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元カレとの再会
しおりを挟む架鞍くんの看護のおかげか、2日も経つとすっかり全快した。架鞍くんの言うとおり、霞がプール券を買ってきておいてくれたらしい。
「さーてと、それじゃあお約束のプールにでも行こうか。苺ちゃん、誰と行く?」
「架鞍くん!」
迷わず答えると、霞はわたしにふたりぶんのプール券を渡してくれた。
「ちょっと寄って行きたいところあるんだけどいいよね?」
架鞍くんが行きたいところって興味あるし、わたしはOKする。禾牙魅さんと霞に「行ってきまーす!」と元気よく言って、家を出た。
で──架鞍くんに連れられてきたのは、デパートの3F、婦人服売り場。
「え、えーと架鞍くん? ここに来てみたかったの?」
「そうだけど?」
「そ、そう……」
架鞍くんなに考えてるんだろ……ま、まさか女服試着してみたいとか……! 顔キレイだし似合いそうだけど……。
「考えてること丸分かり。あんたは好きな服でも見てたら?」
うぐ……。
【鬼精王Side】
苺が慌てて去って行くのを見届け、架鞍は水着売り場へ。女性店員が、見目麗しい架鞍に目をハートにしながら声をかける。
「恋人かどなたかへのプレゼントですか?」
「なんでこう派手なのばっかあるの? もっと苺に似合うヤツとかないわけ?」
返ってきた乱暴な口調に、女性店員はうろたえながらも案内する。
「は? あ、は、派手でないものならこちらのコーナーなど如何でしょう」
そこでしばらく物色していた架鞍は、一着の水着を手に取った。
「……これください」
「え?」
架鞍に見惚れていた女性店員は、ぼうっとしている。架鞍は深くため息をついた。
「これください、って言ってるんだけど?」
「あ、は、はい、今お包み致します!」
◇
【苺Side】
デパートを出ると、わたしと架鞍くんはカフェテリアに寄った。
「結局架鞍くん、何買ったの?」
「人の秘密を知りたがる奴はなんとやら、っていう言葉知ってる?」
やっぱり架鞍くんて、ちょっと恐いところがある。だけど、そんなところも気にならないくらい今のわたしには愛しい存在。
その時、思い出したくもない声がわたしの耳に入ってきた。
「あれぇ? 苺じゃん」
見ると、通りがかった男女のカップルの男のほうは、わたしのモトカレだ。
「俺に振られといてすぐ男くわえ込むなんてお前も図太いのな」
無礼なことを言われて、かあっと頭に血が上る。こんなやつにこんなことを言われるなんて、悔しい。
「わ、わたしはなに言われてもいいけどねっ、か、架鞍くんに失礼でしょっ!? 架鞍くんはわたしの恋人でもなんでも……、」
「噂の元カレさんですか?」
わたしが涙をこらえながら抗議していたその時、架鞍くんがガタッと椅子から立ち上がった。
架鞍くんは天使のような、でもどこか凄味のある笑顔を浮かべている。その笑顔に、元カレ──リュウタはたじろいだようだった。
「だ、だからなんだよ……。お前もこんな女に引っかかって、女見る目ないねえ」
「そちらこそ。毎晩男をとっかえひっかえしているような見かけだけの雌豚の傍によくいられますね。まあ貴方も相当臭いですからお似合いですけど。でも」
架鞍くんが、ぐいっとリュウタを引きずり寄せる。そして思い切り睨みつけた。
「苺を泣かせて穢した罪は償ってもらうよ?」
「な、なに言ってんだよ、お前にゃ関係ねえだろ、」
次の瞬間、架鞍くんはリュウタに深くキスをした。一緒にいた彼女が青ざめる。もちろんわたしも、血の気が引いた。
「う……、うっ!?」
リュウタが目を白黒させている。微妙に顎を動かして何かをし、ぱっと顔を離して、にっと不敵な笑みを見せる架鞍くん。
「男にキスされるってそんなに悶絶するほど嫌? 嫌だよね。でもあんたに【された】苺はもっと嫌だったんだよ?」
架鞍くん……。
「、……う、……あ」
言葉にならない声を出すリュウタに、架鞍くんは絶対零度の笑みを崩さずに言った。
「今後苺に近づいたら殺されると思って? ウジ虫さん。そこの雌豚さん、歯医者さんに連れてってほうがいいよ。前歯抜いちゃったから」
彼女は悲鳴をあげ、血が滴り落ちる口を押さえるリュウタを支えつつ、足早に歩き去って行った。
とたんに、架鞍くんはいつもの表情に戻る。
「差し歯だろうね」
「抜いちゃったから……?」
「歯であいつの歯を抜いた後、飲み込ませたから。差し歯は前歯だと……10万くらい?」
「……架鞍くん」
「なに?」
「初めてわたしの名前、呼んでくれてた」
嬉しそうに言うわたしに、架鞍くんは視線をそらす。
「……恋人のフリしてなきゃならなかったからね」
「それって……それもそうだけど、アイツにあんなことしたのも、わたしのためにしてくれたんでしょ……?」
「オレンジジュース飲み終わったんでしょ? 早く行かないと俺つきあうの飽きるよ」
「あ、ま、待って、行く行く!」
架鞍くんは、相変わらずつれない。
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