イルン幻想譚

琉斗六

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ep.3:迷惑な同行者

11.絆【1】

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 マハトは、修道院で身に付けた礼儀や教養によって、理性が働いている間は行儀正しく規律に従い、秩序や作法に則った行動を好む。
 だがアルコールによって理性のタガが外れた今、タクトの言う通り、マハトが生まれ持った "貪欲" な本質が剥き出しになっていた。
 自身の剣技に磨きをかけ、更なる高みを望むように。
 たかが炙った肉ひとつとっても、味わいや焼き加減に拘りを持つように。
 魂融術シームルによって新たに知った快感と、それに浸る歓びを、理性の蕩けたマハトの心身は、タクトに向かって激しく要求してくる。

「修道院育ちのお嬢様とも思えぬ、はしたない振る舞いじゃの」

 タクトは、契眷属フェストゥーカを持たずに生きてきた神耶族イルンである。
 それはタクトが特別に孤独に強い性格だった…というよりは、タクトが特別に警戒心の強い性格だったからだろう。
 契金翼エヴンハールと成るものは、厳しく選ばなければならない…と説いたのは、タクトの師匠である守護者ケルヴィンガーだった。
 しかしその一方で、独りで生きるのはとても寂しいことだとも言い、最良の契金翼エヴンハールを選ぶのは難しいかもしれないが、持つべきだとも言った。

 同胞が連れている契眷属フェストゥーカは、人間フォルク人間フォルクの社会に紛れ込んでいる獣人族セリアンスロウが多い。
 だが神耶族イルンの歴史の中でも最も波乱であった、人間フォルクとの抗争の時代に思春期を過ごしたタクトは、人間フォルクに対してかなり偏った嫌悪感を持っていた。
 あんな卑怯で狡猾な、言ってしまえば下等とも言うべきものたちは、その場で利用するだけならともかく、わざわざ手元に置きたいとは思わない。
 もし自分が契金翼エヴンハールを選ぶならば、もっと優秀な妖精族エルフ魔族ディアブロ、せいぜい心根の真っ直ぐな獣人族セリアンスロウを迎えたい…と、常々考えていた。
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