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ep.3:迷惑な同行者
3.遺跡巡り【2】
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タクトは数秒考え込んでから、パッと顔を上げた。
「そうじゃ、禊鎧場じゃ!」
「それは、なんだ?」
「デュエナタンの者どもが、秘術を掛けた場のことよ。巫の修練場とでも言えば、わかりやすいかの? 禊鎧場を回ることによって、真なる巫となるのじゃ」
「俺はそんなものに、なりたくないぞ」
「巫にならずとも、あれらを回れば、貴様の基礎能力値が爆上がりするのじゃぞ?」
「俺はそんなものを利用することに、なんの興味も無い。行脚がしたいなら、一人で行ってくれ」
「馬鹿者。巫になるには、資格が必要なのじゃ」
「なぜ、俺に資格があるとわかる?」
「決まっておろ。貴様が砂漠の遺跡…つまり禊鎧場に触れたときに、反応したではないか」
「興味はないな」
タクトは先程と同じように「てっ」と言って、面白くなさそうに顔をしかめた。
が、数秒黙り込んだあとに今度はニヤッと笑う。
「おまえの後見だった院長は、遠縁だと言っておったな」
「ああ」
「では、院長の親族に会ったのか?」
「いや、会ったことは無い。俺もそれは気になっていたんだが、そもそも院長に遠縁がいて、俺が引き取られて来たことに、修道院の者達は非常に驚いたと聞いた」
「それはつまり、おまえが引き取られてくるまでの間、院長は天涯孤独だと思われていたということであろう?」
「修道士の中には、わけありな身の上の者も多いので、自分から語らない者の過去には触れないのが暗黙のルールだ。例え出身が貴族だったとしても、そのルールは厳守だった」
「何を言う。むしろそういう身分の者達のほうが、秘密厳守にしているに決まっとろうが」
「どっちにしろ、外との縁を全て断ち切るのが普通だったから、むしろ俺の存在は例外中の例外だと言われた」
「ではおまえは、自分の出自に興味は無いのか?」
料理を口に運ぼうとしていたマハトの動きが止まった。
その様子に、タクトは我が意を得たりとほくそ笑む。
「いや…それは…、院長が亡くなってしまった今、もう知りようが無いことだ」
「だが、その様子では、興味はあるのだろう?」
「それは、当然、ある…」
マハトの返事を確認すると、タクトは声を潜めながら身を乗り出した。
「遺跡巡りをすれば、おまえの先祖の履歴が色々分かってくるだろう。するとそこから辿って、おまえの出自も明らかになるのではないか?」
「どうやって? おまえの話からすると、その遺跡は千年ぐらい前の古代人の物なのだろう?」
「では聞くが、貴族やら荘園主やらは、どうしてそのような地位や財産を築けたと思う?」
急に話題が変わったことにマハトは戸惑ったが、聞き返してもタクト相手では煙に巻かれるだけだと解っていたので、問われたことを考えた。
「そうだな…。知恵に富んだ者が人の役に立つことをして、それで人望を集めたからじゃないのか?」
「ははは、可愛いことを言う。だが、そんなお人好しが少々蓄財したところで、悪知恵に富んだ奸物に身ぐるみ剥がされるのが、人間の常套手段であろ」
「それじゃあ、まるで俺の親が奸物みたいじゃないか」
「貴様の親が奸物ではなくとも、先祖の誰かが奸物だったと言うておるのだ」
「どっちにしろ、俺の血縁を貶してるんじゃないか」
「普段はサウルスのくせに、自分ごととなると細かいのう」
ほとほと呆れたような顔をされて、マハトは少しムッとした。
「そうじゃ、禊鎧場じゃ!」
「それは、なんだ?」
「デュエナタンの者どもが、秘術を掛けた場のことよ。巫の修練場とでも言えば、わかりやすいかの? 禊鎧場を回ることによって、真なる巫となるのじゃ」
「俺はそんなものに、なりたくないぞ」
「巫にならずとも、あれらを回れば、貴様の基礎能力値が爆上がりするのじゃぞ?」
「俺はそんなものを利用することに、なんの興味も無い。行脚がしたいなら、一人で行ってくれ」
「馬鹿者。巫になるには、資格が必要なのじゃ」
「なぜ、俺に資格があるとわかる?」
「決まっておろ。貴様が砂漠の遺跡…つまり禊鎧場に触れたときに、反応したではないか」
「興味はないな」
タクトは先程と同じように「てっ」と言って、面白くなさそうに顔をしかめた。
が、数秒黙り込んだあとに今度はニヤッと笑う。
「おまえの後見だった院長は、遠縁だと言っておったな」
「ああ」
「では、院長の親族に会ったのか?」
「いや、会ったことは無い。俺もそれは気になっていたんだが、そもそも院長に遠縁がいて、俺が引き取られて来たことに、修道院の者達は非常に驚いたと聞いた」
「それはつまり、おまえが引き取られてくるまでの間、院長は天涯孤独だと思われていたということであろう?」
「修道士の中には、わけありな身の上の者も多いので、自分から語らない者の過去には触れないのが暗黙のルールだ。例え出身が貴族だったとしても、そのルールは厳守だった」
「何を言う。むしろそういう身分の者達のほうが、秘密厳守にしているに決まっとろうが」
「どっちにしろ、外との縁を全て断ち切るのが普通だったから、むしろ俺の存在は例外中の例外だと言われた」
「ではおまえは、自分の出自に興味は無いのか?」
料理を口に運ぼうとしていたマハトの動きが止まった。
その様子に、タクトは我が意を得たりとほくそ笑む。
「いや…それは…、院長が亡くなってしまった今、もう知りようが無いことだ」
「だが、その様子では、興味はあるのだろう?」
「それは、当然、ある…」
マハトの返事を確認すると、タクトは声を潜めながら身を乗り出した。
「遺跡巡りをすれば、おまえの先祖の履歴が色々分かってくるだろう。するとそこから辿って、おまえの出自も明らかになるのではないか?」
「どうやって? おまえの話からすると、その遺跡は千年ぐらい前の古代人の物なのだろう?」
「では聞くが、貴族やら荘園主やらは、どうしてそのような地位や財産を築けたと思う?」
急に話題が変わったことにマハトは戸惑ったが、聞き返してもタクト相手では煙に巻かれるだけだと解っていたので、問われたことを考えた。
「そうだな…。知恵に富んだ者が人の役に立つことをして、それで人望を集めたからじゃないのか?」
「ははは、可愛いことを言う。だが、そんなお人好しが少々蓄財したところで、悪知恵に富んだ奸物に身ぐるみ剥がされるのが、人間の常套手段であろ」
「それじゃあ、まるで俺の親が奸物みたいじゃないか」
「貴様の親が奸物ではなくとも、先祖の誰かが奸物だったと言うておるのだ」
「どっちにしろ、俺の血縁を貶してるんじゃないか」
「普段はサウルスのくせに、自分ごととなると細かいのう」
ほとほと呆れたような顔をされて、マハトは少しムッとした。
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