イルン幻想譚

琉斗六

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ep.2:追われる少年

17.禁忌の真実【3】

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「ところで、そのムニエルとかいうじゅつは、契約をしなければ能力を盗めないのだろう? どうやってドラゴンと契約を?」

 マハトの問いに、クロスは少し困ったような顔で笑った。

「アレは、ドラゴンじゃなくて合成妖魔キメラだと思うよ」
合成妖魔キメラ?」
「そもそも宴の食卓フリムニルは、契約を交わすと相手の特殊技能スキルと知識、それに能力値ステータスを10%ぐらい奪い取れるじゅつなんだけど。成功率を問わなかったら契約は不要なんだ」
「それはつまり、そのじゅつを行使して相手を食えば良いってことか?」
「うん。契約をしない状態でじゅつを使うと、特殊技能スキルを習得出来る確率は1%ぐらいになる」
「同じ特殊技能スキルを持つ相手を、百人喰う…ということか?」
『百匹喰って、身に付けば御の字…というのが正しいであろ』
「そうか、成功率が常に1%なんだものな。…えっ、じゃあ合成妖魔キメラというのは…」
「部屋がいっぱいあるでしょ、ここ。その部屋の中には、かなりいろんな種類のケージが置いてあるんだ。ただ、中に生き物はいない。アルバーラが失踪する前に、全部片付けて・・・・いったんだと思う」
「食べた…ということか。ケージには、一体なにがはいってたんだ?」
「あの姿から思うに、妖魔モンスターや下級の幻獣族ファンタズマじゃないかな」
「本当にそんな者を…」

 異形の能力を欲してあらゆる妖魔モンスターを貪り食べている、我欲に取り憑かれたものの姿を思い浮かべて、マハトは本気で胸がムカムカしてきてしまった。

「…異常なことは、よく解った。だが幻獣族ファンタズマ妖魔モンスターなんて、魔障ガルドリングの可能性もあるし、そもそも致死毒を持っているものも多いはずだが」
「危険度は判ってるんだから、対策を立てながら計画的に食べたと思うよ」
「対策って、致死毒だぞ?」
「ヒトガタ種族には、人間リオン能力値ステータスが同じくらいの獣人族セリアンスロウって種族がいてね。彼らは体に動物的な特徴を備えているんだ」
「動物的とは、犬とか猫とか?」
「他にも色々ね。彼らの中には、遺伝的に完全毒耐性みたいな特殊技能スキルを持ってる者もいて」
「そういう者の特殊技能スキルを、先刻タクトが言っていた詐欺行為で騙して奪ったんだな」
特殊技能スキルだけじゃなくて能力値ステータスも奪えるから、魔気ガルドレートの耐性も上がってるだろうね。元々魔導士セイドラーだから、自身の魔力ガルドルのコントロールは完璧だし」
「それじゃあ宴の食卓フリムニルを使い続けてたら、最終的に神耶族イルンよりも、もっと凄い生き物になってしまうんじゃないのか?」

 マハトの発言に、こらえきれないと言った様子でタクトが笑った。

「なぜ、笑う」
『いや、すまぬ。確かにヘタレふうの言い方をするならば "理論上は" そうなるであろうが。しかし全く、現実的では無いのう』
「根拠は?」
神耶族イルンと同格の能力値ステータスを持つ生き物となれば、人間フォルクの言うところの "上級" しかも、筋金入りの古代種フォニルフラィ幻獣族ファンタズマぞ?』
「それが十匹必要ということになるな」

 タクトの返事に、マハトは真面目な顔で答えた。

「マハさん、そんな相手は、人間リオンじゃ最初の一匹だって討伐出来ないと思うよ」

 クロスに言われて、マハトはハタと気付いたように「ああ…確かに」と言った。
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