イルン幻想譚

琉斗六

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ep.2:追われる少年

18.ライヴァル【3】

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 アルバーラがクロスの存在を知ったのは、自身と同じく光輝石スヴァリン色名付きネームドに変えたものがいると教えられた時だった。
 向こうが透けて見えるほどの光輝石スヴァリンは、その属性エレメントごとに色名付きネームドと呼ばれ、アルバーラは紅光輝石ラルドスヴァリンを顕現させた。
 そしてクロスは、白光輝石フィルトスヴァリンだったと言う。

 暗黙の評価として、魔導士セイドラーは治癒系よりも攻撃系、魔力ガルドルはより高いものほうが上と見られている。
 属性エレメントに上下は無いと謳われているが、透明度の高い光輝石スヴァリンを発現していても、紅光輝石ラルドスヴァリンより白光輝石フィルトスヴァリンが優秀と見られがちな風潮もあった。
 自分と同じか、もしくはそれ以上の魔力ガルドルを持つ可能性のあるクロスを、アルバーラは最初非常に警戒した。
 自分の幻像術ブリンディを看破したものは、今まで一人もいなかったが、それは単に周囲のものが自分より魔力ガルドルの低い、フシ穴のような目を持ったものばかりだった所為かもしれない…と思ったからだ。
 しかし、実際に顔を合わせたところ、クロスはそれといった様子を見せなかった。
 故にアルバーラは、自分のじゅつの技術力に自信を持ち、クロスを惑わし騙しおおせるのだと、確信した。

 しかしある時、アルバーラはクロスと視線が合った。
 アルバーラの幻像術ブリンディでは、スラリと背の高い、プロポーションの整った美貌の女に見えているはずであり、大概のものはアルバーラと話す時、視線はアルバーラの顔よりも遥かに上を見ている。
 最初は偶然…というか、人によっては、幻像術ブリンディで作った豊満なバストを凝視する失礼なものも存在するために、クロスもその手合かと思った。
 だが、胸はせいぜいアルバーラの頭の辺りにあり、しかも視線は度々合う。
 というか、クロスがアルバーラになんらかの物言いをする時、しっかりとこちらを見据えているのだ。
 つまりそれは、クロスには真実の姿が視えている…と言うことになる。
 視えているのにずっと、視えていないふりをして、容姿を誤魔化している自分を内心で嘲笑し、見下していたのだ。
 そう思った瞬間、アルバーラの内にあった鬱屈した憤りは、クロスに向かって凝縮した。
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