暁闇の騎士

琉斗六

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13.深淵の墓場

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 ベッドに横たわったミスティは、繋がれた手首を上げて、枷が外れないかと力を加えてみた。
 これは、収監中に何度か試した行為でもある。

 なんらかの道具で手なり腕なりを切り落とせば、拘束そのものは外すことが出来る。
 だが、体が再生するまでには数時間を要する上に、出血で意識をなくす可能性も大きい。
 そんなリスクの高すぎる手段は取れない。

──やはり、尋常の力では外れないか……。

 諦めて、だるくなった腕を下げる。
 薄い患者着の感触が、むき出しの腕に伝わった。
 この服装も、尊厳が奪われたような気分になる。

──いつか、みんなにもう一度会える機会があったら、本気で謝らないとな……。

 そんな未来があるのか? との不安がよぎるが。
 ミスティは、かぶりを振った。

──弱気になるな。勝機はどこにあるかわからないんだから。

 扉が開き、部屋にタイドが入ってきた。

「立て」
「また、サンプル採取か?」

 起き上がるミスティの傍に、制服姿の部下たちがやってきて、患者着の上から拘束衣をせられる。
 彼らが自分に近づき、肌に触れた瞬間──全身に嫌悪感が走った。
 ただの作業でしかないと分かっているのに、反射のように身がこわばる。
 そんな自分に、ぞっとするほど嫌気が差した。

──くそっ。まだ引きずってるのか、僕は……。

 袖の先はバンドで縫いめられ、左右にクロスした形で背中にめる仕様のものだ。

「物々しいな」
「黙ってついてこい」

 廊下に出ると、いつもは明るい照明が落ちている。
 その異様な空気に、ミスティも軽口をやめて黙って従った。

──サンプル採取……ではないな。移送か……? しかし、どこに?

 この数日、監房と処置室の他に、ミスティはいくつかの部屋に連れて行かれ、データを取られた。
 その際、患者着のまま、手の枷を背中側で止められるだけで、移動は徒歩でする。
 拘束衣を使われたのは、移動の時になんとか脱出しようと暴れたあとだけだった。

──ここは、浮遊城並みにセキュリティが高い。

 移動の時に周りを観察したが、扉はすべて魔導式で取っ手のようなアナログなものは一切ない。
 天井が低く柱が多いのは地下施設の所為かもしれないが、廊下は広いが変に入り組んでいて、それもやはり軍用施設を彷彿させた。

 拘束衣の所為でバランスが悪く、足取りは重い。
 だが、前を行く二人も後ろから着いてくるタイドも、ミスティを気遣うわけもなかった。
 薄暗い廊下には、ところどころに警告灯がある。
 緊急を知らせる赤いランプが明滅しているのに、音と言えば自分たちが歩く足音だけだ。

──なぜ、警報が鳴っていないんだ?

 外部からの魔力干渉を知らないミスティには、警報システムが異常をきたして音が鳴っていない理由はわからない。
 だが、特異な騎士として戦場を駆け、敵地に乗り込んだ経験から、この状況がおかしいことは理解できた。

 一つの部屋の前で、タイドが壁の石板に手を当てる。
 空圧式の隔壁ドアが開き、ミスティはぐいと中に押し込まれた。

 監房よりは広いが、殺風景な部屋だった。
 視界の中に、監視カメラらしき物すらない。

「しばらく、ここにいろ」
「椅子も置いてないのか? 気が利かないな、まったく」
「黙ってろ」

 タイドは二人の部下を連れて、部屋から出る。
 扉が閉まると、室内がしんと静まり返った。
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