異世界就職!?

pさん

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第一章 ー始まりー

それは入社式のような…

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『ミツキ君、さっきも話した通り、君にはここで私達と暮らしながら、勉強と訓練をしてもらう。』



ディーアさんは真剣な顔で話し始めた。



『そして、訓練の内容は、魔法、体術、剣術、弓術だ。』




(なるほど…。基礎ってところかな。)




『魔法は私が担当し、体術、剣術、弓術はティアに担当させる。ティア、負担が大きいけど大丈夫かな?』




「はい。問題ありません、ご主人様。」




ティアは余裕そうに答えた。




(ティアさんと訓練かぁ~ドキドキするなぁ~)

俺は少しだけ頭の中で甘~い妄想をしていた。




『ミツキ君、私からの忠告だ。ティアは昔、国を滅ぼした事もあるほどの実力者だから、甘い考えをしているのなら捨てたほうがいいぞ。』




(え…。国を…。)

俺の甘い妄想が、砕け散った。




「えっ…?まさか一人でですか!?」




俺は恐る恐るティアさんの顔を見た。



「はい。もう100年以上も前の話しです。」


(えぇー!!てかやっぱり100歳は超えているのか…。)


俺はどちらにも驚いた…。




「ご主人様、私が担当と言うことならば、好きに鍛えてもよろしいのでしょうか?」



『そうだね、できる限り手加減はしてあげてね。』




(いやいやいや、そんなんで大丈夫なの俺…)


「はい。ご主人様がそうおっしゃるのなら仕方ありません。」



ティアさんは少し残念そうに見える…。



「お手柔らかにお願いします、ティアさん…。」



「はい、私にお任せ下さい。」



(あぁ、その笑みがもう不安でしかない…。)

俺は心の中で、この人は絶対に怒らせないでおこうと固く誓った…。



『そしてもう一つ、大事な事があるんだ。』



(なんだ…嫌な予感が…。)


「……なんでしょうか?」


そう言うと、ディーアさんはニコっと笑って言った。



『ミツキ君には、訓練と勉強を1日2分割で進めてもらうよ。』



(……。)

確かに、俺が今まで学生時代に学んできたのは元の世界の知識…。
ここで生きていくには、この世界の知識を1から叩きこまなくてはならない。
単純に、小学生から大学、いやせめて高校までの知識を叩き込むとなると…。


(いやまて、そもそも勉強の内容によってはもっと早いんじゃないか?よし、聞いてみよう…。)



「あの~ディーアさん、勉強の内容ってどのようなものでしょうか…。」



俺は恐る恐る聞いてみた。
ディーアさんは、目を閉じてスラスラと言った…。




『魔法学、医学、歴史学、古代学、古代言語学、地理学、算術学、各種族言語、各種族文字、古代魔法言語、あと、可能であれば錬金学も教えてあげたいかな。』



(あっ…俺死んじゃうかも……。)



「…………。」




(ヤバい…。目が回ってきた…。)




『ん?ミツキ君、大丈夫かい?』



ディーアさんが心配そうにこちらを見ている…。




(大丈夫じゃねーよっ!!)


「はい…大丈夫です。ちょっと目眩が…。」




心の内は漏らさないのが社会人の鉄則…。



『まぁ、ミツキ君なら大丈夫だよ、あの空白様のお墨付きだし。何より、学問全般は私が教えるのだからね。』



(まぁ、ディーアさんなら分かりやすく教えてくれそうだけれど…。)




ほんの少しだけ、やる気が出た…ような気がした。



「はい…頑張ります…。」




「ご主人様?時間の割り当てはどうするのですか?」


ティアは俺達にお茶を注いでくれた。



ディーアさんは一口飲んでから話し始めた。



『そうだな、午前中はティアに任せる…だが、先に体術から教えてやって欲しい。そして午後からは学問。とりあえず魔法学を先に覚えて貰ってからじゃないと、実践魔法の訓練は危険だからね。時間は様子を見ながら私が決めることにしよう。』




(これ、全部覚えてるのに何年くらいかかるんだろ…。)


俺はそう思いながら、お茶を飲んだ。




「かしこまりました、ではいつから始めたらよろしいでしょうか?」



ディーアさんは、少し考えてから言った。



『そうだな…。今日のところは、部屋の案内とトイレや風呂の案内、あとはティアが使えそうだと思う訓練場を探して案内してあげてくれ。私は…これから必要な教材の確認…。それと、ミツキ君の生活用品を揃えながら、ついでにティアの代わりのメイドも呼んでこよう。』




「はい、かしこまりました。では先にお部屋に案内し、着替えを準備致します。」



ティアさんが立ち上がり、それに続いて俺とディーアさんも立ち上がった。



『では、明日から本格的に始めるとしよう、ミツキ君、君はこのあとティアの指示に従ってくれ。それと、各自明日に備えて、今日はしっかりと休むようにね。』




「はい!」

「かしこまりました、ご主人様。」




(うわ~何か緊張するな~)

ディーアさんは、優しく微笑んでから部屋を出た。




「ではミツキ様、まずはお部屋に案内します。」



「はい!お願いします。」




そして俺とティアさんも部屋を出たのだった。
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