イルン幻想譚

琉斗六

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ep.3:迷惑な同行者

11.絆【2】

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 タクトの気持ちに変化が起きたのは、守護者ケルヴィンガーとしてジェラートに付き添ったからだろうか。
 互いに互いが特別と思う存在は、他のものとは存在の意味が違うことに気付いた。
 そしてマハトとクロスに逢った。

 マハトの容姿は、タクトの好みにピッタリだった。
 だがそんなものなら他の数多のもの達も持っていたもので、タクトが初めに心を動かされたのは、マハトの真剣な誠意のほうだ。
 ただの行きずりだったにも関わらず、命掛けの救出に、マハトは最後まで真摯に付き合った。
 マハトはクロスのように、神耶族イルンに対して特別な思い入れを持っていたわけでも無い。
 生真面目に誠実で、正義感だっただけだ。
 しかもマハトは神耶族イルンの卓越した能力にも、永遠に等しい命にも、タクトの美貌にも、微塵も意思を揺らがさなかった。

 タクトはいつもマハトを鈍感と貶しているが、内心ではそれがマハトのおおらかさであり、強さでもあり、思慮深さだと評価している。
 マハトの性格や態度に加えて、稀な出生や特殊技能スキルなど、知るほどに興味深く、魅力的で、マハトと道行をするうちに、このものならば契眷属フェストゥーカにして手元に置いてもいい。
 いや、どうしてもマハトを契金翼エヴンハールにしたい、と思うようになった。

 最初はマハトのほうから契金翼エヴンハールにしてくれと、頭を下げざるを得ないように画策してやろうと考えた。
 でもそれではダメだと思い直した。
 どんな手段であれ、マハトに頭を下げさせたら、自分にとってのマハトの魅力が欠けてしまう。
 欲しいのは、今のままのマハトだ。
 それで言葉巧みに、マハトを酩酊させた。
 暫しの間の判断力を鈍らせれば、普段は理性でコントロールされているマハトの貪欲さが、露わになると見越したからだ。
 予想に違わずマハトはタクトの与えた快感に、しっかりと応じている。

「さて、そろそろお待ちかねのお楽しみ…といきたいところだが。その前に、魄融術ハミンガを完了しておかねばな」
「おまえと契約なんて……、俺は、したくない…」
「ははは、面白いことを言う。おまえは既に、儂の虜ではないか。魄融術ハミンガが完了すれば、これからずうっと、これより愉快な暮らしが続くのだぞ」

 マハトが嫌がるように首を横に振る。
 その拒絶をマハトの髪を掴んで封じ、タクトはマハトの耳に唇を寄せると、ひとつの名を囁いた。

「な、なに…?」

 訊き返すマハトを無視して身体からだを起こしたタクトは、マハトの全てを余さず愛でるため、その身体からだに両腕を回すと、きつく抱きしめた。
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