117 / 122
ep.3:迷惑な同行者
10.落とし穴【1】
しおりを挟む
しばらくすると、マハトがフォークを置いて、呟くように言った。
「なんだろう…部屋がぐるぐるしている…」
マハトはテーブルに肘をついたまま、視線を泳がせていた。
「酔ったのではないか? ほれ、無理せず横になれ」
タクトは即座に立ち上がり、マハトを支える。
「……あー、すまん」
ふらつきながら体を預けるマハトに、タクトは冷静な顔を保ちながらも、目元が微かに笑んでいた。
「想像以上に飲ませ過ぎたかもしれぬな。グラス半分で酔わせられると思うておったのに」
「何を言ってる……?」
額をおさえよろめくマハトを、タクトは易々とベッドへ運んだ。
体を横たえたところで、マハトはまるで頭の中が膨張するような感覚に襲われる。
「天井がぐるぐるしてるぞ……」
「では、目を閉じるが良い。これで少しは楽になるじゃろう」
そう言いながらタクトはマハトの額に自分の指先をそっと当てた。彼の熱を帯びた肌に対し、タクトの指はひんやりと冷たかった。
「どうじゃ?」
「少し、スッとした…」
床と天井の区別もなくなりかけていたマハトだったが、タクトに触れられたことで、上下の区別がつくようになった。
「これはどうじゃ?」
タクトは、マハトの額に自分の唇を寄せる。
「ああ……こんなことが……前にもあった…」
「そうだ、思い出せ。おまえは既に、儂の物なのじゃからな」
「なんだか…すごく眠い」
「馬鹿者、寝るにはまだ早いわ」
酔ったマハトをベッドに横たえ、タクトは顔がニヤけてしまうのが止められなかった。
神耶族の性質は、個人差はあるが基本的に非常に偏っている。
それは、全員がリーダーシップを取れる能力があるが、誰かに従う能力には欠ける…もしくは協調性が無いとも言えた。
個人主義という言葉で覆っているが、その苛烈な性質ゆえに同族で集落を形成することが出来ず、社会性に欠ける。
しかしその反面、神耶族は人間と大差無い精神をしていた。
と言っても、独裁者や覇王になりたがるような傾向はなく、自由気ままに何にもしばられないことを望む。
ではなにが "大差無い" のかと言えば、それはつまり孤独に対する耐性がさほど高くないという点だ。
マハトに語った通り、能力値の高さゆえに衣食住に困ることもなく、傍に精霊族が出現したとしても、即座に影響は受けない。
他種族から狙われる点を考えれば、神耶族は他と関わること無く、どこかの秘境に引きこもっているのが安全だろう。
だが、その環境に耐えられる精神を、彼らは持っていないのだ。
故に契眷属を侍らせ、強く惹きつけ合う相手を契金翼へと成し、己の元へと縛り付ける。
神耶族が契金翼を、掌中の珠と呼ぶのはそれ故だ。
そのために神耶族は、自身の全てを契金翼に与える。
与えられた契金翼は、主の神耶族を超える能力値を得る。
簡単な比較だけで言えば、契金翼はいつでも主を下剋上出来るだけのチカラを持つのだ。
「なんだろう…部屋がぐるぐるしている…」
マハトはテーブルに肘をついたまま、視線を泳がせていた。
「酔ったのではないか? ほれ、無理せず横になれ」
タクトは即座に立ち上がり、マハトを支える。
「……あー、すまん」
ふらつきながら体を預けるマハトに、タクトは冷静な顔を保ちながらも、目元が微かに笑んでいた。
「想像以上に飲ませ過ぎたかもしれぬな。グラス半分で酔わせられると思うておったのに」
「何を言ってる……?」
額をおさえよろめくマハトを、タクトは易々とベッドへ運んだ。
体を横たえたところで、マハトはまるで頭の中が膨張するような感覚に襲われる。
「天井がぐるぐるしてるぞ……」
「では、目を閉じるが良い。これで少しは楽になるじゃろう」
そう言いながらタクトはマハトの額に自分の指先をそっと当てた。彼の熱を帯びた肌に対し、タクトの指はひんやりと冷たかった。
「どうじゃ?」
「少し、スッとした…」
床と天井の区別もなくなりかけていたマハトだったが、タクトに触れられたことで、上下の区別がつくようになった。
「これはどうじゃ?」
タクトは、マハトの額に自分の唇を寄せる。
「ああ……こんなことが……前にもあった…」
「そうだ、思い出せ。おまえは既に、儂の物なのじゃからな」
「なんだか…すごく眠い」
「馬鹿者、寝るにはまだ早いわ」
酔ったマハトをベッドに横たえ、タクトは顔がニヤけてしまうのが止められなかった。
神耶族の性質は、個人差はあるが基本的に非常に偏っている。
それは、全員がリーダーシップを取れる能力があるが、誰かに従う能力には欠ける…もしくは協調性が無いとも言えた。
個人主義という言葉で覆っているが、その苛烈な性質ゆえに同族で集落を形成することが出来ず、社会性に欠ける。
しかしその反面、神耶族は人間と大差無い精神をしていた。
と言っても、独裁者や覇王になりたがるような傾向はなく、自由気ままに何にもしばられないことを望む。
ではなにが "大差無い" のかと言えば、それはつまり孤独に対する耐性がさほど高くないという点だ。
マハトに語った通り、能力値の高さゆえに衣食住に困ることもなく、傍に精霊族が出現したとしても、即座に影響は受けない。
他種族から狙われる点を考えれば、神耶族は他と関わること無く、どこかの秘境に引きこもっているのが安全だろう。
だが、その環境に耐えられる精神を、彼らは持っていないのだ。
故に契眷属を侍らせ、強く惹きつけ合う相手を契金翼へと成し、己の元へと縛り付ける。
神耶族が契金翼を、掌中の珠と呼ぶのはそれ故だ。
そのために神耶族は、自身の全てを契金翼に与える。
与えられた契金翼は、主の神耶族を超える能力値を得る。
簡単な比較だけで言えば、契金翼はいつでも主を下剋上出来るだけのチカラを持つのだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる