王子様、ごめんあそばせ!~聖女は騎士様と真実の愛を探す

白桃

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崩れゆく約束

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 エレナ・サクラは、アステリア王国の聖女として崇められていた。十六の春に聖女の力が覚醒して以来、彼女の祈りは豊作をもたらし、癒しの魔法は病に苦しむ人々を救い続けてきた。そして今年で二十歳となったエレナは、王国第二王子であるカレル・アステリアとの婚約を間近に控えていた。

 しかし、その幸せな日々は突如として崩れ去った。

 華やかな宮廷での祝宴。貴族たちの視線が集まる中、エレナは婚約者であるカレルの姿を探していた。彼はいつもなら彼女の隣にいるはずだったが、今日に限ってどこにも見当たらない。

「エレナ様、少々お時間をよろしいでしょうか」

 声をかけてきたのは、カレルの侍従長レオンだった。険しい表情を浮かべる彼に連れられ、エレナは宮殿の一室へと案内された。

 そこには厳しい表情を浮かべたカレルと、美しい赤髪の女性が並んで立っていた。

「エレナ、お前に説明してもらいたいことがある」

 カレルの声は冷たく、エレナの心に氷の刃を突き立てた。

「これは何のことでしょうか、カレル様」エレナは不安に襲われながらも、優しく問いかけた。

 カレルは机の上の小箱を指さした。「その箱を開けてみろ」

 恐る恐る箱を開けると、中には王国の国璽が入っていた。王家の象徴であるその璽は、王族以外が持つことを禁じられていた。

「これをどうして?」混乱するエレナに、カレルは激しい怒りを浮かべて言った。

「お前の部屋から見つかったものだ。国璽を盗み出し、反逆者に渡そうとしていたな?」

 エレナは言葉を失った。国璽など見たこともなかったし、ましてや盗み出すなど考えもしなかった。

「そんな...私はそのようなことを!」

「証拠はすでに揃っている」カレルは彼女の言葉を遮った。「お前の侍女が証言した。お前が密かに反王国勢力と接触していたと」

 横にいた赤髪の女性が意味ありげに微笑んだ。「エレナ様、騙しおおせるつもりだったのですか?私はずっと見ていましたよ」

 彼女はカティア・ローゼンブルト。王国有数の貴族の娘で、幼い頃からエレナに憎しみを抱いていた。エレナが聖女として選ばれた瞬間から、カティアの嫉妬は凄まじいものになっていたのだ。

「カティア...あなたがどうして...」

「証拠は十分だ」カレルは言い切った。「エレナ・サクラ。私はお前との婚約を破棄する。明日には国外追放の令を下す」

 エレナの世界は暗転した。彼女の弁明は誰にも届かず、翌日には護衛に囲まれた馬車で国境へと向かうことになった。

 かつての聖女であったエレナの名は、一夜にして反逆者へと変わってしまったのだ。
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