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呪われた誕生日 1
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リョウに会って少しほっとしたせいか、ぐっすり眠った月花が起きたときは翌日の昼過ぎだった。深夜までメールを読むのに夢中だったというのもあるだろうけれど。
目を覚ますと、ジェシーが部屋の掃除をしていた。
「……おはよう」
「あら。やっと目を覚まされましたか」
今年18になったというジェシーは、掃除に熱心だったせいですこし乱れたおさげを直す。月花よりひとつ年上のジェシーだが、顔立ちはそばかすのせいか、まだ幼く見える。そういう月花も、決しておとなびた顔立ちではないのだが。
「もうこんな時間……?」
時計を見た月花は、まだぼうっとしながらつぶやいた。昼食もとうにすぎている時間だ。
「イファン様が、ツキカ様が自発的に起きるまで起こすなと仰ったので」
「うん……ありがとう」
のびをしたとたん、ぐうっとお腹が鳴る。ジェシーが笑った。
「着替えをなさいましたら、すぐごはんに致しましょう」
いそいそと月花に与えられた着替えを持ってくる。やはり、白いワンピースだ。今日のは袖にリボンがついていて、いつものようにあたたかな白い上着を着せられる。
そうしているうちに、ルカがワゴンに食事を乗せてやってきた。
「おはようございます、ツキカ様」
「ルカ、おはよう。昨日はありがとう」
ことづてとリョウからの預かりもののお礼を言うと、ルカはまた太陽のような笑みを見せた。
彼はジェシーとも挨拶を交わすと、部屋を去ろうとする。
「あ、待って」
月花は呼び止めた。
「このあと、どうするの?」
「いつもどおり、部屋の前で警護いたします」
「一緒にお茶でも飲まない? ……今日はイファンの誕生日なんでしょ? 特別な日だもの」
ルカは大きな緑色の瞳を、さらに大きくする。ちらりとジェシーを見ると、ジェシーも「よろしいんじゃないかしら、ツキカ様がおっしゃるのだもの」と笑顔を見せた。
ルカは、嬉しそうに会釈した。
「では、お言葉に甘えて」
月花は急いで食事を終えると、デザートのケーキをジェシーに三人分にとりわけてもらう。
「今日のデザート、ケーキなんだね」
「イファン様のお誕生日だからでしょう。しかもこれ大きいですね!」
「ほんと。わたしひとりじゃ、きっと食べ切れなかったよ」
月花とジェシーのやり取りを、ルカは微笑ましそうに見つめながら立ったまま待っている。
窓際に丸テーブルと椅子が二脚。ルカとジェシーにそこに座ってもらい、月花はベッドに腰かける。イファンの23歳の誕生日に、紅茶で乾杯した。
ケーキはチョコらしきものをふんだんに使った、しっとりしたフォンダンショコラのようなものだった。外はサクッとしていて、フォークで切ると中からとろっとチョコがとろけだす。口に入れてみると甘ったるいほどの甘さではなく、月花が大好きなちょうどいい甘さだった。
「このチョコレートケーキ、イファン様にしてはお珍しいですね。毎年クリームを使ったショートケーキですのに」
「そうなの?」
すると、ルカが上機嫌で口をはさむ。
「ツキカ様の意識の中を探ったとき、ツキカ様のお好みのケーキもお知りになったのでしょう。これはツキカ様のためだけに作られたチョコレートケーキだと思いますよ」
イファンが月花の意識を探ったということも、ルカは知っているのか。というか、イファンがそんな気配りをしてくれるだなんて思っていなかった月花は、調子が狂ってしまう。
「イファン様は、ほんとうはとてもお優しい方ですから」
複雑な表情の月花に、ルカがだめ押しする。ジェシーが眉をはねあげた。
「そんなこと言ってるの、ルカだけよ?」
「でも、ほんとうのことですから」
ルカは微笑んではいるが、譲る気はないらしい。ジェシーはあきらめ、紅茶に口をつける。
「まあでも、確かにツキカ様に対しては気配りをされているとも思うけれど。このお部屋を用意されたときも、女の子らしくとか注文が細かかったし」
「でしょう?」
ほらねと言わんばかりに、ルカが笑みをこぼす。
そういえば、紅茶も月花が好きな香りだ。ミルクティーが好きな月花だが、チョコレートケーキがこの世界にあるとすれば、この紅茶も間違いなくミルクティーに違いないと思えるほどに。
そのうち話題はジェシー提供によるところの「城内での不倫」に移り変わり、ルカと月花はときおり相槌を打つだけになった。ルカに至っては、困り顔だ。無理もない、まだ15歳だと聞いている。15歳の少年が、不倫関係の話題なんかに興味があるほうがおかしい。
そんな月花とルカを救ったのは、ノックの音だった。
「シオンだけど、いまいいか?」
シオンがくるとは知っていたが、まさか月花の部屋にまでとは思っていなかった。ジェシーとルカは慌ててとうの昔に食べ終わったケーキの皿と紅茶を片付ける。気がつけば、窓の外はもう夕暮れどきだった。
「どうぞ」
月花の声に、シオンが扉を開けて入ってくる。そこにジェシーとルカもいるのだとは思っていなかったらしく、頭を掻く。
「もしかして、邪魔したか?」
「ううん、もう食べ終わったところだったから」
ジェシーがワゴンを持ってさがり、ルカだけが残ったのを見てシオンは言う。
「悪いけど、ふたりにしてくれねーか」
「でも……」
「俺が信用できないか?」
ルカはかぶりを振り、「失礼します」とだけ言って部屋を出ていく。
「イファンには会ってきたの?」
「ああ。もう少しで宴が始まる。俺もそろそろ行かなくちゃいけないんだけど、ちょっとでもあんたに会いたかったから」
わざわざふたりきりになったからには、なにか込み入った話があるのだろう。月花は背筋を伸ばす。
「ゆうべの会話で思ったんだけど」
シオンは切り出した。
「おまえとリョウって、ほんとに恋人なのか?」
なんだそんなこと、と月花は気が抜けてしまう。もうリョウが命を狙われることもなくなったのだし、リョウの話題なら他の人の目があっても大丈夫なはずだ。
「一応……恋人だよ」
「全然恋人らしくねぇな」
むっとする月花に、シオンは彼女の隣に座って足を組む。
「おまえ、ほんとにあいつのことが好きなのか?」
そう聞かれると、ぐっとつまってしまう。
好きといえば好きだ、人間として。恋愛感情があるかというと、自分でもよく分からない。
ただ、自分とリョウはつきあっている。だからデートするのも当たり前だし、ほんとうなら肉体関係もなくちゃおかしいのだろう。
デートはしていた、アイも込みだけれど。そのことを、友達に指摘されたことはある。滝水くんも含めてだなんて、相馬くんに失礼じゃないの?と。それってデートじゃないんじゃないの?とも。それはずっと月花が蓋をしてきた気持ちだった。どうしてシオンはそんなことを突っ込んでくるのだろう。
「シオンは、『エルの歌姫』ってなんのことか知ってる?」
答えられないかわりに、ごまかした。シオンの顔に、一瞬緊張が走る。真顔になり、うなずいた。
「もちろん。この世界の人間ならだれでも知ってる。──ああ、あんたは異世界からきたんだってな。さっき初めてイファンから聞いた」
「それなら話が早いんだけど。『エルの歌姫』って、どういうものなの?」
「そうだなぁ」
シオンは組んでいた足を戻して腕組みをし、しばらくなにから話そうか考えているようだった。
「ルーインが複数いた場合、その中からどうやって神子に選ばれるかは知ってるか?」
月花はかぶりを振る。シオンは教えてくれた。
「まず神子になるには、神に会いに行く必要がある。神の部屋への道は神のほうからでないと開かない。開けばルーインや『エルの歌姫』にはすぐにわかるらしいけど、いまのところ開いてる様子はないな」
で、と彼は続ける。
「神の部屋をこっち側から開く方法もあるんだ。でも、それには『エルの歌姫』の存在が不可欠となる」
「どうして?」
「こっち側から開くには鍵の遺跡に行く必要があってさ。そこで『エルの歌姫』が歌うと三つの神器が現れるって言われてる。その神器をそろえて鍵の遺跡でまた『エルの歌姫』に歌ってもらうと、神の部屋への道が開くらしい」
「じゃ、『エルの歌姫』がいれば……神様が選ばなくても自分が神子になることも可能なんだ」
「そういうこと。反則技でもあるけどな。まあ、『エルの歌姫』なんてめったに現れねーしな。現れて出逢うだけで、もう運命としか言いようがねえ」
「そうなの?」
「前に『エルの歌姫』が現れてから、千年の時が流れてるらしい。だから神子よりもある意味貴重ってされてるんだよ」
「千年も……」
そんな貴重な「エルの歌姫」が自分であるとは、信じがたい。
けれどイファンは確かな自信を持って、月花が「エルの歌姫」だと思っている。それは、なぜなのだろう。
「『エルの歌姫』だっていう証拠って、どこでわかるの?」
さらに質問を重ねると、シオンは丁寧に教えてくれる。
「言い伝えによれば、だけど。『エルの歌姫』には身体のどこかに涙のしずくの形のあざがあるとされてる。あと、なんだっけな。そうそう──エルの地で歌うと髪が月のように銀色に光り輝き、花々が咲き誇ったり自然現象が何かしら起きるので、それで「エルの歌姫」とわかる。月が出ている晩に奇跡が起こせると言われているので、『月の歌姫』とも呼ばれている。──だっけかな。これ、言い伝えの本にあったとおりの記述だけど」
「よく覚えてるね」
「そりゃ、エルの地に生まれた奴は親や学校から嫌でも教えられるしな。ルーインになったら尚更調べようと思うし。そうそう、あとやっぱり『エルの歌姫』はルーインと同じように処女じゃなくちゃならなくて、処女喪失と同時にその力も失せると言われてるんだ」
イファンが月花のことを、「いまのところ殺しも抱きもしない」と言っていたのは、だからだろうか。月花が処女でなくなってしまえば、イファンも自ら神子になることはできない。
目を覚ますと、ジェシーが部屋の掃除をしていた。
「……おはよう」
「あら。やっと目を覚まされましたか」
今年18になったというジェシーは、掃除に熱心だったせいですこし乱れたおさげを直す。月花よりひとつ年上のジェシーだが、顔立ちはそばかすのせいか、まだ幼く見える。そういう月花も、決しておとなびた顔立ちではないのだが。
「もうこんな時間……?」
時計を見た月花は、まだぼうっとしながらつぶやいた。昼食もとうにすぎている時間だ。
「イファン様が、ツキカ様が自発的に起きるまで起こすなと仰ったので」
「うん……ありがとう」
のびをしたとたん、ぐうっとお腹が鳴る。ジェシーが笑った。
「着替えをなさいましたら、すぐごはんに致しましょう」
いそいそと月花に与えられた着替えを持ってくる。やはり、白いワンピースだ。今日のは袖にリボンがついていて、いつものようにあたたかな白い上着を着せられる。
そうしているうちに、ルカがワゴンに食事を乗せてやってきた。
「おはようございます、ツキカ様」
「ルカ、おはよう。昨日はありがとう」
ことづてとリョウからの預かりもののお礼を言うと、ルカはまた太陽のような笑みを見せた。
彼はジェシーとも挨拶を交わすと、部屋を去ろうとする。
「あ、待って」
月花は呼び止めた。
「このあと、どうするの?」
「いつもどおり、部屋の前で警護いたします」
「一緒にお茶でも飲まない? ……今日はイファンの誕生日なんでしょ? 特別な日だもの」
ルカは大きな緑色の瞳を、さらに大きくする。ちらりとジェシーを見ると、ジェシーも「よろしいんじゃないかしら、ツキカ様がおっしゃるのだもの」と笑顔を見せた。
ルカは、嬉しそうに会釈した。
「では、お言葉に甘えて」
月花は急いで食事を終えると、デザートのケーキをジェシーに三人分にとりわけてもらう。
「今日のデザート、ケーキなんだね」
「イファン様のお誕生日だからでしょう。しかもこれ大きいですね!」
「ほんと。わたしひとりじゃ、きっと食べ切れなかったよ」
月花とジェシーのやり取りを、ルカは微笑ましそうに見つめながら立ったまま待っている。
窓際に丸テーブルと椅子が二脚。ルカとジェシーにそこに座ってもらい、月花はベッドに腰かける。イファンの23歳の誕生日に、紅茶で乾杯した。
ケーキはチョコらしきものをふんだんに使った、しっとりしたフォンダンショコラのようなものだった。外はサクッとしていて、フォークで切ると中からとろっとチョコがとろけだす。口に入れてみると甘ったるいほどの甘さではなく、月花が大好きなちょうどいい甘さだった。
「このチョコレートケーキ、イファン様にしてはお珍しいですね。毎年クリームを使ったショートケーキですのに」
「そうなの?」
すると、ルカが上機嫌で口をはさむ。
「ツキカ様の意識の中を探ったとき、ツキカ様のお好みのケーキもお知りになったのでしょう。これはツキカ様のためだけに作られたチョコレートケーキだと思いますよ」
イファンが月花の意識を探ったということも、ルカは知っているのか。というか、イファンがそんな気配りをしてくれるだなんて思っていなかった月花は、調子が狂ってしまう。
「イファン様は、ほんとうはとてもお優しい方ですから」
複雑な表情の月花に、ルカがだめ押しする。ジェシーが眉をはねあげた。
「そんなこと言ってるの、ルカだけよ?」
「でも、ほんとうのことですから」
ルカは微笑んではいるが、譲る気はないらしい。ジェシーはあきらめ、紅茶に口をつける。
「まあでも、確かにツキカ様に対しては気配りをされているとも思うけれど。このお部屋を用意されたときも、女の子らしくとか注文が細かかったし」
「でしょう?」
ほらねと言わんばかりに、ルカが笑みをこぼす。
そういえば、紅茶も月花が好きな香りだ。ミルクティーが好きな月花だが、チョコレートケーキがこの世界にあるとすれば、この紅茶も間違いなくミルクティーに違いないと思えるほどに。
そのうち話題はジェシー提供によるところの「城内での不倫」に移り変わり、ルカと月花はときおり相槌を打つだけになった。ルカに至っては、困り顔だ。無理もない、まだ15歳だと聞いている。15歳の少年が、不倫関係の話題なんかに興味があるほうがおかしい。
そんな月花とルカを救ったのは、ノックの音だった。
「シオンだけど、いまいいか?」
シオンがくるとは知っていたが、まさか月花の部屋にまでとは思っていなかった。ジェシーとルカは慌ててとうの昔に食べ終わったケーキの皿と紅茶を片付ける。気がつけば、窓の外はもう夕暮れどきだった。
「どうぞ」
月花の声に、シオンが扉を開けて入ってくる。そこにジェシーとルカもいるのだとは思っていなかったらしく、頭を掻く。
「もしかして、邪魔したか?」
「ううん、もう食べ終わったところだったから」
ジェシーがワゴンを持ってさがり、ルカだけが残ったのを見てシオンは言う。
「悪いけど、ふたりにしてくれねーか」
「でも……」
「俺が信用できないか?」
ルカはかぶりを振り、「失礼します」とだけ言って部屋を出ていく。
「イファンには会ってきたの?」
「ああ。もう少しで宴が始まる。俺もそろそろ行かなくちゃいけないんだけど、ちょっとでもあんたに会いたかったから」
わざわざふたりきりになったからには、なにか込み入った話があるのだろう。月花は背筋を伸ばす。
「ゆうべの会話で思ったんだけど」
シオンは切り出した。
「おまえとリョウって、ほんとに恋人なのか?」
なんだそんなこと、と月花は気が抜けてしまう。もうリョウが命を狙われることもなくなったのだし、リョウの話題なら他の人の目があっても大丈夫なはずだ。
「一応……恋人だよ」
「全然恋人らしくねぇな」
むっとする月花に、シオンは彼女の隣に座って足を組む。
「おまえ、ほんとにあいつのことが好きなのか?」
そう聞かれると、ぐっとつまってしまう。
好きといえば好きだ、人間として。恋愛感情があるかというと、自分でもよく分からない。
ただ、自分とリョウはつきあっている。だからデートするのも当たり前だし、ほんとうなら肉体関係もなくちゃおかしいのだろう。
デートはしていた、アイも込みだけれど。そのことを、友達に指摘されたことはある。滝水くんも含めてだなんて、相馬くんに失礼じゃないの?と。それってデートじゃないんじゃないの?とも。それはずっと月花が蓋をしてきた気持ちだった。どうしてシオンはそんなことを突っ込んでくるのだろう。
「シオンは、『エルの歌姫』ってなんのことか知ってる?」
答えられないかわりに、ごまかした。シオンの顔に、一瞬緊張が走る。真顔になり、うなずいた。
「もちろん。この世界の人間ならだれでも知ってる。──ああ、あんたは異世界からきたんだってな。さっき初めてイファンから聞いた」
「それなら話が早いんだけど。『エルの歌姫』って、どういうものなの?」
「そうだなぁ」
シオンは組んでいた足を戻して腕組みをし、しばらくなにから話そうか考えているようだった。
「ルーインが複数いた場合、その中からどうやって神子に選ばれるかは知ってるか?」
月花はかぶりを振る。シオンは教えてくれた。
「まず神子になるには、神に会いに行く必要がある。神の部屋への道は神のほうからでないと開かない。開けばルーインや『エルの歌姫』にはすぐにわかるらしいけど、いまのところ開いてる様子はないな」
で、と彼は続ける。
「神の部屋をこっち側から開く方法もあるんだ。でも、それには『エルの歌姫』の存在が不可欠となる」
「どうして?」
「こっち側から開くには鍵の遺跡に行く必要があってさ。そこで『エルの歌姫』が歌うと三つの神器が現れるって言われてる。その神器をそろえて鍵の遺跡でまた『エルの歌姫』に歌ってもらうと、神の部屋への道が開くらしい」
「じゃ、『エルの歌姫』がいれば……神様が選ばなくても自分が神子になることも可能なんだ」
「そういうこと。反則技でもあるけどな。まあ、『エルの歌姫』なんてめったに現れねーしな。現れて出逢うだけで、もう運命としか言いようがねえ」
「そうなの?」
「前に『エルの歌姫』が現れてから、千年の時が流れてるらしい。だから神子よりもある意味貴重ってされてるんだよ」
「千年も……」
そんな貴重な「エルの歌姫」が自分であるとは、信じがたい。
けれどイファンは確かな自信を持って、月花が「エルの歌姫」だと思っている。それは、なぜなのだろう。
「『エルの歌姫』だっていう証拠って、どこでわかるの?」
さらに質問を重ねると、シオンは丁寧に教えてくれる。
「言い伝えによれば、だけど。『エルの歌姫』には身体のどこかに涙のしずくの形のあざがあるとされてる。あと、なんだっけな。そうそう──エルの地で歌うと髪が月のように銀色に光り輝き、花々が咲き誇ったり自然現象が何かしら起きるので、それで「エルの歌姫」とわかる。月が出ている晩に奇跡が起こせると言われているので、『月の歌姫』とも呼ばれている。──だっけかな。これ、言い伝えの本にあったとおりの記述だけど」
「よく覚えてるね」
「そりゃ、エルの地に生まれた奴は親や学校から嫌でも教えられるしな。ルーインになったら尚更調べようと思うし。そうそう、あとやっぱり『エルの歌姫』はルーインと同じように処女じゃなくちゃならなくて、処女喪失と同時にその力も失せると言われてるんだ」
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