婚約破棄された伯爵令嬢の元に謎の恋文が届きました

彩伊 

文字の大きさ
12 / 21
第二章

12

しおりを挟む
 



 「お…まえは何をやっとるんだ!!!」


 お父様の声が部屋に響いた。
 耳が割れるかと思うくらいの大きな声だった。
 私は俯き、お父様から目を逸らした。


 「どうしていきなり婚約破棄なんてことになったんだ!?!?!?」


 お父様は私に一枚の紙を突き出してきた。
 それはロベルトからの手紙で、”今回の婚約はなかったことにする”という内容だった。


 「お前は…………お前は、賢い子だと思っていたが、私の見当違いだったようだな!!!!」

 ……………全てはうまくいっていたはずだった。
 マリーの婚約者であるロベルトを誘惑し、婚約を破棄させた。
 そして、マリーをこの家から追い出した。
 ロベルトにお願いをして王族が来るような格式の高い夜会に連れていってもらった。
 そこで第二王子に出会い気に入ってもらった………………はずだった。


 最初の彼の印象は、見た目の完成された美しさ同様に中身も成熟した……大人でスマートな男性というものだった。
 自然な流れで髪に口づけを落とし、浮かべた余裕の微笑み。
 どこか影のある雰囲気に惹かれた。

 それが一転、兄の前では自分のことを”僕”と言い、甘えた声を出し、私を何もなかったように見捨てた。


 ……………あれは………………あれはなんだったの!?!?!?!?!?
 一瞬で人が変わったかのような態度をとった彼。

 …………………わざと私に期待をさせるような態度をとっていたというの???
 それならなんのために……???

 
 「おい、ミラ!!!謝罪もないのか!!!この使えない愚図めが!!!」

 父様は私の頰に平手打ちをした。
 バカなマリーとは違って、親に一度も叩かれたことはなかったのに……………。
 頰が焼けたように熱くなる。
 私はその衝撃で静かに涙を流した。

 
 あの後、ロベルトは一言も声を発さず、さっさと私を置いて帰っていった。
 もう関係を修復することなんてできないだろう。

 それに………あれから、私に関する悪い噂が社交界に流れ始めた。
 …………………もう、良い家に嫁ぐことも望めない。
 私は悔しさに唇を噛み締めた。


 あの日、第二王子を目にし、一言会話を交わしただけで、彼に強く惹かれてしまった。
 この機を逃してはいけないと焦ってしまったのが失敗の原因なのは明らかだった。
 いつもは慎重に行動していたのだけれど、相手の情報が少なすぎて急いでしまった。


 「オマケに、この手紙にはお前に騙されてマリーと婚約破棄をしてしまったと書いてあるがどうなんだ!?!?!? 社交界で流れる噂も全部本当なのかっ!?!?!?!?!?!?」

 「……………本当だとしたら………………???」

 私はもうどうでも良かった。
 マリーさえいなくなれば、いずれ家族は仲良くなり、私も大切にされると思っていた。
 でもその計画は呆気なく散ってしまった。
 もう二度と………両親は私に笑顔を向けないだろう。


 「お前には………心底失望させられたぞ……………。お前さえいなければ、マリーの婚約は続いていた……………。そうすれば公爵から西の鉱山を譲っていただける約束だった…………お前が!!!!全部!!!!台無しにしたんだぞっ!?!?!?わかっているのか!?!?!?」


 お父様は再び私に手をあげようとしたが、あまりの怒りに力も湧いてこないようで、手を下ろし椅子の倒れこむように座った。
 
 「お前も……………屋敷から追い出され、平民になりたくないというのなら……………なんとしてでも、ロベルトとの婚姻を取り付けろ」


 低い声でお父様はそう言い張った。
 その言葉に私は耳を疑った。

 もう一度、ロベルトとの関係を修復するなんてことができるはずもない。
 私はあの夜会で、ロベルトを突き放し、プライドの高い彼を裏切ったのだから。
 
 ………………むしろ、報復が怖いくらいなのに……。


 でも屋敷を追い出されたくなんてない。
 伯爵令嬢じゃなくなるなんて、考えられない。
 私は………マリーのようなどこでも生きられる”雑草”なんかじゃなくて、社交界のような華やかな場所でしか咲けない”花”なのよ…………???
 美しいドレスも、宝石も、アクセサリーも何一つ手放したくない。


 「無理とは言わせないぞ………ミラ。これはお前が撒いた種だ。お前が収拾をつけろ。頭を地面に擦り謝罪をしてでも、ロベルトを手に入れるんだ」

 お父様の瞳は本気だった。
 狂気が混じったその瞳に、私は息を呑み頷いた。

 ………………失敗は許されないわ、ミラ。

 愚かな妹のように、平民に堕ちて質素な生活をするなんてごめんよ。

 「.............やるしかないわ」

  部屋を出た私はポツリと呟いた。
 体は緊張で………………ガクガクと震えていた。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

処理中です...