王子様、ごめんあそばせ!~聖女は騎士様と真実の愛を探す

白桃

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光の帰還

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 婚約式の当日、アステリア王宮は華やかな装飾で彩られていた。カレル王子とカティア・ローゼンブルトの婚約を祝うため、王国中から貴族たちが集まっていた。

 エレナとライアンは変装して宮廷に潜入した。エレナは侍女の衣装を、ライアンは親衛隊の制服を身につけていた。

「無事に入れたわね」エレナは小声で言った。

「あまり安心するな」ライアンは周囲を警戒しながら答えた。「これからが本番だ」

 二人の計画は単純だった。婚約式が始まる前に、国王に証拠を届けること。だが、国王の元へたどり着くには、多くの警備を突破しなければならない。

「王は謁見の間にいるはずだ」ライアンは言った。「だが、近衛兵が厳重に守っている」

「私に任せて」エレナは自信を持って言った。

 彼女は聖女の力を少しだけ解放し、周囲の人々に穏やかな印象を与えた。それは彼女の存在を「安全で親しみやすい」と錯覚させる効果があった。

 二人は警備をすり抜け、ついに国王の謁見の間の前にたどり着いた。

「いよいよだな」ライアンは彼女の手を握った。

 エレナは深呼吸した。「ええ...」

 ドアを開けると、そこには国王と側近たちがいた。彼らは驚きの表情で、突然現れた二人を見た。

「これは...聖女エレナ?!」国王は目を見開いた。

 エレナは膝をつき、頭を下げた。「陛下、申し上げたいことがございます」

 警備兵が二人を取り押さえようとしたが、国王は手で止めた。

「聞こう。なぜ追放された聖女が舞い戻ったのか」

 エレナは勇気を出して真実を語った。国璽盗難の冤罪、ローゼンブルト家の陰謀、そしてカレル王子が危険にさらされていることを。

 ライアンは証拠の手紙を提出した。「これがローゼンブルト家当主の指示書です。国璽盗難と聖女追放の計画が記されています」

 国王は手紙を受け取り、慎重に読み進めた。彼の表情が徐々に厳しくなっていった。

「これは...」国王は言葉を失った。

 その瞬間、謁見の間のドアが勢いよく開き、カレル王子が入ってきた。

「父上、婚約式の準備が...」彼の言葉は途中で止まった。エレナを見た瞬間、彼の顔から血の気が引いた。「エレナ...?」

 エレナは冷静に彼を見つめた。「カレル様。真実をお聞きください」

 カレルは混乱した様子で父親を見た。国王は静かに手紙を息子に渡した。

「この内容を確かめろ」

 カレルが手紙を読むうちに、彼の表情は怒りと後悔に変わった。

「このようなことが...私は...」彼はエレナを見つめた。「私はお前を疑った。許せるものではない」

 エレナは微笑んだ。「お気になさらないでください。カレル様は騙されていたのです」

「だがそれは言い訳にならない!」カレルは強く言った。「俺はお前を守るべきだった。信じるべきだった」

 その時、別の騒ぎが宮殿を揺るがした。衛兵たちが走り込んでくる。

「陛下!ローゼンブルト家の当主が逃亡しようとしています!」

 国王は即座に命令を下した。「ローゼンブルト家の者たちを全員拘束せよ。カティアも含めて」

 カレルは顔を引きつらせた。「すぐに婚約式を中止する」

 その後、宮殿は大混乱に陥った。ローゼンブルト家の陰謀が明るみに出て、多くの貴族たちが動揺した。カティアは父親とともに逃亡しようとしたが、捕らえられた。

 夜になり、混乱が収まると、エレナは国王から謁見を受けた。

「聖女エレナ・サクラ」国王は厳かに言った。「あなたの追放令は取り消された。そして、かつての名誉と地位を回復する」

 エレナは頭を下げた。「ありがとうございます、陛下」

「そして、カレルとの婚約も...」

「それについては、お断りいたします」エレナは静かに、だが毅然と言った。

 国王もカレルも驚いた表情を見せた。

「私の心は...」エレナはライアンを見つめた。「既に別の人に捧げております」

 カレルは悲しそうな表情を浮かべたが、理解を示した。「それが君の望みなら、俺は受け入れよう。君の幸せを祈る」

 ライアンはエレナの横に立ち、彼女の手を取った。「俺はエレナを愛している。命をかけて守る」

「お二人の幸せを祈ります」カレルは苦しい微笑みを浮かべた。
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