拉致られて箱庭掃除をやらされてます。~きっと犯人は闇の組織に違いない

那珂川

文字の大きさ
57 / 58

とある国の宰相の苦労

しおりを挟む
 アンドリュース陛下が即位した時、私も若輩の身でありながら宰相として仕えることになった。
 前陛下に連なる者共も切る必要があったからだ。
 それからは親友としてだけでは無く真の配下としてお支えして来たが、今の状況で私が出来ることは目の前に居られる新たなる神の言葉に耳を傾けることだけのようだ。
 何故なら我が君主は氷結の精霊術師と共に他世界の神から説教されているからだ。

 この世のものとは思えない、恐ろしい程の美貌を持つ神をアナスタシア様が何とか宥めようとされてるが、どうやら二人の口喧嘩のせいで新たなこの世界の神の話が進まないことに御怒りになっている様だ。
 なので私と王国の新国王であるメモルラル国王がお言葉を拝聴することになったのだが、なんと言うことだろうか。
 現在この世界には瘴気が蔓延しており、新たなる神が浄化中らしく、我々が住む下界で争い事が起きると又瘴気が増えるとのことだ。
 その瘴気は前の神がこの世界を放置した為に発生したらしく、瘴気のせいで下界に住む者の心が荒み、それから負の所業、所謂犯罪等に向けて心が走り易くなると言うのだ。

『勇者を助けたことについては俺も深く考えていなかった。助けることによってもたらされる未来を予想せずにいたからな。まさかそのことで俺が帝国を味方してると思われるとはな』

 これには私も口が過ぎたと反省することになった。
 神は謝罪を受けて下さったが、何せ黒い兜を被ったままなので表情が分からない。

 そこへ女性の声が響き渡った。

「神様!今回の戦争で命を落とした者を生き返らせては頂けませんか!?」

 先程キサラギ殿に詰め寄っていた女性だ。
 火の精霊術師の遺体は損傷が激しくて精霊術師本人であることを確認するのにも時間がかかり、尚且つ王国には返せない状態だった。
 あれからキサラギ殿は度々夜中に悪夢に魘され奇声を発する様になったらしい。
 この会談に連れて来たのは時期尚早だと思ってはいたのだが、まさか殺害した相手の娘がこの場に居るとはな。
 ミリアム嬢に心のケアをして貰ってはいるが、あれでは使いものにならない。
 乗り越えて貰わねばならんのだが。

『出来ないことはない』

 え?生き返らせる?


『ただ、それをしてどう未来が変わるのか考えなければならない。そしてもしするなら今回の戦争で命を落とした者全てを救わなければならない』

「全員!?」

 うちの軍部のミスオが思わず声を荒らげる。

「それではこの戦争の原因になったアナスタシア様も生き返らせれば良いのではありませんか?」

 おいおい、相手は神様だぞ?

『それは出来ない。彼女は既に精霊になることが決まっている』

「それはおかしくありませんか?わが帝国側は精霊術師が増えるのを見過ごす訳にはいきませんし、第一帝国民が納得しません!アナスタシア様の仇を取ることを悲願としてここまでやって来たのです!」

 周りの騎士達もそうだそうだと囃し立てる。
 気持ちは私も同じだ。
 だが相手は神だ。敬わなければならん存在なのだ。
 私は慌ててミスオ等を宥めた。
 フォーグよ、お前がするべきことだぞ?何故憮然としているのだ?

『うーん、国民感情ねぇ。それは果たして純粋なものかな?アナスタシアの仇を取ることを悲願とすることで国民感情を操ってないか?確かに不幸な事件だったと思うが、それを大義名分にして必要な領土を得たんだろう?それで満足してもらえないか?』

 確かにアナスタシア様のことをアンドリュース陛下の即位後、国民をまとめる為に利用したことは否めない。
 我が国はある意味他国が寄り集まった連合であるとも言える。アナスタシア様の件はまとめるのに打って付けだったのだ。

 続けて神から説明があるが、どうやら氷結の精霊術師が育てた世界樹のなりかけと言うものは、この世界の浄化にも必要らしく、氷結の精霊術師を無力化することはその木を枯らすことに繋がるらしい。

『それに……嫌な予感がするんだよね。まぁ俺の感でしか無いけど、王国と帝国が仲良くしてくれないと後々困ることになるのは分かる』

『エト、かなり神の完成体に近付いたな。そのヘルメットが取れるのも遠くなさそうだ』

 他世界の神は説教が済んだのか、新たなる神の側に戻りウットリした表情を浮かべている。
 落ち着いて頂けて何よりだ。

 それより陛下、そこで氷結の精霊術師と座って落ち込みながらボソボソ話をしてないで会議に参加して下さい。
 ああ、何か理解し合った様にガッチリ手を組んで、一体どうなったんですか!

『主~~~話し合いはまだ終わらんのかいの?』

『皆待ってるよ~~』

 その声がする方向、つまり窓を見るとそこには光龍と……暗黒龍??
 え?火龍に水龍??
 何か太陽の光を反射してギラギラして眩しい!
 外に居る者達の悲鳴も聞こえてくるな…。大丈夫なのか?
 あの龍達が暴れれば帝国は簡単に蹂躙されるだろうな。
 何だろう。胃がキリキリするな。

『何だ、皆来たのか?もう少し待ってくれ』

 神は集まって来た龍達に話し掛けられると、改めて先程の女性と我々に話掛けられた。

『今回の戦争で戦って亡くなった者は輪廻転生の輪に乗せ、来世は穏やかに過ごせる様約束しよう。それで納得して欲しい。単なる俺の我儘になるが』

 火の精霊術師の娘は少し考えると小さく「父を宜しくお願いします」と言って引き下がり、ミスオ等も納得した様に静かになった。

「神よ、姉上を殺害した女はその穏やかな人生とやらから外して欲しいのだが」

「我が国の元王族達も外して下さい!」

 アンドリュース陛下の言葉に王国側の新国王も慌てて言葉を発した。
 彼はかなり苦労していたからな。

『ちゃんとチェックするから心配しないで欲しい』

 神はゆっくり頷きながら厳かに仰った。

 それから神は会議が終わるまで部屋の天井から眺めておられたが、正直気が散って仕方がない。

 細かいとこまで話し合いも済んで、さぁ解散となった時、またもや円卓の中央に白い光が現れ収束し、

『エト~~!ハッ○ー○ーン無くなったんだけど~~』

 そう言って現れた強面の男は即座に他世界の神から関節技をキメられ、新たなる神はそれを宥めるのに苦労していた。

 私はそれを見て、昔アナスタシア様にアンドリュース陛下と共に関節技を掛けられていた思い出に浸ったのだった。

 帰ったら胃薬飲もう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...