暁闇の騎士

琉斗六

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 レスタークの訃報は、唐突に届けられた。
 デュロンはその時、学生寮で卒業試験のための論文を書いていた。
 ルミナリア王国が誇る、魔導騎士養成学園。
 そこは全寮制で、レスタークも在学した学びであり、卒業すれば騎士団に見習いとして所属できる予定だった。

 だが、届いた知らせは騎士団の壊滅と、レスターク死亡の知らせ。
 戻ってきた副団長のラファエルは、満身創痍だった。
 砕けた鎧には乾いた血糊がこびりつき、裂けたマントで折れた腕を吊っていた。

 盛大な国葬で送られるべき高潔な騎士は、騎士団全滅の責を一身に負わされ、名誉を剥奪された。

 レスタークは、政治的な決定の場には立ち入れぬ騎士団長──つまりは "中間管理職" に過ぎなかった。
 インフェリオンとの戦争勃発や、王族・貴族にとって厄介な政争の責任を押し付けるには、死して沈黙を守る騎士団長は、あまりにも "好都合" だった。
 名誉も、遺志も、無残に踏みにじられ、国家は彼を── "使い捨て" たのだ。
 葬儀は内々に、簡素すぎるほどに行われ、参列者もまばらだった。

 何の説明もないまま──気がつけばデュロンは、ラファエルに引き取られていた。

 ラファエルは、かつてレスタークの右腕と呼ばれた男。
 騎士としての実力は、折り紙付きだった。
 だが、彼の眼差しが注がれていたのは、ただ一人──レスタークだけだった。
 レスタークがいたからこそ、彼は騎士として存在できたのだ。

 戦場から戻ったラファエルは、極秘裏にレスタークの遺体を、死の直後のままの状態で持ち帰っていた。
 彼は……つまり、レスタークを全身全霊で愛していたのだ。

 その "愛" の正体が、崇高な憧れだったのか、あるいはどこか欲望を孕んだ執着だったのか……。
 デュロンには、分からなかった。
 ただ一つ言えるのは、その想いは、決して報われていなかったということだ。

 レスタークは、任務と理想に人生を捧げた男。
 私情を切り捨て、愛する者すら拒んでしまうほどに──。

 それは、ある意味デュロンにも当てはまる。

 どれほどデュロンが焦がれ、追い求めても、レスタークはデュロンを "養子" にはしなかったことからも、それははっきりしていた。
 そういう意味では、デュロンとラファエルは似ているのかもしれない。

 ラファエルがレスタークの遺体を保存し、時をめるがごとくに保とうとすることに関して、デュロンは進んで協力した。
 それ以外では、全く気の合わない二人だったが、唯一その目的だけは共通だった。

 悲劇の騎士団長の処遇に、腹を立てているものは少なからず存在した。
 騎士団所属の魔導研究員だったドクター・アルドリックもその一人だ。
 レスタークの体の保存と、蘇らせるための方法。
 それを模索することは、同時にバイオテクノロジーを発展させるために大きな貢献を果たした。

 ドクター・アルドリックの「騎士団長が致命傷を負われなかったら、私たちの医療技術はここまで進みましたかね?」という言葉は、間違いなく真実なのだ。

 正気と狂気の狭間のような日々。
 だが、そうした一歩向こう側の飛び抜けた才能たちに囲まれた生活は、デュロンの知識を広げ、煌環騎士団ラディアントオーダーに選出されるまでの才能を開花させたのだ。
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