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11.虜囚
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ミスティは、あの感覚で目を覚ました。
……いや、慣れたくはない。
けれど体は、それを "死後" だと即座に認識していた。
──ああ、また再生したのか……。
だが、そこは浮遊城の見慣れた癒しの泉……ではない。
──そういえば、僕はレフュージの保管庫に潜入して……。
記憶が急速に巻き戻される。
完全に覚醒したミスティは身を起こそうとして、すぐに異変に気づいた。
下着姿のまま拘束され、冷たい金属台に横たわっている。
天井の白いライトが容赦なく肌を照らし、微かな消毒薬の匂いが鼻をついた。
ここは手術室なのか、それとも実験室か……そんな曖昧な不気味さを帯びた空間だった。
「おはよう、ルーファ・カルテムくん。……いや、ネクシオンによって複製体となった、不死身のヒーロー暁闇の騎士くんと言った方が正しいのかな? 会えて、とても嬉しいよ」
痩せこけた老人が、にこやかにミスティの顔を覗き込んでいた。
タイド……ではない。
朽ち果てた古城にでも住んでいそうな、鋭い目つきをした見知らぬ男だった。
「きみは、誰だ?」
「私の名前など、あまり意味はありません。私がきみを知っていて、今こうして自由に扱える。それで充分だ。きみの細胞の全てを詳らかに出来るのは、実に……実に光栄ですね」
男の口調には、どこかミーミルを思わせるような理知的な響きがあった。
だが、その瞳にはひとかけらの慈悲もない。
「安心しなさい。私に嗜虐趣味はない。ただ、再生のプロセスを観察するために、時にきみの命を奪うこともあるかもしれない。だが、できるだけ痛みは与えないよう努めよう」
周囲には白衣の助手たちが数人。
彼らは、一言も発することなく、淡々と器具や薬品を並べていた。
まるで人間ではなく、魔導士によって造られた "ゴーレム" のように。
感情の欠片もない眼差しで、ただ与えられた作業だけを繰り返す。
生きているはずなのに、生きていると信じたくないものたちだった。
「あの、地下の保存庫に、僕の血液はなかった」
「そう。あそこに保存されているのは、総監殿の宝物だ」
「あれは、誰だ? 生きてるのか?」
「教えてあげたいのは山々なんだがね。しかし、きみに余計な情報を与えてはだめだと、総監殿のご命令でね」
老人は、助手から注射器を受け取り、無抵抗なミスティの腕に躊躇なく針を刺した。
チューブを伝って、赤黒い血液が銀のキャップのついたバイアル瓶に落ち、どろりと底を満たしていく。
「次は細胞採取だ。準備を進めてくれたまえ」
老人の声に助手が頷き、器具を取りに視界の外へと動いた……その時だった。
扉が乱暴に開かれ、硬質な足音と共に怒声が飛ぶ。
「ドクター・アルドリック! 検体の採取は、私の立ち会いのもとで進めるよう言ったはずだ!」
「トラセナー。きみはメディカル部門の者ではない。手術の監督権限はないよ」
「私はこの検体の管理責任者だ。彼を使用する場合は、必ず私に話を通してもらいたい!」
──タイド……?
──僕を "検体" と呼ぶのに、なにを怒っているんだ?
そこで、ドクター・アルドリックに食って掛かっているのは、かつての戦友であり、ラディアントの黄昏の騎士だった。
──そういえば、タイドの本名はトラセナーと言ったな。
ドクター・アルドリックは片眉を持ち上げ、肩をすくめた。
「血液を少し採っただけだよ。内臓のサンプル採取は明日以降の予定になっている。きみが解剖に立ち会いたいのなら、そう言ってくれればよかったんだがね」
「リサーチ部門が、再生過程をすべて映像で記録するよう要望してる。傷の再生スピードや組織変化を、あとから確認するためだ」
「細かいことを……。だが、まぁ、映像が残っている方が、後々良いかもしれないね。作業は中止しよう」
「血液採取でさえ、本来なら記録が必要だった。検体は必ず、監房に戻すように」
タイドの強い口調に、ドクター・アルドリックはため息をついて助手たちに指示を出した。
「わかったよ。君がそこまで言うならね……まったく、管理職というのは本当に煩わしい」
……いや、慣れたくはない。
けれど体は、それを "死後" だと即座に認識していた。
──ああ、また再生したのか……。
だが、そこは浮遊城の見慣れた癒しの泉……ではない。
──そういえば、僕はレフュージの保管庫に潜入して……。
記憶が急速に巻き戻される。
完全に覚醒したミスティは身を起こそうとして、すぐに異変に気づいた。
下着姿のまま拘束され、冷たい金属台に横たわっている。
天井の白いライトが容赦なく肌を照らし、微かな消毒薬の匂いが鼻をついた。
ここは手術室なのか、それとも実験室か……そんな曖昧な不気味さを帯びた空間だった。
「おはよう、ルーファ・カルテムくん。……いや、ネクシオンによって複製体となった、不死身のヒーロー暁闇の騎士くんと言った方が正しいのかな? 会えて、とても嬉しいよ」
痩せこけた老人が、にこやかにミスティの顔を覗き込んでいた。
タイド……ではない。
朽ち果てた古城にでも住んでいそうな、鋭い目つきをした見知らぬ男だった。
「きみは、誰だ?」
「私の名前など、あまり意味はありません。私がきみを知っていて、今こうして自由に扱える。それで充分だ。きみの細胞の全てを詳らかに出来るのは、実に……実に光栄ですね」
男の口調には、どこかミーミルを思わせるような理知的な響きがあった。
だが、その瞳にはひとかけらの慈悲もない。
「安心しなさい。私に嗜虐趣味はない。ただ、再生のプロセスを観察するために、時にきみの命を奪うこともあるかもしれない。だが、できるだけ痛みは与えないよう努めよう」
周囲には白衣の助手たちが数人。
彼らは、一言も発することなく、淡々と器具や薬品を並べていた。
まるで人間ではなく、魔導士によって造られた "ゴーレム" のように。
感情の欠片もない眼差しで、ただ与えられた作業だけを繰り返す。
生きているはずなのに、生きていると信じたくないものたちだった。
「あの、地下の保存庫に、僕の血液はなかった」
「そう。あそこに保存されているのは、総監殿の宝物だ」
「あれは、誰だ? 生きてるのか?」
「教えてあげたいのは山々なんだがね。しかし、きみに余計な情報を与えてはだめだと、総監殿のご命令でね」
老人は、助手から注射器を受け取り、無抵抗なミスティの腕に躊躇なく針を刺した。
チューブを伝って、赤黒い血液が銀のキャップのついたバイアル瓶に落ち、どろりと底を満たしていく。
「次は細胞採取だ。準備を進めてくれたまえ」
老人の声に助手が頷き、器具を取りに視界の外へと動いた……その時だった。
扉が乱暴に開かれ、硬質な足音と共に怒声が飛ぶ。
「ドクター・アルドリック! 検体の採取は、私の立ち会いのもとで進めるよう言ったはずだ!」
「トラセナー。きみはメディカル部門の者ではない。手術の監督権限はないよ」
「私はこの検体の管理責任者だ。彼を使用する場合は、必ず私に話を通してもらいたい!」
──タイド……?
──僕を "検体" と呼ぶのに、なにを怒っているんだ?
そこで、ドクター・アルドリックに食って掛かっているのは、かつての戦友であり、ラディアントの黄昏の騎士だった。
──そういえば、タイドの本名はトラセナーと言ったな。
ドクター・アルドリックは片眉を持ち上げ、肩をすくめた。
「血液を少し採っただけだよ。内臓のサンプル採取は明日以降の予定になっている。きみが解剖に立ち会いたいのなら、そう言ってくれればよかったんだがね」
「リサーチ部門が、再生過程をすべて映像で記録するよう要望してる。傷の再生スピードや組織変化を、あとから確認するためだ」
「細かいことを……。だが、まぁ、映像が残っている方が、後々良いかもしれないね。作業は中止しよう」
「血液採取でさえ、本来なら記録が必要だった。検体は必ず、監房に戻すように」
タイドの強い口調に、ドクター・アルドリックはため息をついて助手たちに指示を出した。
「わかったよ。君がそこまで言うならね……まったく、管理職というのは本当に煩わしい」
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