暁闇の騎士

琉斗六

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 寝袋に入り、ミスティはまどろんでいた。
 夢と現のはざまで、クリスのことを考える。

 あれは、いつのことだったか。
 任務明けのシャワールームで、汗と汚れを流していたときのことだ。

 クリスは手を伸ばし、負傷したミスティの胸に触れた。
 突然のことに、少し驚いた。

「ああ……、すまない……」
「いや、別に構わないが……?」

 改めて、胸のあたりを見せるよう体を向けたのに、クリスはなぜか、顔をじっと見つめてきた。
 青い瞳が、なんとも言葉に表しがたい感情を乗せて、揺れている。

「クリス?」

 答えずに、クリスはそのまま距離を縮め、ミスティの唇に唇を重ねてきた。
 そんなふうにされると思ってもみなかったので、咄嗟に押し返そうかと思ったが。
 自分の瞳を覗き込むクリスの目が、冗談や戯れではないと悟った。
 触れている指の持つ熱が、ミスティの "生命" を確かめるようで──める理由を見失う。

 同時に、脳の何処かで考えた。
 所詮は、生理的な行為でしかない……と。
 肌に触れる唇の感触も、煽られて熱が高まり、解き放つ感覚も。
 鼓動が上がり、呼吸が乱れるのも、全ては理路整然と科学的に説明のつく、一連の動きに過ぎない。

 パチッと焚き火が爆ぜた音と光で、ミスティは現実に引き戻された。

──すまないことを、したのだろうか……。

 クリスが、何を考え、どう思って、自分に触れてきたのか?
 それを推し量ることは、今までのミスティには出来なかった。
 あくまでも戦力として存在を許されている自分が、触れてはいけない領域──感情を交わすなど、おのれを弁えないことだと、どこかで思っていた。

 だがもしかして……。
 自分はクリスの気持ちや感情を、無碍にしていたのかもしれない。

 ふと、そんなことを考えた。

「……なにか言ったか?」

 隣の寝袋から、くぐもった声がしたような気がして、ミスティは目を開けた。
 だが、焚き火は静かに燃えているだけで──声の主は、どこにもなかった。
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