剛と柔を合わせるのは中々に魔力が必要だった。
成功したものの、田代は軽い目眩を起こしその場に座り込んだ。
「急激に魔力を消費した様じゃの」
コウは田代に癒しの神力を放つ。
「して、今のはどうやったんじゃ?」
回復した田代に鋭い視線を向けてコウが質問すると、ゆっくり説明をしだした。
「なるほど。ゴムとはそんな性質を持った素材なのじゃな」
「はい。色んな形に加工出来るんですが、それが分厚いとかなりの強度になるんです」
田代は地面に絵を書いて、先ずは輪ゴムを説明する。
一つ一つは力を加えれば直ぐに切れてしまうものの、それをウリカ(この世界の西瓜に良く似た果物)重ねて纏わせればウリカは弾けて壊れてしまうこと。
薄い紙の様に加工すれば柔らかくグニャリと簡単に折り曲げたりも出来るが、それが分厚ければ弾力性を持ちながらも強度も出ることを説明する。
兎に角色んな形に加工出来るゴムだが、元々はゴムの木と呼ばれている植物の樹液から取れた物だと。
自分が居た時代では合成ゴムの存在もあったが、そこまで話す必要はないと思い、それは端折って説明された。
「なるほど。剛と柔、面白い。じゃが維持出来なけれ使えまい。魔力制御をしつつ練習じゃな」
「はい!」
それから一週間もすると、田代は魔力制御をしつつ、新たな結界を洗練していった。
コウもこれなら持続力も問題無く、上級精霊の攻撃も弾くだろうと太鼓判を押した。
「一ヶ月、良く頑張った」
「師匠、ありがとうございます」
「ほほ、まぁ、又何かあったら連絡しておいで。誓約は交わせんが、弟子を助けるのも師匠の仕事じゃて」
田代は何度も頭を下げお礼を言うと皇都に向かって飛び去った。
「死ぬことは無いじゃろうが、怪我はして欲しくないの……」
コウはボソリと呟くと酒場へと足を向けた。
「リョータローが納得出来るものになったのだな」
いつの間にか呼ばれて、現在執務室には如月、坂下、陣野も来た。
侍女が入れた紅茶とホロりと溶けるクッキーを頂きながら、田代達はアンドリュースと向かい合う。
そんな中、アンドリュースはちょっと複雑そうな表情をする。
「陛下?」
「いや、リョータローの努力の成果が出て、余は自分のことの様に嬉しい。しかしこうとも思うのだ。本当にそなた達を戦争に駆り出して良いものかどうかと」
「陛下!」
田代達は思いがけないアンドリュースの言葉に戸惑った。
自分達はその為に召喚され、納得して帝国に助力する覚悟はとっくに持っている。それが否定された様に感じた。
「勘違いして欲しくないのだが、そなた達の実力は我が騎士団を上回っているのは良く分かっているのだ。ただ、そなた達の世界のことを聞いて、余は心配なのだ。武器も所持せず平和な生活を送って来たのであろう?戦争に出ると言うことは相手の命を奪うことがあると言うことと、それ以上に自分も殺されるかもしれないと言うことだ」
アンドリュースの言葉に田代達はビクリとするが、如月と坂下は、それも分かった上で手伝いたいとハッキリ伝えた。
如月と坂下は騎士団と共にこの1年、訓練を続けていた。
時には訓練に熱が入り過ぎて怪我人が出たりもし、その都度二人は「スポーツとは違う
」ことを肌で感じていたのだ。
「俺は騎士団の皆とずっと一緒訓練してきました。彼等の中には俺とあまり変わらない歳の奴も居るし、殆どの騎士は本当に普通の人と変わらない。そりゃ騎士である誇りは持ってるけど、話したり飯を一緒に食ったり、笑いあったり……俺、自分が手伝うことでアイツらの死が回避される確率が上がるならやりたいです!」
「私も同じです!私は元の世界で剣を振ってきたけど飾り立てられた人形と同じでした。でもここでは私を本当の意味で認めてくれる仲間が居るんです。同じ様に剣を極めたいと思っている同志も!私は誰一人死なせたくありません!だから私を連れて行って下さい!」
如月と坂下の訴えに田代も続く。
「僕は翔や立花みたいにずっと騎士団と訓練した訳ではないけれど、訓練に参加した時に騎士達の真剣な思いも知りました。僕も彼等を傷付けさせたくはありません。もしかしたら王国側の戦士を殺してしまったり、死体を見て吐くかもしれない。でも後悔したくないんです。陛下のお役に立ちたいんです!」
アンドリュースは三人の言葉をじっくりと聞いていた。
「ジンノ殿、貴女のスキルだと後方支援になりますが、それでも危険で無いとは言えません。貴女がこの一年、各地を回って歌や踊りで帝国の民を元気付けてくれただけでも陛下を始め我々は感謝しているのですよ?無理に戦争に出なくても良いのですよ?」
タナトスの言葉に陣野はニッコリ微笑んだ。
「でもカルーは行くのでしょう?少なくともカルーはそのつもりです。同胞を救い出して帝国に住まわせたいと夢を語るのも聞いてますし、出るなと言われても彼は行くでしょう。私は田代くん達皆を歌で応援したいし、カルーも絶対死なせたくありません。だから私もとっくに覚悟を決めているのです」
「それにコウ師匠にはお墨付きを貰いました!」
田代達の決意は揺るがなかった。
「恩に着る」
アンドリュースが柔らかい笑みを浮かべたので、田代達は自分達の思いが通じたと感じホッとする。
「そう言えばジポンの職人から連絡があったのですが、コジルの改良と『ショーユ』が何とかなりそうだとのことですよ」
「え!?本当ですか!?」
「何でも職人達が天啓を受けたとかで。仕込みが終わっても出来上がるのは最短でも半年だそうですが…」
「天啓となると新たな神のお告げと言うことではないだろうか?リュータロー達の願いを聞き届けて下さったのであろうな」
如月達は腕を上げたりガッツポーズをして、アレが食べたい、コレが食べたいと話し合っているが、田代だけは女神に抱きつかれている男神が脳内に浮かんできて顔を赤らめた。
田代達が執務室を後にすると、タナトスがアンドリュースをジッと見つめ
「予想通りでしたね」
と口から漏らした。
「アヤメだけは予想外であったな。カルーは良い仕事をしている様だ」
「あの意気込みなら前線に行っても大丈夫でしょう。ただ精神は病むかもしれませんが」
「カケルとリッカには良い相手は出来ていないのか?」
「キサラギ殿は今のところ部屋付きの侍女と仲が良いみたいですが、恋愛感情があるかどうかは分かりません。サカシタ殿は仲の良い男同士を見ている方が幸せそうだと報告を受けています」
「カケルの部屋付きの侍女はマロリー伯爵家の令嬢であったか?」
新たに紅茶を入れた侍女にアンドリュースが聞くと、侍女は肯定する。
「ミリアム嬢です。まだ婚約者は居なかったと思います。彼女とは学生時代から付き合いがありますが、元気で明るい方が好ましいと以前は申しておりました。変わってなければ良いのですが」
その情報に、タナトスは勇者如月との仲を取り持つ様にと指示すると、侍女は「御意」と礼を取り部屋の隅に戻った。
「サカシタ殿はちょっと難しそうですが、ジンノ殿はカルーが居りますし、タシロ殿は殿下に心酔しておりますから裏切ったり敵前逃亡はしないでしょう」
「まぁ、そうなる様に先程話をしたのだがな……。タナトス、余は卑怯者であろうか?王国を攻めるのは姉上の無念を晴らすだけではないことを彼等には伝えておらん」
影からの報告で、国境からそう遠くない王国領に金山と、魔道具にも武器にも使われるミスリル鉱山があることが報告されている。
帝国程の大所帯になると自国以外の資源が必要になるのだ。
「騙してる様で気が引けますか?」
「いや、即位した時から余は国の為を一番に考えている。勇者達をこの帝国に腰を落ち着かせることは必須要件だ。それに勇者達は神に護られているのかもしれんぞ」
「先程の天啓ですか?まぁ、そうかもしれませんね。それより陛下、そろそろお茶の時間は終わりですよ。まだ署名を頂きたい書類があるんですから」
アンドリュースは不承不承に机と向かい合った。
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