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やがてその情報が、ルミナリア王国の耳にも届く。
魔人が "事故の被害者を使って実験を行っている" ──その噂が、疑念を炎上させた。
そもそも事故の影響は人間側にも及び、侵略の前触れではないかと見る者もいた。
森を挟んだその地は、二つの種族の距離がちかすぎたのだ。
けれど、この誤解と敵意の連鎖が、デュロンの運命を根底から変えてしまった。
研究所をルミナリア王国の騎士団が急襲したのは、デュロンが "保護" されてから1年にもならない頃だっただろうか。
その襲撃は、魔人からすれば、まさに奇襲だったが。
人間側からすれば、同胞を救い出すための救出作戦そのものだった。
魔人の研究者たちは一掃され、囚われていた人間たちは騎士団に保護された。
だが、この研究所には、あの実験で同じように被害に遭った魔人の市民も収容され、デュロンたちと同様に観察対象とされていたことを、デュロンは知らない。
彼らが "魔人である" という、それだけの理由で──研究者たちと一緒に処分されたことも……。
けれど──それを知る由もないデュロンにとっては、自分はただ「救われた」と信じて疑わなかった。
自分が閉じ込められていた部屋の扉を押し開き、入ってきた騎士が、自分の姿を見て驚愕し、涙してくれた。
それは、生存の奇跡に対する感情であり──家族を喪って以来、初めて「誰かに大切にされた」と感じた瞬間だった。
美しい鎧を身に着けた大人が、自分の姿を見て涙を流す。
その意味は当時のデュロンには分からなかったが──
後に知ったのは、あの場に生き残っていた子供は自分ただ一人だったという事実だった。
ほとんどの大人が正気を失いかけていた状況で、気丈にしていたデュロンに、騎士は大いなる感銘を受けたのだ……と後年になって知った。
大きな手で抱き上げられ、安心できる腕に包まれた時、デュロンは事故以来、初めての安堵を感じたのを覚えている。
それまでの "保護" と称していたものとは、まったく違う。
命を預けていいと思える、確かなぬくもりだった。
その騎士こそが、当時のルミナリア王国騎士団の長、後に "悲劇の騎士団長" と語り伝えられるアルダン・レスタークとの出会いだった。
保護された人間たちのうち、家族や親族、ツテのある者たちは、それぞれ元の生活へと戻っていったが──、デュロンのような孤児は、そのまま騎士団が身元を引き受けることになった。
そして、デュロンの人生はそこから変わった。
レスタークは、自分がその手で助けた子供……ということもあってか、とても目を掛けてくれた。
研究所の中で忘れかけていた、自分の本当の名── "デュロン・トラセナー" を思い出すこともできた。
レスタークが「デュロン」と呼んでくれることも嬉しかった。
憧れたのは、いつも彼の背だった。
あの背中のように、誰かを守れる力が欲しいと願った。
だが、事故そのものか、研究所で施されたなんらかの実験の所為か、デュロンの体は決して丈夫ではなかった。
「きみは、きみのできることを──全力ですればいいのだよ、デュロン」
レスタークの澄んだ青い瞳が、優しく微笑んでそう言ってくれた。
その時、温かい手が、デュロンの頭にそっと触れた。
それは──番号ではなく、「デュロン」と名を呼ばれたことと同じくらい、胸を打った記憶だった。
自分は、生きていてもいいのだと。
ここにいて、誰かのために力を尽くしてもいいのだと。
だからこそ、デュロンは必死だった。
もう二度と、目の前で誰かを失いたくなかった。
自分にできることを、全力で。
そうして見つけたのが、魔導の才能だった。
その力は、あの事故の時すでに彼の中で芽吹いていたのだろう。
デュロンがあの魔力の波動に挫けず生き残れたのは、彼が大いなる魔力を秘めていたからだったのだ。
魔人が "事故の被害者を使って実験を行っている" ──その噂が、疑念を炎上させた。
そもそも事故の影響は人間側にも及び、侵略の前触れではないかと見る者もいた。
森を挟んだその地は、二つの種族の距離がちかすぎたのだ。
けれど、この誤解と敵意の連鎖が、デュロンの運命を根底から変えてしまった。
研究所をルミナリア王国の騎士団が急襲したのは、デュロンが "保護" されてから1年にもならない頃だっただろうか。
その襲撃は、魔人からすれば、まさに奇襲だったが。
人間側からすれば、同胞を救い出すための救出作戦そのものだった。
魔人の研究者たちは一掃され、囚われていた人間たちは騎士団に保護された。
だが、この研究所には、あの実験で同じように被害に遭った魔人の市民も収容され、デュロンたちと同様に観察対象とされていたことを、デュロンは知らない。
彼らが "魔人である" という、それだけの理由で──研究者たちと一緒に処分されたことも……。
けれど──それを知る由もないデュロンにとっては、自分はただ「救われた」と信じて疑わなかった。
自分が閉じ込められていた部屋の扉を押し開き、入ってきた騎士が、自分の姿を見て驚愕し、涙してくれた。
それは、生存の奇跡に対する感情であり──家族を喪って以来、初めて「誰かに大切にされた」と感じた瞬間だった。
美しい鎧を身に着けた大人が、自分の姿を見て涙を流す。
その意味は当時のデュロンには分からなかったが──
後に知ったのは、あの場に生き残っていた子供は自分ただ一人だったという事実だった。
ほとんどの大人が正気を失いかけていた状況で、気丈にしていたデュロンに、騎士は大いなる感銘を受けたのだ……と後年になって知った。
大きな手で抱き上げられ、安心できる腕に包まれた時、デュロンは事故以来、初めての安堵を感じたのを覚えている。
それまでの "保護" と称していたものとは、まったく違う。
命を預けていいと思える、確かなぬくもりだった。
その騎士こそが、当時のルミナリア王国騎士団の長、後に "悲劇の騎士団長" と語り伝えられるアルダン・レスタークとの出会いだった。
保護された人間たちのうち、家族や親族、ツテのある者たちは、それぞれ元の生活へと戻っていったが──、デュロンのような孤児は、そのまま騎士団が身元を引き受けることになった。
そして、デュロンの人生はそこから変わった。
レスタークは、自分がその手で助けた子供……ということもあってか、とても目を掛けてくれた。
研究所の中で忘れかけていた、自分の本当の名── "デュロン・トラセナー" を思い出すこともできた。
レスタークが「デュロン」と呼んでくれることも嬉しかった。
憧れたのは、いつも彼の背だった。
あの背中のように、誰かを守れる力が欲しいと願った。
だが、事故そのものか、研究所で施されたなんらかの実験の所為か、デュロンの体は決して丈夫ではなかった。
「きみは、きみのできることを──全力ですればいいのだよ、デュロン」
レスタークの澄んだ青い瞳が、優しく微笑んでそう言ってくれた。
その時、温かい手が、デュロンの頭にそっと触れた。
それは──番号ではなく、「デュロン」と名を呼ばれたことと同じくらい、胸を打った記憶だった。
自分は、生きていてもいいのだと。
ここにいて、誰かのために力を尽くしてもいいのだと。
だからこそ、デュロンは必死だった。
もう二度と、目の前で誰かを失いたくなかった。
自分にできることを、全力で。
そうして見つけたのが、魔導の才能だった。
その力は、あの事故の時すでに彼の中で芽吹いていたのだろう。
デュロンがあの魔力の波動に挫けず生き残れたのは、彼が大いなる魔力を秘めていたからだったのだ。
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