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第二章
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しおりを挟む「侯爵のご子息である彼には勿論、両親にも逆らえず、辛いのです…………。」
ミラは瞳から涙をこぼし、私に縋りついた。
随分な演技力に感心してしまう。
ロベルトなんて簡単に騙すことができただろう。
「ミラ、君は言っていたじゃないか! ”僕を愛している”と。”その気持ちを知った妹に嫌がらせをされていて辛いから、私を選んで助けて欲しい”と!!!」
ロベルトはミラの元へ歩みを進める。
ミラは私の後ろに隠れるようにして、彼を避けた。
そして、ロベルトに聞こえないように私に囁いた。
「殿下、彼は妄想癖があるのです…………。私、怖くて………怖くて………。好意など1つもないのに………。」
「なるほど………それは大変ですね」
私はそう言って、ミラに優しく微笑んだ。
その私の笑顔にミラの顔はパアッと明るくなる。
……………”助ける”なんて一言も言っていないのになぁ………。
「ロベルト殿、貴方は嘘をついているのでは??? この方は貴方への好意は一切ないとおっしゃっていますよ」
私の言葉に、ミラはギョッとした顔をした。
”好意がない”と伝えたら、ロベルトは逆上するに決まっているからだ。
「ミラ!!! なぜ突然そんなことを言い出したんだ!?!? 先程まで私に愛を囁いていたじゃないか!!!」
ロベルトがミラの腕を掴んだ。
「この男か???この男がお前を誘惑したのか???」
「ち、違う………」
「なあ、ミラ。私はお前を信じてマリーとの婚約を破棄したんだぞ???お前が両親に疎まれ、マリーに嫌がらせをされていて耐えられないと言っていたから、事態を急いだんだ。それなのに、これはどういうことだ!?!?お前が私を愛しているという気持ちはそんなに軽いものだったのか???………一瞬で他の男に乗り換えるほど???」
「わ、私知らないわ。貴方が何を言っているのかさっぱり分からない。もう私につきまとうのはやめて。全部、貴方の妄想よ。それに私を付き合わせないで!」
その言葉にロベルトは言葉を失ったように立ち尽くした。
いつの間にか周りに人が集まってきていて、その人達も聞いただろう。
…………これらが全てロベルトの妄想だと主張するミラの言葉を。
「わ、私は........好きだった女を........君のために.........君のために!!!捨てたんだぞ!!!」
「何の話をしていらっしゃるの.......??? 殿下、私怖いです。早くあの方をどこかに連れ出してください。」
その時、人混みを割って兄上がこちらへ歩いてきた。
「リオ、これは何があったんだい???」
兄上は心配そうな表情を浮かべている。
結局人が集まるような騒ぎにはなってしまったが、目的は果たせた。
私は兄上へ向かって口を開いた。
「兄上…………この二人は婚約者だそうですが、何かトラブルがあったようなんです。よく分からないけど喧嘩をしていて………、僕……どうすれば良いかわからなくて……とりあえず、二人に落ち着いて話せる場を提供して差し上げてください」
その私の言葉にミラはあんぐりと口を開けた。
私が、今までの会話を聞いていたのに二人を”婚約者”呼ばわりした上に、”ロベルトから助けて欲しい”とミラに言われたのにロベルトとミラを二人きりにしようとしているからだ。
「なっ!!!殿下酷いです。助けてくれるのでは…………「兄上、僕気分が悪いです…………。怖いものを近くで見てしまったし…………」
額を押さえて、兄上の元に駆け寄った。
先程とは態度が打って変わった私を、ミラは”意味がわからない”といった表情で見つめていた。
「久しぶりの人前で、こんな言い争いに巻き込まれたらそうなるよな…………。リオ、今日はもう帰ろう。お前の体調が心配だ。」
「兄上、ごめんなさい…………。」
「良いんだよ、お前が一番大事だから。」
兄上は宰相の家の侍従を呼び出し、ロベルトとミラを別室に連れて行かせた。
ロベルトはもうミラを視界に入れようとはしなかったし、ミラも放心状態だった。
この後、私は噂を流させた。
”ロベルトは悪女ミラに誑かされ、嘘の証言でマリーとの婚約破棄をした。”と。
夜会の目撃者は多く、その噂はすぐに広まっていくこととなった。
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