72 / 122
ep.2:追われる少年
17.禁忌の真実【2】
しおりを挟む
『ええいっ! ウジウジするなと言うておろうにっ! 盗られただけなら、取り戻せば良いだけじゃ!』
タクトに叱りつけられて、クロスは顔を上げた。
「だけどアイツは、宴の食卓も既に読み解いているんだよっ!」
『なんじゃそれは?』
「その、ムニエルとかいうのは何だ?」
タクトとマハトが、同時に問うた。
「えっ、マハさんはともかく、タクトも宴の食卓を知らないの?」
『知らん。なんじゃ、それは?』
「契約を交わして、相手を喰うことで、特殊技能や能力値を奪う古代魔法だよ」
『そりゃ、贄の食卓じゃろ』
タクトの答えに、クロスは首を傾げた。
「むしろ、そっちを俺は知らないんだけど?」
その様子に、タクトは少し考え込むような顔をしてから、なぜか一人で納得したような顔で頷くと、クロスを見やる。
『人間は伝承がむずかしい種族じゃからな。少々名称が変わっておってもいたしかたなかろ。それで、その古代魔法を紐解いて習得した毒まんじゅうは、弟子とその "契約" を交わしておった…と?』
「あ…うん。アンリーとの会話から、どうも弟子入りの際に師匠に忠誠を尽くす…みたいな誓約書にサインをさせられていたらしいんだ。それに、以前からアルバーラのとこの弟子が消えるって噂はあったし…」
タクトの態度に不審を覚えたものの、クロスは問いに返事をする。
「いくら高名な者の元に弟子入りがしたいからと言って、喰われるための契約なぞするのか?」
呆れたようなマハトの言葉に、タクトがあの舌打ちのような音をたて、まるで風刺でもするような笑みを浮かべる。
『全く、おぬしは愉快よの。人間の用意した書面なぞ、最初から微塵も信用ならんわ』
「なんだそれは?」
『人間とは、騙し騙されるのが当たり前の種族と言うておる。宴の食卓のための契約書に、師弟の忠義を約束する書面に見える術を掛ければ、魔力の低い人間如きは易々と騙されようぞ』
「そんなのは、詐欺じゃないか」
『じゃから、詐欺師の毒まんじゅうと言うたであろうが。だが、その偽装を見破れずに契約してしまったら、それは成り立ってしまう。騙された方の負けと言うことじゃな』
マハトは不満そうな顔をしたが、考えてみればそれはあくまでもアルバーラの行った非道な行為を、タクトが暴いてみせただけなので、文句を言っても仕方がない。
「弟子が消えるという噂があったのに、なんらかの調査はされなかったのか?」
「師匠と合わないからって冒険者になったりする者も一定数はいるんだ。アルバーラは、来る者拒まずで弟子を取っていたから、弟子の数も膨大だったし。議会員だった上に、顔も広かったし」
「つまり、もみ消しをするツテがあった…と?」
「まぁ。平たく言えば、そうなるかな…」
マハトは、ますます呆れた様子になった。
タクトに叱りつけられて、クロスは顔を上げた。
「だけどアイツは、宴の食卓も既に読み解いているんだよっ!」
『なんじゃそれは?』
「その、ムニエルとかいうのは何だ?」
タクトとマハトが、同時に問うた。
「えっ、マハさんはともかく、タクトも宴の食卓を知らないの?」
『知らん。なんじゃ、それは?』
「契約を交わして、相手を喰うことで、特殊技能や能力値を奪う古代魔法だよ」
『そりゃ、贄の食卓じゃろ』
タクトの答えに、クロスは首を傾げた。
「むしろ、そっちを俺は知らないんだけど?」
その様子に、タクトは少し考え込むような顔をしてから、なぜか一人で納得したような顔で頷くと、クロスを見やる。
『人間は伝承がむずかしい種族じゃからな。少々名称が変わっておってもいたしかたなかろ。それで、その古代魔法を紐解いて習得した毒まんじゅうは、弟子とその "契約" を交わしておった…と?』
「あ…うん。アンリーとの会話から、どうも弟子入りの際に師匠に忠誠を尽くす…みたいな誓約書にサインをさせられていたらしいんだ。それに、以前からアルバーラのとこの弟子が消えるって噂はあったし…」
タクトの態度に不審を覚えたものの、クロスは問いに返事をする。
「いくら高名な者の元に弟子入りがしたいからと言って、喰われるための契約なぞするのか?」
呆れたようなマハトの言葉に、タクトがあの舌打ちのような音をたて、まるで風刺でもするような笑みを浮かべる。
『全く、おぬしは愉快よの。人間の用意した書面なぞ、最初から微塵も信用ならんわ』
「なんだそれは?」
『人間とは、騙し騙されるのが当たり前の種族と言うておる。宴の食卓のための契約書に、師弟の忠義を約束する書面に見える術を掛ければ、魔力の低い人間如きは易々と騙されようぞ』
「そんなのは、詐欺じゃないか」
『じゃから、詐欺師の毒まんじゅうと言うたであろうが。だが、その偽装を見破れずに契約してしまったら、それは成り立ってしまう。騙された方の負けと言うことじゃな』
マハトは不満そうな顔をしたが、考えてみればそれはあくまでもアルバーラの行った非道な行為を、タクトが暴いてみせただけなので、文句を言っても仕方がない。
「弟子が消えるという噂があったのに、なんらかの調査はされなかったのか?」
「師匠と合わないからって冒険者になったりする者も一定数はいるんだ。アルバーラは、来る者拒まずで弟子を取っていたから、弟子の数も膨大だったし。議会員だった上に、顔も広かったし」
「つまり、もみ消しをするツテがあった…と?」
「まぁ。平たく言えば、そうなるかな…」
マハトは、ますます呆れた様子になった。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる