120 / 122
ep.3:迷惑な同行者
11.絆【2】
しおりを挟む
タクトの気持ちに変化が起きたのは、守護者としてジェラートに付き添ったからだろうか。
互いに互いが特別と思う存在は、他の者とは存在の意味が違うことに気付いた。
そしてマハトとクロスに逢った。
マハトの容姿は、タクトの好みにピッタリだった。
だがそんなものなら他の数多の者達も持っていたもので、タクトが初めに心を動かされたのは、マハトの真剣な誠意のほうだ。
ただの行きずりだったにも関わらず、命掛けの救出に、マハトは最後まで真摯に付き合った。
マハトはクロスのように、神耶族に対して特別な思い入れを持っていたわけでも無い。
生真面目に誠実で、正義感だっただけだ。
しかもマハトは神耶族の卓越した能力にも、永遠に等しい命にも、タクトの美貌にも、微塵も意思を揺らがさなかった。
タクトはいつもマハトを鈍感と貶しているが、内心ではそれがマハトのおおらかさであり、強さでもあり、思慮深さだと評価している。
マハトの性格や態度に加えて、稀な出生や特殊技能など、知るほどに興味深く、魅力的で、マハトと道行をするうちに、この者ならば契眷属にして手元に置いてもいい。
いや、どうしてもマハトを契金翼にしたい、と思うようになった。
最初はマハトのほうから契金翼にしてくれと、頭を下げざるを得ないように画策してやろうと考えた。
でもそれではダメだと思い直した。
どんな手段であれ、マハトに頭を下げさせたら、自分にとってのマハトの魅力が欠けてしまう。
欲しいのは、今のままのマハトだ。
それで言葉巧みに、マハトを酩酊させた。
暫しの間の判断力を鈍らせれば、普段は理性でコントロールされているマハトの貪欲さが、露わになると見越したからだ。
予想に違わずマハトはタクトの与えた快感に、しっかりと応じている。
「さて、そろそろお待ちかねのお楽しみ…といきたいところだが。その前に、魄融術を完了しておかねばな」
「おまえと契約なんて……、俺は、したくない…」
「ははは、面白いことを言う。おまえは既に、儂の虜ではないか。魄融術が完了すれば、これからずうっと、これより愉快な暮らしが続くのだぞ」
マハトが嫌がるように首を横に振る。
その拒絶をマハトの髪を掴んで封じ、タクトはマハトの耳に唇を寄せると、ひとつの名を囁いた。
「な、なに…?」
訊き返すマハトを無視して身体を起こしたタクトは、マハトの全てを余さず愛でるため、その身体に両腕を回すと、きつく抱きしめた。
互いに互いが特別と思う存在は、他の者とは存在の意味が違うことに気付いた。
そしてマハトとクロスに逢った。
マハトの容姿は、タクトの好みにピッタリだった。
だがそんなものなら他の数多の者達も持っていたもので、タクトが初めに心を動かされたのは、マハトの真剣な誠意のほうだ。
ただの行きずりだったにも関わらず、命掛けの救出に、マハトは最後まで真摯に付き合った。
マハトはクロスのように、神耶族に対して特別な思い入れを持っていたわけでも無い。
生真面目に誠実で、正義感だっただけだ。
しかもマハトは神耶族の卓越した能力にも、永遠に等しい命にも、タクトの美貌にも、微塵も意思を揺らがさなかった。
タクトはいつもマハトを鈍感と貶しているが、内心ではそれがマハトのおおらかさであり、強さでもあり、思慮深さだと評価している。
マハトの性格や態度に加えて、稀な出生や特殊技能など、知るほどに興味深く、魅力的で、マハトと道行をするうちに、この者ならば契眷属にして手元に置いてもいい。
いや、どうしてもマハトを契金翼にしたい、と思うようになった。
最初はマハトのほうから契金翼にしてくれと、頭を下げざるを得ないように画策してやろうと考えた。
でもそれではダメだと思い直した。
どんな手段であれ、マハトに頭を下げさせたら、自分にとってのマハトの魅力が欠けてしまう。
欲しいのは、今のままのマハトだ。
それで言葉巧みに、マハトを酩酊させた。
暫しの間の判断力を鈍らせれば、普段は理性でコントロールされているマハトの貪欲さが、露わになると見越したからだ。
予想に違わずマハトはタクトの与えた快感に、しっかりと応じている。
「さて、そろそろお待ちかねのお楽しみ…といきたいところだが。その前に、魄融術を完了しておかねばな」
「おまえと契約なんて……、俺は、したくない…」
「ははは、面白いことを言う。おまえは既に、儂の虜ではないか。魄融術が完了すれば、これからずうっと、これより愉快な暮らしが続くのだぞ」
マハトが嫌がるように首を横に振る。
その拒絶をマハトの髪を掴んで封じ、タクトはマハトの耳に唇を寄せると、ひとつの名を囁いた。
「な、なに…?」
訊き返すマハトを無視して身体を起こしたタクトは、マハトの全てを余さず愛でるため、その身体に両腕を回すと、きつく抱きしめた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる