王子様、ごめんあそばせ！～聖女は騎士様と真実の愛を探す

新たな誓い

　真実が明らかになってから一ヶ月が経った。ローゼンブルト家は反逆罪で裁かれ、カティアも共犯として罰せられた。アステリア王国は徐々に平穏を取り戻しつつあった。

　エレナは聖女としての地位を取り戻したが、王宮には戻らなかった。彼女はライアンとともに、アステリアとロズワールの国境の村で暮らすことを選んだのだ。

「本当にいいのか？」ライアンはエレナに尋ねた。「聖女として、もっと尊敬される生活を送れるのに」

　エレナは微笑んだ。「私は聖女である前に、一人の女性です。あなたと過ごす人生の方が、どんな栄誉よりも尊いわ」

　二人は小さな村で、癒しの魔法を使って人々を助ける生活を始めた。エレナの評判は広まり、多くの村人たちが彼女を慕った。ライアンは村の守り手として、時には特務隊の任務を遂行しながらも、常にエレナの側にいた。

「エレナ」ある夕暮れ時、ライアンは彼女を丘の上に連れて行った。

　満天の星空の下、彼はひざまずき、小さな箱を取り出した。

「俺は貴族でもなければ、王子でもない。だが、この命をかけて君を守り、愛し続ける。俺と共に生きてくれないか」

　箱の中には、シンプルだが美しい指輪があった。

　エレナは涙を流しながら微笑んだ。「はい、喜んで」

　ライアンは指輪を彼女の指にはめ、立ち上がって彼女を抱きしめた。二人の唇が触れ合った瞬間、エレナの聖女の力が輝き、二人を光の柱が包み込んだ。

　それは聖なる祝福のようだった。

　一方、アステリア王宮では、カレル王子が一人国璽の間で思いにふけっていた。

「王子様」侍従長レオンが入ってきた。「聖女様からの手紙です」

　カレルは静かに手紙を開いた。

『親愛なるカレル様へ

　あなたのために祈っています。いつの日か、あなたが真の愛を見つけることを。

　そして、二つの国の架け橋となるべく、私とライアンはこれからも尽力します。

　永遠の友情を込めて
　エレナ・サクラ』

　カレルは微笑んだ。「彼女は本当に聖女だな」

　レオンはうなずいた。「聖女様とライアン様の結婚式の招待状も届いています」

「行くとも」カレルは立ち上がった。「友人の祝福を、心を込めて」

　エレナとライアンの結婚式は、二つの国の国境にある小さな教会で行われた。アステリアの国王とカレル王子、そしてロズワール公爵も臨席し、二国間の友好の象徴ともなった。

　エレナは白い婚礼の衣装に身を包み、聖女の光輝を放っていた。ライアンは騎士の正装で、彼女の隣に立った。

「私はこの男性を、心から愛し、尊び、生涯を共にすることを誓います」

「俺はこの女性を、心から愛し、尊び、命をかけて守ることを誓う」

　二人の誓いが交わされた瞬間、教会中が祝福の光に包まれた。

　それは新たな時代の幕開けだった。冤罪によって失われかけた愛と信頼が、より強固なものとして蘇ったのだ。

　エレナはもはや王家の聖女ではなく、人々の聖女となった。そして何より、ライアンにとっての唯一無二の伴侶となったのだ。

　彼女の光は、これからも多くの人々を照らし続けるだろう。そして、その光は今や、ライアンの愛によってさらに輝きを増していた。

「これからも、あなたと共に」エレナはライアンの耳元で囁いた。

「永遠に、共に」ライアンは彼女の手を強く握りしめた。

　二人の新たな物語は、ここから始まったのだ。


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　聖女エレナの物語は、裏切りと再生の物語であった。彼女は冤罪によって全てを失ったが、真の愛を見出すことで、より大きな幸福を手に入れた。

　カレル王子は後に、隣国の姫と婚約し、真の愛を見つけることになる。カティアは罪を償い、後に改心して慈善活動に身を捧げた。

　そして、エレナとライアンの間に生まれた子供たちは、母親の聖女の力と父親の勇気を受け継ぎ、二つの国の平和の象徴として成長していった。

　愛は時に、予期せぬ形で訪れる。それは苦難を経て、より強く、より深いものになるのだ。

　エレナとライアンの愛の物語は、長く人々の心に残り続けた。聖女の光輝と騎士の忠誠が織りなす、永遠の愛の物語として。