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とある国の宰相の苦労
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アンドリュース陛下が即位した時、私も若輩の身でありながら宰相として仕えることになった。
前陛下に連なる者共も切る必要があったからだ。
それからは親友としてだけでは無く真の配下としてお支えして来たが、今の状況で私が出来ることは目の前に居られる新たなる神の言葉に耳を傾けることだけのようだ。
何故なら我が君主は氷結の精霊術師と共に他世界の神から説教されているからだ。
この世のものとは思えない、恐ろしい程の美貌を持つ神をアナスタシア様が何とか宥めようとされてるが、どうやら二人の口喧嘩のせいで新たなこの世界の神の話が進まないことに御怒りになっている様だ。
なので私と王国の新国王であるメモルラル国王がお言葉を拝聴することになったのだが、なんと言うことだろうか。
現在この世界には瘴気が蔓延しており、新たなる神が浄化中らしく、我々が住む下界で争い事が起きると又瘴気が増えるとのことだ。
その瘴気は前の神がこの世界を放置した為に発生したらしく、瘴気のせいで下界に住む者の心が荒み、それから負の所業、所謂犯罪等に向けて心が走り易くなると言うのだ。
『勇者を助けたことについては俺も深く考えていなかった。助けることによってもたらされる未来を予想せずにいたからな。まさかそのことで俺が帝国を味方してると思われるとはな』
これには私も口が過ぎたと反省することになった。
神は謝罪を受けて下さったが、何せ黒い兜を被ったままなので表情が分からない。
そこへ女性の声が響き渡った。
「神様!今回の戦争で命を落とした者を生き返らせては頂けませんか!?」
先程キサラギ殿に詰め寄っていた女性だ。
火の精霊術師の遺体は損傷が激しくて精霊術師本人であることを確認するのにも時間がかかり、尚且つ王国には返せない状態だった。
あれからキサラギ殿は度々夜中に悪夢に魘され奇声を発する様になったらしい。
この会談に連れて来たのは時期尚早だと思ってはいたのだが、まさか殺害した相手の娘がこの場に居るとはな。
ミリアム嬢に心のケアをして貰ってはいるが、あれでは使いものにならない。
乗り越えて貰わねばならんのだが。
『出来ないことはない』
え?生き返らせる?
『ただ、それをしてどう未来が変わるのか考えなければならない。そしてもしするなら今回の戦争で命を落とした者全てを救わなければならない』
「全員!?」
うちの軍部のミスオが思わず声を荒らげる。
「それではこの戦争の原因になったアナスタシア様も生き返らせれば良いのではありませんか?」
おいおい、相手は神様だぞ?
『それは出来ない。彼女は既に精霊になることが決まっている』
「それはおかしくありませんか?わが帝国側は精霊術師が増えるのを見過ごす訳にはいきませんし、第一帝国民が納得しません!アナスタシア様の仇を取ることを悲願としてここまでやって来たのです!」
周りの騎士達もそうだそうだと囃し立てる。
気持ちは私も同じだ。
だが相手は神だ。敬わなければならん存在なのだ。
私は慌ててミスオ等を宥めた。
フォーグよ、お前がするべきことだぞ?何故憮然としているのだ?
『うーん、国民感情ねぇ。それは果たして純粋なものかな?アナスタシアの仇を取ることを悲願とすることで国民感情を操ってないか?確かに不幸な事件だったと思うが、それを大義名分にして必要な領土を得たんだろう?それで満足してもらえないか?』
確かにアナスタシア様のことをアンドリュース陛下の即位後、国民をまとめる為に利用したことは否めない。
我が国はある意味他国が寄り集まった連合であるとも言える。アナスタシア様の件はまとめるのに打って付けだったのだ。
続けて神から説明があるが、どうやら氷結の精霊術師が育てた世界樹のなりかけと言うものは、この世界の浄化にも必要らしく、氷結の精霊術師を無力化することはその木を枯らすことに繋がるらしい。
『それに……嫌な予感がするんだよね。まぁ俺の感でしか無いけど、王国と帝国が仲良くしてくれないと後々困ることになるのは分かる』
『エト、かなり神の完成体に近付いたな。そのヘルメットが取れるのも遠くなさそうだ』
他世界の神は説教が済んだのか、新たなる神の側に戻りウットリした表情を浮かべている。
落ち着いて頂けて何よりだ。
それより陛下、そこで氷結の精霊術師と座って落ち込みながらボソボソ話をしてないで会議に参加して下さい。
ああ、何か理解し合った様にガッチリ手を組んで、一体どうなったんですか!
『主~~~話し合いはまだ終わらんのかいの?』
『皆待ってるよ~~』
その声がする方向、つまり窓を見るとそこには光龍と……暗黒龍??
え?火龍に水龍??
何か太陽の光を反射してギラギラして眩しい!
外に居る者達の悲鳴も聞こえてくるな…。大丈夫なのか?
あの龍達が暴れれば帝国は簡単に蹂躙されるだろうな。
何だろう。胃がキリキリするな。
『何だ、皆来たのか?もう少し待ってくれ』
神は集まって来た龍達に話し掛けられると、改めて先程の女性と我々に話掛けられた。
『今回の戦争で戦って亡くなった者は輪廻転生の輪に乗せ、来世は穏やかに過ごせる様約束しよう。それで納得して欲しい。単なる俺の我儘になるが』
火の精霊術師の娘は少し考えると小さく「父を宜しくお願いします」と言って引き下がり、ミスオ等も納得した様に静かになった。
「神よ、姉上を殺害した女はその穏やかな人生とやらから外して欲しいのだが」
「我が国の元王族達も外して下さい!」
アンドリュース陛下の言葉に王国側の新国王も慌てて言葉を発した。
彼はかなり苦労していたからな。
『ちゃんとチェックするから心配しないで欲しい』
神はゆっくり頷きながら厳かに仰った。
それから神は会議が終わるまで部屋の天井から眺めておられたが、正直気が散って仕方がない。
細かいとこまで話し合いも済んで、さぁ解散となった時、またもや円卓の中央に白い光が現れ収束し、
『エト~~!ハッ○ー○ーン無くなったんだけど~~』
そう言って現れた強面の男は即座に他世界の神から関節技をキメられ、新たなる神はそれを宥めるのに苦労していた。
私はそれを見て、昔アナスタシア様にアンドリュース陛下と共に関節技を掛けられていた思い出に浸ったのだった。
帰ったら胃薬飲もう。
前陛下に連なる者共も切る必要があったからだ。
それからは親友としてだけでは無く真の配下としてお支えして来たが、今の状況で私が出来ることは目の前に居られる新たなる神の言葉に耳を傾けることだけのようだ。
何故なら我が君主は氷結の精霊術師と共に他世界の神から説教されているからだ。
この世のものとは思えない、恐ろしい程の美貌を持つ神をアナスタシア様が何とか宥めようとされてるが、どうやら二人の口喧嘩のせいで新たなこの世界の神の話が進まないことに御怒りになっている様だ。
なので私と王国の新国王であるメモルラル国王がお言葉を拝聴することになったのだが、なんと言うことだろうか。
現在この世界には瘴気が蔓延しており、新たなる神が浄化中らしく、我々が住む下界で争い事が起きると又瘴気が増えるとのことだ。
その瘴気は前の神がこの世界を放置した為に発生したらしく、瘴気のせいで下界に住む者の心が荒み、それから負の所業、所謂犯罪等に向けて心が走り易くなると言うのだ。
『勇者を助けたことについては俺も深く考えていなかった。助けることによってもたらされる未来を予想せずにいたからな。まさかそのことで俺が帝国を味方してると思われるとはな』
これには私も口が過ぎたと反省することになった。
神は謝罪を受けて下さったが、何せ黒い兜を被ったままなので表情が分からない。
そこへ女性の声が響き渡った。
「神様!今回の戦争で命を落とした者を生き返らせては頂けませんか!?」
先程キサラギ殿に詰め寄っていた女性だ。
火の精霊術師の遺体は損傷が激しくて精霊術師本人であることを確認するのにも時間がかかり、尚且つ王国には返せない状態だった。
あれからキサラギ殿は度々夜中に悪夢に魘され奇声を発する様になったらしい。
この会談に連れて来たのは時期尚早だと思ってはいたのだが、まさか殺害した相手の娘がこの場に居るとはな。
ミリアム嬢に心のケアをして貰ってはいるが、あれでは使いものにならない。
乗り越えて貰わねばならんのだが。
『出来ないことはない』
え?生き返らせる?
『ただ、それをしてどう未来が変わるのか考えなければならない。そしてもしするなら今回の戦争で命を落とした者全てを救わなければならない』
「全員!?」
うちの軍部のミスオが思わず声を荒らげる。
「それではこの戦争の原因になったアナスタシア様も生き返らせれば良いのではありませんか?」
おいおい、相手は神様だぞ?
『それは出来ない。彼女は既に精霊になることが決まっている』
「それはおかしくありませんか?わが帝国側は精霊術師が増えるのを見過ごす訳にはいきませんし、第一帝国民が納得しません!アナスタシア様の仇を取ることを悲願としてここまでやって来たのです!」
周りの騎士達もそうだそうだと囃し立てる。
気持ちは私も同じだ。
だが相手は神だ。敬わなければならん存在なのだ。
私は慌ててミスオ等を宥めた。
フォーグよ、お前がするべきことだぞ?何故憮然としているのだ?
『うーん、国民感情ねぇ。それは果たして純粋なものかな?アナスタシアの仇を取ることを悲願とすることで国民感情を操ってないか?確かに不幸な事件だったと思うが、それを大義名分にして必要な領土を得たんだろう?それで満足してもらえないか?』
確かにアナスタシア様のことをアンドリュース陛下の即位後、国民をまとめる為に利用したことは否めない。
我が国はある意味他国が寄り集まった連合であるとも言える。アナスタシア様の件はまとめるのに打って付けだったのだ。
続けて神から説明があるが、どうやら氷結の精霊術師が育てた世界樹のなりかけと言うものは、この世界の浄化にも必要らしく、氷結の精霊術師を無力化することはその木を枯らすことに繋がるらしい。
『それに……嫌な予感がするんだよね。まぁ俺の感でしか無いけど、王国と帝国が仲良くしてくれないと後々困ることになるのは分かる』
『エト、かなり神の完成体に近付いたな。そのヘルメットが取れるのも遠くなさそうだ』
他世界の神は説教が済んだのか、新たなる神の側に戻りウットリした表情を浮かべている。
落ち着いて頂けて何よりだ。
それより陛下、そこで氷結の精霊術師と座って落ち込みながらボソボソ話をしてないで会議に参加して下さい。
ああ、何か理解し合った様にガッチリ手を組んで、一体どうなったんですか!
『主~~~話し合いはまだ終わらんのかいの?』
『皆待ってるよ~~』
その声がする方向、つまり窓を見るとそこには光龍と……暗黒龍??
え?火龍に水龍??
何か太陽の光を反射してギラギラして眩しい!
外に居る者達の悲鳴も聞こえてくるな…。大丈夫なのか?
あの龍達が暴れれば帝国は簡単に蹂躙されるだろうな。
何だろう。胃がキリキリするな。
『何だ、皆来たのか?もう少し待ってくれ』
神は集まって来た龍達に話し掛けられると、改めて先程の女性と我々に話掛けられた。
『今回の戦争で戦って亡くなった者は輪廻転生の輪に乗せ、来世は穏やかに過ごせる様約束しよう。それで納得して欲しい。単なる俺の我儘になるが』
火の精霊術師の娘は少し考えると小さく「父を宜しくお願いします」と言って引き下がり、ミスオ等も納得した様に静かになった。
「神よ、姉上を殺害した女はその穏やかな人生とやらから外して欲しいのだが」
「我が国の元王族達も外して下さい!」
アンドリュース陛下の言葉に王国側の新国王も慌てて言葉を発した。
彼はかなり苦労していたからな。
『ちゃんとチェックするから心配しないで欲しい』
神はゆっくり頷きながら厳かに仰った。
それから神は会議が終わるまで部屋の天井から眺めておられたが、正直気が散って仕方がない。
細かいとこまで話し合いも済んで、さぁ解散となった時、またもや円卓の中央に白い光が現れ収束し、
『エト~~!ハッ○ー○ーン無くなったんだけど~~』
そう言って現れた強面の男は即座に他世界の神から関節技をキメられ、新たなる神はそれを宥めるのに苦労していた。
私はそれを見て、昔アナスタシア様にアンドリュース陛下と共に関節技を掛けられていた思い出に浸ったのだった。
帰ったら胃薬飲もう。
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