暁闇の騎士

琉斗六

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 ルーファ・カルテムは、ルミナリア王国出身の見習い騎士だった。
 上級騎士の元に従者として配属され、日々、騎士を目指して剣に魔法にと鍛錬を積んでいた、ごく普通の青年でしかなかった。

 彼の運命が激変したのは、遠征から戻って、いつもと同じように浄化の儀式を受けた時だ。

 浄化は、人間が "対ネクシオン" のために生み出したじゅつである。
 魔人の闇属性と人間の光属性は、互いに打ち消し合う特性を持つ。
 直接的な攻撃力は皆無だが、闇の属性を持つものだけを焼くこのじゅつは、ネクシオンには効果てきめんであった。
 人間の連合軍をまとめる同盟連邦評議会にとって、戻った兵士の幾人かがネクシオンになっているのは、この時点ではよくある事案の一つに過ぎなかった。

 故に、そこでルーファが悲鳴とともに浄化の光に包まれ、焼き崩れたことも、遠征帰りの隊では、記録に残すまでもないありふれた光景だった。
 ネクシオンが浄化によって焼却され、街や村は安全を守られる。
 それだけのことだ。

 だが、夜になって──扉を叩く者が現れた。
 ルーファだった。

 当然、駐屯地は騒ぎになった。
 魔導士、治癒士、錬金術士などが集められ、徹底的な検査が行われたが、そもそも人間は、模倣体もほうたいとなったネクシオンと人間の区別を付ける手段を持たない。
 唯一の方法が浄化であり、そして浄化を掛けると彼は悲鳴を上げて燃え上がる。
 間違いなく、そのルーファはネクシオンの模倣体もほうたいだった。

 しかし、その一方で疑問も持ち上がった。
 一般的なネクシオンは、浄化で燃え尽きたのちに再生はしない。
 だが彼は、必ず蘇る。
 更に、正体が発覚したネクシオンは、人間への呪詛を吐きながら攻撃的になるのが常だが、彼は一貫して「自分はルーファ・カルテムである」と主張し、ルーファの上官であった騎士との会話にも齟齬がなかった。

 なにより、彼の姿はあまりにも "以前のまま" だった。

 18歳という年齢相応の、どこかあどけなさの残る丸みを帯びた頬や輪郭。
 子供から大人へと移り変わる途上の、繊細だがしなやかな体つき。
 遠征前に髪を整え、襟足の隙間から覗く、繊細なうなじ。
 少年の純粋さと真っ直ぐな意志を宿す、アンバーの瞳。

 見間違いようもなかった。
 幾度浄化され、焼き崩れても、数時間後には、寸分違わぬ姿でそこにいた。

 結局、その "ネクシオン" は、ルーファの記憶と心を残し、魔物としての意志は浄化によって焼き尽くされた。
 少なくとも、そう "結論付けておく" ことで、同盟連邦評議会はこの異例の存在を "扱えるもの" として棚に上げた。

──死を忘れた体と、忠義だけを残した、無貌むぼうの異形。
 それが、のち暁闇の騎士ミステリーナイト──ミスティとなる存在だった。
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